地方法人税をカンタン解説！　法人税との違いは？事業税・住民税との関係は？

「地方法人税」という税金をご存知でしょうか。あまり耳なじみのない税金ですが、平成26(2014)年の税制改正により新設された、法人税を納める義務のある法人に課される税金です。

法人にとっては納めるべき新しい税金ですが、地方法人税とはどのような税金なのか。また、法人にとって地方法人税の創設は増税となるのか。地方法人税の概要と、申告・納付方法をわかりやすくご紹介します。

1　地方法人税の概要

地方法人税について新たに創設された理由と、実際に申告・納付する際の流れを説明します。

1-1　地方法人税が創設された理由

地方法人税は、その名前から国ではなく地方の自治体に納める税金かと思われがちですが、実際は国に納める税金です。では、なぜ地方という名前がついているのかというと、地方法人税は国が各地方自治体に交付する地方交付税の財源となるからです。

現行の法人税法上は、法人税の一部を事業所がある地方自治体に納めていますが、自治体によって法人の数には偏りがあります。そのため、法人の数によって自治体ごとの歳入が大きく変わってしまっていました。

そこで、自治体ごとの税収のバラつきを減らすために、地方法人税として国に一旦税金を納め、国があらためて地方交付税として適性に配分することになりました。

1-2　地方法人税の申告・納付

新たな税金が増えたことで、経理担当者の業務や事務手続きが増えるのではないかと思われるかもしれません。しかし、地方法人税の申告・納付に関しては、法人税の手続きに無理なく組み込めるようになっています。

まず、地方法人税の税額は、

・(納めるべき地方法人税の額)＝(課税標準法人税額)×4.4％

となっています。

課税標準法人税額とは法人税計算の結果ですので、今までどおり法人税額を算定し、その結果に4.4％を掛けるだけで納めるべき地方法人税の額は簡単に算定できます。そして、地方法人税の申告・納付ですが、法人税とセットで行うことができます。申告期限は法人税と同一ですし、法人税と地方法人税は同一の書類で申告できるようになっています。

そのため、地方法人税は新しい税金ではありますが、申告や納付については今までの法人税に関する手続きの中で対処できるものとなっています。

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2　地方法人税と法人税等の関係

法人の所得に対して課税される税金を総称して法人税、または法人税等とよびますが、そのなかには「国に納める税金」と「地方自治体に納める税金」があります。地方法人税は、各自治体に分配するために一旦国に納められる税金ですが、各自治体に直接納付される法人税との違いについて説明します。

2-1　法人税等の中身

法人税または法人税等といわれる税金は、「法人税」「法人事業税」「法人住民税」の３つに分類されます。それぞれの簡単な概要は以下のとおりです。

2-2　法人地方税と法人事業税・法人住民税の関係

地方法人税は、最終的には各地方自治体に交付されるものの、納付先は地方自治体ではなく国になります。一方、法人事業税と法人住民税は、事業所がある地方自治体に直接納付される税金です。

先ほど解説したとおり、地方法人税は自治体ごとにバラつきのある法人税を再分配するために創設されました。では、法人地方税によって自治体ごとの税収に偏りがなくなりますが、新たな税金を創設したことで、そのしわ寄せが法人への追加負担になってしまうのでしょうか。

結論としては、法人の負担は以前と変わりません。課税標準法人税額の4.4％が地方法人税として新たに徴収されますが、その代わりに法人住民税の「法人税割」の税率が4.4％引き下げられました。法人税割は課税標準法人税額をもとに算定されるので、地方法人税の納付税額と同額が法人住民税から減ることとなります。よって、納める相手が変わるものの法人が納めるべき税金は以前と同じ金額です。