農業生産者になりたい!農業で起業したいあなたのための
- 一口に農業といっても業種は様々である
- 生産技術はどこで見につければよいのか
- 新規就農のための資金調達
田舎で農業ビジネスを始めたいという思いをもっている貴方。
農業ビジネスと言っても、生産者になるのか、また加工品を製造するのか、販売・マーケティングを行うのか領域が様々あります。
その中で今日は実際に生産者として農業ビジネスに関わったことのある私から、生産者の立場から農業ビジネスに携わるためにどのようなプロセスを経ることが必要か説明します。
1.一口に農業といっても業種は様々 |
2.生産技術はどこで見につければよいのか |
3.新規就農のための資金調達 |
4.販路はどうやって開拓する? |
5.どうやって住居環境を確保するか |
6.農業は田舎じゃないとできないのか? |
7.夫婦で起業をお勧めします |
8.最後に本当に農家は儲かるのか |
農業と一括りにした場合、皆さんどんな状況を想像するでしょうか?人によってイメージがバラバラだと思います。ある人はアメリカの巨大な小麦畑にトラクターを走らせている姿を想像するかもしれませんし、ある人は水田におばあちゃんが田植えをしている姿を想像するかもしれません。
農業に関しては、様々な分類方法があると思いますが、私が勝手に大まかに分類すると、まず「動物関係=酪農」、「植物関係=稲作・畑作」に分類できるかと思います。
一口に「酪農」といっても、牛を育てるのか、牛でも肉用を育てるのか、乳牛を育てるのか選択は様々ですし、鶏、豚、羊、馬など様々な動物が考えられます。
酪農」に関しては、儲けている方は本当に儲けている(忙しすぎて使うヒマがなくお金はどんどんたまる一方)のですが、生産設備(牛であれば牛舎やサイロなど)の確保や、生体の仕入など初期投資が莫大にかかり、新規参入の壁が高いので、よほど資金調達に自信がない限り起業にはハッキリいって向きません。
また、「稲作」「畑作」を行う場合には、土地の確保が必要になりますが、農地の確保にも当然初期投資が必要になるため、最初はどうしても狭い農地の中で、収量が多く、販売単価も高いような作物を栽培せざるを得ないと思います。
また、露地栽培(=屋外で栽培すること)にするのか、ビニールハウス栽培にするのかでも初期投資は異なってきます。ですので、どうしても投資対効果の高い作物から始めることが必要になります。
多少の地域差はあると思いますが、一般的にこうした条件に該当する作物として言われているのが「トマト」や「レタス」です。
「植物工場」という言葉があるのはご存知でしょうか。あたかも工場のように、一定の施設内で植物を育てる仕組みのことを言います。当然、完全に屋内施設だと太陽が当たらないこともあり、代わりにライトを当てたりして植物を栽培します。
植物工場で育てられている作物の代表格に「トマト」があげられるのはそのためです。
少ない面積で一定の収量が得られるからです。
ですので、こうした作物から取り組むのが新規就農者には多く見られます。ちなみに、筆者もこれらの作物を育てたことがあるのですが、非常に手間がかかります。
どんな作物でも雑草取りや肥料を与えること、農薬散布は基本だとして「トマト」だと1~2日置きに無駄な枝をとらなきゃいけません。「レタス」の場合だと害虫がつき、葉っぱが食べられないように気を遣うのが大変です。なお、ミニトマトの収穫はひたすら単調で本当に気が狂いそうになります。
こういうのが、
こうなる。
このツブツブをひたすら1個ずつ、枝からもいでいくのです。想像できますか?
そして、想像できたら農家さんのことを尊敬したくなりませんか?
