【第25回】シニア起業で勝ち組になる秘訣〜中小企業オーナー社長14の悩み
- 中小企業オーナーへの理解を深める
- 顧問招聘の真の目的を知る
- オーナーの悩みに答える
「顧問」の売り込み先である中小企業の社長は全員オーナー(資本金の全額を出資している者)です。よって中小企業の社長は「オーナー社長」と呼ばれています。資本と経営が分離していません。株主即経営者です。これに対して、大企業の社長は組織内の成り上がりです。
部長⇒事業部長⇒本部長⇒執行役員⇒取締役⇒常務⇒専務という長い長い階段をのぼりつめてやっと得た地位が代表取締役です(これを社長と呼ぶ)。任期は2年、再選されて4年、ここで一般に退任し、力があれば代表取締役会長になります。
2年、再選されて4年、その後「顧問」で数年を過ごします。この後は会社とは赤の他人の関係。オーナー社長は同じ経営者といっても自社に対する思い入れはまったく違います。「裸一貫」から会社を立ち上げ「会社=自分」なのです。たとえ会社が赤字であっても自分は無報酬にし、銀行借り入れによって従業員には毎月きちんと給与を支払います。
会社と一生心中する気で一心不乱に経営に取り組んでいます。借り入れにあたり銀行には自宅の土地と建物を抵当に差し出している場合もあります。オーナー社長はいつでも借り入れできるようあらかじめ「根抵当権」を設定しています。赤字がかさんで倒産すればすべてを失います(文字通りすってんてんです)。だから毎日の経営に必死です。だからケチなのです(会社のカネは自分のカネと思っている)。
顧問料を決めるとき、支払うとき、費用対効果を都度見極めながら行っていることを顧問はあらかじめ留意した上で対応することが肝心です(親しき仲にも礼儀ありの姿勢と態度が大切)。ところがひとたび信用するとトコトン信用する。
大企業の社長のなかで、自分の財産を抵当に入れて会社のために銀行借入して経営している社長は皆無です。大企業出身者は、大企業意識を一日も早く払拭することが自営業成功へ途です。オーナー社長の経営判断の基準はつねに目先の「儲かるか儲からないか」だけです。オーナー社長に「私の言う通りこうすれば儲かります」と持ちかけることが顧問契約獲得の鉄則です。
オーナー社長の特性三つ。ケチ、人を信用しない(一旦信用するとトコトン信用する)、利益より資金繰り⇒不況になれば赤字受注でもいいから取って来いと従業員に発破をかける(現金が欲しいから)。オーナー社長の「こころ」を理解せずに営業活動しても顧問(経営コンサルタント)は決して成功しません。反面、毎日の厳しい環境での経営からなんとか脱却し、創業の理念に立ち返り理想の経営をしたいという強い願望を持っています。そのために他人の支援を求めています。
大企業経験者の知見、経験、ノウハウ・スキルを求めています。上から目線ではなく、評論家のようなコメントではなく、あたかも身内のような間柄で親身になって相談に乗ってもらうことができ、的確な指針なりアドバイスをしてくれる人(顧問といってもよく、またコンサルタント、エグゼクティブ・コーチといってもよい)を求めているのです。
ここが商機です!
自分の強みを見える化しこれをもって、オーナー社長の心情をよく理解した上、売り込み戦略と戦術を展開することによって顧客を確保することができます。
「顧問」の売り込み対象は中小企業のオーナー社長です。中小企業の特質、オーナー社長の特性を熟知することによって成約効率を上げることができます。
中小企業は、我が国の592万7千企業(「平成26年経済センサス・基礎調査結果」総務省統計局)のうち、99.7%を占めます(590万9千社)。大企業は0.3%に過ぎません(17,781社)。JPX日本取引所グループの発表によれば、全国の証券市場への上場企業はわずか3,595社です(残りの14,186社は子会社・関連会社と考えられるので、3,595社と同一の価値観とみてよい)。さらに中小企業のうち、95%が同族企業(オーナー社長)と言われています(561万4千社)。
初代のオーナー社長は一般に「裸一貫」からたたき上げ企業を育て上げた人物であり、独特の価値観を持っています。大企業に勤務していた人の常識は3,595社の中でしか通用しないことを認識しなければなりません。もちろん、官公庁・行政機関等に勤務する人の常識は大企業のそれと大きくは変わりません。
中小企業に勤務する人からみると、大企業に勤務していた人の常識は非常識だとみられていることに、一刻も早く気付かなくてはなりません。気付かずにいるとせっかく顧問契約できたとしても、組織不適合を起こし、即、契約解除となる羽目になります。
中小企業には原則として定年制はありますが、幹部社員については定年制はありません。顧問についても同様です。オーナー社長に気に入られ右腕(幹部同様)になることができれば、自身が働く意欲がなくなるまで契約を継続することができます。
オーナー社長と一緒に頑張れるか、オーナー社長との面接時、どれだけ腹を割った面談ができ相互理解を図ることができるかが顧問契約獲得の鍵になります。
大企業での常識が、中小企業では非常識と思われることが多いことをよくよく考える必要があります。
顧問契約を狙う業界、業種、特に契約締結を志望する会社の情報収集と、オーナー社長と共にその会社で「骨を埋める覚悟」をベースにした意識改革をいかに早くするかが、顧問契約獲得の勝敗の分かれ目となります。企業をよく研究せずに、しかも意識改革せずに運よく顧問契約を締結できた人は、極めて短期間で契約解除に追い込まれる可能性が高いのです。
それでも3~4回、期間満了前の契約解除を繰り返すと徐々に上がる学習効果によって、以後このようなことはなくなります。当人やその家族にとって、この間の精神的、経済的不安、先行き不透明感は計り知れないものがあります。
そのようなことにならないために、顧問先となる企業の組織風土をよく理解し、十分な情報と意識改革をもって臨まなければならないのです。