スポーツもビジネスも「準備力」が夢実現のカギ

ポイント
  1. 一流選手に共通するのは準備力
  2. 環境と心構え次第で準備力は高められる

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プロ野球やラグビー・トップリーグといったアスリート・スポーツの最前線で、コンディショニング・コーチとして働いている弘田雄士です。

海を渡って米メジャーリーグ(MLB)で活躍している2人の選手に注目が集まっています。親子ほども年齢の離れているその2人とは、既にレジェンドとなっているイチロー選手(44)と、今季初めてMLBに挑戦している大谷翔平選手(23)。

野手にケガ人が続出したことにより、急きょ古巣の「シアトルマリナーズ」との契約が決まったイチロー選手。3週間程度の調整期間しかない中、見事に開幕戦で先発出場を勝ち取りました。大谷投手との対決を前に、残念ながら支配下登録選手から外れ、「会長付特別補佐」に就任。今季の試合出場は叶わないものの、現役続行に含みを持たせています。

一方、ルーキーとして野手では指名打者、投手では1週間に1度の先発という「二刀流」に挑戦している大谷選手。開幕してみると、初打席初ヒット。初先発で初勝利。野手としては3試合連続本塁打を打ち、アメリカンリーグの4月新人選手MVPを獲得。投手としても5月上旬で既に3勝を挙げるなど、下馬評を覆す最高のスタートを切りました。

一流選手に共通するのは準備力

この2人のプレーを見て改めて感じるのは、「準備力の高さ」です。目先の結果や周りの声に流されることなく、与えられた時間の中からゴールを逆算し、「今すべきこと」「集中すること」に対して100%の努力で準備をしてきました。

アスリートのトレーニング指導に携わって17年が過ぎ、関わった選手の数は1000人を優に超えました。日本を代表するサブマリン、渡辺俊介投手(41)。MLBで活躍し日本に戻り、43歳を迎えてもなお抜群のコントロールをみせる上原浩治投手。首位打者を獲得し、今もなお代打の切り札としてチームを引っ張る福浦和也選手(42)。ニュージーランドから帰化し3度の日本代表を務めた「侍(サムライ)」こと、ラグビーのトンプソン・ルーク選手(37)。

アスリートの中でも突出した結果を出し続けた一流選手たちは、一様に高い準備力を有していました。試合前のルーティンだけでなく、1シーズンを通して常に微調整や確認を繰り返し、ベストに近い状態で試合を迎えていたのです。

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環境と心構え次第で準備力は高められる

こんな風に書くと、「そりゃあ、一流選手だからできることでしょ?」と感じる方もいるでしょう。しかし、準備力そのものは環境と心構え次第で高めることができます。私の場合、父が著名なプロ野球選手でした。身長163㎝と、当時のプロ野球で最も「小兵」であった父。ふたまわり以上大きい相手に向かっていくため、相手の癖を盗んだり研究したりと日々のケア、試合日のルーティンなどを徹底していました。

私は、そんなプロフェッショナルである父の姿を目の当たりにしてきました。自然と「なりたい自分」「手にしたい結果から逆算してどれだけ日々準備をしていくのか」が、一歩抜きんでるためのコツであることを理解していました。特別な才能には恵まれませんでしたが、「準備力」の高さが私の今までをつくってくれたと思っています。

野球選手を諦められた思考とは

幼い頃からずっと野球漬けだった私でしたが、大学に進んでしばらくして、ようやく野球選手としてのキャリアを諦めることができました。プロ野球選手になる道を諦めて、何かスポーツに携われる仕事はないかと考えていたとき。真っ先に頭に浮かんだのは俗にいうアスレティック・トレーナーでした。

しかし、テーピングを巻いたり応急処置をしたりといった業務が自分に適しているとは思えずに、モチベーションは全く上がらなかったのです。

そんなある日、ふと高校時代に参考にしていたトレーニングのことを思い出しました。チューブを使った肩のトレーニング。それを広めていたのは元プロ野球選手ではない立花龍司さん。彼の肩書は「コンディショニング・コーチ」。読んだ瞬間、私は「これだ!」と思いました。

コンディショニングコーチであれば、グラウンドでより選手に近いところで仕事ができる。そんな思いから、ストレングス&コンディショニングの仕事について具体的に調べ始めたのです。

どれくらいの知識が必要なのか、どのような人間性が求められているのかについて、情報を集めることに多くの力を注ぎました。

1998年当時はまだインターネットが今のようには普及していません。情報収集には手間も苦労もありましたが、結果的に自分が進むべき道がどんどん明確になっていったことを鮮明に覚えています。

