「私どうしたらいいですか?」と言わせない!マインドセットから創業後のフォローまで行う創業支援

ポイント
  1. 区外の方でも受けられるサービス設計
  2. 「私どうしたらいいですか?」は禁句
  3. 考える前に外に出てみよう

区外の方でも受けられるサービス設計

― 武蔵小山創業支援センターの活動内容を教えてください。

仙波:2010年8月1日に設立しまして、今年で丸7年になります。女性起業にフォーカスしておりまして、今ユーザーのご登録いただいている方は5000名以上です。

― それは品川区在住の?

仙波:いえ、全国から。どなたでも無料登録をしていただければ、サービスが受けられるというシステムを作っています。本当は税金事業なので品川区の方だけというのが普通なんですけど、開設当初から外から盛り上げて中を活性化していこうというのをやっていたので。一般向けのお客様には、男性も女性も参加できるものとしては夜とかにやるようなセミナー、マッチングの交流会、そういった場づくり的なところから、イベントを定期的にやっています。

セミナーから入って来ていただいて、継続的に支援する形もありますし、あとはセンターの方で「ウーマンズビジネスグランプリ」という年間で一番大きいイベントがあるんですが、このファイナリストの方たちを定期的にフラッシュアップして支援してつなげていくといったようなこともしています。一つ一つの企画が繋がっていくような形で設計していますね。

― 集まっていただいた方には、具体的にはどのような支援を行うのですか。

仙波:例えば、事業計画のブラッシュアップをこちらで全部やります。事業計画の内容から、プレゼンの指導ですとか。そういったことを経て、例えばセンターの6階にはオフィスが8部屋あるので、そこが空いた場合に優先的にお声がけをすることにしています。

そういう形で入っていただいた方に、我々インキュベーションマネージャーがついて伴走してやっていくと。私たちはご要望に応じたメニューを提案したり、事業計画みっちり作ったりという形でサポートしていきます。

― ハンズオンで手厚く支援していただけるとなると、心強いサービスですね。

仙波:結構、人間同士のお付き合いになってきますし、一心同体というとちょっとオーバーなんですけど本当に伴走型でやっています。それによってコミュニケーションの質も上がりますので、いろいろと頼みやすくなるというのもあります。過去に入居されていた先輩の起業家さんに、「セミナーで今度お話してくれませんか?」というご相談がすぐにできるんです。そういう形で関係性作っていくみたいな。

女性が元気な街には人が集まる

― 品川区はこういった女性起業支援に積極的ですよね。

仙波:そうですね。区長自身もよく話してますけど、女性が集まりやすい場所には男性も入っていける。逆だとたぶん女性が入っていけない。女性が元気な街というのはたぶん街全体が元気というか、お子さんもご年配の方も学生さんもみんな集まってきやすい街なんじゃないかということで、特に商業サービスを中心に、女性向けの起業を支援していく施設にするというのが、センターのコンセプトですね。

― 品川区内では、施設もここだけではなく。

仙波:施設の数は、センター含め5箇所あります。施設ごとに特徴・運営方法・支援内容等もみんな違います。当センターは、民間のコンサルティング会社が運営しています。それは、行政側にノウハウがないというよりも、民間の方のほうが現場をわかってらっしゃるからだということを、担当の方々が、おっしゃっていましたね。
品川区は特に、自分たちで運営するのではなくて、民間の力を借りた方がいいものができるんじゃないかという考え方ですね。なので、我々も結構色々自由にやらせていただいています。

― こちらを利用されている女性起業家の方はどういった方が多いですか?

仙波:当センターのユーザー平均年齢が今44歳です。ターゲットは30代~50代ですね。逆に若い方はあまり来ないですね。たまに学生さんとか来るんですけど、ごく稀です。

― となると、ご結婚されてる方は、子育てしてちょっと落ち着いてきて、時間も空いてきた中で、アルバイトしてもなぁとか正社員としては時間的に厳しいなぁという所があって、起業してみたいというような思いなのでしょうか。

仙波:一番多いのは事業内容がご自身の経験から来ている起業ですね。元CAの方がワインソムリエや、マナー講師をやったりとか、英語を教えたりとか。

2つ目はIT系の方の独立ですかね。要はもう結構しんどいという方が多いですね。パソコンを使っての作業をするクリエイターさんやSEさんをやってると、ハードに働かないといけないし、目も頭も腰も痛いみたいな。そういう方は、もっと自由に動ける環境を手にしたいという方が多いですね。ご経験を活かす起業というのはそういうパターンとかも多いですし。一番成功確率が高いといわれていますから、いいんではないかと思いますね。あと結構多いのが、反対に経験がない、未経験からの起業ですね。

― 趣味とか興味があった分野であったりとか?

