個人事業主必見! 確定申告後に支払う個人住民税、個人事業税とは?
- 個人住民税・個人事業税とは
- 税額はどうやって決まる?
- 納付期限および確定申告との関係
個人事業主にとって、年間の一大イベントが確定申告です。前年の収支を集計するために、保存していた領収書をまとめて整理するなど時間と労力を使うこととなります。確定申告は毎年3月15日が申告期限ですので、特に2月から3月頭にかけて本業に加えてやらなければならないことが増えて大変ですよね。
しかし、確定申告を終えてホッとしたのも束の間。税金は支払い終わったはずなのに、夏前後に税金の納付書が送られてきます。なぜならば、個人事業主は所得税だけでなく、個人住民税・個人事業税を納める必要があるからです。
今回は個人住民税と個人事業税について、制度の概要、算定方法、納付期限、確定申告との関係などを解説します。これを読んで、突然税金の納付書が送られてきても、慌てず落ち着いて対処しましょう。
まずは、個人住民税・個人事業税とはどのような税金なのかを説明します。個人住民税は、サラリーマンにも納税義務がありますが、通常は会社が天引きして代わりに支払ってくれます。一方、個人事業税は、個人事業主特有の税金です。
個人住民税は、住民に対する行政サービスに必要な経費を、住民に担税力(税金を支払う能力)に応じて広く分担するための税金です。各地方自治体の公共サービスを受けるための費用ともいえる税金ですので、個人事業主だけでなく、サラリーマンなどの給与所得者にも納税義務があります。また、個人住民税は、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と、所得金額にかかわらず定額で課税される「均等割」の2種類からなる税金です。
「所得割」は、年間の所得に税率を乗じ、各種税額控除を差し引いた金額です。所得税と似たような性格の税金となります。一方、「均等割」は、所得に関係なく課税対象となる住民全員が同じ額を負担する税金です。一部例外を除き、どこに住んでいても5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)が課税されます。
個人事業税は、個人が営む事業のうち、地方税法等で決められた事業(法定業種)に対してかかる税金です。法定業種に含まれていなければ支払う必要はありませんが、実際はほぼすべての事業が法定事業に指定されています。そのため、ほとんどの個人事業主が個人事業税を納めなければなりません。個人事業税は、事業所得をもとに加減調整をして、業種ごとに定められた税率を乗じて計算されます。所得税に近いですが、大きな違いもあるので注意しましょう。詳細は次章で説明します。
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住民税申告と確定申告の違い
1章では個人住民税および個人事業税の概要を簡単に説明しましたが、納税者にとって一番重要なのは「いくら納税しなければならないのか」でしょう。税金を納付するために現金を用意しなければなりませんので、金額いかんによっては事業の資金計画に影響が出てきます。
3章で詳しく解説しますが、確定申告後、納付先の地方自治体が税額計算をして、金額が記載された納付書が送られてきます。よって、確定申告のように自ら税額を計算する必要はないのですが、前もって個人住民税・個人事業税の金額がいくらになるか知るためにも、その算定方法をしっかりと把握しておきましょう。
個人住民税は、所得割と均等割の2種類に分けられますが、均等割は所得に関係なく同額の負担となります。よって、所得によってかわる所得割の算定方法を、以下説明します。
所得割の算定方法を簡潔に示すと、
所得割=(所得金額)-(所得控除)×(税率)-(税額控除)
となります。
計算式の作りは所得税と同じと思っていただいて構いません。所得に税率をかけるのが基本で、そこにさまざまな控除項目がついてきます。
個人事業税は事業に関する税金ですので、所得金額のなかでも事業所得が税額の算出のスタートとなります。事業所得(および不動産所得)に加減調整をして税率を乗じることで、個人事業税の税額が算定されます。ここで重要なのは、加減調整の部分です。
加減調整の内容は、次のとおりです。
• 各種控除
所得税と大きく違うポイントの2つ目です。所得税は、基礎控除・医療費控除など多くの控除がありますが、個人事業税は「繰越控除」と「事業主控除」しかありません。「繰越控除」は、赤字や災害損失、譲渡損失に関して一定期間控除を受けることができます。「事業主控除」は、年間290万の控除が受けられます。営業期間が1年未満の場合は月割で控除を受けられます。
簡潔に説明しましたが、「事業主控除」は非常に大きな控除です。年間通じて事業を営んでいれば、無条件で290万の控除が受けられます。規模が小さい個人事業主であれば、この「事業主控除」のおかげで個人事業税がゼロになる場合も多いです。「事業所得-事業主控除290万円≦0なら個人事業税はゼロ」事業所得に、上記で説明した加減調整をした上で税率を乗じます。税率は、事業内容によってそれぞれ定められていますが、3%~5%となっています。
最後に、個人住民税・個人事業税の納付期限を紹介します。所得税は、毎年3月15日までに確定申告をおこなうと同時に納付しますが、個人住民税・個人事業税は納付書が地方自治体から送られてくるので、それに従って期限までに納税します。
所得税と、個人住民税・個人事業税の違いは、前述のとおり自ら税額計算をおこなう必要がないということです。では、どうやって個人住民税・個人事業税の税額が算定されるかですが、これには確定申告が密接にかかわってきます。
個人住民税の納付書は、通常6月の上旬に納税通知書とともに自宅に送付されます。一括納付と分割納付の2つの納税方法がありますが、一括納付の場合は6月末までに、分割納付の場合は4回に分けて各期限まで(6月末、8月末、11月末、翌1月末)に納付しなければなりません。
個人事業税は、8月に納税通知書と納付書が送られてきます。納税は基本的には8月末と11月末の2回の期限までに納める分割払いとなりますが、地方自治体によっては一括で納税できる場合があります。
個人住民税・個人事業税は、所得税とは違い自らが税額計算する必要はありません。納税先となる各地方自治体が税額を計算して、納付書に税額が記載された状態で送られてくるので、個人事業主は送られてきた納付書の金額を支払うだけでよいのです。ここで、地方自治体は個人事業主から所得の申告もないのに、どのように税額計算を行っているかという疑問が浮かびます。
結論から言うと、確定申告の情報を地方自治体が入手しています。具体的には、3月15日までに個人事業主が確定申告を行いますが、この情報が4月に税務署から地方自治体にわたります。そして、地方自治体はこの情報をもとに、個人住民税・個人事業税の税額計算を行い、その結果を納税通知書・納付書という形で個人事業主に知らせてくれるのです。
このように、個人住民税・個人事業税は自ら税額計算する必要はありません。しかし、納付書が送られてきて、いきなり納税額をみてびっくりしないためにも、先ほどご紹介した算定方法をもとにおおまかな金額は把握しておきましょう。また、個人住民税・個人事業税の税額計算の基礎となるのは確定申告ですので、所得税のためだけでなく、個人住民税・個人事業税のためにも正しい確定申告を期限内に確実におこなうようにしましょう。
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