従業員を雇ったら作成を考える!就業規則について
- 就業規則は従業員を雇ったら作成しましょう
- 従業員10人以上の場合は作成・届出義務があります
厚生労働省によると、古いデータですが職場のトラブルに関する相談件数は平成20年度の1年間で100万件を超えているとのことです。相談内容としては解雇や雇止め、雇用契約の終了に関すること、そして業績が悪化していることに伴って労働条件の引き下げに類するものの割合が多いはずです。
そしてこれらのトラブルが発生する場合は、経営者が従業員を雇用する際に、労働時間や賃金、退職・解雇に関することなどの労働条件をきちんと明示して雇用契約書をとりかわしておらず会社のルールである「就業規則」を作成していないことなどが原因であるケースが多いようです。
このようなトラブルを未然に防止するためには、経営者と従業員が共に納得した「職場全体のルールづくり」 を行うことが大切です。「職場全体のルールづくり」というのが就業規則の作成です。
トラブルの未然防止こそ就業規則の作成の理由の一つです。また、給与や労働時間などについて明確なルールがあれば、従業員はこれに沿って安心して働くことができ、経営者も安心して経営に専念が出来ます。また新たなスタッフを雇った際にも就業規則がきちんと整備されていることを伝えれば、新入社員の安心材料になり、その会社へのエンゲージメントもアップすることでしょう。
就業規則は、従業員が10名以上の企業に作成と労働基準監督署への届け出が義務付けら れています。
では従業員が10名に満たない企業は作成しなくてもよいということでしょうか。この点については、10人未満であれば義務はありませんが、従業員とのトラブルを防止する、会社のエンゲージメントを強めるという点からすると、作成することをお勧めします。
よく聞くのは、就業規則はあるけれど絵にかいた餅であるという点です。例えばこのような理由で作成する場合です。
・「届出義務を守るため」
・「助成金を受給するためのも の」
という理由から作成する場合です。
そのようなケースでは次のような状態になっていることが多いです。
・「市販のモデル就業規則に社名を入れただけで済ませた」
・「従業員に周知していない」
・「就業規則の規定と実際の職場の労務管理が食い違う」
このように本来の就業規則としての機能を果たしていない場合があるのです。
このような場合ですと本来の趣旨と食い違い、就業規則があることでトラブルの原因となってしまう恐れすらあります。
また、就業規則で作成する前に従業員を雇う場合に労働条件を明示することも必要です。
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従業員を雇う際には、必ず雇用契約書(労働条件通知書)で労働条件を明示することが必要です。
通知書には必ず以下の点を記載しなければなりません。
必ず明示しなければならない事項はこちらです。
④の昇給に関する事項を除いて、必ず書面で明示しなければなりません。
① 労働契約の期間に関する事項
② 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
③ 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに従業員を2 組以上に分けて就業させる場合においては就業時転換に関する事項
④ 賃金(退職手当、臨時に支払われる賃金、賞与及び賞与に準ずる賃金を除く。)の決定、計算及び 支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
⑤ 退職に関する事項 (解雇の事由を含む。)
定めをする場合に明示しなければならない事項もあります。
① 退職手当の定めが適用される従業員の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
② 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)賞与及び賞与に準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
③ 従業員に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
④ 安全及び衛生に関する事項
⑤ 職業訓練に関する事項
⑥ 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
⑦ 表彰及び制裁に関する事項
⑧ 休職に関する事項
このように、労働契約を結ぶ際には、必ず従業員となる方と交わす約束事があることがポイントです。
労働条件通知書は労働局から雛形が出ていますので、参照しましょう。詳しくは、東京労働局から見れます。
就業規則はその名称に関係なくその会社が定める職場のルールや労働条件の規定類を指しています。
賃金規程、育児休業規程や慶弔見舞金規程、旅費規程などもこれに含みます。
また社員は正社員だけとは限りません。パートやアルバイトの方も対象になる雇用する場合がありますので、正社員の就業規則のみならず、パートタイム従業員やアルバイト社員、嘱託社員、出向社員など様々な方を対象にした規定類をさしています。
そして起業したての場合、いきなり正社員を雇うのではなくパートやアルバイトなど雇用形態が異なった従業員を雇う場合もあるでしょう。その場合はそれぞれの従業員が適用される就業規則が必要になります。
もちろん、多様なジャンルの規程や雇用形態の異なる従業員の就業規則を1冊に綴ることが困難である場合にはそれぞれ別の就業規則を作成することができます。
冒頭にこの規定は〇〇〇に適用すると範囲を指定するのです。
就業規則を作成するときは、労働基準法で定める基準を下回ることはできません。
会社のルールだからといって、法律を下回る不利な条件でルールを設定することができないのです。
例えば、法律では最低賃金を定めていますが、会社のルールだからと言って最低賃金を下回る金額を設定することが出来ません。
逆に労働基準法で定める基準を上回る条件は、原則として自由に定めることができます(労基法第13条)。
そして注意点は従業員と個人ごとに賃金などの労働条件を決定する「労働契約」は、就業規則に定める基準を下回ることはできないことになっています(労働契約法第12条)。
このように就業規則は従業員一人一人との大切な約束事となります。法律が改正され条文が追加されるなどの場合はそれに伴ってアップデートをする必要もあります。
常にメンテナンスをして、「常に機能する就業規則」にしておき安心して働ける職場作りをしていきましょう。
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