個人事業主は事業承継できる?方法や注意点を理解しよう!

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個人事業主でも事業承継ができます。

ただし、個人事業主の事業承継には、売買や相続・贈与などの方法があり、誰に引き継ぐかが重要です。

よって、事業承継についてしっかりと理解してから手続きをする必要があるでしょう。

そこで、この記事では個人事業主の事業承継について、方法や手続きの流れ・注意点などを紹介します。

個人事業主が事業承継する方法とは?

個人事業主が事業承継をする場合、「売買・相続・贈与」などの方法があります。

事業承継とは事業を引き継ぐことで、借金や固定資産なども含むことが特徴です。

また、引き継ぐ相手によって、方法や条件が異なる場合もあります。

まず、事業承継の売買とは、M&Aで他の会社や個人事業主に事業を売却する方法です。

家族ではなく他人に売買するため、対価の金銭を受け取ります。

個人事業主の場合、事業規模が小さいとM&Aの話が進まない可能性もあるでしょう。

その際には、M&A専門会社に相談すると、話がまとまりやすくなります。

次に、贈与の場合、親族内事業承継や親族外事業承継を行います。

一般的には生前贈与を行い、個人事業主が生存している状態で引き継ぐことが多いです。

生前に引き継ぐ場合、贈与だけでなく譲渡という方法もあります。

そして、相続とは経営者が亡くなった時に、営業権譲渡などで後継者が引き継ぐことです。

保有していた自社株などを後継者が取得します。

遺言がある場合、後継者に指名された人はスムーズに手続きできるでしょう。

遺言がなかった場合は遺産分割協議で話し合いますが、保有していた固定資産の内容によっては、後継者が自社株などを得られない場合もあります。

事業承継の流れとは?

個人事業主が事業承継をする時は、最初に後継者選びをします。

親族内では経営者の配偶者や子供・孫に引き継ぎ、一方親族外は事業を理解している従業員に任せる場合が多いです。

また、第三者に依頼する時はM&Aでの手続きが必要です。

まず、親族内や親族外など身近な人に事業承継をする時は、後継者の教育をします。

スムーズに事業承継するためには、扱っている商品やサービスの概要・取引先・経理など、さまざまな分野における教育が必要です。

なお、後継者が決まった場合は、取引先や顧客への挨拶もしておくといいでしょう。

個人事業主の場合、取引先や顧客との信頼関係が大切ですが、経営者が変わる説明がないと、取引先や顧客が離れる可能性もあります。

事業承継をする時は、引き継ぐもの全ての確認が大切です。

例えば、事業用の固定資産の内容を把握するといいでしょう。不動産などのプラスの資産だけでなく、銀行からの融資などマイナスの資産もあります。

その他に、顧客情報なども引き継ぐため、情報管理を徹底し、個人情報が漏れない対策も重要です。

事業承継の準備が整ったら、元経営者は「廃業手続き」、後継者は「開業手続き」をします。

廃業手続きには「事業廃止届出書」を出し、青色申告の場合は「青色申告のとりやめ届出書」が必要です。

片や、開業手続きでは、「所得税の青色申告承認申請書」「雇用契約書等」などを提出します。

さらに、事業承継によって、元経営者の所得よりも後継者の所得が少なくなると想定する場合、所得税や復興特別所得税の「予定納税額の減額申請」ができます。

これを提出すれば、納税額を減らせるでしょう。

事業承継における廃業や休業・業績不振で所得が少なくなる時に有効です。

また、課税事業者から免税事業者に戻る時は、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出します。

免税事業者とは1年間の売上高が1000万円以下の事業者です。

課税期間の初日までに提出しないと、適用になりません。

元経営者が使用していた屋号は、開業届の使用したい屋号に記載しておけば、そのまま使用できます。

もし、商号登記されている屋号の場合は、法務局での名義変更が必要です。

個人事業主の屋号は、商標登録のように法的制限はありません。

ただし、商号登記されている屋号は、競合阻止義務によって同一市内での使用が禁止されているため注意が必要です。

個人事業主の事業承継後、債務や経理はどうなる?

個人事業主の事業承継では、不動産などの固定資産が多ければ多いほど、贈与税などの税金が高くなってしまいます。

しかし、固定資産税は経費にできるため、「使用賃借」をするのもいいでしょう。

家族や他人に不動産を貸している形にすれば、贈与税は少なくなります。

また、使用賃借は賃貸とは異なり、権利金がかかりません。使用賃借にすると、実質無料で固定資産を後継者に貸すことができるのです。

さらに、事業承継では、債務も承継します。

つまり、銀行からの融資など債務があれば、それも引き継がないといけません。

具体的には、融資の債務だけでなく、買掛金や未払い金なども含まれます。

債務に関しては、どのように返済するのかを決めることが大切です。

なるべく元経営者と後継者が話し合い、返済方法を決めるといいでしょう。

個人事業主の事業承継にかかる税金とは?

個人事業主の事業承継では、「贈与税・所得税・消費税」などがかかります。

まず、贈与税とは親から子へ事業承継した時、無償で事業を譲り受けた場合に発生するものです。

贈与税は資産と負債を分けてから、「固定資産を含める資産-負債」で計算します。

この金額が110万円以下の場合は贈与税が発生しません。

110万円以上になると、超えた分に税率をかけた金額の納税が必要です。

基本的には一般税率で計算しますが、特例税率に当てはまる場合は税率が異なります。

例えば、父母や祖父母などの直系卑属から、20歳以上の子や孫などに贈与する場合です。

この時は特例税率となり、課税対象額にかける税率が少なくなります。

次に、所得税では、1月1日からの1年間で得た所得金額から、所得控除額を引いた額を支払います。

親族へ無償で事業承継した場合、承継後に得た収入が課税対象です。

M&Aによって利益が出た場合は、利益に対して所得税が課されます。

そして、個人事業主における消費税は、年間売上高によって決まることが特徴です。

後継者が他の事業をしていない場合、開業1年目に1000万円の売上高がある場合は、2年後から納税義務が出ます。

一方、1000万円の売上高がない場合は、消費税は発生しない決まりです。

しかし、相続で事後承継した場合、2年前の売上高が1000万円以上だと、納税義務があります。

つまり、相続の場合は課税売上高も引き継ぐのです。

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