給与計算と社会保険料の納付方法まとめ
- 保険料の基礎知識
- 徴収と納付の仕方
- 標準報酬月額を見直しを必要になる
社会保険では、従業員の方の給与額によって標準報酬月額が決められていて、その標準報酬月額ごとに決められた保険料を給与から天引きしていることになります。この給与天引きについて、今回はご紹介していきます。
社会保険料といっても健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険と様々の種類があります。そのうち本人(従業員)も払うものは、労災以外の保険料となります。健康保険、厚生年金については、保険料を会社と本人とが折半をし、雇用保険については本人の負担する率が決まっています。また、40歳以上65歳未満の従業員については、介護保険の被保険者となるため、介護保険料も上乗せをして負担をします。
社会保険では納める保険料の額を決定したり給付を決定する際には、給与の額面そのものではなく、区切りがよい幅で区分をした「標準報酬月額」という数字を使います。この区切り良い数字で給付額を決定していきます。
社会保険料は、資格を取得した月から、資格を喪失した月の前月までの分について、月単位で納付をしていきます。日割りでの計算は行われません。原則は前月分の保険料を当月に支払う給与から天引きをして納付をすることになります。月末退職の場合には、当月分の保険料が徴収されるため、合わせて2か月分が天引きされることになります。
保険料は、翌月の中旬頃に納入告知書という書類が年金事務所から発送され、その月の末日までに納付します。自動引き落としの場合には、口座振替の手続きをしておくと便利となります。
考えたくないことですが、同月内に入社してすぐに退社してしまった場合はどうなるのでしょうか。その場合には1か月の保険料を納付することになります。例えば4月1日に入社して4月18日に退社した場合でも、1か月分の保険料の納付が必要となるのです。
社会保険料は負担が大きいと感じる方も少なくありません。期限をすぎると督促状が送られてきて、その納期限までに納めないと、本来の納期限の翌日から延滞金がかかってくるので注意をしましょう。
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年3回以下で支払われる賞与は、1000円未満を切り捨てた額を標準賞与額と呼び、毎月の給与と同じ率を乗じて保険料を算出して納付します。ここでいう賞与というのは、名称は関係なく、賞与制や季節性があるものを指しています。そして労働の対価として年3回以下で支給されるものです。賞与とならないものは、年4回以上支給されるものや、結婚祝い金や大入り袋など労働の対価となっていないものです。また、自家製品を現物として支給したとしても、金銭に換算して社会保険料がかかってくるので注意です。
賞与を支払ったらその際には社会保険料は賞与より控除し、5日以内に年金事務所や、健康保険組合に賞与支払届を提出します。その後毎月の保険料に合算して納入告知書が届きますので、月末までに保険料を納付することになります。
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昇給などによって報酬が大きく変動をした場合には、実際に受ける報酬と社会保険料があまりに差がないように「随時改定」(月変)という手続きが必要となります。
社会保険に加入している人が次の要件をすべて満たした場合に、対象となります。
(ア)昇給又は降給等により固定的賃金に変動があった。
(イ)変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生た。
(ウ)3か月とも支払基礎日数が17日以上ある場合
固定的賃金とは、支給額や支給率が決まっているものをいいますが、その変動には、次のような場合が考えられます。
固定的賃金の変更とは次の場合を言います。
・昇給(ベースアップ)、降給(ベースダウン)
・給与体系の変更(日給から月給への変更等)
・日給や時間給の基礎単価(日当、単価)の変更
・請負給、歩合給等の単価、歩合率の変更
・住宅手当、役付手当等の固定的な手当の追加、支給額の変更
次のような場合には月額変更とはなりません。
・固定的賃金は上がったが、残業手当等の非固定的賃金が減ったため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より下がり、2等級以上の差が生じた場合
・固定的賃金は下がったが、非固定的賃金が増加したため、変動後の引き続いた3か月分の報酬の平均額による標準報酬月額が従前より上がり、2等級以上の差が生じた場合
随時改定に該当する従業員がいる場合、会社は「被保険者報酬月額変更届」により当該被保険者の報酬月額等を速やかに届出します。その結果改定された標準報酬月額は、当年の8月までの各月に適用されます。また、7月以降に改定された場合は、翌年の8月までの各月に適用されます。
添付書類は原則は不要となります。ただし、改定月の初日が、受付年月日より60日以上遡る場合、または標準報酬月額が大幅に下がる※場合には以下の添付書類が必要となります。
※「大幅に下がる場合」とは、原則、標準報酬月額の等級が5等級以上下がる場合をいいます。
①被保険者が法人の役員以外の場合
賃金台帳の写し
固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで
出勤簿の写し
固定的賃金の変動があった月から、改定月の前の月分まで
②被保険者が株式会社(特例有限会社を含む。)の役員の場合
以下の1.~4.のいずれか1つおよび所得税源泉徴収簿または賃金台帳の写し(固定的賃金の変動があった月の前の月から、改定月の前の月分まで)
・株主総会または取締役会の議事録
・代表取締役等による報酬決定通知書
・役員間の報酬協議書
・債権放棄を証する書類
これらのものが必要となります。
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このように給与を支払う際には、社会保険料を控除し国に納めていくことになります。給与計算は単なる事務ではなく社会保険料を計算して納付する事務でもあるのです。
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