アスリート・スポーツ最前線から学ぶリーダーに最も必要なこと
- ボビーに学ぶリーダー像
- 最終決断こそリーダーの仕事
- リーダーの一番大切な役割とは?
こちら側も、それまでの日本人監督のやり方では通用しないことが数カ月で分かりました。そこで私は、徐々に「ボビーが監督として求める情報」というのを先回りしてまとめることにしました。それを持って相談したり、データとして報告したりを続けるようにしました。そんな先読みに遭遇すると、ボビーはちょっとびっくりしたような顔を浮かべ、ニヤッと笑ってウインクする。とてもうれしい瞬間でしたが、その反面、一瞬たりとも油断できないな~と背筋が伸びるような思いもしていました。
ボビーとは6年間、一緒に働きました。厳しい指摘や無茶に感じるような要求も1度や2度ではありませんでした。タスクを任された際に、報告やデータ、そして「なぜその数字が必要なのか」というWHY(なぜ?)の部分は必ず根掘り葉掘り聞かれました。大きなプレッシャーを感じることばかりでしたが、どんな状況においても一貫して助けられていた部分があります。
私が関わっていたトレーニングやコンディショニングの部門は選手にとっても球団にとっても大切なものですが、他方で技術コーチやアスレチック・トレーナーなどとの関係が非常に難しい部門でもあります。なぜなら、トレーニングの導入やボリュームの管理に関して、投手コーチや打撃コーチたちが意見することも多く、往々にして衝突も起こりがちだからです。そんな中で、ボビーは「監督の一存」という決め方を常にしてくれました。リーダーとして一度納得すれば必ず決断をしてくれたのです。
「これはお前に任せることに決めた。他の立場の人間が何を言ってもベストと思う判断をしなさい。俺からそうしろと命令されたと言えばいい」
技術コーチであれ、チーフトレーナーであれ、当たり前ですが最終決断はできないわけです。そんな中で最終的なリーダーである監督が玉虫色の決着をつけるなどで「決断を放棄」してしまうと、やり切れない思いばかりが部下には残ってしまうものです。リーダーの迷い、あいまい模糊とした態度は自信のなさを露呈することとなり、組織がバタバタと浮き足立ち始める可能性さえあります。
決めるための徹底的なディスカッションを行う。そのうえで決める材料がそろったら迷わない。リーダーの一番大切な役割は「責任を負って決断すること」なのだと思っています。責任を取ることを迷わずに果たしてくれるからこそ、部下や仲間はリーダーについていくのです。これはスポーツの現場に限った話ではありません。日々の業務が会社の未来に直結するベンチャー企業の経営者や、立ち上げたばかりの会社こそ、リーダーのぶれない決断が必要でしょう。
コンディショニング・コーチとして私の意見が全て通るわけではもちろんありませんでしたが、その際にもボビーの「俺がこう決めた」の一言があるため、私は全力で監督の下で働くことができました。そうして徐々に信頼してもらえるようになっていったことが今の自分の自信につながっています。
あなたはリーダーとして決断していますか? 迷わずに勇気をもって決断できていますか?
現在は「ヘッド・コンディショニング・コーチ」という立場として、私もリーダーとして自分のチームを見ています。苦しく感じることもありますが、「あいまいな部分を排除し思考し尽くす。納得したら迷わずに決断する」。このことを肝に銘じてグラウンドに立っています。
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