4倍で成長する組織の作り方〜第1回 googleやメルカリでは常識?成長企業で導入されている「OKR」〜

ポイント
  1. OKRとは?
  2. 設定と運用
  3. MBOとの違い

目次 [非表示]

日本の企業がアメリカのベンチャー企業のようなスピード感を得る方法とは〜Googleやメルカリも導入する「OKR」とは?

OKRと呼ばれる目標管理手法をご存知でしょうか?

Googleが創業当初から使用していることで有名となったOKRですが、Facebook、Oracle、Twitter、そして、日本でもメルカリ、サンサンなど、多くの成長企業で採用されています。OKRを知ることで、成長企業のマネジメントの共通項を理解することができます。

メッセージ+指標で、心に届く目標に―OKRの意味

OKRは「Objectives and Key Results」の略称であり、「目標と重要な結果」、「目的と重要な結果指標」などと訳されます(以下、後者の訳を使用します)。「Objectives(目的)」の達成を測る重要な指標が「Key Results(重要な結果指標)」となり、目的がどの程度達成されているかを高頻度で管理し、設定することで成長を加速することが特徴のひとつです。

まず「Objectives(目的)」について解説していきましょう。

当該期間(通常は四半期)に「何を達成したいのか?」「どこに向かおうとしているのか?」の目的を表します。多くの目的を目指すのではなく、優先度を見極め重要なものに絞り込むことが必要です。そして、下記の特徴を持ったものでなければいけません。

・挑戦的、野心的な目的である
・やってみたい!と思えるような魅力的な目的である
・全社から社員個人まで一貫性がある

続いて「Key Results(重要な結果指標)」について解説しましょう。

目的を「どのように達成するのか?」「目的との距離をどう把握するか?」を表すものであり、目的の達成度合いを測るマイルストーンとなる指標です。
そして、下記の特徴を持つ必要があります。

・具体的、明確で解釈のズレが生じない
・計測可能なもの
・簡単ではないが、達成可能なもの
・目的の達成指標となる

通常の目標は、KR(重要な結果指標)に近い意味合いですが、なぜO(目的)が必要なのでしょうか?たとえば、製品Aとセットで買われることが多い製品Bについての目標を考えてみましょう。「製品Aに対する製品Bのセット購入率を現状40%から50%に引き上げる」と数値目標が与えられた場合、担当者はセット購入率を上げる方法に集中して行動します。

一方、O(目的)が「製品Bをもっと多くの人に使ってもらおう」とした場合、どうなるでしょうか?もちろん、セット購入を促進するという方法を取るかもしれませんが、製品Bだけでも売れる方法や集客できる方法についても検討することになり、より視野が広がるでしょう。上司が思いついてないアイデアも出てくるかもしれません。このように、定性的でメッセージ性のある「Objectives(目的)」と、それに対応した3個程度の定量化された指標「Key Results(重要な結果指標)」から構成されることで、OKRは組織の成長を促進する目標管理となっています。

1期3か月 マメなフィードバックで爆速達成―設定と運用

これまで見てきたようにOKRは非常にシンプルな構成ですが、その設定と運用でより強力なしくみとなります。

まず設定において必要なことから解説しましょう。設定において非常に重要なのは、全社、部門、個人、それぞれのOKRにつながりが必要なことです。つながりがあることで、社員の意欲と努力が組織の目的にばらつくことなく向かうことができます。また、このときに重要なものにしぼり込むことも必要です。本当に重要なことに集中して力を発揮することができます。

さらに設定のサイクルを四半期にすることが推奨されています。多くの目標管理が一年の初めに立てた目標に基づき進捗管理しますが、OKRでは3か月に一度設定します。設定サイクルを速くすることで、組織スピードが上がります。失敗にも早く気づくことができるため、チャレンジしやすくなります。

次に運用について、大切なことはふたつ。「高頻度のフィードバック」「全員への常時公開」です。まず、「高頻度のフィードバック」をすることで、つねに組織の目的に向かっているかどうかを確認すること、部下をフォローすることができます。同時に現場の情報を早く吸い上げることができるため、変化に強い組織になります。その結果、高頻度のフィードバックを行われている組織では経営者の考えていることの理解が深まります。

もう一つの「全員への常時公開」については、社員と会社のつながりをつねに把握できます。つまり、自分の仕事が会社に役立っているのか、会社はどのような状況なのか、を理解することができます。また他人、他部署の状況もオープンになっているため、自然と協力が起きたり、健全な競争が起こることで、個人も会社も成長スピードが上がります。

作った目標、机で眠らせてませんか?―MBOとの違い

目標管理として代表なものにMBO(Management by Objectives)があります。MBOとOKRはどこが違うのでしょうか。日本企業の現場で多く使われているMBOと比較してOKRを説明していきます。一番大きな違いは、MBOは人事評価、査定のために使われますが、OKRは人事評価と直接結び付けないことが必要という点です。人事評価と結びつけることで、挑戦的な高い目標ではなく、安全な目標を立ててしまうのを避けるのがOKRの特徴です。

それでは何がOKRの目的なのでしょうか。それは、組織目標の目的、目標の達成であり、そのためのコミュニケーションです。OKRの目的はコミュニケーションであるため、MBOが上司部下の間でのみ共有されるのに対し、OKRは原則、全社全員に常に公開されます。

また、MBOでは年1回の目標設定、半年に1回のフィードバックが行われているため目標設定シートがほとんどの期間中、机のなかで眠っています。つまり、せっかく立てた目標が管理されず忘れ去られてしまっているという課題があります。

一方、OKRでは年4回設定し、毎週フィードバックをすることが要求されます。そのためつねに目的、目標を意識しながら進捗管理することが可能です。年初に立てた目標を1年間同じままにするのではなく、少なくとも3か月に一度設定しなおすことで、環境の変化に対応することも可能にします。

OKRは成長企業の共通項

これまで見てきたように、OKRは、単なる目標管理ではなく企業の成長を支える要素が盛り込まれた目標管理であり、コミュニケーションツールです。OKRの導入効果は、企業組織の最重要の目的、目標に向かう全員の意欲と努力を集中し、高速で達成を目指せることにあります。Googleをはじめとした多くの成長企業が、高いモチベーションを保ちながら重要な目的に集中し、最速に成長している結果を生み出したひとつの共通項がOKRと言えるでしょう。

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著者プロフィール

奥田和広

奥田和広

株式会社タバネル 代表取締役 1975年生まれ。1998年一橋大学商学部卒業。 幼少期より父がアパレル卸業を経営していたため、大学卒業後は勉強のために上場アパレル企業の株式会社ワールド、銀行系コンサルティングの株式UFJ総合研究所を経験。父の会社に戻り、1からアクセサリー事業を開始。8年で40店舗170人を超える規模にまで成長させるが、既存アパレル卸業の苦戦、アクセサリー事業の無理な成長で低迷し、東日本大震災後に倒産。その後、株式会社ピアスにて百貨店化粧品ブランドのマーケティング責任者、美容サービスの新規事業責任者を経て、組織マネジメントのコンサルティング企業株式会社識学にて、コンサルティングおよび育成、メニュー開発を担当。Googleなどで使用されている目標管理手法OKRを用いた組織強化のコンサルティングとソフトウエア販売を行うため、タバネルを創業。