目次 [非表示]
創業明治25年の老舗、大阪の鰹節屋をいずれ継ぐであろう後継者の鈴木彰さん。商社にて営業・プロジェクトマネージャーとして働いた後、日本のブランド「老舗」の減少を食い止めるべく起業されました。
これからどんなことをやっていきたいのか、起業したての今だからこそ語れる思いや、現在の課題などについて伺いました。数年後、ここからどのように変化されていくのかが楽しみなフレッシュなインタビューです。
老舗企業をアップデートさせる
どんなことをやっているのでしょうか?
助っ人編集部
鈴木彰
去年の10月末に立ち上げたばかりなので堂々と言えるものはまだないです。コンセプトは老舗企業を今後100年さらに続けていけるように生まれ変わらせること。
活動していくうえで業種を限定していますか
助っ人編集部
鈴木彰
いまのところ限定していません。食品、お酒、伝統工芸など。どんな老舗企業でも。たとえば僕は昨日髪の毛を切ったのですが、その美容室も創業明治27年の老舗です。
老舗には100年近い歴史があり、これまでは安泰でした。しかし最近は伸び悩んでいると聞きます。実態はどうですか
助っ人編集部
鈴木彰
厳しい状況にあるのは確かです。いまではSNSなどにより国境もなくなってきていますので。
時代の移り変わりについていけなくなっているのでしょうか?
助っ人編集部
鈴木彰
大きな要因はいまは仕事を選ぶ自由がある、ということ。もちろん良いことです。親の仕事を継ぐだけでなく、どんな仕事をしていくのかを自分の意思で様々な選択肢から選べるのですから。しかしそれにより老舗企業が停滞していることも事実です。
後継者不足の問題ですか?
助っ人編集部
鈴木彰
そうです。場合によっては商品力そのものが弱まっていることもありますがポイントは後継者不足です。後継者がいないとどうしても現在の代が続けるしかなくなる。となると時代の流れについていくのは難しくなる。それによる商品力の低下もあります。
老舗企業専門メディアを展開する
イ:具体的にはどのような支援を考えていますか?
助っ人編集部
鈴木彰
メディア活用です。老舗企業専門のメディアを立ち上げます。経営方法のみならず先人たちのノウハウやいろいろな事例、他には法務や税務、相続税などについても記事にしていきたいです。
伸びやなんでいる老舗の経営者をターゲットにしたメディア、ということ?
助っ人編集部
鈴木彰
はい。これまでにはない、と思います。
確かに。起業や開業向けのメディアは多数ありますが、すでに100年の実績がある企業を対象として今後の100年を考える、というコンセプトは聞いたことがありません。
助っ人編集部
鈴木彰
老舗は下手を打てない。積み上げてきたものがあるので、それを自分の代で台無しにしたくない。だから冒険しにくい。そうした老舗のチャレンジに寄り添うメディアを創っていきたいです。
いままさに開拓している最中ですか?
助っ人編集部
鈴木彰
はい。最終的に集客へつなげたいです。ともかくいまは名前を売ること、これに尽きますが。老舗業界なら鈴木、と。そうならなければいけない。影響力を発揮するために
なぜ老舗企業にスポットライトを当てたのですか?
助っ人編集部
鈴木彰
実は僕自身が大阪の鰹節屋の長男なんです。創業明治25年の老舗です。後継者といえば後継者になります、僕は。
「独立するぞ!」でなく、これから自らが家業を背負うための環境作りとしての起業とは珍しいです。
助っ人編集部
鈴木彰
老舗では0から1を作る機会はなかなかないんです。今のうちにそれを経験しておきたくて。勉強も兼ねて、ということです。
老舗の後継者問題
もともと家業を継ぐつもりでしたか?
助っ人編集部
鈴木彰
はい。電子部品の商社もその前提で働きました。最初は食品関係を考えましたが、自分がこれから携わる業界以外を見てみたかったので、まったくの異業種に飛び込んでみました。そこでの経験も今後活かしていきたい。
日本に老舗は多いですか?
助っ人編集部
鈴木彰
世界的にみても日本は群を抜いて多いです。老舗の定義をどこに置くかにも寄りますが、100年以上続く会社が3万社以上あります。ある意味で日本のブランドの一つとも言える
現在は減少傾向にあるのでしょうか?
助っ人編集部
鈴木彰
残念ながら廃業率がすごく高い。2017年度のデータによると17年度に廃業した企業の80%以上の経営者の年齢が60代以上だった。まさに後継者不足の影響です。
年齢による限界で引退に至っている、と?
助っ人編集部
鈴木彰
後継者がいないだけで日本のブランドが失われてしまうのはもったいないです。自らの家業云々よりも、まずはそちらの問題を考えないといけない。 結果的に自分の家も老舗というブランドに乗っていますし。皆で守っていきたい。その土壌を創りたいです。
まだ始めたばかりだとは思うが、難しいと思っている部分は?
助っ人編集部
鈴木彰
収益化がすごく難しい。昨年の10月に前職を辞めているので喫緊の問題です。ビジネスとしてやっていかないといけないので。
■まずはメディア事業に取り組む
戦略はありますか?
助っ人編集部
鈴木彰
コンサルよりもまずはメディア事業に注力していく。そしてコミュニティを創りたい。現状もアナログな団体や協会はありますが、僕はまずは次代の後継者、家業を継承したばかりの若手向けに若者同士でワイワイできる場を提供したいと考えています。そうした場所は少ないので。いまどきの若者ならオンラインサロンとして創っても良いですし。
老舗が失われていくことの社会課題をどう捉えていますか?
助っ人編集部
鈴木彰
課題は「失われる」こと。100年も続いてきたものが無くなってしまう。ノウハウや技術も含めて。人類にとっての価値という意味で、もったいないと思います。
そのためにもまずは後継者不足の問題への対策が必要ですね
助っ人編集部
鈴木彰
現在I/U/Jターン希望の若者が多いと聞きます。私は最近地方によく行かせてもらっていますが、現に地方が盛り上がってきているという話を同世代の人に広めるとかなりの関心を示します。
ただ地方での働き口が見つからないという声も多く、そういった若者と地方の老舗企業をマッチングさせることも視野に入れています。
これから起業していく人や、後継ぎになるという人にアドバイスするとしたら?
助っ人編集部
鈴木彰
自分自身へ向けての言葉になりますが、まずやってみること。考えていてもわからない。やってみて上手くいかないかもしれませんが、先に基準点を作らないと考えようもない。だから、やってみること。そう声をかけます。