面接の達人がフランチャイズ・ビジネスを制す!

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フランチャイズはアルバイトで出来ている!

フランチャイズ・ビジネスは驚くほどアルバイトスタッフを必要とします。以下にフランチャイズの代表的業種のアルバイトスタッフの最低必要人数を表にしています。

いかがでしょうか?

自宅で営業できるハウスクリーニングは、ご夫婦でお仕事をするなら外部からのアルバイトを雇い入れする必要はありませんが、その他のフランチャイズ業種は実にたくさんのアルバイトスタッフを必要とします。起業家であるフランチャイズ・オーナー以外はすべてアルバイトということになりますから、フランチャイズ・ビジネスの経営資源である(人・モノ・金・情報)の人の部分はほとんどアルバイトスタッフで構成さることになります。

ということは、フランチャイズ・ビジネスでは、いかにアルバイトスタッフを活用できるかが、おのずと重要なポイントになってくるのです。

アルバイトの活用が下手なフランチャイズ起業家!

しかし、フランチャイズ・オーナーにビジネス上で悩んでいること、苦しんでいることを聞いてみると、必ず『アルバイトスタッフの戦力化の実現』が上位にランクインしています。この傾向はここ20年変化なく、長年『アルバイトスタッフの戦力化の実現』はフランチャイズ・オーナーの頭痛の種になっているのです。

そして、どのようなことで頭が痛いのかを、何人かのフランチャイズ・オーナーに確認してみると、みな同じように答えるのが『そもそも、すぐに辞めてしまう!定着しない!』というものです。

売り上げに貢献する戦力化どころか、必要人員が揃わないのが現実なのです。フランチャイズ・ビジネスが成功するか否かは、アルバイトの活用にかかっているのに、この現状は誠に由々しき問題です。これからフランチャイズ起業する者としてはこの問題を解決する知識を身につけておかなければなりません。

なぜフランチャイズのアルバイトはすぐに辞めるのか?

フランチャイズ・オーナーの元で雇用されたアルバイトスタッフと、それ以外で雇用されたアルバイトスタッフを比較してみると、フランチャイズ・オーナーが雇用したアルバイトスタッフの方が圧倒的に辞める傾向にあります。

その理由は、フランチャイズ・オーナーはアルバイトスタッフの扱いがとても下手だからです。そしてなぜ下手なのかと言えば、フランチャイズ・オーナーの多くが元々正社員として働くサラリーマンであったことに起因しています。つまり同じ正社員として雇用された部下を教育して会社の戦力にする経験があっても、アルバイトとして採用された人間を教育して戦力化するスキルや経験値を持ち合わせていないのです。

正社員とアルバイトスタッフはその雇用形態だけではなく、仕事に対する意識が全く異なりますので、これは致命的なのです。アルバイトスタッフを共に戦う武器にすることが、激化する競争を勝ち抜く重要な戦略なのに、定着せずに次々にアルバイトスタッフが辞めていくようなフランチャイズ・ビジネスは成功と程遠いといえます。

アルバイトがすぐに辞める要因はギャップにあった!?

アルバイトスタッフの(比較的にすぐに)辞める理由は、勉強が忙しくなった! 家族が病気になった! 引っ越しをすることになった! など様々ですが、それはあくまでも表面上の理由(言い訳)で、本当の理由は、採用される前と、実際に働いてみたギャップなのです。どのようなギャップかというと、

・面接の時に聞いた給与と実際に支払われた給与が違う
・面接の時に聞いた仕事の種類と実際の仕事の種類が違う 
・面接の時に聞いた仕事の量と実際の仕事の量が違う
・面接の時に聞いた勤務体系と実際の勤務体系が違う

このように四つの違い(ギャップ)で、多くのアルバイトスタッフが辞めていくのです。

このギャップの源泉はすべて“面接”にあります。採用される前の段階での面接時に起こっているのです。一つ一つギャップは給与が違う、仕事が違うなど、言った言わないレベルの話なのですが、このような誤解を面接で産んでいるフランチャイズ・オーナーは面接官としての能力に問題があるといえます。

逆に採用されたアルバイトスタッフがすぐに辞めずに定着するケースでは、(話が違う)(聞いていない)などのギャップはありません。定着化が得意なフランチャイズ・オーナーは、言うべきことを必ず言い、聞くべきことを必ず聞き、そして都度すべての要素についての確認作業を怠らない面接官なのです。このような面接官にならなければアルバイトスタッフはすぐに辞めてしまい、その後の戦力化にすることは出来ません。

定着化する方法!戦力化する方法!

