強い会社を作るための部下への仕事の任せ方
- 会社を成長させるためには部下に仕事を任せることが不可欠
- 仕事を任せる=権限を与えること
- 仕事を任せる時に重要なルールを作るポイント
マネジメントを行う上司が抱える問題の一つに、部下に仕事を任せることができず、上司にしかできない仕事が疎かになっているということがあります。
部下に仕事を任せられない状態が続いてしまうと、会社の経営はうまく行きませんし、上司自身もどんどん疲弊してしまいます。
会社を成長させるためにも、売り上げを伸ばすためにも部下に仕事を任せることはとても重要です。
ここでは、部下に仕事を任せ、強い会社をつくるために必要なことについてお話していきます。
マネジメントの発明者であるピーター・ドラッカーの言葉にもありますが「人を育てるための最も効率的な方法は任せること」です。
しかし、自分は部下に仕事を任せているつもりでも客観的に見ると任せきれていないケースがとても多く、子離れならぬ部下離れできていない上司が多いのが現状です。
なぜ上司は部下に任せることが簡単にできないのでしょうか。
「心配で任せられない」「自分でやった方が早い」「自分と同じことを部下ができるわけがない」「部下に任せたことでクレームがくるのが怖い」etc…
様々な意見はあるにしろ、突き詰めると上司が部下のことを信頼できていない、また部下にはその仕事ができないと思い込んでいることに大きな原因があります。
私が写真館で店長をしていた時の話なのですが、私も同じように部下に仕事を任せるということがなかなかできずにいました。
実際に自分でやってしまった方が何事も早いですし、出来上がる写真のクオリティーも高い。さらに自分の撮影スキルにも自信がありました。
特に私が部下に任せられなかったのがスタジオでのカメラ撮影でした。
子ども写真館での撮影はカメラの技術もある程度は必要ですが、それ以上にお子さんの最高の表情を引き出し短い時間で撮影する技術が求められます。
しっかりとカメラの研修を行い、実際に撮影を重ねることで徐々に上手くなっていくのですが、お子さん相手の仕事は常にイレギュラーで正解がありません。
もちろんマニュアルも用意していますが、マニュアル通りにいくことは100%無いような仕事です。
前の撮影のお子さんはぬいぐるみで笑ってくれたのに、次のお子さんはぬいぐるみを見ただけで泣き出してしまうという状態で、とにかく正解が無いのです。
それでも長く経験を重ねていくと、いくつかのお子さんのタイプとそれぞれの対策などが瞬時にわかるようになるのですが、これが言語化するのが難しく、私自身の感覚で撮影を行なっていました。
また、お子さんが笑った一瞬が勝負の仕事だったので、その瞬間を逃してしまうともう二度と良い表情が撮れないのです。
撮影中はにこやかな雰囲気を演出していましたが、毎回毎回かなりの緊張感で挑んでいました。
件数が少ない時の撮影は問題ないのですが、件数が多い七五三などの繁忙期は特にスタッフに任せることができず、朝の7時に出勤し、夜の20時まで食事も休憩も取らずに撮影をし続けるなんてこともありました。
休日もなかなか取れず連勤を続けた結果、その年の七五三はなんとか越すことができましたが、体は限界…精神的にも辛かった記憶があります。
また、私が実務をすることでクレーム対応など店長がすべき仕事にまでなかなか手が回らないという事態になってしまいました。
そこで上長との面談の時に言われたのが、『自分がいなくて回るお店を作れ』ということでした。
このままだと自分に負担だけがかかってスタッフも成長しない、さらに自分のすべき仕事も満足にできない…そして私は今後は一切スタジオに入らない決断をしました。
最初は本当に大変でした。撮影に時間がかかりお子さんが泣き叫び撮影が中断になることも多くありました。
何よりも気になったのはお客様の満足度が下がってしまうのではないかということでした。
今考えれば私の驕りでしかないのですが、私が担当しないとお客様が満足してくれないと思い込んでいたのです。
