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士業で独立された方にとっては、他の事務所と、どのように差別化してクライアントを開拓していくのかは大きな課題です。
今回は、大阪でベンチャー企業に特化した会計事務所を経営されている「北條公認会計士・税理士事務所」の北條明宏さんにお話をうかがいました。
ベンチャー企業の資金調達を担う
よろしくお願いします。本日は独立されたときのお話と今後の展望、また起業を考えている人へのアドバイスをお聞かせください。まず北條さんの現在の業務からお伺いします。
助っ人編集部
北條明宏
会計士、税理士が本業です。大阪、京都を拠点とし、関西でベンチャー企業に特化した会計事務所を開いています。
北條明宏 2002年:大学卒業後アコム株式会社入社 営業、債権管理に従事 2007年:一発奮起して公認会計士試験の勉強のためアコム株式会社を退職 2008年:公認会計士試験合格。有限責任監査法人トーマツに入所。金融機関に対する監査中心に従事。また、デロイトトーマツベンチャーサポート株式会社で、ベンチャー企業のエクイティファイナンス、メディア戦略の支援業務に従事。2016年:有限責任監査法人トーマツを退職。“ベンチャー企業のエクイティファイナンス”に強みを持つ北條公認会計士・税士事務所を開業現在では、AIソリューションを展開するハカルス㈱の取締役CFO、オーガニック野菜のECプラットフォームサービス展開する坂ノ途中㈱の監査役 フューチャーベンチャーキャピタル㈱(JASDAQ上場)社外取締役に就任。8社約10億の資金調達に従事。
ベンチャーに特化とは具体的には?
助っ人編集部
北條明宏
ベンチャー企業の資金調達・資本政策を担っています。
会計士や税理士は一般的にどういったところで差別化をはかっているんですか?
助っ人編集部
北條明宏
税金の計算や税務業務ではないはずです。大手は別として我々のような街の会計士、税理士にそこでの差はほとんどない。 だから何かに特化しないといけません。
私の場合はベンチャー企業と事業承継、この二つ。他の会計士、税理士との差別化として銀行からではない調達まで手掛けています。
銀行からではない? では、どこからですか?
助っ人編集部
北條明宏
ベンチャーキャピタル、ハイリターン狙いの積極的な投資を行う投資会社です。調達における事業計画の作成やブラッシュアップ、調達後は株主さんの対応など、CFOの立場でやらせてもらっています。税金や会計ももちろん担当します。
ベンチャーがグロースするまでのお金の面倒をみている、ということ?
助っ人編集部
北條明宏
そうです。私はパートタイムCFOと呼んでいます。初期の段階、ベンチャーでいわれるシード期あるいはシリーズAやBの段階ではフルタイムのCFOは必要ありませんから。
複数企業のパートタイムCFO
いろいろなベンチャーにパートタイムCFOとして参画している?
助っ人編集部
北條明宏
いまはベンチャー企業10社に携わっています。関与の割合は深いものから浅いものまでありますが。
ベンチャー企業を10社も!? それはすごい!
助っ人編集部
北條明宏
売上を伸ばす専門家ではないので、資金をつけるところ、つまり財務を担当しています。
情熱をもってベンチャーを立ち上げた創始者にとってすごく頼りになる存在でしょう。財務に詳しくない方は特に。同様の仕事をされている会計士や税理士はいますか?
助っ人編集部
北條明宏
東京にはいると思います。しかし関西では少ない。ベンチャー企業は最初はお金がないので正直なところ担当しても割があわないので、特化しようと考える人が少ないと思います。
でも私はお金がない時期から一緒に歩いていきたいんです。成長に応じて顧問料を上げてもらう過程を楽しんでいます。
従来の税理士、会計士とは違ったアグレッシブなお仕事をされていますね。
助っ人編集部
北條明宏
実際には泥臭い仕事なんですが(笑) でも、それが楽しいし、好きです。
いまのお仕事はいつから始められたんですか?
助っ人編集部
北條明宏
独立したのは2年くらい前で、3年目に入ったところ。もともとはデロイトトーマツベンチャーサポート株式会社に所属していました。だからベンチャー企業にかかわったのは4年くらい前からです。
独立したきっかけは?
助っ人編集部
北條明宏
もっと実務のサポートがしたかったから。それまではメンタリングや人を繋ぐサポートがメインでした。私は自分でベンチャー企業を立ち上げたこともあるので、もっと中でサポートができると思って。
起業アイデアがあっても専門家の力を借りなければ資金調達は難しいので、実務のサポートは魅力的です。
財務面では、どのフェーズまで担当されるんですか?
助っ人編集部
北條明宏
シリーズBまでです。独立して2年目なのでまだシリーズBまでのベンチャー企業しか担当していませんが、シリーズBの間にはフルタイムのCFOを入れて引き継ぎします。
税務顧問として残る場合もあればコンサル顧問的な立場で残る場合もあると思いますが。
パートタイムでの参画はいろいろと応用が利きそうですね。会計士や税理士として新しい仕事の在り方だと思います。
助っ人編集部
ベンチャー企業はもっと顧問を活用すべき
北條明宏
コンサルタントとして会計士が参画しているケースはいまもそれなりにあると思うので、そういった方々が私と同じようにもっとベンチャーのサポートに入ってくればお金で失敗する企業は少なくなると思います。
私からすればベンチャー企業に限らず、中小企業はもっともっと顧問の税理士や会計士を活用すべきです。優秀な方が多いですから、それなりにぽんと課題を投げれば何らかの解決をしてくれます。
特にお金の面で。何を相談して良いのかそもそも分かっていない企業がありますが、せっかくの顧問なんだからもっと積極的に相談するべきです。
どこのベンチャーキャピタルから調達しても問題はないのですか?
