外国人を雇用する場合にはビザの問題をしっかりと理解しよう

ポイント
  1. ビザは滞在目的が変わる為に変更手続きが必要だ。
  2. 外国人を雇用する場合、その職種に応じてビザのし種類が変化する。
  3. ビザなしでの雇用は故意でなくても、罰が課せられるので注意が必要だ。

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ビザという名前は海外に行く場合に必要になることもあるので知っている方は多いと思います。

しかし、ビザがどのようなもので、またビザが無い場合などにどのような影響が出てくるかに関してはあまり知られていないのではないでしょうか。

今回は外国人を労働者として雇用する際には要注意のビザに関して解説していきたいと思います。

そもそもビザとはどのようなものか?

ビザのチェックは忘れてはいけない

外国人を会社に雇い入れる場合、必ずビザについて問題が発生しないようチェックする必要があります。日本国内から出た経験のない方や、短期の海外旅行しかしたことのない方、そしてもちろん外国人を雇用したことのない経営者の方にとってもあまりなじみのないものかもしれません。

ビザはパスポートではない

それではビザとはそもそもどのようなものなのでしょうか。これは日本語で言えば「査証」を意味し、入国しようとする人のパスポートが有効であることと、その人が犯罪者や危険人物などではなく入国させても問題ないことを示す書類で、パスポートとはもちろん違います。パスポートは日本語に直せば「旅券」で、持ち主の国籍や身分について公的機関が証明した書類です。どちらも外国への入国には原則として必要な申請書類であり、パスポートが証明書、ビザが保証書といった位置付けとなります。簡単に言えば前者で国籍を証明し、後者で犯罪歴などがないことを保証してもらうという手続きでしょうか。ただしどちらも海外への渡航や入国を約束するものではなく、あくまで入国審査に必要な書類の一つということは覚えておいた方が良いでしょう。通常はないことですが、両方が揃っていても入国を拒否される可能性はゼロではありません。また、発行の主体も異なります。私たち日本人は日本の公官庁でパスポートを発行してもらいますが、ビザは渡航先の国家が発行します。入国させても良い人物であるかどうか、渡航したい国に身元審査をしてもらうということです。

しかし、日本人の多くの方はパスポートは持っている、または海外旅行の際に使ったことがある一方、ビザについては発行したことも現物を見たこともないという方がほとんではないでしょうか。これは短期間の渡航や観光目的の場合は査証免除となる対象国が多いことが理由です。特に日本のパスポートは国際的な信頼性が高く、査証免除で渡航できる国の数が非常に多いため、普段目にする機会が少ないのです。

ただし観光目的でも長期間の滞在となる場合や海外で就労する場合、また留学する場合などには提出が必須になる場合が多く、渡航目的に合わせたものを取得する必要があります。多数の種類があり、日本には外交査証や公用査証、就業査証、留学査証、観光査証、医療滞在査証、通過査証などが存在しています。日本に滞在する外国人がこれらの査証を取得する必要がある場合、入国管理局への申請が必要となります。基本的には本人が入国管理局へ出向き、必要書類を提出することで申請自体は完了になります。ただ就労の場合、最初の申請の際に雇用先からの雇用条件通知書が必要となり、また従事する仕事の内容と申請書類の内容が一致しているかということもチェックされます。

滞在目的が変わればビザの変更手続きも

また、パスポートが一度発行したら有効期限内は特に申請したり変更したりする必要がない一方、ビザは滞在期間中に滞在目的が変わった場合に変更手続きをしなければなりません。例えば日本の大学で学ぶ外国人留学生は留学査証を所持していますが、留学査証では1週間に28時間までのアルバイトしか認められません。大学を卒業した後そのまま国内で就職する際は、就業査証に変更しなければならないのです。

このように、ビザはパスポートに比べるとやや煩雑で、手続きについてもわかりづらくまた時間もかかる傾向にあります。滞在先の国家が発行し、また証明書としての役割を持つパスポートと異なり身元審査の性格を持つ書類である以上仕方のない側面もあります。よくある勘違いとして、必要有無を滞在期間だけで判断してしまう雇用主がいることです。数か月の雇用であればいらないだろうとか、短期のアルバイトだから観光用のでも大丈夫だろうとか、そのような勘違いをしている経営者がしばしばいます。日本においてビザは期間に関係なく、就労となった場合に必ず必要となる書類ですので、外交人を雇い入れる際には必ず注意しておかなければならないポイントなのです。
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外国人を雇用する場合に必要となるビザの事例を紹介