しかし、数ヶ月続けていくうちに自分がスタジオに入らないことにも慣れ、自分のすべき仕事にも集中できるようになりました。
そして、今まではできなかったスタッフの写真撮影へのフィードバックの時間をとることができ、結果としてスタッフの撮影技術もぐんぐん伸びていきました。
私が一番気にしていたお客様の声ですが、お客様からいただくメッセージは私が撮影をしていた頃と対して変わらず良い評価ばかりだったのです。
さらに、お客様から良い評価をもらったことでスタッフのモチベーションも上がり、より一層業務に励んでくれるようになり、まさに良いことづくしでした。
今まで自分にしかできないと思っていたことは私の勝手な思い込みであり、任せてみればみんなができるものなのだと痛感しました。
もちろんスタッフでは対応できない案件については私が対応をしていましたが、最終的には私がいなくても店が運営できるようになっていったのです。
この経験により、自分が思うほど自分の力の影響力は大きくないこと、そしてスタッフは任せることで何倍ものスピードで成長を遂げることを学びました。
思い切って任せるだけでいいのです。あとはひたすら口を出さないように我慢することです。それだけで部下と会社は一気に成長が加速するのです。
強い会社を作るためには経営と実務を分ける仕組みを作ることが重要です。そのためには部下の成長が不可欠です。
部下に仕事を任せる時にポイントとなるのが、ある程度の権限を部下に持たせることです。
部下が権限を持つことで、上司は全ての仕事に関わる必要がなくなり、自分の仕事に専念できるようになります。
結果として上司が実務から離れることができ、経営に集中することができるようになるのです。
女性をターゲットにした商品のプロジェクトなら女性に、外国人がターゲットなら外国人に、若者がターゲットなら若者にといったように、性別・年齢・国籍などをターゲットによって仕事を任せる部下を変えることで、よりターゲットのニーズにあった運営ができるようになります。
さらに様々な考えを持った多様な人たちに仕事を任せることで、時代の変化にも柔軟に対応できるようになります。
同じような考えを持つ人たちだけが権限を持ち会社の方針を決めていては、凝り固まった考えになり、時代の変化に対応していくことはできません。
多様な人材に仕事を任せることで、様々な考えやアイディアが生まれ、結果として会社は強くなっていくのです。
上司一人に権限がある状態では、部下は自分の意見をなかなか口に出すことができません。
しかし、部下に仕事を任せ権限を与えることで、部下が自分の仕事を自発的に行うことができるようになります。
上司だけでは思いつかなかった斬新なアイディアや意見などが生まれ、会社としても様々な視点を持てるようになります。
さらに、仕事を任されたことで部下の仕事へ対するモチベーションも上がり、爆発的に成長できるようになります。
仕事を部下に任せる時に重要なことは決して『丸投げ』にしないことです。
丸投げというのは、部下に曖昧な指示で仕事を振ることです。「とりあえず任せるからやっといて!」「あと、よろしく」「汲み取って考えて」というような不明確な指示を出すことは任せるとは言いません。
任せるというのは、部下への指示や権限の範囲が明確にした上で仕事を振ることです。「こういう権限を与えるのでこういう結果を出してほしい」など、何を求めているのか、そのためにどんな権限が与えるのかを明確にした状態です。
『誰が』『なにを』『どこまで』決定できるのか、それによって『負うべき責任』は『どこまで』なのかを明確にし、部下が自分の判断で決めてもいいことのルールを示すことが部下に仕事を任せる際に最初にやるべきことです。
また、部下に一度権限を与えたら、あとから取り戻すことはしてはいけません。そして、上司は部下の不在時以外はその権限を代行することをしてもいけません。
仕事を任せる側は『任せる』ということがどういうことなのかをしっかりと理解した上で部下に仕事を任せることが重要です。
部下に仕事を任せる際に、権限を与えることは重要ですが、その上で上司は部下に明確な指示を出すことが求められます。