即時退職を阻止する方法は優れた面接官になることでした。しかしその後も継続して働いてもらい戦力化するには日ごろのマネジメントが重要で必要で、中でも絶対に明確化しなければならないポイントがあります。そのポイントを以下に列挙しました。

会社や店舗、経営者としてのビジョンの明確化 

どのような人でも組織に所属したい、所属した組織に貢献したいという欲求を潜在的に持っています。ですから所属する会社や店舗、あるいは経営者が目指しているロードマップ(有意義なビジョン)をアルバイトスタッフに明示し、その道程のパートナーであることを伝え続けるのです。そうすれば自分が今従事している仕事の大切さを知ることになり、そしてやりがいが醸成されます。どうせ非正規スタッフだからと軽視せず、いつ辞めるかわからないアルバイトだからこそ、このビジョンの明確化が重要なのです。

給与体系、人事処遇の明確化

給与は仕事に対する対価として最も明白で説得力のあるものです。この給与がどうすれば上昇するのかを明確にし、アルバイトスタッフに日々そのアップを目指ささなければなりません。給与が上がることを経費の上昇として嫌がる人もいますが、人件費の拡大は、該当するアルバイトスタッフの能力で向上であり、ひいては付加価値の向上であるという視点を持つことが大切なのです。賃金が上がる=生活水準が上がる という認識のもとに労働生産性を上げていくことが優秀なフランチャイズ起業家の役割です。また同じように能力の向上に伴って権限を委譲した重要なポジションへと組織での役割を与えていく上手な人事処遇も大切です。

コミュニケーションの明確化

アルバイトスタッフが組織に対する所属欲求と同等に重要視するのが承認の欲求です。つまり自分の意見や話を聞いてほしいのです。これを軽視する人はフランチャイズ・ビジネスで成功することは出来ません。よくある悪いケースが、『何かあったらいつでも相談してください』というケースです。これは(あなたの話を聞く機会を特別設けるつもりはありません!)と同義語で、アルバイトスタッフのコミュニケーションの場所や時間を実質奪っているのです。必ず定期的にアルバイトスタッフの意見や話を聞くようするコミュニケーションの機会を作るようにして下さい。

フランチャイズ・ビジネスで成功するには、“人”という経営資源のほとんどを占めているアルバイトスタッフを必ず戦力に必要があります。アルバイトスタッフが戦力になるということは、フランチャイズ・オーナーが、マネジメント業務に集中できるということになります。マネジメントに集中できれば、アルバイトスタッフの高いモチベーションを実現させ、その高いモチベーションが高いCS(=顧客満足)を実現します。そのCSがフランチャイズ・ビジネスの高い利益につながり、その高い利益が、アルバイトスタッフへの高い報酬につながります。そして高い報酬がアルバイトスタッフのフランチャイズ・オーナーに対する高いロイヤルティになるのです。このような好循環を生み出すことが出来て初めて、フランチャイズ・ビジネスで高い確率で成功をもたらせられるのです。
 

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著者プロフィール

中川 強

中川 強

大谷大学哲学科卒、そごう百貨店に入社。大手フランチャイズチェーン(FC)本部を経て、起業家を育成するコンサルタントとして独立。FC本部出身のコンサルタントにはない経験を磨くため、自ら飲食店系FC本部を立ち上げ計22店舗展開。自らも教育系FCに加盟し計17教室を展開した。現場に強いコンサルティング相談を打ち出し計52フランチャイズチェーンの各種FC企業の全国展開に寄与した。著書に「こうすれば成功するフランチャイズ起業」(自由国民社刊、2007年)など。