助っ人編集部
北條明宏
初期は手を挙げてくれるところに入れてもらいます。そもそも限られてくるので。 ハンズオン支援、ベンチャー企業の経営者とベンチャーキャピタルの担当者が議論して進めていく形は中堅くらいまで成長してからですね。こちらは両者が人間的に合わないと上手くは進みません。
段階ごとに考えないといけないんですね。となると、やはり専門家に入ってもらわなければいけませんね。
助っ人編集部
北條明宏
シード期は資金を調達してもやることが変わるベンチャーが多い。だからベンチャーキャピタルから見られるのは経営者の質です。事業計画やサービスももちろん見てはくるけれど。
つまり経営者が人を巻き込めるか、技術を持っているか、そちらの面でのアピールが重要になります。そのあたりを分かっているかどうかが肝です。
これまでの参画はシード期からばかりと聞きました。今後、成長した段階から入ることも考えていますか?
助っ人編集部
北條明宏
私はあくまでパートタイムです。ラウンドが後ろになればなるほどCFOに求められる役割が多くなってフルタイムが必要となる。だから資金調達からの参画が良いと思っています。
今後チャレンジしたいこと
さらに強化していきたいところはありますか?
助っ人編集部
北條明宏
東京での資金調達に関与したい。東京のベンチャー企業、東京のスキームもいろいろと勉強したいので。関西とあまり変わらないとは思いますが、金額やサービスの進捗具合が違う可能性がありますから。東京で新たな経験を得て、それを関西で活かしたい。
たくさんのベンチャーを見ている中で、どういった企業が上手くいっていますか?
助っ人編集部
北條明宏
一概には言えません。ただ、販路を上手く作っている企業は成功します。やはり経営者がいろいろなネットワークを持っていると強い。
どんなサービスかも大切だが、実は販路が重要なんですね。販路を自力で作るのは難しいですか?
助っ人編集部
北條明宏
BtoCは厳しいです。認知度が上がらない。メルカリのように広告やテレビCMをたくさん流せるベンチャーはなかなかいないですから。
だからBtoCは最初は時間かかるものだと思っていて、受託と一緒にやっていくしかないと思います。BtoBの場合は単価を稼げたりするので単純に良いものだったら売れます。
仕事していくうえで大事にしていることは?
助っ人編集部
北條明宏
約束を守ること。期限は守る。レスは早くする。レスの早さはすごく重要だと考えています。税理士さんを他に変えるようとしているお客さんにヒアリングすると大抵は「いまの人はレスが全然ないから」と聞くので。あと義理も守るようにしています。
税理士、会計士の仕事は一般的にレスの早さは重要視されないのでしょうか?
助っ人編集部
北條明宏
どうでしょう。単純に忙しいからだと思います。私の場合はLINEとかメッセンジャーとかチャットを使ってるので早くなるのかもしれません。
士業の方がチャットツールでスピーディーにやり取りするというイメージはないですね。
助っ人編集部
北條明宏
少しずつ増えてきてすが、まだ少数だと思います。
これまで仕事をしてきて一番大変だった時はいつですか?
助っ人編集部
北條明宏
最初です。売上げがほぼ0でした。
最初のお客さんはご紹介ですか?
助っ人編集部
北條明宏
声をかけていただきました。大切にしています。ここはお金じゃない。シード期から参画して、いまはシリーズAが終わったところです。 一緒に成長させていただいたと思っています。感謝しています。その時の実績があって、いまの別の仕事に繋がっているので。
最初のころに大変だったというのは報酬の面で?
助っ人編集部
北條明宏
報酬も、技術も。私も実務ですべてを経験しているわけではないので、知識はあってもやったことがないことがあります。それを調べながらやるのは大変でした。
独立したばかりの自分にアドバイスするとしたら?
助っ人編集部
北條明宏
まだ2年前なのであまりありませんが「経験はたくさんしたほうが良いよ」と伝えます。
具体的に関わっていきたいベンチャーはありますか?
助っ人編集部
北條明宏
どんなベンチャー企業でも良いですが、強いて言えば音楽関係です。個人的に好きな領域なので。
吹奏楽をやっていたので、クラシックを扱うベンチャー企業はぜひお手伝いしたいです。
お金のことで困っているベンチャーがいたら、この記事で北條さんを知って、相談しても大丈夫ですか?
助っ人編集部
北條明宏
はい。相談は無料です。Facebookでもなんでも良いので、ご連絡いただければ。
東京の方でもOKでしょうか?
助っ人編集部
北條明宏
大丈夫です。全国から募集中です。
いまの仕事の好きなところは?
助っ人編集部
北條明宏
独立してからは特に頂戴する「ありがとう」の質が良い。これが嬉しいです。
ここまでベンチャーに関わっている人は全国でも少ないでしょう。北條さんが育てた会社がこれから世の中にどんどん出ていくんですね。
助っ人編集部
北條明宏
育てた、というのはおこがましいです。私はお金の面や資本政策でお手伝いさせてもらっているだけ。
企業が成功したならば経営者さんがすごいんです。
本日はありがとうございました。
助っ人編集部