ものづくり補助金とは何か?設備投資に是非活用しよう①
- 補助金、助成金の違いがわかる!
- 申請の仕方、専門家との付き合い方がわかる!
- どんな人が申請できるのかわかる!
皆様、「ものづくり補助金」はご存知でしょうか。ものづくり補助金は、設備投資によって業績を高めたいと考えている中小企業が、設備投資資金の一部について、国から返還不要の「補助金」を受け取れる制度です。
ものづくり補助金の制度は平成24年度にスタートした制度で、毎年少しずつ姿を変えながら中小企業の設備投資をサポートしてきました。例年であれば、公募(募集)が11月頃に始まるのですが、今年は衆議院の解散総選挙が10月にあった影響で公募開始時期が来年2月になると一般的に言われています。
企業にとって設備投資は、事業の拡大において必要不可欠なものである一方、資金的余力の乏しい中小企業においては大きなリスクも伴う重要な意思決定になるかと思います。そうした中小企業にとって「ものづくり補助金」は、事業拡大ための非常に強力な資金調達手段であると言えるでしょう。
しかし、一方で国からもらう補助金は当然ながらあなたも含めた国民の税金が財源となっている訳ですから、守らなければならないルールも多数存在しています。また、詳しくは後ほど述べますが、設備投資を行ったからと言って誰でも当然に受け取れるものではありません。今回から4回にわたって「ものづくり補助金」の制度の概要、採択を受けるためのコツ、ものづくり補助金と同時に申請した方が良い事業計画や助成金などについて説明していきたいと思います。
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まず一番最初にご理解いただきたいのは、「補助金」と「助成金」は似て非なるものであるということです。どちらも国や地方公共団体から一定の資金援助を受けるという性質は同じであるため、両者を混同してしまっている方をよく見かけますが、まずはこれらの違いから説明したいと思います。公的機関から資金的な援助がもらえるという点ではどちらも同じのように思えますが、補助金と助成金には以下のような違いがあります。
両者を比較した際に一番着目していただきたいのは受給要件の部分で、助成金が一定の条件を満たした場合必ず受給できるのに対して、補助金は一定の選定基準に基づき、応募者の中から選ばれた事業主のみが受給できるという点です。また、補助の目的についても助成金が採用・研修・労働環境の改善といった、ビジネスを進めていく上で必要な資源である「ヒト」に関するものであるのに対して、補助金は新技術の開発、販路開拓、新商品・サービスといった「ビジネスそのもの」が評価の対象となるという点が大きな違いです。
「ものづくり補助金」もその名が示す通り「補助金」であるので、設備投資を行うことをもって補助の対象となる訳ではなく、その設備投資によって如何に新しいビジネスや既存のビジネスの効率化を図っていくかということで、補助金が受給できるか否かが決まってきます。ですから、「ものづくり補助金」は一種の「ビジネスコンテスト」であると言えます。この点は大前提として押さえておく必要があります。
こういったことなので、「補助金使って設備投資したいな」という発想ではダメで、「こういう設備投資ならビジネスがこのように発展していくので、ものづくり補助金の趣旨に沿うものだから補助金申請してみようかな」という発想でなければ、応募してもまず受給者として採択されませんから、ご留意ください。
また、補助金、助成金申請についての専門家の関与についても触れておきたいと思います。助成金の申請に関しては、申請者は一定の受給要件を満たしているかどうか確認しながら、相当のボリュームのある必要書類を作成していきます。申請書の作成にあたっては、申請者自ら行ってもよいし、無資格者の第三者に委任してもよいのですが、申請代行を数多くこなしている社会保険労務士に依頼するのが無難であると思われます。
特に、キャリアアップ助成金などは過去に不正受給が社会問題となったこともあり、申請者自ら申請すると、受理されるまで申請書の提出先である労働局とのやりとりが長引くことが多いのに対して、社会保険労務士に申請代行をお願いするとあっさりと受理されたなんて話をよく耳にします。
