中小企業は独自化で生き残ろう!大阪製罐株式会社 清水雄一郎さん

ポイント
  1. 独自化連載スタート!
  2. ニッチな業界でだからこそ発信が重要
  3. 眼の前のお客さんの困りごとを解決する

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中小企業が生き残るために

「差別化ではなく、独自化しよう」

これはエクスペリエンス・マーケティングの創始者である藤村正宏さんの言葉です。

「差別化」ではなく「独自化」、この微妙なニュアンスの差が伝わりますでしょうか。

筆者はこの言葉にとても感銘を受けました。中小企業が生き残っていくための一つの正解がここにあるのではないかと思っています。

ただ、それと同時に、企業はどうやって独自化していけばいいのだろうかという疑問も浮かびました。

そこで、この疑問に答えてくれそうな12人の経営者の方々に「独自化」というテーマでインタビューをさせていただきました。

10人いれば10通りの独自化への道があり、簡単にマネできるものではありませんが、あなたの事業にも、きっと役立つエピソードがお送りできると思います。

「独自化連載」第1回のゲストは、大阪製罐株式会社の代表取締役社長 清水雄一郎さんです。

ニッチな業界でやるべきこと

−今日はよろしくお願いします。清水さんのメインのお仕事は、カンカンマンというご当地ヒーローの中の人ということよろしいでしょうか?

清水:よろしく、、、ないですね。

カンカンマンというヒーローは一応やってますけど、、、、ヒーローショーがメインのお仕事ではないんですよ。


−そうなんですね!プロモーションビデオも制作されていましたが、あれは遊びで製作されているんでしょうか?

爆走! 菓子缶ヒーローカンカンマン!youtube動画

遊びなんですけど仕事にも繋がっていて、、、えっと、まずは、順を追って説明しますね。

弊社は大阪製罐(せいかん)株式会社と申しまして、大きく分けて2つの事業があります。

一つはお菓子などの缶の製造で、売上が15億5,000万円ぐらい。

もう一つがキャビネットの製造事業で、売上が6億円弱ぐらいです。あわせて20億円ぐらいの売上規模の会社です。

東大阪に工場があり、神戸のモロゾフさん、ゴーフルの神戸風月堂さんなどのおかしの缶をオーダーメイドでつくっています。私が三代目でこないだ70周年をむかえたところです。

−歴史のある企業なんですね!缶の業界みたいなものってあるんでしょうか?

いわゆる飲料缶の業界があって、塗料やお菓子の一般缶という業界があります。全国で70社ぐらいあります。以前はもっとありましたが今は半分ぐらいになっています。

−業界の中で、うちは考え方やアクションが違うなと感じるところは?

他の会社はやっていないのですが、うちは積極的にSNSやブログで情報発信をしています。ニッチな業界だから情報発信は必要ないと思うかもしれませんが、ニッチな業界だからこそやった方がいいんですね。

他に誰もやっている会社がないので、「お菓子の缶 製造」などで検索すると、一番上に表示されます。

ブログで制作実績を更新し続けていまして、そこから毎日1件問い合わせがきます。他に営業はしてないんですが、年間300件ぐらいの新しいお客さんとの取引が生まれています。

仕事は楽しんでやる!

−社長自ら情報発信を始めたんですか?

そうですね。キッカケは7年前に藤村さんが主催するエクスマ塾に入り、発信することの重要性を知ってからですね。

そこで学んでことを活かすような販促物やWEBサイトを制作する塾生はけっこう多かったのですが、なぜか僕はカンカンマンというヒーローが作りたくなって、実際に作っちゃいました。マスク代だけで20万円ぐらいかかりました。

カンカンマンとしてお菓子屋さんに遊びに行ったら、人が集まってきてお菓子屋さんの集客に貢献できると思ったんです。でも、実際にやってみたら不審者に思われたりしてまったく人が集まりませんでした。

−裏目にでた感じですかね

はい、そうですね(笑)でも、それまで仕事は真面目に耐えてやらなければいけないと思っていたんですが、カンカンマンはおもいっきりふざけていて遊んでいるのに、意外に誰にも怒られなかったですね。

むしろ、どっちかといったらお客さんや会社の人が笑ってくれて、仕事で遊んでもいいんだなって思ったんです。そこから仕事をもっと楽しんでやろうという意識に変わっていったと思います。

それからカンカンマンとして3年間ブログを書き続けました。そうすると、いろんなところから反響がありました。

変わったところだと、葛飾区のゼロングというローカルヒーローから、見積もり依頼がきました。「ゼロング缶は作れますでしょうか?」って。

たぶん世界で最初の、ヒーローからヒーローにきた、見積もり依頼です(笑)

また、カンカンマンブログの内容に感動したということで、NHK『美の壺』の制作者の方から連絡をいただいたこともありました。

弊社の缶をご利用いただいているお菓子屋さんをご紹介したら、その放送がTwitterで話題になって、人気のお店になりました。

−カンカンマン、すごい効果でてるじゃないですか!すいません。なめてました(笑)

B to Bだと発信するネタがないと言う人もいますが、どんなことを発信すればいいんでしょうか?