「日本のプロ野球チームでコンディショニング・コーチになる」

新たな夢を持った時、完全に野球選手への未練から解き放たれて、新しい目標に向かって進み出すことができたのです。

準備力を磨け

私の数少ない才能の1つが、「自分の頭で考え抜き、必要だと思うことを行う」準備力です。日本の大学卒業後に、アメリカの大学へ留学しようと準備を始めました。20年前、日本よりも運動科学の分野で進んでいたアメリカでインターンの経験を積みたかったからです。

この時点で英語という問題は全く手つかずのまま。当時の私は英語がまったく話せず、苦手科目の1つでした。しかし、残された時間はたった1年間。

できる限り厳しい環境で英語を学ぼうと思い、英語以外使ってはいけない都内の語学学校に通いました。今はなくなってしまったこの語学学校は、教室にたどり着く前の、施設内に足を踏み入れた瞬間から話していいのは英語のみでした。一度、ホットコーヒーが手にかかり、「あちっ!!」と言ったら罰金1000円を払った、という笑い話もあるほど厳しい環境でした。

まだ見ぬ道を進むために

アメリカの大学選びは、よりチャンスに近づくためにはどうすればよいかという観点で情報収集しました。日本人の真面目さをよく知っていて、なおかつ日本人が少ない場所がよいということで、オハイオ州の大学に決めました。

1番の目標は、MLBの「デトロイトタイガース」の傘下にある、AAAトレッドマットヘンズでインターンをすることでした。同球団のメジャーレベルのチームに木田優夫投手(元日本ハムファイターズ)がいらっしゃったのですが、当時に日本人選手の存在は珍しいことでした。

選手でさえほとんどいない時代ですから、日本人のコンディショニング・コーチはなおさらです。誰かが作った道を歩くことは、先が見えるため心強い反面、競争率も高い。「それなら、自分で新しい道を作っていけばいい」……。そんなふうに考えました。

他の人がしない方法でアピール

渡米後の2カ月間、まずは語学学校に通いました。大学の授業がスタートする前のこの時期、英語の勉強以外でこれだけはやろうと決めて実行したことがあります。それは、私が所属する学部の学部長と先生がたへの挨拶です。学部長に電話でアポイントを取るための文章を用意し、拙い英語で話したことを覚えています。実際にお会いして、インターンが1番の目的であること、日本に戻って、プロ野球チームのコンディショニング・コーチになるのが夢だということを伝えました。

こんなことをする学生は今までにいなかったそうです。印象に残ったようで、その後もずっと目をかけていただきました。約2カ月かけて、先生がたへのあいさつ回りをしました。学部の授業が始まった時に、先生たちが「ユウジ!」と私のことを覚えていてくださったのは、うれしい思い出です。

違いを生むのは「準備力」

目標だったインターンは、まず、キャンパス内のトレーニングルームからスタートしました。すべての運動部の学生と接することができるので、コミュニケーションの取り方を学ぶことができました。さまざまなトレーニングの補助経験は、後々にも役に立ちました。

4年生時からはついに、目標であったトレッドマットヘンズに帯同してのインターンを開始。インターンは簡単にできるわけではないと聞きますが、私は「人の力」に、大して差はないと思っています。

目的に向かって準備ができるかどうかで差がつくのです。目標のインターンの席を勝ち取ることができたのは、徹底した準備と野球選手を尊敬する気持ちを常に忘れなかったからだと思っています。

まずゴールから逆算して、自分の頭から煙が出るほど考える。思いつく限りのゴールに対する短期目標や手段を出したら、後は順番立ててひたすら実行する。準備力そのものは誰でも高められるスキルです。小さな組織や個人で戦う私たちにとって頼りになる武器となる準備力に、もっともっと磨きをかけていきましょう。

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著者プロフィール

弘田雄士

弘田雄士

コンディショニング・コーチ、鍼灸師。アスリート・スポーツの世界でフィジカル強化・コンディショニング指導を専門としたトレーナーとして15年以上活動。MLBマイナーリーグでのインターンを経て、日本のプロ野球「千葉ロッテマリーンズ」のコンディショニング部門などを歴任。現在はラグビートップリーグ「近鉄ライナーズ」にてヘッド・コンディショニング・コーチを務める。著書に「姿勢チェックから始めるコンディショニング改善エクササイズ」(ブックハウスHD、2013年)。全国でのセミナーなども積極的に展開し、「コンディショニング」の重要性を伝えていく活動を展開している。