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官公庁と一体となった女性キャリア支援。制度と意識の両面から変化させる

ポイント
  1. 在宅ワークを見える化した「おしごとカフェ」
  2. 環境だけでなく女性たちの考え方を変えていく必要がある
  3. 次世代に頑張る自分の姿を見せる

目次 [非表示]

女性のキャリアアップを支援する

― キャリア・マムはどのように生まれたのでしょうか。

堤:私が子どもを産んだ20数年前は、女性が子どもを育てながら働くことは、不可能に近い状況でした。保育園の正しい認識もなかったですし、街が子連れで歩くようなシステムにそもそもなっていない。それに加えて、子どもを産んではじめて地元の公園に出たときに、当時の周りのお母さんたちの考え方や、行動にクエスチョンがつく部分がすごく多かったんです。お母さんであっても、もっと自分の人生を楽しむというか、「お母さんらしく生きる」んじゃなくて、もう少し「自分らしさ」というものを女性たちに大事にしてほしいなと思ったのが「キャリア・マム」を創るきっかけになりますね。

― わかりました。それでは、活動内容を簡単に教えてください。

堤:事業部としては3つあります。マーケティング事業、アウトソーシング事業、あとはキャリア支援事業です。最近はこのキャリア支援の部分が大きくなってきています。

最近は内閣府、厚労省といった官公庁から、埼玉県、東京都、市区町村レベルの自治体で、女性のキャリアアップに関する原稿作成やセミナー運営、訓練型のサービスを提供しています。それらを通して女性たちが働けるようにしていくことと、受け皿側である企業に、女性を活かす為のセミナーなどを、企画提言するという両面で活動しています。アウトソーシング事業は今10万人の登録者がいて、大体年間2000名ほどの方々がご自宅でインターネットを使ってチームになってお仕事をしていただいているところが、他のクラウドソーシングとの大きな違いです。チーム型請負事業と呼んでいます。

在宅ワークを見える化した「おしごとカフェ」

― 対象となる企業や官公庁がかなり幅広いですね。

堤:そうですね。本日お越しいただいているここが「おしごとカフェ」という場所で、在宅での働き方や、そもそも働くってどんな面白さがあったっけ?というのを感じていただけるように、ここは電源とWi-Fiをフリーで提供するカフェスペースにしてあります。こうやって打ち合わせをしているところや、ノートパソコンで働いている方を普通に見られるようにして、ちょっとお茶飲みに来たときに働いてる人を見て「ちょっと格好いいんじゃない」と感じていただけるように。

― 在宅ワークということで、地域は特に限定しているわけではない?

堤:ないですね。逆にどこにいても、海外にいらっしゃっても働くことはできますので。

― 登録者の方もやはり日本全国いらっしゃいますか?

堤:基本的に日本の人口分布と同じような形で、今は島根、鳥取が一番少なく、東京が一番多いですね。

公園での会話からきっかけを得た


― もともとのきっかけの部分ですが、お母さんたちのどんな行動が気になったのでしょうか。

堤:子どもを産んで初めて地元の公園に連れて行ったときに「これはだめだ」と思いました。何に対してそう思ったのかというと、お母さんたちが、基本的に「私がそれをできない理由」ばかりをしゃべって、「どうしたらできるようになるのか」ということは、あんまり公園の会話の中では出てこないんです。生産的でない会話をしているなとすごく感じて。

よく、大学に行って講演をすることがあるんですが、「働かなくて生活できるなら働きたくない人?」と聞くと、大学生の半分近くが手をあげます。働きたくないのに大学なんか行くなよってすごく思うんですけど。働くって本来すごいクリエイティブで、自分というものを出せて、エキサイティングなことなのに、その働くことの醍醐味とか面白さとか伝わっていないのです。それは実は、親世代が働くことの意味だとか意義だとかっていうものを伝えてないんじゃないかというのを感じたんですね。

― なるほど。あるかもしれませんね。

堤:子どもって賢いので、例えば高校生、大学生になって「人としてこういう風に生きるべし」と伝えてももう遅くて、実はお母さんたちと公園で遊んでるような小さいときから人として自分は、他者や社会のためにどう役に立つのか。自分がいることで誰かを幸せにできるのかとか、誰かを元気づけられるのかとかを考えはじめるんです。

それを母親たちが伝えなかったら誰が伝えるのと思ったのです。だけど、当時の母親たちは、自分が働き続けられなかった理由を、社会とか周りのせいにして、愚痴を言うことがやっぱり多かった。「だから無理よね」とか、「でも」「だって」みたいな。

