ものづくり補助金とは何か?申請にあたって知っておくべきこと②

ポイント(この記事は7分で読み終わります)
  1. どういったことをすると補助金がもらえるのかわかる!
  2. 何に対して補助金が出るのかわかる!
  3. 補助金がいくらもらえるのかわかる!

「設備投資にものづくり補助金を活用しよう」の第2回です。前回は補助金とはどのような性質を持つものなのか、助成金との比較対比で説明しました。また、どんな事業者がものづくり補助金の制度に応募できるかについて説明しました。第2回目の今回は、どういったことをすると補助金がもらえる(可能性がある)のか、何に対して補助金が出るのか、そしていくらもらえるのか説明します。

特に「ものづくり」補助金という名前から、「製造業」を対象にした補助金であるかのような誤解を受けがちなのですが、今日において圧倒的多数を占めている小売業や、サービス業でも「ものづくり補助金」は受給できます。今回はそのあたりの説明を中心に行っていきます。

第一回目はこちら

どういったことをすると補助金がでるの?

ものづくり補助金は「補助金」という名が示す通り、事業者が一定の支払いをする際に、その支出の一部について補助されるものです。従って、何か新しい支出をしなければ補助金は出ません。これまで「設備投資をすれば補助金が出る」という説明の仕方をしてきましたが、実際は設備投資だけではなく、それ以外の費用についても補助の対象になります。

また逆に、設備投資をすれば何でもかんでも補助金の対象になるかというと、そうではありません。一定の期間内に行われた一定の要件を満たす支出に対して補助金が出ます。これを専門用語でいうと、『「補助対象事業」における「補助対象経費」に対して補助金がつく』という言い回しになります。

では、補助対象事業とは何かについて説明していきましょう。

補助対象事業とは

平成28年度のものづくり補助金を例にして説明していきます。平成28年度のものづくり補助金では以下のような募集形態となっていました。

対象類型による分類
・革新的サービス
・ものづくり技術

事業類型による分類
・第四次産業革命型
・一般型
・小規模型(※小規模型はさらに以下の2つに分類される)
 >設備投資のみ
 >試作開発等

上記のように募集形態に関しては、対象類型による分類と、事業類型による分類で分けられます。この2つの違いを説明するのはかなり難しいのですが、敢えて違いを説明するとすれば、対象類型による分類は『「どんなことをすれば」補助金が出るのか』という分類、事業類型による分類は『「どういったふうに」補助金の対象となる事業をすれば補助金が出るのか』となります。

とりあえず、募集形態はこういう2軸で分類されるということだけ覚えておけば結構です。
 

 

革新的サービス

ものづくり技術

第四次産業革命型

A

B

一般型

C

D

小規模型

設備投資のみ

E

F

試作開発等

G

H

上記の分類の結果、以下のようにマッピングされます。上記のとおり、募集形態は以下の8つのパターンに区分されます。そして、パターンによって採択のされやすさや補助金額の上限が異なってきます。いきなり、こうした説明をされても何が何だか意味が分からないかと思います。まず、比較的分りやすいと思われる事業類型での分類について説明します。

・第四次産業革命型
 IoT、AI、ロボットを用いた設備投資を行う場合

・小規模型
 設備投資や研究開発に対する補助を低く抑えて応募する場合

・一般型
 上記以外

上記のような分類がなされているのは、後述する補助の上限が異なっているためです。後のセクションを見て頂ければお分かりになるかと思いますが、IoT、AI、ロボットを用いた設備投資には、補助金の上限が高く設定されています。ものづくり補助金の究極の目的は、補助金を通じてわが国産業の「労働生産性」を高めることにあり、IoT、AI、ロボットは労働人口減少社会における切り札として考えられているということです。

なお、次回公募のものづくり補助金では、企業間データ連携に関して取り組みをした場合には補助上限が高く設定される制度設計となる見込みと言われています。例えば、企業間の受発注のデータを連携させる(IT用語ではEPIと言います。興味のある方はググってみましょう。)と、購買活動、販売活動、在庫管理など、売り手・買い手双方の事務効率などが飛躍的に向上します。労働生産性を高めるための取り組みとして経済産業省が重視している施策であると言われています。

次に、本質的な「革新的サービス」「ものづくり技術」について説明します。これは説明しだすと長くなるため、次のセクション以降で解説します。

革新的サービスとは

「ものづくり」補助金というから、製造業(第2次産業)の設備投資しか補助金がつかないように思えますが、実はサービス業、いわゆる「第3次産業」の設備投資にも、ものづくり補助金がつきます。その際は、第3次産業に分類される事業者に適用される「革新的サービス」の分類で応募することになります。

「革新的サービス」とはどういったものを指すかというと、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出・サービス提供の改善であり、3~5年計画で「付加価値額」年率3%及び「経常利益」年率1%の向上を達成できる計画』を伴うものを指します。と説明しても、ちんぷんかんぷんかと思いますので要点を説明しますと、一定の設備投資を用いて、

