副業(複業)解禁にあたって徹底的に考える!検討する労災リスクと健康配慮
- 長時間労働のリスクはあるけれど対策が出来ます
- 健康配慮についても対応が可能
副業(複業)解禁となると長時間労働になる可能性があるということはよく言われていることです。では労災についてはどのようなリスクがあり、企業はどのような対応をしなくてはならないのでしょうか。
副業が解禁することによって、本人にも企業にとっても双方のリスクとして考えられるのが身体への影響です。つまり脳・心臓疾患あるいは精神疾患等の発症です。
例えば、このようなケースが考えられるのです。
メーカー勤務の40代Aさん
前年までは本業において時間外労働が月間40時間程度に及び、相応の残業代支給を受けていたAさん。 今年に入り、受注減の影響から残業がゼロになりました。Aさんはあてにしていた残業代の収入がなくなり、生活設計に大きな影響があると考え副業(複業)をはじめました。
このような場合です。一時的な副業先として想定される流通・小売・飲食業パート等は時給単価が正社員の時給換算の単価と比べて低いことが多いです。そのため以前と同じ収入を得ようと思うと沢山の時間を副業(複業)先で働かなくてはならないとなってしまいます。
本業で仮に6時間勤務であったとしても、副業先で7時間働けば13時間勤務しているという状況になります。これをずっと続けると長時間労働に陥りかねません。
さらに副業先の仕事は、アルバイト・パートとはいえ、慣れない仕事でもあり、 相応の肉体的・精神的疲労を招く可能性があります。そういうことが積み重なって突然脳血管疾患を発症することも考えられるのです。
そもそも労災ではどのような補償があるのでしょうか。労災保険は業務上や通勤途中で業務や通勤に起因してケガや死亡をした場合に補償を受けることができる制度です。
そして労災保険では、給付額についてはその本人の「稼得能力」によって給付の額が異なります。その人の稼ぐ力、報酬額の大きさによって違うということがポイントです。その具体的な算出方法は「給付基礎日額」によって異なります。
給与額に相当する額をイメージすると分かりやすいです。過去3か月にその人に支払われた給与額(ボーナスや臨時の給与は除きます)をその期間の暦日数で割った一日あたりの給与額を基礎として算出されるのです。
現在のところ昭和28年に旧労働省が示した通達が平成の今なお生き残っていて、ケガや死亡をした会社だけでの給与額で計算するとされています。
(参考)昭和28年の事例
市役所職員が本務の時間外に自宅近くの揚水場見廻人を副業として行っていたところ、副業先の作業中、 運転中のポンプに巻き込まれ死亡。これに対し、どのような方法で平均賃金を算出するか照会したところ、先の通達において、二重就労時の平均賃金算出は、 被災先の事業所における平均賃金をもってこれに当てると厚生労働省が回答した。
これが今なお通達として効力を発揮しています。ですが平成の現在、そして副業(複業)が広がっているという現状、脳心臓疾患などの複雑な事案が出てきている中でいまだ昭和28年のルールに則って考えられているというのが現状なのです。
この点平成16年には改めて検討がされています。その際には「労災保険制度の目的は、 労働者が被災したことにより喪失した稼得能力を填補することにあり、このような目的からは、労災保険給付額の算定は、被災労働者の稼得能力をできる限り給付に的確に反映させることが適当であると考えられることから、二重就職者についての給付基礎日額は、業務災害の場合と通勤災害の場合とを問わず、複数の事業場から支払われていた賃金を合算した額を基礎として定めることが適当である。」という議論がされました。ですが結果改正には至っていません。
つまり、本業で給与が20万、副業(複業)では30万という合計50万の給与額をもらっている能力がある人が、本業先でケガや死亡した場合に、補償されるのは20万を元にした補償でしかないというのです。本来はこの人は50万稼ぐ能力があるにもかかわらず20万分の補償しか受けることが出来ないという状況なのです。
また、ケガの場合はどこでケガをしたのかが明確なので分かりやすいですが、副業先において脳・心臓疾患あるいは精神疾患を発症させた場合はもっと複雑です。
副業先の金額で平均賃金を算出するのか、あるいは本業先での疲労蓄積が多いこと等を理由に本業先の平均賃金をもって算出するのか、いまだ明確な回答がない状況なのです。
企業としてはこのような労災保険の現状がありますので、自社の社員が他で業務をしていないのか、副業(複業)をしていないのかという点を把握することがポイントとなります。つまり、自社の社員が所定労働時間5時間という短時間勤務である場合、この社員について長時間労働リスクはないと判断するには早計だということです。もしかしたらこの社員は別の会社で副業(複業)をしていることも考えられ、その場合長時間労働で心身を疲れさせることもあるからです。
つまり企業が副業(複業)解禁にあたってやるべきことはこちらです。
①副業(複業)をみとめる際に、副業(複業)先の情報を報告させる
②労働時間、週の曜日は決められているか
③副業(複業)先の担当者の連絡先
④副業(複業)での業務内容
これらの報告を求め長時間労働にならないか、配慮する必要があります。副業(複業)をみとめる際の申告書に上記を記載させてもよいでしょう。
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また、副業(複業)については、副業(複業)をする社員が健康を害することがないよう注意する義務を本業側企業(使用者)で負うのかという点も重要です。
この点で言うと、健康配慮をしていなかったと言われるリスクがありますので、副業(複業)を認める際と、その後についても、定期的に副業(複業)をしている社員について健康状況について面談を通じてヒアリングをしたり、自己申告をさせたり、産業医に相談するなど配慮しておくとよいでしょう。
副業(複業)解禁の機運は高まっています。ですが法律としてもまだ追い付いているという状況とは言い切れません。とはいえ健康配慮や労災リスクなど論点はある程度固まっているのです。
つまり先手先手を打ってそれに対応する社内ルールと仕組みをつくれば副業(複業)解禁は全くこわくありません。イノベーションを加速する意味でも副業(複業)はどんどん解禁させていきましょう。
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