経験値の高い人材を採用できる小規模企業とは?

ポイント
  1. 中小企業がとるべき「通年採用」と「オファー型求人」

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人材不足がもたらす採用難が続いている現在、小規模法人では若手人材の採用が難しさを増していくことが懸念されます。大手企業のように大々的に新卒採用方式をとれないだけではありません。情報化社会が進み、社内の出来事がすぐにSNS拡散されていくようになったことで、社内満足が小さい中小の企業には新しい人材が応募してこない時代に変化しつつあります

今回の連載では、人材不足、採用難だからこそ、選ばれる企業になるために必要なことについて考えていきます。

中小企業がとるべき「通年採用」と「オファー型求人」

大手企業が新卒採用に躍起になっているシーズンに、あえて中小・小規模法人も同様に注力して人材採用活動をおこなう必要はありません。求人募集・採用はタイミング、縁などにも大きく影響されますので、通年採用方式をとる方が賢明です。

「良い人材は大手企業に集まる。規模の小さい当社はいつも残りくじを引くから、教育に時間を費やさないといけない人材ばかりが応募にくるのだ」と感じている経営者もいるかもしれません。しかし、大手でも実際には、早期に内定決定通知を獲得した就活生が、数カ月で離職してしまうケースも多く見られます。

その理由を分析すると、本来は自分の適正に合っているとはいえない仕事だったのに、内定をもらえたうれしさが勝り、就職活動を終えてしまうからです。つまり、大学時代に自己分析が不足していることが原因で起きた早期離職ということになります。

大手企業志向の就活生には、理想と現実のギャップが多く存在します。そこで、小規模法人が通年採用をとっていれば、そのギャップに気づいて改めて本人の適正に合う職場を探すようになった就活生の受け皿になりうるのです。

本人の適正と会社が求めることが合致していれば、何の問題もありませんよね? それに、失敗はだれにでもよくありますし、その失敗を糧に再チャレンジしている若者の前向きな姿勢を応援したい、とも思いませんか?

通年採用とともに、もう一つ取り入れていきたいことがあります。

企業が就活生を積極的に選びにいく「オファー型求人サイト」の活用です。就活生が「自分らしさ」を前面に出したPRを表示しているサイトのことで、企業からのオファーを待っています。面接するとき、「人となり」を注視している企業が多く、その部分を応募の段階から知り得ることが可能です。

また、今まで誰かが応募してくれるまで待っているという待ちの姿勢から、面接に来てもらうために取り組む攻めの採用方式を取り入れることで、「企業が個人を見つけていく」ことができています。人材不足の時代に、個人を見つけていく攻めのオファー型も必要なのかもしれません。

学歴よりも「行動期待値」に注目せよ

昔は学歴社会といわれていた時代がありました。でもAIの進化により、知的単純業務はAIに取って代わられる時代です。例えば、プログラマ、翻訳、税理士など、ひと昔前なら頭が良い人にしかできないスペシャリティー系の仕事です。膨大な量と単純な組み合わせでできる知的単純作業は、AIに代替されていきます。

むしろ今必要とされていることは、過去にどのようなことを考え、経験した失敗から学び、新しい行動をおこした経験をいくつ持っているか、です。

多くの経営者もそれを理解してはいるのですが、それでも履歴書を見ると「出身大学」などに目を向けがちなのです。その大学を見て、必死に勉強に取り組んできた人なのか、継続的な学びができる人なのか、テストに向けて効率的に動けた人なのか、という色眼鏡をかけてしまいがちになり、本来の「本人らしさ」を見るときに、出身大学が一流であればあるほど、普段より数段上の評価をしてしまいがちです。

確かに有名大学を卒業したことは立派なことです。でもこれからの時代には、出身大学名ではなく、学生時代の行動量、行動からくる学びの豊富さ、という行動偏差値を見ていくことが必要なのです。

その行動偏差値が高いほど、採用後の活躍期待値も上がっていきます。学生時代に失敗から学んだ経験があるなら、同じような状況が仕事で起きたときも、考えて乗り越える人材になるだろう、と考えるからです。

学歴だけでは見えないことです。履歴書を見るよりも、本人らしさが見える話を一つでも多く聞く時間を増やす方が、行動できる人材かどうか見分けられるようになります。

攻めとともに「猶予」を与える利点

一人の経営者が欲しいと思った人材は、他社でも採用通知が出ていることがあります。そのような時、焦ってすぐ返事をもらうようなことをしていないでしょうか?

企業が返答期限を決めるのではなく、応募者に期限を任せる猶予期間を与えることで、しっかり考えて納得して入社してきます。

期限や焦りがあると、十分に考えないまま結論を出してしまいます。これでは、記事冒頭に書いた大学時代の自己分析不足が原因で早期離職するパターンと同じ状況になる可能性があります。十分に考えなかった自分自身に後悔の念と未練が残ります。

未練が残ったまま仕事をしていても良い成果はあらわれません。未練がなくきちんと消化しきれた状態で納得して入社してもらうためにも、猶予期間は本人に与える方が望ましいのです。また自分で選べるという期間を与えてくれた企業に対して「大切に考えてくれているんだ」と認識し、それは社員の気持ちを大切にする会社というイメージを持つこともあります。

オファー型求人による「攻めの採用」をした場合、本人に任せる内定返答期限の猶予が、「本人らしさ」と「本人の意思を大事にする」企業になります。それはつまり個人から選ばれる企業になる、という意味になります。

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著者プロフィール

岡本 陽子

岡本 陽子

SOARist(ソアリスト)代表 キャリアコンサルタント。1999年、大学卒業後、総合広告代理店に入社。主に求人広告営業をメインに携わり、200社以上3000名のキャリアビジョン・ヒアリングをした経験を生かし、スタッフが健やかに働くためのキャリア支援を行う。「ココロもカラダも健やかに翔(か)けていけるキャリア支援」がモットー。2016年10月に独立し、ソアリスト設立。愛知県出身。