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「あきらめてたまるか」で乗り越えた、経営者としての苦難
経営を続けていくには、大きな困難が立ちはだかります。それは、サラリーマンとは大きく異なる、重くのしかかる困難です。
その重みに耐えきれない経営者も少なくありません。
今回は、そんな困難を乗り越えて新たなチャレンジを続けている坂口氏に、その過程と起業家としての思いを語っていただきました。
強みを生かした経営で、差別化を
ワンダーウッドはどのようなことをしている会社なんでしょうか?
助っ人編集部
坂口祐貴
樹齢200年〜300年の国産天然木・無垢材の一枚板のテーブルやカウンターの販売をしています。
坂口祐貴さん 株式会社WONDERWOOD代表取締役。1988年、鳥取県生まれ。大手企業の営業職を務めたのち、2年で退職、鳥取へUターン。その後、一枚板と出会い、起業、現在に至る。
オーダーメイドで製作しているんですか?
助っ人編集部
坂口祐貴
オーダーメイドもあります。一般のお客さまに販売しているものが売上の1割、残りの9割がB to Bです。バーやお寿司屋さん、割烹料理屋さん、レストランなどに販売しています。
高級感を求めているお客さんが多いお店などですね。
助っ人編集部
坂口祐貴
うちの強みは、国産材の仕入れルートです。弊社の顧問の一人が木挽き職人なのですが、木挽き職人って日本にたった二人しかいないんですよ。
通常は製材機で丸太を割っているので、木挽きの人の需要がほとんどありません。
それでも、木が大きすぎて製材機に入らない、厚みをできるだけ薄くしたいなど、特別な需要に対して木挽き職人が対応しているんです。
だからこそ、オーダーメイドもできて、高級感もあるんですね。ブランドに対するバックボーンがしっかりしているんですね。
助っ人編集部
坂口祐貴
そこが僕らのこだわりなんです。良いものを作るうえでは大事なことだと思いますし。
もちろん、ちゃんとした木材ではないとだめですが、全く市場に出回らない希少な木材も全国から引っ張ってくることができます。
行動力と熱意で営む
その木挽き職人さんとはどうやって出会ったんですか?
助っ人編集部
坂口祐貴
たまたまなんです。そもそも僕はちょっと匂ったら、すぐに行動するタイプです。東京のあきる野のほうに色々な材木屋さんがあると聞いて突撃して、そこで紹介してもらったのが木挽き職人の人でした。
行動力に伴っていろんな収穫をされているんですね。坂口さんのその原動力とは何でしょうか?
助っ人編集部
坂口祐貴
好きで没頭しているからだと思います。例えば、今僕はスキーにはまっているんですが、スキーのことを考えたら、何でもできるんです。
時間なくてもスキーショップにいったり、You Tubeを観たり。趣味の延長線上なんですが、時間軸がぶっとんでしまうんですよ。
好きなものだからこそ、長く深く付き合えるんですね。一方で、競合の会社などはあるんでしょうか?
助っ人編集部
坂口祐貴
たくさんあります。一枚板専門でやっている大手家具屋さんもあります。普通の家具屋さんでも一枚板売っていたりします。 違いは、うちは100%国産という点でしょうか。
それはB to BでもB to Cでも変わらない魅力ですね。集客はどのようにしていますか?
助っ人編集部
坂口祐貴
店の前を通りかかってという方もいるし、イベントで出会ったり、紹介してもらったりといろいろです。例えば代官山蔦谷書店で商品を並べたり、まな板作りのワークショップをやったりしています。
見て興味を持つ人も多そうですね。それだけインパクトがあるんですね。
助っ人編集部
ローンで木を買ってくれる世代
一枚板というのは一度木材にしたら長く使えるものなんですか?
助っ人編集部
坂口祐貴
樹齢を同じくらいテーブルとして使えると言われています。ヨーロッパでは同じものをずっとメンテナンスして使う習慣がありますが、日本では数万円のテーブルを買って、それを買いまわしていくので、時間のスケールが全然違いますよね。
リペアしながら使うという文化が日本にない分、これから流行らせていきたいと思いますか?
助っ人編集部
坂口祐貴
そういう文化を作っていきたいです。明らかにそうなってきているのが僕らミレニアム世代です。僕らは大量生産・大量消費のど真ん中で生きてきた。 だからこそ「断捨離」とか「ミニマリスト」という言葉が出てきていると思いますが、それを率先しているのがミレニアム世代なんです。
なんとなくわかるような気がします。一点ものにこだわる世代ですね。
助っ人編集部
坂口祐貴
一般のお客さまで一番購入が多いのは2、30代のミレニアム世代なんです。今の人はあまり車を買わない代わりに、ローンで木を買ってくれる人もいます。この事業を始めてから一年くらいで、そのことに気づきました。
そこからは若者向けに戦略をシフトした?