部下に権限を与えても上司からの指示が不明確だと部下は成果をあげることができません。
的確な指示が出せている状態とは、上司と部下の認識に齟齬がない状態のことを指します。
上司はしっかりと伝えたつもりでも部下が勘違いをしていたり疑問を持っていることもあります。上司の一方的な指示に終わるのではなく、部下からの質問を受けるなどしてしっかりと指示内容のすり合わせを行う必要があります。
上司は部下が動きやすいように具体的かつ正確な指示を出すことが重要です。
さらに部下がその指示内容を本当に理解しているかを見極めることも大切です。
部下が権限をもって仕事を進める上で重要なのが、はじめに明確なルールを作っておくことです。
「この場合にはこのように対応をする」などのルールを明確にしておくことで、仕事を任さられた部下は迷わず業務を行うことができます。
ルールは認識の違いが生まれないように、抽象的な言葉ではなく、具体的にどのような場合にどのような対応をすれば良いのかを記すことが重要です。
徹底したルールの認識ができていれば、部下が上司に確認せずとも自分で判断ができるようになり、結果として上司は自分の業務に集中できるようになります。
部下に仕事を任せる際は、下記の4つの項目を伝える必要があります。
いつまでにその仕事を完了しなければいけないのか、仕事の期限を伝えることは指示を出す上でとても重要です。
期限を伝えることで部下は、その仕事を急いでやらなければいけないのか、時間をかけても良いのかを把握することができます。
部下が他の仕事を抱えていることを配慮して「いつでもいい」「今の仕事が終わったらで大丈夫」などといった曖昧な指示を出してしまうとかえって部下が混乱してしまうので注意が必要です。
他の仕事が詰まっているのであれば、期限をいつに設定すれば仕事を完了することができるのかを部下に確認するなどして、必ず明確な期限を設けるようにしましょう。
部下がいくつかの仕事を抱えている場合は仕事の優先順位を伝えることも重要です。
仕事の期限を決めることが重要と前述しましたが、部下が抱えている仕事の量によっては
設定した期限を守れなくなる可能性も出てきます。
そこで上司は、部下が抱えている仕事の中でどれを優先的に行うかを示す必要があります。
優先順位は時間の順序だけではなく、仕事のなかで何を重視するのかということ含まれます。
例えば何か商品の企画を作る時に、デザイン性を最優先に考えるのか、使いやすさを優先するのかなど、その仕事に求められるているものは何かを伝えるようにします。
その仕事の中で最優先のことがわかると、部下が迷わずに仕事を進めることができるようになります。
なぜその仕事が必要なのか、その仕事の先には何があるのかなど、仕事の背景と目的を部下に伝えることは、部下自身が自発的に仕事を行うことができるようになるためにも重要な要素となります。
部下に仕事を任せる時には、その仕事の全体像を把握させることが大切です。
これを部下が理解しないままで進めてしまうと、仕事を進める中で大切なことを見落としてしまうことがあります。
目的と背景を部下がしっかりと理解していれば、部下自身が自分で考えて仕事に挑むことができるようになります。
任された仕事に対して、100%完成した状態で提出するのがゴールなのか、70%の状態で出すことがゴールなのか、その仕事のゴールはどこなのかを伝えましょう。
このゴールがわかっていなければ、部下は余計な時間を使ってしまい、時間が無駄になってしまうことがあります。
有限な時間を有効に使うためには、このゴールのすり合わせが必要なのです。
会社を強くするためには、部下に仕事を任せることが不可欠です。
まずは小さなことからでもいいいので部下に任せることをしていきましょう。
部下は任されたからこそ、仕事ができるようになっていくのです。
最初は仕事を任せる上司も、仕事を任される部下もうまくいかないことも多いかと思いますが、部下に任せることを続けていくことで強い会社を作ることに繋がるのです。