行政書士はもっと起業家精神を持とう!行政書士事務所を成長させるために必要なこと

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「めざましテレビ」や「とくダネ!」に専門家として出演。環境系行政書士の業務に留まらず、会社設立の支援やそれに伴うコンサルにも定評があり、行政書士の学校の校長も務める行政書士法人GOALの石下貴大さんにインタビューさせていただきました。

「行政書士の学校」の立ち上げ

いま会社は何年目ですか?

助っ人編集部

石下貴大

個人事務所にして11年。法人で5年目。3年目から人の雇用を始め、行政書士事務所は分社化してます。

wBvBFrt0(1)石下貴大 平成26年10月、行政書士法人GOALを設立。環境系行政書士としての業務に留まらず、会社設立や一般社団設立支援、それに伴うコンサルティングにも定評がある。行政書士向け実務講習の場である「行政書士の学校」の校長を務めるほか、補助金助成金の検索&マッチングサイト「みんなの助成金」の運営や電子契約書事業に取り組むなど幅広く活動している。ブログがきっかけで多数の著書を出版し、メディア出演多数。インターネット・マーケティングにおけるセミナーも人気が高い。

個人事務所を立ち上げられたタイミングは?

助っ人編集部

石下貴大

行政書士試験に受かって独立しました。

資格を取ってすぐに独立したのですか?

助っ人編集部

石下貴大

行政書士は雇用がないので独立するしかない。いまの行政書士の9割5分は修行期間がないと思う。
行政書士連合会から統計が出ていて、全体の90%くらいが3人以下の事務所です。

いきなり1人で仕事をしていけるのでしょうか?

助っ人編集部

石下貴大

最初は苦しかったです。行政書士試験には補助金の申請書の書き方は出題されない。バッチをつけて「さあ、独立していいよ」と言われても何もできない。 会社運営の方法もわからない。そんな中で仕事を取るには安さで勝負するしかない。無理も言われるし、納期も厳しい。

こうした環境はお客様にとっても行政書士にとっても良くない。それで行政書士の学校、実務を教えられる場を作りました。 最初は仲間同士での勉強会だったけれど、いまでは年間800人くらいが通学している。WEBでのリモート通学を含めればのべ2000人はいます。

石下さんの「環境系」のように、はじめは得意領域を絞ったほうがいい?

助っ人編集部

石下貴大

そう思います。許認可だけで1万種類以上と言われているし、それ以外にもビザや資金調達、市民法務系などがある。すべてに詳しくなるのは不可能だし、セグメント切ったほうが成長が早いし効率的です。でも勘違いをしてはいけない。専門特化とはいえ、あくまで営業を得意領域に絞るだけです。

それ以外の仕事をまったく受けないわけじゃない。守備範囲外であってもご依頼が来たならば最初は受けるべきです。そこは勉強するしかない。せっかくお声がけいただいたお仕事なんですから。それに地方の場合には市場の絶対数からある程度は広くできたほうがいいとは思います。

ただその場合でも、自分が特に得意な領域は持っていたほうが良い。紹介も受けやすくなるし、特化しているノウハウがあれば価格競争にも巻き込まれにくいからです。

タイプの違うパートナーと組む

お仕事におけるターニングポイントはありましたか?

助っ人編集部

石下貴大

5年目くらいに。自分の仕事を人に任せられるようになったあたりから状況が好転してます。現場ばかりでなく、一歩引いて見られるプレイングマネージャーのようなカタチを取れるようになった。おかげで空けられた時間でより良い仕組みを考えられるようになりました。

人に任せる、会社に人を入れる。これによって変化はありましたか?

助っ人編集部

石下貴大

自分とタイプのあわない人を引き入れられたのは大きかった。僕は雑な猪突猛進タイプ。無駄を指摘してくれる、ある意味で口うるさいブレーンが入ることで確実にひとつの壁を越えられた。

彼は同期で弊社の副代表です。どうしても彼と仕事がしたくて熱烈にアプローチをした。彼も僕とはあわないと肌で感じていたはずです。それでも入ってもらえたのは大きかった。

違うタイプの相手とコミュニケーションを上手く取れている理由は?

助っ人編集部

石下貴大

目的を共有できているからだと思います。タイプが違うとゴールへのアプローチが異なる。でも大事にしているものが一緒だと上手くやれます。

たとえばどのようなこと?

助っ人編集部

石下貴大

僕は家族を大切にしていて、家族に豊かな生活をさせるために自分が馬車馬みたいに働いても良いと思っていた。子どもがいなかった当時は特にそう考えていました。
パートナーは逆だった。家族を大切にするからこそ、必ず定時までに作業を終える。徹底的に自己管理し、効率化して早く帰る。 しかしアプローチは違えど、目的は家族や大切な人のため。
その上で面白いことをやっていきたい、自分たちを成長させたい。ここが共有できていました。

組織的な対応ができる強み

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現在の集客のメインはなんですか?

助っ人編集部

石下貴大

業務ごとにセグメントを切り、それぞれの担当者を決め、個々に最適な営業を行ってます。共通するのはWEBの活用。

営業での狙いのようなものはありますか?

助っ人編集部

石下貴大

弊社の強みは組織的な対応ができること。逆にいえば僕らの業界は個人事務所が多く、規模の大きな会社の依頼を受けられる事務所がほとんどありません。

例えば、映像系関連企業で年間100人近い外国人を受け入れている会社があります。規模が小さい事務所でこの人数の手続きを扱うのは不可能。そのあたりの仕事を狙っている、というのはあります。

営業のアプローチを仕事のサイズで変えている?