助っ人編集部
坂口祐貴
そうですね。でも最近は、B to Bをメインでやっています。やりながらどんどん戦略を変えているんです。まずはとにかくやってみて、フィットする形を求めて、自分たちの形も変える。でも一番大事なところは変えないようにしています。
自然の力を感じてもらいたい、という“強い気持ち”
元々最初から木が好きだったんですか?
助っ人編集部
坂口祐貴
嫌いではない程度です。サラリーマンの頃は、木というキーワードは僕の中にありませんでした。その後、鳥取に戻って、たまたま出会っちゃったという感じです。
それは生えている木? それとも木材ですか?
助っ人編集部
坂口祐貴
一枚板です。「お前の苦労なんか200〜300年生きてきた木からしたら鼻くそレベルだぞ」というような感じを受けました。 木って、何百年も生きている間に色々なことがあるんです。雪が降ったら枝が折れるし、雷に打たれたりとかもある。実は、木の世界はものすごい競争社会なんです。
だからこそ、自分の苦労がちっぽけに見える。自然のパワーを感じたというわけですね。
助っ人編集部
坂口祐貴
この力こそ、東京や都市部に住む人たちの力になるなと感じました。
そこからうちの企業理念である「Back to the nature」が生まれました。 そもそも、高層ビルのように、何百メートルのところに人間がいるということ自体がすごく不自然だと思うんです。空中で仕事している感じ。
さらに殺傷事件があったり、うつ病患者が増えたり、世の中がおかしくなっている。その原因を考えたら、人々の中から自然がなくなりすぎているからではないかと感じました。
自然をもっと近くに感じてもらえる場所作りが始まったんですね。
助っ人編集部
坂口祐貴
樹齢数百年の木を僕たちが提供することで、木などのエネルギーや大自然のパワーを都市の人たちの生活にインストールして、自然の力を感じてもらいたいと思っているんです。
たしかに一枚板を触っていると、自然や、木が持っている歴史を感じさせます。
助っ人編集部
坂口祐貴
例えばまな板でも数百年木の命を毎日なでるか、プラスチックをなでるかは、将来大きな差になると思います。 本物に触れることで、自分が持つものが、ひとつひとつ意味のあるものになっていきます。
人付き合いも少しずつ変わっていって、本物の出会いがしやすくなります。いろんな人に出会う。
そういうものにものすごく素直になる。
生き方がシンプルになるんですね。
助っ人編集部
坂口祐貴
木と触れ合っていると,この人とは付き合いたい、付き合いたくないというのが明確に見えてくるんです。まだまだ僕は見えないほうなので、よくだまされますが、昔の自分と比べたら、その人の本質に迫る部分が見やすくなったように思います。
起業の最大のコツは、あきらめないこと
これまで、一番大変だったことは何ですか?
助っ人編集部
坂口祐貴
4人で会社をやっていたとき、そのうちの2人に裏切られてしまって、売り上げが半年間0だったことがありました。
毎月、何百万円もショールームの家賃や人件費の支払いがあったので、そのときは本当に大変でした。
盛り返したきっかけは何だったんですか?
助っ人編集部
坂口祐貴
あきらめないことですね。窮地に陥ったとき、99%くらいの経営者の先輩に、早く会社をたためと言われました。でも、そう言われたら絶対に盛り返してやると思って、負けん気だけで続けました。
車も売って家も引き払って、生活を最低水準に全部落として、そこから這い上がったんです。
普通だとやめたくなりますよね。そうしてなくなっている会社も多いと思います。
助っ人編集部
坂口祐貴
今は、起業したら3年で9割の会社がつぶれるといいます。僕の場合はこういう形で現れましたが、得意先に裏切られるとか、身内に裏切られる僕のパターンなど、会社が立ち行かなくなる理由はいろいろ。
そのときにあきらめずにやれるかどうかです。 今はようやく起業家として通らないといけない道をひとつクリアできたなと思っています。
これから起業しようと思っている人へ、やめてしまおうかなという瞬間が訪れたときに、あきらめずに頑張るための方法を教えてください。
助っ人編集部
坂口祐貴
あきらめないこと。シンプルだけど、難しいんです。教えてくれる仲間や先輩も大切です。でも最後は自分があきらめないかどうかです。
自分が儲かるとか、これで食べていけるというので起業するのはやめた方がいい。
本当に人生かけて戦っていきたいなというくらいの本気で、自分の心が入っているものではないとだめだと思います。
簡単に稼げる世の中になってしまっているのもありますね。
助っ人編集部
坂口祐貴
「やりたいことに出会ったから」「幸せにしたい人のため」など、具体的にあればよいですが、起業は基本しんどいので、軽い気持ちで起業するのはやめたほうがいいと思っています。
一からたたき上げでやってきた人は、死にそうになりながらやっている人ばかりです。そういう道を通らないと、大体の人はそこまでいかないと思います。
坂口さんはその道を通り、乗り越えたからこそ、今があるんですね。本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
助っ人編集部