イノベーションの真髄はPPAP!?既存の二つを組み合わせることで生まれる化学反応が社会を変える!
- イノベーションってなに?定義や型はあるの?
- 課題思考的な人間になるために必要な共感力
- 多面的に物事を捉えることで見えてくる社会課題
- イノベーターを育てるために必要なリスク管理
- 5.これからイノベーションを起こす全ての人に伝えたいこと
中川)大阪大学からきました中川功一と申します。私は、イノベーションを学問として扱うということを志しまして「アカデミーの力を現場に!」ということをモットーに活動しています。
多くの方が感じていると思いますが、偉い先生が話していることほど抽象度が高く、明日を生きる知識にはなりにくいというイメージがあると思うんですよ。私はこれが問題だと思うんです!たとえば会計学は、100年以上昔の人がどうやってお金を管理すればいいのかわからなくて、ちゃんとそれを学問として落としこもうという観点から発展してきたものです。同じように、どうやったらものが良く売れるのか考えた結果がマーケティングだったり。経営学の分野って、現場に困っている人がいて、それを解決していこうという考えで学問が発展してきたんです。なのに、学問から現場にフィードバックする際に、あまりにも複雑だったり抽象的だったりして「どうだ?お前らわからないだろ!」「わかるようになったら話をしてやる」という姿勢で、学者が話していることが問題なんです。
なので、とりわけ難しい言葉は使わずに、「明日の力になるための学問」を、私は伝えていきたいと思っています。
伊藤)イノベーションって、いろんな人がフワッとした概念を持っていると思うんですけど、平たく言ったらイノベーションってどんなものだと考えますか?
中川)「イノベーションとは新結合、つまりニューコンビネーションである」と、100年くらい前のイノベーション学の父・シュンペーターが定義しています。それはどういうことかというと、ピコ太郎のPPAPと一緒なんです!これがイノベーションの真髄なんです!
PPAPポーズで解説をする中川先生
例えば、近年の偉大な発明の一つがGoogle検索ですけど、これも言語の解析アルゴリズムとインターネットをコラボしただけなんですよね。ヒーロー×あんぱん=アンパンマン、今日本で世界的に成功している「ベビーメタル」というバンドもアイドルとヘビメタの融合から生まれています。
「既存の二種類のものを組み合わせたときにイノベーションが起こる」、これがイノベーションの定義です。
でも、イノベーションというのは、第一には個人の栄達です。そこにある根源的な欲求は「有名になりたい!」「お金持ちになりたい!」「なにか社会に爪痕を残したい!」などでいいんだと思うんです。その結果、世の中で必要とされているものが充実していって、社会が少しずつよくなるわけです。それは科学的にも厳密に検証されていることで、唯一、国の経済成長度を決めているのはイノベーションの度合いなんです。どれくらい野心を持って、イノベーションにチャレンジした人がいるかによって、経済成長率は変わってくるのです。
伊藤)原動力は自分のためであっても、結果として社会に貢献されているということですね!結局、目の前のお客さんを、今・未来を含めて、最大に喜ばすことが結果としてうまくいくことなんですよね。
中川)これは科学的に検証されていることなんですけど、結局のところ売り上げを上げようと思った時、どういう態度で商売をすれば一番儲かるかというと、「社会ニーズに対応すること」なんです。現状の社会をみて、そこに問題を何も発見できないとそれは「起業の種」にはならないんですね。
私がお会いした、ありとあらゆる起業家の方は、ある意味、社会に対して批判的でいらっしゃるんです。それは単に不満を持っているとかっていうことではなく、皆さんが世の中にいろんな問題を発見しているというのは、それはまさしく顧客志向だというか、課題志向なわけです。
例えば、インドの街中でバイクに乗っている夫婦を見たとします。「とっても素敵だな」とか「インドって女性の地位が低いんだよね」ということではなく「この奥さんが着ているサリー(※インドの女性が着る裾が長いドレス)が、タイヤに巻き込まれたら危ないんじゃないの?」という問題意識を持つとします。するとそこから「タイヤの後ろにサリーガードをつけてみよう!」という発想が生まれるわけです。たかだか金属の棒をぐにゃっと曲げただけの品ですが、インドでは年間1000万台くらいのバイクが売れるわけですから、このサリーガードがそのうちの数100万台くらいに着くと考えると、商売として成り立つわけです。結果、このサリーガードを売った会社はインドで大成功しているんです!
サリーを着てバイクに乗るインドの女性
科学者の立場からすると、課題を発見する能力が優れている方が成功するイノベーターの条件だと思います。それはつまり、お客さんや社会にどういう課題があるのかということを常に考えており、結果としてそうした力が鍛えられている人だということです。