① 革新的なサービスをやる
→他の誰かがやっていなかった「新しい」サービスを提供する

② 革新的なサービス提供プロセスの改善をやる
→他の誰かが思いつかなかったような効率的、または、より顧客満足度を高めるような「新しい」やり方でサービス提供する

③ 「付加価値額」・「経常利益」の向上
→①や②の結果、補助金を受け取った事業者の業績がアップする

ことを指します。なお、③に関して「経常利益」はなじみがあるかもしれませんが「付加価値額」についてはなじみのない方もいらっしゃるのではないでしょうか。詳しくは次回説明します。いずれにしても、③は分かりやすいかと思いますが、①や②はイメージが湧きづらいかもしれません。そこで、上記の定義にも引用されている「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」にいくつか例示がありますので、その中の一つを見てみましょう。

引っ越しサービスを生み出した「アート引越センター」

昭和51 年当時の日本には引っ越し専門業者は殆ど無く、運送業者が片手間にやるものだったため、荷物をトラックで引っ越し先に運んでくれるのみであった。

ある時、寺田 千代乃 氏(現:アートコーポレーション(株)代表取締役社長)は、引越し荷物を満載した大手運送業者のトラックが、降ってきた雨でびしょ濡れになった荷物に慌ててシートを被せている光景を目にし、お客様の荷物が雨に濡れてしまってはどうしようもない、と気の毒に感じた。それがきっかけの一つとなって「お客様はトラックサービスが欲しいわけでも、輸送サービスが好きなわけでもない。お客様が必要としているのは引っ越しだ」と考えた。

また、荷物の運送は引越し作業全体の一部でしかない。それらは家族総出で、親しい人の助けを借りて行われるのが普通であった。そこでトラックによる単なる輸送サービスだけではなく、荷造りからトラックへの運搬、引っ越し先での荷解きと棚への収納までを一つのサービスとする「引っ越しサービス」を作り上げた。これで主婦一人でも手配するだけで引越しが可能になった。

こうして潜在的な引っ越しニーズを掘り起こし、一大市場を作った。(出典:経済産業省 平成27年1月「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」)

この事例では、「引っ越しサービス」という他の誰もやっていなかった「新しい」サービスを生み出しています。すなわち、①革新的サービスを創出しているということです。次の事例を見てみましょう。同じく「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」からの抜粋です。

ビジネス旅客の満足度を追求した「スカンジナビア航空」

1980 年代は、独占的であった航路に競合他社の参入が相次ぎ、航空会社間で乗客を奪い合っている状態であった。そのような中、1981 年に2 年連続で赤字であったスカンジナビア航空の社長にヤン・カールソンが就任した。

カールソンは低価格施策ではなく、顧客満足度を上げる施策をうったが、可能な全ての顧客に対して満足度を上げることは難しい。そこで、狙う顧客を航空業界にて唯一安定した顧客層であるビジネス旅客に定めた。頻繁に出張するビジネス旅客から「世界最高の航空会社」という評価を得ることを目標に置き、ビジネス旅客にとっての価値は何かを考えた。

ビジネス旅客は、一般の旅行客とは異なり単に目的地に着けばよいのではなく、到着先にて会議や商談が待っており、それに間に合うことが肝心である。そのため、運賃や航路よりも、一番大切なものは正確な到着時間である。

そこで、スカンジナビア航空は、正確な時刻で発着する価値を提供することとした。例えば、乗り継ぎ便が遅延してもそれを待たない、乗務員が揃わなくても、規定の最小乗務員数を割らない限り定刻通り出発する、機内食の準備が整わなくても出発する等である。(出典:経済産業省 平成27年1月「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」)

この事例では、航空移動というサービスそのものは変わりがないものの、

・乗継便を待たない
・既定の最小乗務員数を割らない限り定刻通り出発する
・機内食の準備が整わなくても出発する

といったように、サービス提供のやり方を既存のライバル航空会社とは全く異なる方法に変えています。

これにより「正確な到着時間」という新しい価値を生み出した結果、航空会社にとって最も「おいしい」客層であるところの、ビジネスパーソンに深くリーチしたということになります。これが、②の「革新的なサービス提供プロセスの改善」に該当するという訳です。いずれの場合においても、これらのサービスはきちんとマネタイズされているということです。

マーケティングの基本原則として人間の購買欲求は
a. 苦痛・不便からの解放
b. 快楽の享受

といわれており、a>b、すなわちaのほうがbよりも強い購買欲求を引き出すといわれています。

上記の2つの事例はいずれも「引っ越しが大変」、「会議や商談に間に合わずビジネスチャンスを逃してしまう」といった苦痛を見事に解消しており、かつ、そういったお悩みを抱えた方々が相当数いて、きちんとそうした方々に価値を伝えることができた結果、サービスがヒットして、マネタイズできたということになります。

マネタイズするということはすなわち、「③「付加価値額」・「経常利益」の向上」(業績アップ)ということであり、①や②を思いついても、③の要件を満たすような計画をつくらなければ採択されません。その辺の詳しい話は次回にでもしていきたいと思います。

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