雇用に必要なビザにも多くの種類が存在します。雇い入れる際には多くの場合就業ビザを取得する必要がありますが、ここには実に十数種類ものビザがあり、被雇用者の職種や従事する業務内容に応じて適切なものを申請しなければいけません。ここでは事例の一部を紹介します。

留学生を卒業後に雇用するケース

上にも書いたように留学生を卒業後そのまま日本の企業で雇い入れる場合、「技術・人文知識・国際業務」のビザがあてはまります。4年生大学を卒業して学士を持っている、あるいは専門学校を出て専門士を付与されていれば認定される可能性が高いです。IT関係企業のエンジニアやプログラマーなど、技術者の多くはこのビザで就労しています。ただし、研究所の調査員などの場合は「研究」、海外の企業から日本の関連会社へ転勤になった場合は「企業内転勤」など、他の就業査証の条件に被る場合はそちらを取得する必要があります。

大学・大学院の教員として雇用するケース

大学や大学院では外国人の教員を雇い入れていることがありますが、彼らは「教授」という就業ビザを取得して日本で働いています。査証上では教授ですが、適用されるのは身分としての教授だけではありません。准教授、助教授、助手といった大学で働く外国人は皆この「教授」ビザを取得する必要があるのです。一方、高校までの教育機関で英語教員として外国人が就労する場合は「教育」というビザが必要になります。

シェフが日本で働くケース

有名なレストラン、高級フレンチなどには外国人のシェフがいることがあります。この場合は「技能」の就業ビザが対象となり、シェフやコックだけではなくパティシエなども対象になります。「技能」ビザは特殊な分野における成熟した技能を持つ人間を雇う際に必要とされているので調理・製菓系だけに限らず、スポーツ関係の指導者、パイロットや金属加工の職人といった仕事にも適用されます。

プロスポーツ選手のケース

日本のサッカー選手が海外へ移籍する際に、日本代表への選出回数が少ないこと等が理由で実績不十分とされ、しばしばビザが発行されずニュースで取り上げられることがあります。(その多くはイングランドのプレミアリーグになります。)日本でもプロスポーツ選手が日本のチーム、クラブで雇われる際には当然ビザが必要となり、「興行」がそれにあたります。海外でもしばしばそうですが、興行活動は動く利権や利益が大きく、本来文化活動や国民の娯楽に資することが目的のこのビザは、査証申請の際に特に審査が厳しいと言われています。スポーツ選手だけではなく楽器の演奏家や俳優、ダンサー、モデル等の仕事もここに含まれます。少し紛らわしいですが作曲家や写真家、画家など芸術活動に従事する人は「芸術」というカテゴリーもあり、利益目的の興行でない場合はこちらのビザが必要となる場合もあります。

外国人を経営者として招聘するケース

民間企業では外国人の経営者や役員を迎え入れることが増えてきましたが、この場合は「経営・管理」の就業ビザが必要です。元々は正社員として雇用した外国人が昇格などで役員以上になった場合も「経営・管理」にビザを変更しなければなりません。

外国人が介護職として労働するケース

人手不足の介護業界では、海外から大量の労働者を雇い入れることを日本政府も表明しています。介護・福祉系の施設で介護士の外国人を雇い入れる際は「介護」の就労ビザが必要です。

さて、ここまで紹介した以外にも医療従事者の「医療」、雇用する外国人が記者やカメラマンの場合に必要な「報道」、宣教師や僧侶を日本の施設で雇う際は「宗教」など、様々な種類の就業ビザがあり、それぞれの職種に合わせて取得する必要があります。職種や役職が変わったり、転職などで業務内容が変わったりした際は、対象となる就労ビザに変更する手続きが必要です。また、就労ビザの期間はここに挙げた種類ごとに細かく決まっておらず、3種類しかありません。「経営・管理」と「興行」及び「その他」の3つです。この3つの区分にぞれぞれ複数の期間が設定されており、入国管理局が申請時の状況に応じて許可する滞在期間を決めることになっています。もちろん、滞在期間終了後も同じ仕事を続ける場合は更新が必要です。

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