フランチャイズオーナーが知っておきたい労務関係の基礎知識~勤務条件編~
- 未納社会保険料延滞金利率や未払賃金の延滞利息は非常に高率
- 同一労働同一賃金を意識しよう
- 就業規則作成が必要になる従業員数は…
フランチャイズのオーナーとして起業を考えている皆様へ。
飲食店やコンビニといった業種では、アルバイト・パートを雇用することになるかと思います。経営者となる皆様から見れば、一生懸命働いてくれる方を、できるだけ安く雇用したいというのが本音かと思います。
一方で、昨今はなかなか「いい人材」を確保するのが難しい状況であり、その埋め合わせとして立場が弱く、社会経験の乏しい学生をターゲットにして、法令違反の条件で働かせる「ブラック・バイト」が社会問題になっていることはご存知の方も多いことでしょう。法令違反を犯すような経営者の下には、結局のところ「いい人材」は集まりません。
また、必要な社会保険への加入手続を怠ったことにより延滞金ともに多額の未納社会保険料の請求を受けたり、あるいはタダ働きさせた分の未払賃金について、遅延利息とともに請求を受けたりする可能性があります。
社会保険料の未納に関わる延滞金の利率は14.6%(ただし、3ヵ月以内は2.8%(平成27年1月1日以降))、未払賃金の遅延利息も14.6%(退職後)です。消費者金融並みの利率です。未納社会保険料、未払賃金も時効は2年となっています。このため、最大2年分遡って本来支払うべきであった社会保険料および賃金に上記の延滞金・遅延利息を上乗せして支払わなければならない可能性があります。
さらに、風評被害を恐れるフランチャイズ本部からフランチャイズ契約の打ち切りを打診される可能性も考えられます。昨今は、SNSなどを通じて個人が簡単に情報発信できる時代です。某居酒屋チェーンや某定食チェーンなどのように、ブラックであるイメージが広まることをフランチャイズ本部は恐れています。
あなたの法令違反があなたの背負っている看板を汚してしまう可能性があるのです。特に、社会保険に関してはマイナンバー制度が導入され、社会保険の納付先は納税情報と社会保険の加入状況を容易に突き合せることが可能になりました。近年、本来社会保険に加入すべきにも関わらず社会保険未加入の事業者があぶりだされ、上記のような状況となっている先が急増しています。
本日はそうした皆様のために、アルバイト・パートと雇用契約を結ぶ際の基礎知識についてポイントを絞ってご説明します。
アルバイト・パートに関しては時給で給与を計算することとする場合が多いかと思います。その際、時給に関しては都道府県や業種によって異なる「最低賃金」を上回る水準で設定する必要があります。
都道府県ごとの最低賃金は下記を参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
最低賃金は毎年10月1日(または上旬)に改定され、近年は毎年着実に上昇しています。政府が賃上げを政策として掲げている以上、この傾向は今後も続くことでしょう。従って、本年採用した従業員の時給についても、最低賃金で雇用しているとすると翌年度以降引き上げの必要が出てくる可能性があることに留意が必要です。
最低賃金はあくまでも「最低」のラインです。経営者としてはできるだけ最低賃金で雇用したいと考えるかもしれませんが、大都市圏において、通勤の便が悪い地域(例えば都心部)では最低賃金で求人を出してもなかなか人が集まらない状況が続いています。
近隣の同業他社の時給水準も考慮に入れながら時給を決める必要があろうかと思われます。
勤務時間については1週間40時間と決まっています。アルバイト・パートの方で、40時間フルタイムで働く方は少ないかもしれませんが、原則として40時間を超える労働は時間外労働、いわゆる「残業」となります。
また、休憩時間に関しては1日の労働時間が6時間~8時間の場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩を与えなければならないとされています。ちなみに、休憩時間中は、時給は発生しません。その代わり「自由」を与えなければなりません。休憩中に電話の応対や来客の対応のための待機を強いることは「休憩」にはあたりませんのでご留意ください。休憩時間がもったいないということであれば、6時間単位でシフトを組むということが考えられます。
まったくの余談ですが、私(筆者)が学生時代に働いていた食品工場では、1日8時間勤務でしたが、最初にいきなり1時間休憩があり、その後ぶっ続けで7時間の勤務という状況でした。製造ラインに立ち、流れ作業をこなしていくため、交代が来るまでラインから離れられないポジションにいました。
確かに、法令違反とはなっていないのですが、とてもキツかったのを覚えています……
昨今は売り手市場です。キツイ条件では、アルバイト・パートはすぐに辞めてしまうかもしれません。従業員のモチベーションを維持するためにも、あまり無茶なシフトは組まないようにしましょう。