源泉徴収票とは?内容から発行方法、年末調整まで詳しく解説!

ポイント
  1. 源泉徴収票が必要となるケース
  2. 源泉徴収票の作成時期(年末調整との関係)
  3. 源泉徴収票の記載内容と紛失時の再発行

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確定申告をしたことがないサラリーマンの方の場合、“源泉徴収票”といえば「あの年末にもらう紙?」くらいの認識かもしれません。
しかし、いざ個人事業を始めたり、法人を設立したりして従業員に給与を支払った場合、年末には自分が源泉徴収票を作成しなければならないのです。

特に、従業員のなかに中途採用の方や非常勤の方がいる場合、源泉徴収票を作成する必要があるのかどうか、どのように作成すればいいのかの判断に迷うケースが多くなります。忙しい年末に源泉徴収票の作成で困ることがないように、作成する必要がある条件などをきちんと確認しておきましょう。

源泉徴収票の概要

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源泉徴収票とは、1年間で従業員などに支払った給与の金額と、源泉徴収した税金の金額を記載した書類のことです。

給与所得があった人が確定申告をするさいには添付しなければならない書類ですが、第三者が発行する信頼性の高い書類ですので、以下のような場面でも必要となることがあります。(※なお、e-Taxの場合には、税務署からの求めに応じて提示する必要がある)

源泉徴収票が必要となるケース

  • 住宅ローンなどの借り入れを行う時

源泉徴収票は、融資を受けようとする人が会社に在籍している事実や年収を証明する書類なので、特に大きな金額を借り入れようとするときには金融機関から提出を求められることが多くなります。

②事故に巻き込まれた場合など、休業補償を請求する時

事故に巻き込まれて入院することとなってしまい、働けなくなってしまった場合には、加害者や保険会社に休業補償を請求します。

そのさい、1日当たりの収入を証明する書類として、保険会社から源泉徴収票の提出を求められることがあります。

③配偶者が配偶者控除を受ける時や、配偶者の社会保険の扶養に入る時

夫や妻の配偶者の年収が一定額以下の場合、配偶者の税金が安くなる制度があります。扶養控除と呼ばれる制度です。

たとえば妻の年収が一定額以下の場合、夫の扶養に入ることで社会保険料を納めなくてもよいという内容です。

なお、2018年1月から配偶者控除の見直しがおこなわれ、これまで最大38万円の配偶者控除を受けられた年収要件が、「103万円以下」から「150万円以下」に引き上げられました(給与所得者の合計所得金額が900万円以下の場合)。制度の対象となるのは「源泉控除対象配偶者」と新たに呼ばれています。また、給与所得者の合計所得金額が1,000万円を超える場合、この配偶者控除を受けることができないことになりました。

制度の適用を受けるには、会社に年収を届け出る必要があり、そのさい、会社から源泉徴収票の提出を求められることがあります。

④ふるさと納税の控除額の上限を知りたい時

ふるさと納税の制度を利用する場合、以前は、確定申告をする必要があったため、サラリーマンの方はあまり利用していませんでした。

ふるさと納税は、自分が生まれ育った故郷を離れ、都会で働く人が増えたことから、ふるさとに納税する手段を確保するために誕生した制度です。「納税」という言葉が付いているものの、実質的には故郷に対する「寄付」ですが、確定申告をおこなうことで、寄附額の一部が所得税や住民税から控除されるというものでした。

しかし、平成27年から一定条件を満たした場合には確定申告をしなくても、翌年の住民税を減額することで調整してくれる「ワンストップ特例制度」が導入され、ふるさと納税を利用するサラリーマンの方が増加しています。

ふるさと納税を利用できる金額の上限は個人ごとに異なりますが、情報サイトなどで計算することができます。そのさいに必要な情報は源泉徴収票に集約されていますので、源泉徴収票を手元に置きながら計算すると大変便利です。そのため、従業員のなかには、「ふるさと納税を効率的に利用したいので12月中に源泉徴収票を交付してほしい」という人も近年増えています。

ちなみに、直近にてニュース等でもすでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、ふるさと納税の返礼品に対し、問題視されていると言う事実が話題となっています。

元々ふるさとに納税をすると言う試みで始まっている内容に対し、返礼品を豪華にする事によって、納税者の目をわざと引くような、一見するとただの通販ではないか?と思われてしまわれそうな内容のふるさと納税が起きてきているからです。

勿論、お金を使う以上は豪華な物に目を惹かれてしまうと言う気持ちは分かりますが、しっかりとルールを守っている自治体を利用するべきだと言えるでしょう。

源泉徴収票の作成義務者

源泉徴収票は、その年に給与・退職金を支払った場合に、給与を支払った者に作成する義務が発生します。つまり、個人事業主や会社が作成義務者となります。

このほか学校、官公庁、財団などの法人(人格のない社団を含む)が作成義務者となります。ただし、個人事業主のうち、常時2人以下の家事使用人のみに対して給与の支払いをする場合については、給与・退職金ともに源泉徴収をする必要がなく、また源泉徴収票の作成義務もありません(所得税法第184条・第200条)。

源泉徴収票の作成時期(年末調整との関係)