とにかく、農業は何をつくるか計画を立てる(営農計画といいますが)のは、物凄く頭を使いますが、実作業はひたすら単調で忍耐を要します。これを土日休みなく夜明けから日没まで繰り返すわけです。
なので、この時点でひるんでいる貴方は少なくとも農業には向きません。
どんな職業にもスキルは必要です。
さきほど、「作業は単純」と言いましたが、確かに作業の一つ一つのパーツを分解すると「単純」であり「単調」です。しかし、何をどのタイミングでどのように行うかは一定のノウハウがないと当然できません。
肥料を植物に与える(「施肥」(せひ)といいます。)こと一つとっても、どんな肥料をどのタイミングで与えるべきか、高度な判断が必要です。肥料といっても、ホームセンターで買ってきたものをそのまま捲くのではなく、何種類かの肥料を配合して捲くのが一般的で、その比率や捲くタイミングも作物ごとに違ったりします。
そこで、一定の生産技術を起業前に身に着けることが必要になってきますが、大きく分けて2つのパターンが考えられます。
① どこかの大規模農家に住み込みで働く
② 農業大学校などの全寮制の研修機関で生産技術を習得する
どちらのパターンもメリット・デメリットがあります。
①のパターンだと、生産技術の習得のためのお金がかかりません。そして、メリットなのかデメリットなのか分かりませんが、農業生産の厳しさを一早く身につける(修行先によってはかなり「ブラック」なので覚悟してください)ことができます。
また、②の場合には一定の学費が掛かってしまうというデメリットがある一方で、生産技術だけではなく、農業運営に必要なノウハウを比較的バランスよく身に着けられるというメリットがあります。
また、学校によっては「同級生」があまり素行の良くない人達で集まることもあるということを聞いたことがあります。ちなみに、農業大学校によっては「奨学金」制度もあるので調べてみると良いかもしれません。こうした研修機関は全国にあるので、一度、「農業 研修所」でググってみてください。
冒頭にも申し上げましたが、新規就農のためには一定の初期投資が必要です。
規模にもよりますが、自前でトラクターなどの機材や農地を揃えようとすると数百万円~一千万円台に及ぶとも言われています。
(もちろん、これもできるだけ借りるようにする、どうしても購入しなければならないものは中古にするなどの工夫で削減することは可能です。)
そんな時、役に立つのがJA(農協)や日本政策金融公庫です。どちらも新規就農者向けの設備投資資金の低利融資制度が準備されていますので、一度調べてみると良いでしょう。
また、当面の生活費はどうするのかという問題も出てきますよね。農業生産ビジネスの特徴は「収穫時期にしか売上が立たない」という点にあります。どんな作物であっても、種をまいてから収穫までは最低3カ月はかかります。そのあと販売することまで考えると、一定の運転資金が必要なビジネスであると言えます。
また、そもそも実際にいくらで売れるのか分からないのも特徴です。豊作だからといって単純に喜んではいられません。販売単価が下落するからです。不作だと物理的に売れるものがないという話になってきます。
そうしたリスクの高い事業で得た収入で生活費を賄うことが必要になってくる訳ですが、生活費は毎月一定額が出て行く一方で、売上は毎月安定的に立つとは限りません。特に、冬に雪が積もる北国であればその傾向は顕著になります。
自己資金で収穫時期の間の生活費を賄えれば問題ないのですが、どうしても難しい場合もでてくるかと思います。そんな方のために、新規就農者向けに一定期間生活費を補助する制度が設けられています。(「農業次世代人材投資資金」で検索)また、自治体独自に補助制度を設けている場合もあります。
ちなみにどちらも年齢制限がありますので、気をつけてください。さらに、補助金全体に言えることなのですが、「やっぱり自分は農業に向かないわ」と言って、辞めてしまうと返還義務が生じることもお忘れなく。
こちらもあわせてお読みください。
農業は稼げる~農業起業の成功法則〜
ハッキリ言って土日関係なく朝から晩まで生産活動に従事して、販売・マーケティング活動を実施するのはほぼ不可能です。
そこで、登場するのがJAさんです。
JAさんは貴方が栽培した生産物を買い取って、他の生産者さんから買い上げた生産物と一緒に、貴方の代わりに販売してくれます。ただし、独自で販路開拓するよりもどうしても手数料などがかかってしまい単価が低くなってしまうというデメリットがあります。
また、スーパーなどの大企業と直接取引することも考えられますが、こうした大企業と取引するためには一定のロットで出荷できる体制がないとそもそも取引できませんし、どうしても交渉力が弱くなってしまうため、相当に買い叩かれます。従って、起業したての皆様にはハッキリいって向かない方法です。
個人的な意見としては、少なくとも最初はJAさんのお世話になるのが良いかと思います。JAさんは営農計画の策定や税務申告(農家だって立派な個人事業主です。)までお世話してくれます。
ただし、JAさんは生産技術の指導はあまり得意としていない領域なので、この部分は近所の先輩農家さんと仲良くして教えてもらえるような関係づくりが好ましいと思います。(あなたの畑で害虫が発生したら、となりの家の畑も、「とばっちり」を受けてしまいますよね。また、どうしても手が足りないときはお互い助けあうことが必要になってきます。なので農家さん同士のご近所付き合いは大事なのです。)
ですので、販売単価を高める工夫としては
① 加工品として付加価値を高めて販売する
② レストランなどと直接契約する
③ 直売所などで販売する
④ ECサイトを通じてネット販売する
などが考えられます。
とくに①や④の対応については、組織的かつ専門的な対応が必要になってきますので、いかにそうした組織を作りあげるのかが課題になります。こうした農家さんの独自の販路開拓を支援することを専門にしている専門家も存在していますので、こうした方々の力を借りることも時として有効かもしれません。
こちらも合わせてお読みください
これからの農業に活力を 農業関連の起業家インタビュー
脱サラして農業は失敗する?失敗してる人と成功してる人の違い