一方で補助金に関しては、申請にあたって商工会や商工会議所などの公的機関の支援が必要なものがあります。こと「ものづくり補助金」に関して言えば、経営革新等支援機関(通称「認定支援機関」)が申請書に添付する事業計画書の内容について、一定の実現可能性があるか否かどうかを確認し、申請書にハンコをつくことで申請が可能になります。
認定支援機関には、金融機関、地域の商工会や商工会議所、公認会計士、税理士、中小企業診断士などが登録しています。経営者の方々は熱い気持ちをもって設備投資によりビジネスの拡大に取り組む訳ですが、それを具体的に数字に落としこみ、第三者が客観的にみて実現可能性を納得できるような形にするのは一定のスキルが必要です。特に補助金の対象が新規ビジネスに関するものであれば、製品やサービスのニーズに関する市場調査や広報活動といったマーケティングのスキルがなければ実現可能性のある事業計画書は書けません。ですので、専門家のサポートが必要となってくるのです。サポートをしてくれる先として一番多く活用される認定支援機関は金融機関です。
理由の詳細は後ほど述べますが、ものづくり補助金を受けるのに際して、設備投資に関する借入が必要な場合が多いため、金融機関にとってもものづくり補助金を活用して設備投資をしてくれることは、融資の実績作りにつながりメリットのあることなのです。ですので、金融機関にはものづくり補助金のサポートをすることにインセンティブが働くため積極的に申請を応援してくれるはずです。
ただし、すべての金融機関がそうであるとは限りません。金融機関によっては中小企業診断士の資格をもった企業支援の専門職員や商工会・商工会議所のOBなどを抱えて積極的に取り組んでいるところもありますが、信金・信組レベルだとそうした専門的スキルをもった行員が不足しているところもあり、そうした場合には金融機関以外のところにサポートをお願いすることになると思います。
具体的には商工会、商工会議所、独立中小企業診断士(「独立中小企業診断士」という資格は世に存在していませんが、中小企業診断士で経営コンサルタントとして独立している人の割合は有資格者全体と比較するとごくわずかなので敢えてこう呼びます。)などにお願いすることになるかと思います。個人的には経営者の一番身近なところにいて、ビジネスの数字を見ている会計士・税理士が専門家として力を発揮すべきだと思いますが、「コンサル能力のある会計士・税理士は全体の1割にも満たない」と、とある税理士団体の幹部が自嘲的につぶやいているぐらいですから、あまり期待はできないかもしれません。
しかし、御社の顧問会計士・税理士が認定支援機関であり、かつ、コンサルスキルを持っている先生であればこの方に依頼するのが一番良いかと思います。なぜなら、次回以降説明しますが、ものづくり補助金に限らず補助金全体に関して言えることで、補助金は採択されたあとの事務処理が大変であり、経理処理も独特の工夫が必要になってくるからです。
金融機関や商工会・商工会議所、中小企業診断士は採択までは応援してくれるかもしれませんが、事後の事務処理までとなるとそこまで手を回してくれる先は少ないでしょうし、経理の話も絡んでくるので、どうしても顧問会計士・税理士の協力が必要になってきます。であれば、最初から会計士・税理士に頼んでしまえれば手っ取り早い訳です。御社の会計士・税理士が補助金に強い方であればラッキーですね。
あと、誤解をしてほしくないのが申請に関する専門家の立ち位置です。助成金は専門家が「申請代行」してくれます。助成金の種類によっては就業規則の見直しや評価制度の見直しなどが必要な場合もあり、コンサルも同時にしてくれる専門家もいますが、基本的には「書類作り」のお手伝いです。一方で、補助金は専門家が申請のお手伝いをしてくれ、「書類作り」といえば「書類作り」であることには変わりがないものの、「申請内容そのものについては申請者のもの」であるという点です。
説明がわかりづらかったと思うので、具体的に言うと、補助金申請は補助金の対象となるビジネスを数値計画に落とし込んで行います。従って、貴方のビジネスですから、それを自分の言葉で説明できなければおかしいですし、計画を実行するのも貴方の責任において行うこととなります。