原則として、以下のいずれかのタイミングで作成することとなります。

①年末調整を終えた時

その年最後の給与を支払う場合に(通常は12月最後の給料日)、年末調整する必要があるでしょう(いくつかの例外を除く)。

実務上、翌年1月に入ってから年末調整をすることが多いのですが、年末調整の結果と、その結果を反映した源泉徴収票を翌年1月末までに税務署に届けなければならないので、それまでに源泉徴収票を作成する必要があります。

なお、従業員のなかに中途採用の方がいる場合で、中途採用者がその年に他の会社で給与を受け取っていた場合は、給与を受け取っていた会社の源泉徴収票がないと年末調整ができません。

しかし、会社のなかには退職者に源泉徴収票を交付しないところも多いので注意が必要です。中途採用されるまで複数の会社でアルバイトをしており、どの会社からも源泉徴収票が交付されていないというケースも実務上はよく目にします。

所得税法上、会社は年末調整をおこなうことが義務付けられています。年末調整の必要性を認識しながらこれを怠った場合、「10年以下の懲役または200万円以下の罰金」に科せられる可能性があります(所得税法第240条)。」

その場合、すべての会社に源泉徴収票を交付するよう請求をするのですが、請求してから実際に交付されるまで時間がかかるケースが多く、年末調整に間に合わなくなるケースがあります。中途採用の方がいる場合にはその年に給与を受けたすべての会社から源泉徴収票が発行されているか、早めに確認したほうがいいでしょう。

また、「給与所得者の扶養控除等申告書」や、その年に給与を受けた他の会社が発行した源泉徴収票を従業員が提出しない場合には年末調整ができませんので、年末調整をしていない源泉徴収票を発行し、従業員の方に確定申告をしてもらう必要があります。そのさい、従業員の源泉徴収票の摘要欄には「年調未済」と記載する慣習がありますので、忘れずに記載しましょう。

  • 従業員が退職した時

従業員の方が退職した場合、退職日から1か月以内に源泉徴収票を作成し、退職した従業員に交付しなければなりません。したがって、その従業員が退職後に実家に帰る予定であるなど、転居する予定がある場合には、転居先を聞いて早めに準備しておくなどの必要があります。


弥生の会計ソフトで簡単申告

源泉徴収票の作り方~ソフトを使って簡単作成

以前は源泉徴収票を手書きしなければならなかったため、多くの方に給与を支払っている会社の事務作業は膨大でした。しかし、現在はアプリなどを利用した自動作成方法が複数あるため、そのような手間をかける必要は少なくなってきています。特に、以下のような方法で作成している方が多くなりました。

①エクセル(Excel)で作成

個人の有志の方や税理士事務所などが、簡単に源泉徴収票を作成できるエクセルファイルを提供しています。無料で利用できることがほとんどで、作成枚数が少なければ手軽に利用できるメリットがあります。

ただし、現在の法令に適合していない可能性や計算結果に誤りがある可能性もあるので注意しましょう。計算結果をきちんと検算して誤りがないかどうか確認するなどの注意を払い、くれぐれも自己責任で利用する必要があります。

  • 給与計算ソフトで作成

市販されている給与計算ソフトを利用すれば、それまで給与支払のたびに入力していたデータをもとに、自動的に源泉徴収票の作成が完了します。とても便利に利用できますが、ソフトの購入費用や毎月の利用料など、費用がかかるという欠点があります。従業員が多い法人の経理担当者などにオススメの方法となります。

③国税庁のe-Taxソフトで作成

あまり知られていませんが、国税庁のe-Taxソフトにも源泉徴収票の作成機能が備わっています。作成したデータを利用して電子申告まで行えますので、使いこなせば大変便利な方法となります。

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支払調書との違い

源泉徴収票とよく混同される書類に支払調書があります。その違いを簡単に言うと、源泉徴収票は「給与所得・退職所得を支払った場合に作成するもの」に対して、支払調書は「給与や退職金ではなく、報酬・料金・契約金などのうち、法律で定められた一定のものを支払ったさいに作成するもの」となります。

つまり、アルバイトの方も含めた従業員の方に作成するのが源泉徴収票で、外注先などの事業者に作成するのが支払調書です。

国税庁によれば、支払調書は「報酬、料金、契約金および賞金の支払調書」となります。弁護士や税理士、会計士に対する報酬、ライターに対する原稿料、イラストレーターに対するイラスト料、講演料などがこれに該当します。

源泉徴収義務者であって、1年間でその支払った人に対する金額が5万円以上となる場合、翌年1月31日までに支払調書を税務署に提出しなければなりません。

支払調書の対象となる報酬はこのほか、「外交員、電力量計の検針人、プロボクサー、キャバレーなどのホステスに対する報酬、料金」「馬主に支払う競馬の賞金」「プロ野球選手、プロサッカー選手に支払う報酬、契約金」「社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬」となっています。

なお、源泉徴収票を作成して、従業員の方に交付することは法律で義務付けられていますが、支払調書は必ずしも相手に交付する必要がありません。あまりに多くの外注先がある場合など、交付による負担が大きいようであれば交付しないことを検討してもいいでしょう。

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