生産者目線でやると何が面白いんだってなるんですが、制作実績をアップすればこんなの作って欲しいと言われるし、当たり前のように金型が作れますと一口で言っても、実際にはうちでしか作れないものがあったりするんですね。

もし自分がお菓子の缶を作りたくて困っている人だったら、何が嬉しいのかな、どんな情報が欲しいのか、そんなお客さん目線で考えると、けっこう伝えられることがあると思います。

−社内では誰が発信を担当した方がいいんですかね?

会社の規模にもよりますが、始めは社長が自らやったほうがいいんじゃないですかね。そして実績がちゃんと出てきてから、社員にお願いした方がいいと思います。

自分の発信にお客さんの反応があると理解すれば、やる気になってくれるので、それが見えるような仕組みを考えてあげた方がいいですね。

新たな事業『お菓子のミカタ』

−経営は順調のようですが、今の経営課題はなんですか?

上位の数社に売上が集中しているので、そこ以外の売上を新しく作っていきたいと思っています。

2014年から『お菓子のミカタ』という新しい事業をスタートしました。いままでオーダーを受けてつくっていたものを、自分たち主導で製作して、個店のお菓子屋さん向けに、少ロットで販売するというものです。

作るものはお菓子の缶で今までと一緒なんですが、「届ける先」と「届け方」が違うんです。お菓子の缶をオーダーする場合は、最小のロット数が3,000缶ぐらいからなので、1,2店舗の個店さんだとなかなか発注ができないんですね。

それをどうにか個店さんにも使ってもらえるようにできないか考えたところ、自分たちが初期投資をして、在庫のリスクを抱えて製作した既製品を少ロットで販売すれば、個店さんにも使ってもらえるなと思ってこの事業を立ち上げました。

初年度は、商社を通じてバレンタインデー向けに販売して130万円の売上でした。これは可能性があると感じて、それからニュースレターを全国4,000店舗に年間5通、送付し続けるなど『お菓子のミカタ』を知っていただく取り組みをしてきました。

その効果もあって、現在では個店のお客さんが600軒ぐらいになり、年間の売上は4,000万円ぐらいになりました。まだまだですが、全国には約1万軒の個店さんがあるのでもっと利用していただだけると思っています。

ここから、もうひと押ししたいと思って今年の6月、恵比寿に『お菓子のミカタ』の店舗を出店しました。この事業をもっと伸ばしつつ、こういった新規の事業をいくつか作っていきたいと思っています。

−中小企業が独自化していくためのポイントは、どんなところにあると思いますか?

狭いところのお客さんのお困りごとを解決できないか、考えることですかね。

自分の場合は、缶を作りたいけどまとめて購入することはできないというお客さんがいて、どうやったらこの目の前のお客さんに喜んでもらえるかを考えました。

目の前のお客さんと同じようなことで困っているお客さんって、おそらく他にもたくさんいるんですよ。

いま、『お菓子のミカタ』でやっている、お菓子屋さん向けに缶を売る競合ってゼロなんですよ。他の会社もやろうと思えばできることなんですが、やらないんですよ。

こういったお客さんのお困りごとに対して、自分たちが多少リスクをとって解決できるような事業は、競合があんまりいないと思うんです。

まだ市場は小さいですけど、成長させていくことができると思っています。

−商売で大切にしていることをあえて3つに絞ってあげるとしたら?

  • ・お客さんの役にたつこと
  • ・お客さんに楽しんでもらいたい
  • ・自分たちも楽しむこと、の3つですかね。

−経営判断でこれはちょっと失敗だったなと思うことはありますか?

失敗直前で踏みとどまることはできたんですが、地元にお菓子の缶メーカーが運営するカフェがあったら面白いなと思って契約直前までいきました。

冷静に考えたら地元でカフェをしても缶部門の売上につながらないことに気がついて、ギリギリで辞めました。

親父に猛反対されてなかったらやっていたと思います(笑)

−経営者になりたての時の自分にアドバイスをするとしたら?

最初からアクセルを踏んでもっとガンガン行け!自分が思っている倍の速度は出せるよ、と言いたいですね。


−『お菓子のミカタ』から新たな商品が話題になることを楽しみにしてます!本日はありがとうございました。

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著者プロフィール

頼母木 俊輔

頼母木 俊輔

助っ人の編集長、兼、事業部長。編集に特化したマーケッター。これまで50以上のメディアの立ち上げに携わり、複数のWEBメディアで編集長を務める。企画・編集してきた記事は1,500本以上。日本風インドカレーと柄モノの洋服を偏愛してる。月に100冊は読書したい。飲食とエンタメに稼いだ金の大半を使う。