小さな会社こそ新人研修・教育を徹底することの重要性

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 新人研修・教育というと、社員数の多い大企業が行うもので中小企業には必要ないと思いがちですが、実は社員30名以下の会社こそ、社員の定着率を上げ、一人一人のパフォーマンスを高めるためにも、新人研修・教育をしっかりと行っておくことが重要です。

その理由を、次の項目に沿ってご説明したいと思います。


1.   なぜ新人研修・教育が必要なのか?
2.   小さな会社が新人研修・教育から得るものとは?
3.   中途社員でも新人研修・教育をするべきか?
4.   新人研修・教育の狙いとは?
5.   新人研修・教育を成功に導くために必要なこととは?
6. 新人研修・教育を社内で行うか?社外に任すか?
 

1. なぜ新人研修・教育が必要なのか?

新卒社員が入社してすぐに新人研修・教育を受ける主な理由の一つは、社会の中で働いていくには、学生から社会人へと直ちにマインドチェンジして、社会人としての自覚と責任をしっかりと持つことが必須となるからです。ゆとり教育の順位を付けない風潮から一転し、企業の戦力となるために最大限の力を発揮するためには、180度意識を変換させなければなりませんが、それを個人個人で行うことはたやすいことではありません。組織として一定の時間をかけて研修や教育を行うことで、社員が会社の理念や社風を理解し、価値観を共有することにより、意識が変換されていきます。
 

2.  小さな会社が新人研修・教育から得るものとは?

社員30名以下の小さな会社が、新人研修・教育に力を入れ、社員一人一人を大切に教育することがいかに重要なことかは、社員の会社へ与える影響力の割合から理解することができます。社員30名以下の小さな会社では、社員数の多い大企業に比べ、社員一人当たりの影響力が大きくなります。

例えば、社員1万人の会社の1人というのは全体のわずか0.01%にしかなりませんが、社員30名の会社の1人というのは全体の3.3%に当たります。この数字を見ただけでも、社員30名以下の小さな会社では、社員一人一人のパフォーマンスが会社の成長に大きく影響することがわかります。しかしながら、年々社員研修に力を入れる企業が減り、研修費を削減する企業が増加する傾向にあります。
(産労総合研究所. 「2019年度 教育研修費用の実態調査」. https://www.e-sanro.net/research/research_jinji/kyoiku/kyoikukenshu/pr_1910.html参照)
適切な新人研修・教育を行うことで、その後の社員一人一人のパフォーマンスの質が大きく変わり、結果的に会社に与える貢献度が何倍にも変わっていきます。

 

3. 中途社員でも新人研修・教育をするべきか?

中途社員はすでに就労の経験があり、改めて新人研修・教育を行う必要はないように思えますが、業界や会社によって規模が変わり、立ち位置や社風のベースとなる理念や規則もそれぞれ異なります。以前の職歴での経験を活かしつつ、仕事の根底をなす価値観は入社する会社に合わせてアップデートされなければなりません。中途社員が新人研修・教育を受けることで、短期間で会社の戦力となることができます。また、中途採用の応募をする側も会社を選ぶ際、下記の理由から、「社員教育あり」の会社を選ぶ傾向があります。


・転職活動の際に、社員研修がある会社だと安心して応募できる。
・中途社員にも新人研修・教育がある会社に対して、誠実な印象を受ける。
・転職前の会社が新人研修・教育が一切なかったので、転職先で研修・教育制度があると自分が成長できると思う。


これらは、キャリアコンサルタントとして長年様々な企業で新人研修・教育を行ってきた私が実際に聞いた声です。このように、募集要項に「社員研修あり」と書いてあることで、応募者数を増加させることができます。
また、中途社員の退職原因は、社内の人間関係の不和によるものが多く、より活躍してもらえるように社員同士の相互理解を深め、定着する人材育成をしていくことが重要です。

 

4. 新人研修・教育の狙いとは?


新人研修・教育を行うことの狙いや目的は様々ありますが、主なものを下記にまとめてみたいと思います。

 学生から社会人になるための気持ちの切り替え

”学生気分”から脱却し、社会における役割が大きく変わることを自覚することが大切です。学生時代までは社会から支えられる側でしたが、社会人になってからは、社会保険の支払いなど、社会を支える側になります。また、企業の一社員として、組織の看板を背負う覚悟を持たなければなりません。

 

 社会人としての常識やマナーを身につける

敬語などの言葉遣い、常識も学生時代の頃のままでは通用しません。社会人としての常識やビジネスマナーの欠如は、会社の業績にも悪影響を与えかねません。最初の段階でしっかりと体得し、また常識やマナーを学んでいくことで、社会人としての自覚が芽生えていきます。

 

コミュニケーション力を養う

企業で働く上では、おしゃべりが上手なことが、コミュニケーション力が高いことにはつながりません。相手の意図を聴く・見る・読む力がコミュニケーション力を上げます。新人研修・教育で、コミュニケーション力とは何かを学びます。

 

 社会人基礎力を高める

社会人になってからは、過程よりも結果が重視されます。結果に対して責任を持つために、受動的ではなく能動的に行動し、社会人としてプロ意識を持たなければなりません。また、給与をもらうとはどういうことか?自分の給与はどのように生み出されるのか?を理解することが大切です。業務の成果と、成果への貢献度により給与が生み出されていることを知る必要があります。

 

 会社の知識やスキルを身に付ける

会社特有のルールや業界慣習、独自の基礎スキル、最低限必要な資格を習得します。

 

 会社の理念や概念を理解する

なぜこの会社が社会に必要なのか?何を提供するのか?それを通してどんな社会貢献をする会社であるのか?会社の規則とは違う、会社の理念や概念、存在意義を改めて理解します。
ただの仕事するのではなく、意義があっての会社・組織・チーム・人員であることをしっかりと意識します。

 

5. 新人研修・教育を成功に導くために必要なこととは?

