元祖・起業家コミュニティ!? 数々の人材を輩出した松下村塾にみる人材育成論

ポイント
  1. 人材育成の基本とは?
  2. 道筋をはっきりさせて自分で成長させる
  3. 環境を整え自分自身の立ち位置を見定めて置くこと

「エリート」という言葉を聞いて、イメージする人材像は時代によって異なります。戦後の復興期から近代にかけて言えば、東大(東京帝大)を出て、官僚になることをエリートだと認識している人も多いように感じます。では、現代ではどうでしょうか。

私たちがモデルケースとしてイメージしやすいアメリカで言えば、優秀な人ほど、投資銀行やコンサルタント会社に入社するか、あるいは自ら起業する傾向があるようです。「アメリカン・ドリーム」という言葉もあるように、いわゆる “成功者(金銭的・社会的)”を目指せる土壌があるからでしょう。

日本の場合はどうか。成功者を受け入れるより、足を引っ張るような社会的風潮があるからかどうかは分かりませんが、安定志向の人が多いようです。しかし、バブル崩壊後からほとんど伸びていない日本のGDPをみるにつけ、「本当に優秀な人はどこにいるのか?」と考えざるを得ません。江戸時代末期。欧州をはじめとする列強各国の脅威にさいなまれていた日本において、将来の道筋を見出した人材は、現代でいうエリートではありませんでした。むしろ、「松下村塾」のように、ゲマインシャフト(社会的組織)から発展した集団から、優秀な人材が排出されていたのです。

そこで今回は、松下村塾の成り立ちと人材育成の手法について検討することで、社会を変革するエネルギーに満ちた人材がどのように生まれるのかを考えてみたいと思います。その背景には、(社会的)起業の精神が見え隠れしています。

「松下村塾」とは

松下村塾が存在したのは江戸時代後期。当時は、長州藩萩城下(現在の山口県萩市)にある、ただの私塾でした。しかし、指導者の吉田松陰をはじめ、伊藤博文、山縣有朋、品川弥二郎、山田顕義、野村靖、松本鼎、岡部富太郎、正木退蔵など、参加していたのは歴史的に有名な人ばかり。明治政府の要職に就いている人もいます。

つまり松下村塾は、明治維新を経て、新しい日本を創りあげた立役者を多数輩出しているのです。それも、単なる私塾から。これはただの偶然なのでしょうか。そう考えるのは軽率です。「松下村塾という環境が未来の日本を担う人材を育てた」と考えた方が自然でしょう。

特筆すべきなのは、指導者である吉田松陰が29歳のときに刑死していることです。このことは、「吉田松陰のリーダーシップが新明治政府を創りあげた」わけではないことを示しています。松下村塾がもたらしたものは、ある意味で組織的な成果であり、ある意味では個人的な成果なのです。

人材育成の基本

さて、人材育成の基本は何でしょうか。必ずしもひとつの決められた答えがあるわけではありませんが、重要なのは、「頭と心の両面から人間性を養う」ということでしょう。スキルやノウハウだけを教えても、人間性は育ちません。大切なのは心の滋養です。

基本スキルからノウハウ、仕事に対する姿勢、さらには生き方についてまで深く学んだ人材は、たとえその会社や団体に所属し続けていなくとも、社会に対して価値を提供し続けるでしょう。それこそ、人材育成における究極の成果です。

「あれだけ教育に投資をしたのに、結局、他の会社に行ってしまった」。そのような発想は、社会への貢献という観点から考えると、ちょっと卑小な印象です。「◯◯社の出身者はどれも社会を変えるような優秀な人材ばかりだ」。そう言ってもらえるだけで、何よりのブランディングになるのですから。

個人が個人として成長すること

松下村塾の塾生たちは、狭い範囲ではなく、広く社会にたいしてインパクトを与える人材に育ちました。その結果、窮地に追い込まれていた日本が生まれ変わり、世界に対して新しい存在価値を示すことができたのです。(日露戦争以後は、必ずしもそうとは言えませんが……)

それでは、松下村塾の教育手法がそれだけ優れていたのでしょうか。たしかに、そういった側面もあるのでしょうが、重要なのは内容ではなく、「方針」にあるように思います。つまり、「志をもって、良き友とともに行動すること」のような“教育方針”こそ、個人を人間性の側面から育てたのだと考えられるのです。

環境によって成長度合いは異なる

周囲の人間が一生懸命、勉強している環境において、自分だけが怠けるのは至難の業です。また、周囲の人間が情熱に燃えて仕事をしている環境において、自分だけが適当に仕事をするのは難しい。人材育成の結果は、環境にも大きく左右されます。ただし、それだけではありません。

「何のために努力するのか」「未来の自分はどうなっていたいのか」。“頑張る”ことによって得られる成果は、方法論よりも動機に左右されることが少なくないのです。リーダーの役割とは、個人としての生き方を規定するほどの指針を与えることなのかもしれません。

どこに身を置くのかということ

これから大きく成長していきたい人も、人材育成に力を入れたい経営者も、考慮するべきなのは「どこに身を置くのか」ということです。どこに身を置くのかによって、成長の度合いだけでなく、その後の生き方そのものも大きく変わる可能性があります。

幕末のように、現代が歴史上の過渡期にあるのかどうかは分かりません。しかし、何も考えずに平和を享受していれば、それで問題ないわけではないことはたしかです。この機会に、松下村塾を見習い、人材育成ということに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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