それだったら、自分の好きなことをやれる時間にやれるだけでいいから、チームを組んで、それぞれ得意なところだけをやれるシステムを作れば、きっとみんな働けて、うれしいんじゃないかな、楽しいんじゃないかなというのが、キャリア・マムのスタートラインなのです。だからまったく顧客オリエントじゃないんです。

― まずは女性が働ける環境をという。

堤:それが、キャリア・マムが社会起業家と言われる所以なんですけど。お母さんたちが鬱とか、元気がないとか、心から全然笑えないとか、すべてを犠牲にしている状態を子どもたちは全然望んでいません。

なので最初から、「ママの元気と笑顔を応援」というスローガンを掲げてきました。今は少子化になって労働人口の低下と言われる中、国の「女性活躍」という目標に応える形で、「女性のキャリアと社会」をつなぐという風に理念をリニューアルをして活動を続けています。

環境だけでなく女性たちの考え方を変えていく必要がある

― お母さん層にもいろんな方がいらっしゃるので、ひとくくりにするのは難しいかもしれませんが、女性の働くことに対する意識でしたり、あるいは女性起業家が男性と同じ土俵で戦うというような所に対する意識は、この20年間で変わってきていますか?

堤:そうですね。外的な環境はすごい整ってきたんじゃないかなと思います。育児休暇とか産休、時短勤務、あとは足りないとはいえ、保育園とかですね。ただ女性たちが本当の意味で働きたいと思うかというところで言うと、まだまだ迷っていたり、揺れているなとは思います。女性起業家というところに狭くフォーカスをすると、金融機関も女性向けとか若者向けとかいろいろな形で融資の場を低くしているので、場は整いつつありますが……

稼ぐということに対して甘いというか、こういう言い方をするとえらそうですが。商いごっことまでは言いませんが、思いとかイメージ優先の部分があるかなと。ベーシックな商行為っていうことをきちっと理解して、なぜ私が働くのか、どんな働き方を選んで働いた末に何がほしいのかとか、何を生み出そうとしているのかという事を考える必要があります。

女性起業家に限らず、もうちょっと未来の若い世代のことを意識して、人としてどう生きていくのかという事を考えてほしいなと思いますね。

― 環境や制度、あるいは男性側の意識を変えていくのと同時に、女性側の意識を変えることが必要ですね。これも課題として国も抱えているのではないかと。

堤:女性はできることに対してはすごく丁寧なんですが、失敗をすることを極度に恐れるところがあります。自分の経験値の中に入っているものにはすごく粘り強く、男性と比べてもパフォーマンスは劣らない。でも、失敗するかもとか、未経験とか間違うかもということには二の足を踏んでしまう。企業で女性管理職が増えないのはそれも原因の一つだと思います。

一概に甘えているとか働く気がないとか、そんなふうには思わないんですが、「失敗したくない」だけでもったいないですよね。だから案外、石橋を渡ったあとで壊れてるとか、なんとかなるでしょという感じの人の方が、企業の中でずっと長く働き続けられたり、起業家としてやっていけるのではないかと思います。今は女性でも半数以上が大学まで行きます。だから社会に出る前には、男女差はあまり感じない。でもやっぱり会社に行くと、小さくまとめがち、という理由で同期よりも昇進がちょっと遅れたり、チャレンジするチャンスが与えられずらかったり。まだまだ男社会という現実がありますよね。

次世代に頑張る自分の姿を見せる

― 仕組みだけ変えてもやっぱり人が変わらないと意味はありませんもんね。

堤:だから、そこは行きつ戻りつだとは思うんです。三歩進んで二歩下がるでもいいので、自分なりの働き方みたいなものを模索しながら動き、肩に力が入りすぎて失敗することも含めて、それも人生だ、じゃないですけど。

キャリア・マム
 

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著者プロフィール

堤香苗

堤香苗

フリーアナウンサー、女優を経て、出産育児を期に32歳で起業。自らの出産・育児体験から、意欲がありながらも社会から隔絶されている女性たちが、自分の“固有の特徴と経験” を“キャリア”として社会に還元できることを目的として『キャリア・マム』を設立。また女性起業家として、「在宅ワーク」「ITビジネスの可能性 」「女性の起業」「まちづくり」等のテーマで講演、パネラー、対談、司会、審査員など幅広い活動も。