仙波:そうですね。例えば食の大切さを痛感して、飲食店をやろうと思ったとか、カフェやりたいとか、自分が受けたいサービスがなかったから起業しちゃえっていうケースは結構多いですね。

資格屋さんに踊らされない

― なるほど。私たちも何人も女性起業家の方を取材させていただいて、結構堅実な事業をする方が男性に比べて多いなと感じているのですが、そこについてはそのように感じていらっしゃいますか。

仙波:そう思いますね。あとは趣味からの起業が多い。そこから本を出すケースもありますし、テレビに出たりする方もいますし。ちょっとしたハンドメイドのようなものでも、モノのレベルが多分職人レベルというか。
だから、趣味からの起業はかなりマニアックなものの方がいいと思います。実際に今起業の傾向で、なんとか協会とかって言ってたくさん資格を売っている団体さんがいるんですけど。起業したいけど何をやっていいかわからないという人たちは、結構そっちに流れてしまいます。そうするとそこにお金と時間を投じているけども、それで終わってしまうことが多いのです。ネットショップが儲かるって言っている人たちも過去にたくさんいて、騙されてしまうケースも結構あります。

― 特に一回家庭に入ってしまったりするとビジネス感覚が無くなってしまって、そこから再スタートなのでついつい資格、お墨付きみたいなものに惹かれてしまうっていうのはなんとなく想像できますよね。

仙波:あとは、起業スクールも多いです。やっぱり民間でやってるようなちょっと怪しい起業スクールも残念ですが、存在します。何十万、何百万とかお金を払ってしまって、結局何にもならなくて困ってうちに来たってケースは結構あります。

「私どうしたらいいですか?」は禁句

― 女性起業家さんの課題として多いのは、やっぱり何からやったらいいのかわからないというところですか?

仙波:そうですね。やっぱり自分の軸がない。

― 軸がない?

仙波:本当はそこが一番ですよね。当センターの起業スクールでは、絶対に使ってはいけない禁止の言葉があります。それは、「どうしたらいいですか?」という言葉です。

― 「どうしたらいいですか?」は禁止?

仙波:「私どうしたらいいですか?」と言ってしまう人が多いんですね。いや、あなたが起業するわけですよね?っていう。ここに来た時にお客さんみたいな感じになってしまうんです。あと、社会復帰が久しぶりだと、ビジネスマナーが分かっていなかったりとかするので、そこは結構言いますね。

例えば、遅刻は当たり前、無断で休むとか。そうすると起業したときに信用されないじゃないですか。これから独立して、やっていこうとするのにダメなんじゃないの?という感じなんですよね。起業スクールのオリエンテーションで口酸っぱくお伝えするんですけど、結構できていない人が多くて、やりがいはありますが、毎年ちょっと大変だなと思うことがあります。

― その辺りの基本的だけど一番大事なことから、提供されていると。

仙波:そうですね。徒弟制度みたいなものが今ないじゃないですか。ですから、ルールやマナー等を教えてもらってない人が多いですよね。また、男性と比べると、社会人としての経験がやっぱり圧倒的に不足していることが多いと感じます。保育士さんや、学校の先生、美容師さんといった、いわゆる専門職での就職。会社らしい組織に入ってきちんとした立場で仕事をしてきた方は少ないと思います。今は派遣という選択肢もありますし。

例えば、元美容師・元保育士の方ですと、特化した職についてるので専門分野は大丈夫なのですが、それ以外の部分は、例えば、書類1つ作るのも、パワーポイントなんて見たことも触ったこともないという方はたくさんいますし、ワード、エクセルってなんですか?と聞かれるケースが多々あります。そのあたりの環境調整に時間がかかる人が結構いますね。

― そこの部分は地味だけれども、しっかりやらないとスタート地点にもなかなか立てないという所ですかね。

仙波:おっしゃる通りですね。やらなきゃいけないことは結構あるんですけど、逆に何でも自分でやろうとする癖も皆さんできてしまっていて、それも危険だと思います。

苦手な分野は人に頼む

― 何でも自分でやろうとしてしまうというのは?

仙波:それは誰かに頼めばいいでしょ?っていうことです。例えば、ホームページを自分で作れないのに何とか自分でやってみようとする。鍼灸師をしている私の友人がいるのですが、彼女も最初は自分でホームページを見様見真似で作っていたんです。でも、そこに力をかけるんだったら、施術に特化した方がいいわけですよね。彼女は施術する側の人間なので。

そこで、プロの方に頼んだらちゃんといい物が出来たんですよ。今はもう、鍼灸院も移転して事業規模も成長しています。そういう風に頼めばいいのに、自分でやろうとする傾向にありますね。名刺一つにしてもすごい手作りで、頑張ってるのはわかるんですけど、それは、プロにお願いした方がいいものできるんじゃないのっていうこととか。

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著者プロフィール

仙波 希

仙波 希

東京都渋谷区渋谷生まれ。カトリック系の大学で哲学とスペイン語を学ぶ。卒業後、就職した食品メーカーで、小売、問屋、法人向けの営業をする傍ら、組合役員として、週末は出張の日々。組合役員を務めたことで、経営者の視点や経営者、従業員の悩み、現場の課題等に触れ、人事・労務管理の改定に取り組む。2011年6月に退職し、しばらくリフレッシュ。2012年4月リフレッシュスタートを切り現職。