助っ人編集部

石下貴大

同じ入管ビザでも1人分が欲しい相手と、何十、何百人分を欲しい相手とでは刺さるメッセージが違います。求めているものも異なる。 規模が小さい場合、安い、早い、が求められる。

規模が大きくなると安さよりも過去の実績や高いレベルで法務担当者とやりとりができるノウハウや事例があるか否かが求められてくる。アプローチの仕方は当然違ってきます。

行政書士以外のお仕事もされていますか?

助っ人編集部

石下貴大

行政書士の本来業務や行政書士の学校の他に建設業や産廃業に特化した電子契約書を開発してます。行政書士の業務で得た知識とテクノロジーを融合させることで、新しい価値を提供できればと思っています。また、補助金や助成金を簡単に検索できてマッチングできるサービスも運営しております。

本もたくさん出版されていますよね。

助っ人編集部

石下貴大

いま8冊目を書いています。

本を出す際に考えていることはありますか?

助っ人編集部

石下貴大

行政書士向けの本を書こうと思えば当然もっと書ける。でも行政書士向けの本ばかり出版しすぎると本業で稼げていないからとか思われそうなので、それはしません(笑)

一緒に考えて産み出していく

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同業他社と考え方が違う点は?

助っ人編集部

石下貴大

起業家精神を大事にしている点。意識して新しいサービスを作っている。既存のビジネスモデルの中だけで考えるから苦しくなる。結果として大きな仕事もできず、日々忙しくて、それに満足して先の手が打てなくなります。

別のサービスで、別の売上げを作る。依頼されたこと以外のことまで提案する。そういうことが大事。実際、弊社はそうした提案がきっかけとなって顧問契約も取れてきています。 新しいことをやる場合、必ず何かしらの許可を取らないといけない。

税理士さんに聞いても分からない、弁護士さんに聞いても分からない。そこをなんとかするのが僕ら。ゼロイチをお客さんと一緒に考え、産み出していく。 これが面白いし、これがこれからの行政書士のひとつのカタチなんだと思います。

弁護士さんでも、最近の優秀な方は監査役でなく取締役になってます。経営に入っている。これを僕らもやっていかないといけません。

助っ人編集部

他の行政書士事務所はなぜそういうことができない?

助っ人編集部

石下貴大

少人数でやっているから目の前の業務で精一杯になっているところが多い気がします。通常業務(書類作成)を忙しく土日もやっていたら、AIなどテクノロジーへの対応はどうするのか。

そういう危機感を持つ必要があります。 いまが忙しくても急にパタッと仕事がなくなる可能性だってある。弊社でもRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を作って書類作成の一部を自動化しています。 人間がやるより早いし正確。シナリオを一度作ってしまえば一通りのことができます。

行政書士の仕事はAIよりも先にRPAで大部分が代替できる。これによって仕事がなくなるかもしれないけれど、人になくされるよりは自分たちでなくしたいです(笑)

経営課題はありますか?

助っ人編集部

石下貴大

がむしゃら感からまだまだ抜け切れていないこと。目の前のことが忙しくてイマイチ検証までできていない。きちんと役割を与え、ルーチン化させたい。いまは仕組みを変えている最中で、まだ決めきれていませんが。

労働集約から抜け出すのは難しい?

助っ人編集部

石下貴大

各々が真剣に考える必要があります。弊社では、去年、初めてトップダウンでなく、みんなで目標を設定しました。驚いたのは「昨対比2倍」に決定したこと。みんなが普段どれだけ数字を見ていないかがわかります。 労働時間を変えずに2倍は、そう簡単ではない。

けれど決めたからには成し遂げなければいけない。単純には不可能だからどうすれば達成できるか、検討に時間を費やすようになりました。改善するためには、まずこれが大切です。

業界全体を盛り上げていく

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今後のビジョンをお聞かせください。

助っ人編集部

石下貴大

業界全体を盛り上げたい。適正な市場競争がない業界は死にます。行政書士はまだまだ情報発信が上手くできていない。

だから行政書士になりたいと思ってくれる方が少ないし、行政書士になってから何をしていくべきかを知る場所もないから強い市場が育ちにくい。そこを改善したい。頑張って市場を作っていきたいです。

経営者になりたての自分にアドバイスするとしたら?

助っ人編集部

石下貴大

本物の経営者とは何かをきちんと考えること。経営する、永続、継続させるには色々なスキルが必要、簡単ではない。世の中には優れた先人がたくさんいるんだから情報を積極的にキャッチし、まずは徹底的に真似ろ。擦り切れるくらいチャレンジしろ、と言います。

商売で大事にしていることを3つあげるとしたら?

助っ人編集部

石下貴大

徹底的したお客様目線、提案力、失敗したら己のせいで上手くいったら誰かのおかげという心構え、この3つです。 お客様目線、これは当たり前。お客様が必要なことが商売になります。 提案は、過去事例から適切なものを検索するだけならプログラムでも可能。

でもお客様自身が気づけていない課題を顕在化し、対策を打ち出すことは人間にしかできない高度な仕事。だからこそ意味があります。 心構えは、つまるところ感謝の姿勢。実際の話、自分が生きていられるのはお客様やスタッフのおかげだと心から思えるようになってから売上げがあがっています。目に見えないけれど、これは大切だと思います。

本日はお忙しいところ、ありがとうございました!

助っ人編集部

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