融資を受けたいときに読みたい融資のきほんの「き」
- 融資を受けるには、自分の会社に合った金融機関を見つけておくことが必要
- 創業融資や運転資金・設備投資資金などの融資の考え方
- 日ごろからの良好な関係が肝要。支援してもらえる金融機関との付き合い方
創業融資を受けてから事業を継続でき、開業して3年目以降の融資の考え方について、解説します。
融資が必要となる場面は様々ですが、大きく分けて、「運転資金」「設備投資資金」「季節資金や賞与資金、納税資金」という種類があります。
それぞれの場合で、申し込むタイミングと必要な情報が異なります。
いくつかのパターンを見ていきましょう。
「今月末の支払いが足りなさそう!融資してほしい!」と言われても、金融機関は応じることが難しいです。
一般的に運転資金とは、材料を仕入れて製造し、または商品を仕入れてから販売し、現金収入を得るまでのタイムラグを補うために必要な資金のことを言います。
仕入代金を支払ってから、回収までにどのくらいの期間がかかり、いくらの資金が手元にない状態になるのか、明らかにしておく必要があります。
運転資金の借入が必要になるのは、支払いや回収の条件が変わったとき、それから、多くの売上が見込めそうなので仕入代金が多額になり、手元資金が足りなくなるときです。
このタイミングを把握するには、向こう6か月分の資金繰り予測表を作成しておくことが必要です。
資金繰り予測表を作成し、早めに金融機関に相談しましょう。
運転資金の融資方法は、3か月から6カ月の短期貸付や、3~5年の長期の貸付、最近では当座貸越で対応してくれる金融機関も出てきています。
下記の図のように、資金の流れがどうなるか、時系列にまとめておきましょう。
設備投資の効果は、将来長きにわたって表れるもので、できる限り自己資金で行うことがベストですが、それだけの自己資金が手元にあることはまれです。
設備投資資金の融資を申し込む場合は、設備投資をする前に金融機関に相談しましょう。
「何に設備投資をするのか」「設備投資額はいくらになるのか」「融資はいくら必要か」「それで見込める収益はどのくらいか」「返済原資は見込めるのか」をまとめた設備投資計画を提出することが必要です。
設備投資資金の融資方法は、長期間(7年~15年)にわたる約定返済のついた長期の貸付で行われることが一般的です。
季節によって仕入が集中したり、売上が変動する事業をしているときに、資金繰りを安定させるための資金を季節資金といいます。
また、賞与支給のための資金を賞与資金、法人税等の支払いのための借入を納税資金といいます。
季節資金や賞与資金のような定期的な資金需要に対しては、返済期間が6カ月と短期で、1年に2回融資を受けるようなサイクルとなります。
向こう1年の資金繰り予測表を提出し、資金が必要となる3か月前には金融機関に相談しておきましょう。
納税資金については、法人税等の支払いに充てるための借入です。利益が出ていても、まだ売掛金のままであったり、在庫ままで現金化していないものがある場合には、納税資金が不足します。
決算3か月から納税予測を行い、向こう6カ月~1年間の資金繰り予測表を作成したうえで、必要となる融資額を検討し、金融機関に相談しましょう。
このように、融資の申し込み方と必要な情報は、ケースによって異なりますが、いずれのケースでも必ず必要なのは「資金繰り予測表」です。
融資のタイミングだけ作成するのではなく、常に先を読み資金不足リスクを防ぐためにも、経営の日常に資金繰り予測を取り入れておくことが必要です。
資金調達に成功したとしても、または、思うような資金調達には至らなかったとしても、支援してほしいタイミングで支援してもらえるように、金融機関とは良好な関係を築いていかなければなりません。
金融機関の見方を理解し、適切な情報開示を行いましょう。
金融機関はどのように会社を見ているのでしょうか?
・この会社の事業はうまくいくのだろうか?
・返してもらえるのだろうか?