ここでは、具体的に新人研修・教育を成功させるためのポイントを述べたいと思います。

 会社側が新人研修・教育の目的と目標を明確にする

3ヶ月後、半年後、1年後、3年後、10年後に、社員が会社にとってどういう存在であってほしいか?どういう活躍をしていてほしいか?その時の役職はどうか?を、可能な限り具体的に言語化しておくことが理想です。

 

 会社側が新入社員を受け入れる土台を作っておく

受け入れ側の環境整備やマインドセットなど、何もわからず、不安と期待を持って入社して来る新入社員を受け入れる土台を作っておくことが大切です。自分が知られている、理解されている、と感じなければ変化は生まれません。まずは会社側が新入社員を正しく理解し、受け入れる土台を作っておくことがとても重要です。

 

 それぞれの新入社員の個性を把握する

面接時の印象や面接官のメモを可能な限り開示・共有し、どの様な性格か?どの様な社会情勢の中で育って来たか?を把握し、配属先のイメージを作っておきます。

 

 新入社員育成カリキュラムを作る

3ヶ月後、半年後、1年後、3年後、10年後どういう社員であってほしいかをイメージしておきます。これを元に、特に新入社員研修で達成したいことを明確に設定し、現場へ配属される時に、必要な考え方や基礎知識を身に付けられている組み立てをします。

 

 既存社員の中からオブザーバーを選ぶ

研修時の新入社員の取り組みを見ることで、新入社員固有の特性を理解し、スムーズな現場への導入を考えます。また、研修内容を実際に現場で活かすことができるよう、既存社員が補足することで、より実戦で活かせる研修内容にすることができます。

 

 フィードバックできる手段を確保する 

研修で学んだことを現場で実践していく際に、必ずと言っていい程ズレが生じます。そのズレを正しく理解し、改善、修正、調整できる機能を会社側が準備しておきます。この確かな調整機能によって、新入社員のモチベーションダウンを防ぎ、早期の成長を促すことができます。
 
新人研修・教育は、方法やアイデア次第で、大きく得られる成果が変わってくるので、毎年継続していく中で、新しい情報を取り入れつつ、社会的な情勢や、入社してくる社員の性質も踏まえ、臨機応変に対応する必要があります。

 

6. 新人研修・教育を社内で行うか?社外に任すか?

新人研修・教育は社内で行う方法と、専門の外部講師を招いて行う方法がありますが、それぞれメリット・デメリットがあります。

 社内研修のメリット・デメリット

社内で研修を行う最大のメリットは、費用負担が少ないことです。しかし、準備や研修に時間がかかるため、社員の負担が大きくなります。特に人事担当は、採用と兼務していることが多く、特に社員30名以下の会社ほどその傾向が強くなります。次期の新卒採用と重なり準備に時間が取れず、結局、過去の研修カリキュラムを踏襲して運用することになります。これでは、きめ細かい指導で新入社員が結果を出すことができる研修内容を提供することが難しく、満足いく結果が得られません。また、社内の社員が担当すると、客観的視点が乏しくなり、一方的な考え方を押し付けてしまう傾向があります。

  社外研修のメリット・デメリット

外部講師の公平な立場から、また他社との比較も踏まえ、受講側が理解しやすいように研修を進めることができます。受講側は外部講師に対して、忖度なしに素直な意見をぶつけることができるので、真の資質や、社員では掴みきれない悩みや疑問を把握し解決することができます。また、社員教育の専門家であるため、新たなノウハウや知見から、真に必要なアプローチを提供することができます。外部講師は、社員とは異なる視点で提案や意見を述べることが可能で、社員の特性などを色眼鏡なしに客観的に把握し、改善策を提示できるというメリットがあります。社外研修は費用負担が大きくなることがデメリットですが、費用対効果の観点からすると、導入のメリットは何倍にもなります。外部講師のスキルレベルも様々なので、面談でスキルと相性を見極めることが必要です。スキルレベルが高く、相性の良い講師に出会うことができれば、大きな成果につなげることができます。
 
 

まとめ

以上、様々な角度から新人研修・教育の必要性を述べてきましたが、社員30名以下の小さな会社こそ、新人研修・教育が特に必要なことをお分かりいただけたと思います。

確かに外部講師を招くことで費用はかかります。しかし長い目で見れば、後に大きく功を奏することになります。

時間をかけて採用した社員を大切に育て、長く働いてもらい、社員それぞれが会社の目標に向かって高いパフォーマンス力を出せることは、会社にとっても社員にとっても大きな達成につながることになるでしょう。

 

 

 

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著者プロフィール

岩本 麻希

岩本 麻希

◆立命館大学経営学部卒業

◆国内生命保険会社、総合職として3年間勤務

◆大手百貨店に転職し、2年接客業に従事したのち、結婚退職

◆1週間で専業主婦が合わないと思い、元の百貨店グループの派遣会社へと就職。
営業職、マネージャーを7年するも、実母の看病の為、離職。

◆うつ病の母の介護をしながら、精神科医の秘書を2年経験し、精神世界に惹かれる

◆その後、キャリアコンサルタントの資格を取り、複数社での人事採用、
カウンセリング、セミナー講師などに従事。(担当数は2万人以上)

◆現在は、人事・組織系の研修講師として活動中。
これまでの経験から、人事採用時にお聞きする転職理由の多くは、人間関係。カウンセリングの際のお悩み事も社内の人間関係でした。人間関係が悪い組織は離職率が高く、衰退の一途を辿ります。
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