目次 [非表示]
企業を長続きさせるためには事業承継を的確に行うことが重要となります。どんなに素晴らしい事業を行っている企業でも承継でミスをしてしまうと、その企業の先行きに大きな不安を残すことになるかもしれません。
そこで事業承継の準備について解説していきます。事業承継を的確に行うためには準備をしっかりとしておくことが必要です。
事業承継は大きく2つから構成されることを把握しておく
事業承継の準備の中でも特に重要となるのが、事業承継に関わる人物がその内容を把握しておくことです。具体的に言うと現在の経営者と後継者が事業承継の内容について深く知っておくことが重要となります。
事業承継は単に事業を受け継ぐだけと考えている方も少なくありませんが、実際には経営ノウハウの承継と経営理念の承継の2つで構成されています。そのため、このどちらかが欠けていると、事業承継には失敗してしまうでしょう。
1つ目の経営ノウハウの承継は会社のシステムや経営方針の承継を指します。
経営者が変わると会社の方向性が少し変わることもありますが、それまでの取引先との関係や既に決定している事項もあるので後継者がそれらをいきなりひっくり返すことはできません。経営者が変わったことでそれまでの決定事項が全て覆されるようなことがあると、企業は信頼を失ってしまいます。
方針転換をのちにするとしても、まずはそれまでのことを後継者がしっかりと受け継げるように勉強しておくことが大切です。
2つ目のポイントである経営理念の承継は、経営者の信条を受け継ぐということを表します。
事業承継と言うとどうしてもお金など業務的な引継ぎばかりがクローズアップされがちです。確かにそういった事務的な部分も重要ですが、信条を受け継ぐことが出来なければそれまでに築いた企業としての魅力が失われてしまいます。
それゆえに、現在の経営者がどういった信条を持って経営を行ってきたか、後継者と話す機会が大切になります。けれども、事務的な承継を行い始めるとどんどん手続きが進み、理念の承継を行うことが後回しになりがちです。したがって、事務的な準備に入る前に理念の引継ぎをしておきましょう。
事業承継の関係者を整理していく
事業承継では後継者に経営権を渡すことになりますが、それだけではありません。様々な人員の配置を伴うケースがあります。元々企業において重要な役割を担っていた方が昇格する形で経営者となることも多く、その場合は後継者が元々いたポストが空席となります。そこに誰が入るのか、事業承継にあたって新しく外部から人材を登用するのかといったことを決めていきます。
経営者のカリスマ性が極めて高かった場合、後継者には企業の内外からプレッシャーがかかることになるでしょう。そこで、高い手腕を持つ方を後継者のサポート役にするというケースもあります。
このように、事業承継では単に経営者が代わるだけではない場合も多いということです。
企業のお金を整理
企業には様々なお金があります。そのお金には税金が発生することもあるので、経営者は企業に関わるお金を把握しておくことが大切です。事業資産や個人資産などを大まかに確認し、税金の支払い漏れなどを防ぐようにしましょう。
事業承継の際には改めて企業に関わるお金を整理しますが、ごく稀に不明瞭な資金が出てくることもあります。そのお金を不明瞭な状態のままにしておくと後々に大きなトラブルに発展する恐れもあるため、適切な手続きを行うことが大切です。
事業承継は長年の経営の中で見過ごされがちな問題を浮き彫りにし、正常化させる機会でもあります。また、経営を行う人物は個人としての信用性も重要なので、後継者の個人資産を大まかに確認するケースも少なくありません。
事業承継にかかるコストを確認
事業承継は基本的に2種類のコストがかかります。
1つ目は相続などで分散した自社株式や事業用資産を買い取るための資金です。経営者が個人で所有している自社の株式や資産はその人物の妻や子供に相続されます。相続された相手が後継者であれば、買い取る必要はありません。
しかし、相続した相手が後継者ではなかった場合、会社として自社株式や資産を買い取る必要があります。そのときには会社の資金を使うことになります。経営者の家族があまり協力的でなかった場合は少しややこしい状態になってしまうこともあるので、事前に準備しておくことが重要です。
2つ目は相続や贈与によって自社株式や事業用資産を取得したときに必要となる相続税や贈与税といった納税資金です。
相続や贈与を行ったときの税金を支払えなかった場合は財産を国に譲渡しなければならなくなります。企業における中枢の財産を国に譲渡することは経営にとって致命傷になりかねません。それゆえに税金が支払える準備をしてから事業承継をすることが大切です。
事業承継の支援についてチェックする
事業承継の際には費用がかかるので、経営がギリギリの企業の場合は承継の際に経営困難となってしまうことがあります。そのような形で企業を失ってしまうことは社会的な損失となります。
そこで地方自治体では事業承継の支援を行っています。条件を満たしていれば大きなサポートを受けられることもあるので、あらかじめチェックしておくことが重要といえるでしょう。
支援内容や条件については地方自治体によって異なります。特に費用が足りないせいでなかなか事業承継が行えないというときには非常に役立ちます。また。中には後継者問題で困っているときに相談が出来るケースもあります。
事業承継のことを内外に発信する準備も
事業承継は企業内部だけの問題ではなく、株主や取引先にも伝えなければなりません。実際に伝えるのは事業承継後ですが、発信できる準備を整えておく必要があります。特に事業承継が急だった場合は伝えるのが後回しになりがちです。経営者が代わってもこれまで通りの取引やサービスを行うこと、また経営者交代による変更点などを伝えられるようにしましょう。
なお、経営者が交代する情報が中途半端に漏れてしまうと、様々な憶測を招きかねません。それゆえに、発表のタイミングを全社で統一し、それまでの情報管理を徹底しておきましょう。
さらに、ギリギリの発信になると計画性がないように思われることもあるので、ある程度余裕を持った発信が重要となります。事業承継の仕方や情報発信によっては取引先との関係性が変わることもあります。良い方に変えられるように丁寧な説明への準備をすることが大切です。
あわせて読みたい関連記事
実質税負担ゼロで自社株が引き継げる特例事業承継税制とは?
事業承継にかかる贈与税や相続税の負担が軽減される?後継者は知っておきたい特例事業承継税制
特例事業承継税制を検討する際にはおさえておきたい特例の落とし穴
ちょっと待って!知っておきたい特例事業承継税制をとりまくリスクと対応策
事業承継をきっかけに家族ともめたくない方はお読みください
事業承継は先代経営者と後継者の問題だけではない。家族ともめやすい遺留分問題とは?
事業を売却するってどういうこと?
法人の事業譲渡とは?~メリット・デメリットと手続き~まとめて解説
企業の承継は、自社株の引継ぎだけじゃない
事業承継・会社/企業の承継って何?承継と継承の違いも合わせて解説
ゼロイチよりも買収!?これから増えるM&Aについておさえよう
M&Aって一体なに?会社に係るM&Aを基礎知識から理解しよう!
親族での事業承継を考えるポイントをまとめました
事業相続・承継!【親族内承継】って何?納税猶予も含めて解説!
中小企業を長年コンサルしてきた元金融機関行員中小企業診断士が語るシリーズ
事業承継との向き合い方②事業承継を幻にしないために〜誰に引き継ぐべきか〜
事業承継との向き合い方④~なぜモメるのか?親子間のボタンの掛け違いから考える事業承継~
事業承継との向き合い方⑤ 事業を譲る側がすべきこととは〜船に船頭は二人もいらない?〜