このような視点で見ています。
融資をした金融機関が一番困る事態はどんなことでしょうか?
せっかく融資をしても、返済できなくなり、融資金が焦げ付くことが一番困ります。
焦げ付きの発生は担当者のみならず、支店長など融資の決裁をした人にもその責任が及び、融資をした支店にとっては大きなマイナス要因となるのです。
ですから、融資を受けるためには、「これでいける」と客観的に見てもらえる根拠を示す必要がありますが、決して話を盛ってはいけません。
お互いの信頼関係が大切です。
一番の関心事はやはり「貸したお金がちゃんと返ってくるのかどうか」です。
昨今ただでさえマイナス金利政策で収益力が下がっているのに、貸したお金が返ってこないとなると完全にマイナスです。
金融機関が、貸したお金が返ってくると判断するポイントは、いくつかあります。
「なぜ?」
なぜ資金が必要となるのか、その使い道は何で、何を仕入れて何を売って企業が資金を回収し、返済するお金になるのか、説明ができること。
「信用できる経営者か?」
約束を守る社長や会社であるかどうか?
「担保や保証はあるか?」
その会社や経営者が返せなくなったとしても、処分してお金に替えることができる資産があるか。
また、代わりに返してもらえるあてがあるかどうか。
必要なときに必要な支援を受けるためには、このような視点に、経営者は応えていかなければなりません。
では、どのように、金融機関と付き合うとよいのでしょうか?
金融機関からすると、あまり情報開示をしてくれない相手とは、付き合いづらいものです。
日ごろのお付き合いの中で、自社のことをよく知ってもらい、信頼関係を構築しておく必要があります。
会社の歴史や、事業の内容、扱っている商品やサービスの内容、それぞれの粗利、業界を取り巻く事情、自社の強みや弱み、今の経営課題など、金融機関が情報開示をしてほしい項目はたくさんあります。
しかし、融資担当1人あたり100社ほどの担当先を持っていることが多く、じっくりヒアリングをする時間は余りとれません。
そこでぜひ、活用して頂きたいのが「ローカルベンチマーク」です。
「ローカルベンチマークツール」は、こちらのURLからご覧いただけます。
「ローカルベンチマークツール」は、中小企業が自社を自ら診断するツールとして開発されましたが、金融機関に開示すると喜ばれる情報がコンパクトにまとまっているものです。
特に「非財務情報」には、会社の経営理念やこれまでの歴史、強みや弱み、ビジネスモデル、そして課題などを整理できるようになっています。
経済産業省HPより 非財務情報のサンプルページ
これらは決算書には表れない情報であり、これらをまとめておくと、金融機関の担当者には大変喜ばれます。
金融機関と良好な関係を築きたい会社は、ぜひ一度作成頂き、金融機関に提供してください。
経営者は最低でも年1回、決算終了後に決算報告に行きたいものです。
・前期の業績はどうだったか、増減があれば、その理由
・当期の業績見込みとその理由
・現在の課題と取り組んでいること
・今後の資金繰りの予定
これらをまとめて報告しておきましょう。
経営者自ら報告することにより、信用力が増します。
もし、やり方がわからないという場合は、顧問税理士などにまとめ方や伝え方を教えてもらうこともよいでしょう。
金融機関は、融資先がこれからどのような事業展開をしていくのか、資金繰りはどうなるのかを知りたがっています。
また、最近では、融資先の事業の内容や成長可能性などを適切に評価する「事業性評価融資」を行うことが金融庁から求められていることも後押しし、融資先自ら作成された経営計画の積極的な共有は喜ばれる傾向にあります。
経営計画を策定するのは、自社の目標を設定し、見通しを立てるためにも必要です。
1年間または中期(3~5年間)の経営計画を策定し、金融機関に開示しましょう。
以上が、支援してほしいときに適切な支援をしてもらえるようになるための金融機関との付き合い方のポイントです。
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