個人事業主なら知っておくべき所得税の基礎知識 計算方法や法人税との違いなど

更新日:2018.05.13

個人事業主にとって一大イベントである確定申告。1年間の所得にかかる所得税の額を計算し、税金を支払うための手続きです。

会社員であれば、勤務先が計算して納税まで行ってくれる所得税ですが、個人事業主は自ら年間の収入と経費を集計して税金計算を行わなければなりません。所得税は、自らが申告・納税をしなければならないので、基礎知識をしっかりと抑えておく必要があります。特に、事業で得た収入と所得税計算の基礎となる所得は違うので注意しましょう。

今回は所得税の基礎知識として、収入と所得の違い、所得税の計算方法を説明します。また、個人事業主として事業を行うか、法人化して事業を行うか、どちらが税金面で優遇されているのかを考えるために、法人税と所得税の違いを紹介します。

1 収入・所得・課税所得の違い

所得税は、1年間(11日~1231日)で得た収入にかかる税金です。しかし、収入すべてに税金がかかるわけではなく、収入を得るために使った必要経費の額や所得控除額を差し引いた「課税所得」の額をもとに、決められた税率を用いて所得税額が計算されます。

税額計算の基礎となるのは、収入ではなく課税所得なので、収入と課税所得の違いを正しく知る必要があります。まずは、収入と課税所得、そしてこの2つの中間に位置する所得の関係を説明します。

1-1 収入と所得の違い

収入は、1年間の売上とほぼ同じと思っていただいて構いません。厳密には、事業上の売上だけでなく、株式の配当や不動産から得られる賃貸収入なども含まれます。年間で稼いだ総売上が収入となります

一方、所得は、収入から仕入原価や事務所・店舗の賃借料、従業員の給与などの経費を差し引いたものになります。これらの経費は、「必要経費」といいます。簡潔にまとめると、収入と所得の関係は以下の式のように表すことができます。

収入-必要経費=所得

1-2 所得と課税所得の違い

所得税額計算の基礎となる「課税所得」は、所得から所得控除と呼ばれる各種控除を差し引いた金額となります。

所得控除とは、家族構成や個人的事情の違いから生じる担税力(税金を負担することができる能力)の違いを考慮して、課税の公平性を図るために所得税額計算にさいして差し引くことができる項目のことです。

なお所得控除は全部で以下の14種類があります。

  • 雑損控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 寄付金控除
  • 障害者控除
  • 寡婦()控除
  • 勤労学生控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 基礎控除

詳細については省略しますが、多額の医療費がかかっていたり、保険料を支払っていたりする場合は、控除できる金額が増えるかもしれないことに留意しておきましょう。また、基礎控除はすべての人が対象となり、38万円を無条件で控除できるものとなります。忘れることのないようにしましょう。最後に所得と課税所得の関係が以下のようになっていることをもう一度抑えておきましょう。

所得-所得控除=課税所得

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2 所得税の計算方法

 前章では、所得税の計算方法の基礎となる、課税所得について簡潔に説明しました。所得税額は、課税所得をもとに以下の式によって算定されます。

 所得税額=(課税所得×所得税率)-課税控除額-税額控除

 課税所得に関しては前章で解説しましたので、ここでは所得税率と課税控除額、税額控除について説明します。

2-1 所得税の税率

 課税所得を求めたあとで、課税所得の金額に応じて下表の税率および課税控除額を使って、所得税額を算定します。

 

課税所得金額

税率

課税控除額

195万円以下

5

0

195万円を超え 330万円以下

10

97,500

330万円を超え 695万円以下

20

427,500

695万円を超え 900万円以下

23

636,000

900万円を超え 1,800万円以下

33

1,536,000

1,800万円を超え 4,000万円以下

40

2,796,000

4,000万円超

45

4,796,000

所得税は、課税対象額が大きくなるほど、より高い税率を用いる累進課税制度を採用しています。そのため、上記の表のように税率および課税控除額が段階的に定められています。

2-2 所得税の控除項目

先ほど所得控除として、所得から減額することのできる各種控除を解説しましたが、それとは別に税率を掛けたあとの所得税額から直接控除できる項目があります。それが、税額控除と呼ばれるものです。

代表的な税額控除は、住宅借入金等特別控除です。これは、住宅ローンを組んでマイホームを新築、取得または増改築等をした場合、一定の要件を満たした場合に、一定期間(10年または15)、税額控除として所得税の負担が軽減される制度です。

個人事業主の方は毎年確定申告を行いますが、サラリーマンでも住宅ローンを組んだ時に住宅借入金等特別控除を受けるときには、自ら確定申告しなければならない、という意味でも代表的かつ有名な税額控除です。

これ以外にも寄附金に関する控除など、さまざまな税額控除があります。前章で紹介した所得控除に比べると利用する機会は少ないですが、税額そのものを控除するインパクトは大きいので、確定申告の最後に必ず税額控除の漏れがないか確認するようにしましょう。

3 所得税と法人税の違い

事業を営むうえで、個人事業主として活動するか、株式会社など会社組織を作って法人化するかでは、手続きや運営方法などさまざまな違いがあります。

ここでは、税金面に絞って個人事業主と法人の違いを説明します。納めるべき税金の違いは一つではありませんが、最大の違いとなる所得に関する税金、所得税と法人税の違いを紹介します。

3-1 税率の違い

最もわかりやすく、大きな違いとなるのが税率の違いです。所得税は、先ほどの表で説明したとおりですが、5%~45%までの累進課税となっています。大きく稼げば稼ぐほど、税金を多く払わなければなりません。特に、課税所得が4000万を超えると、ほぼ半額を税金として徴収されることになってしまいます。

一方、法人税の税率は以下の通りです。

  • 中小法人の所得のうち800万円までは19(平成31331日までの間に開始する事業年度については15)
  • 中小法人の所得のうち800万円を超える部分は23.2
  • 中小法人以外の法人は23.2

ここで中小法人とは、資本金の額が1億円以下の法人、または大法人(資本金の額が5億円以上の法人)の完全子会社でない法人のことを指します。

このように、法人税については中小法人の軽減税率はありますが、基本的にはいくら稼いでも税率は一定です。そのため、一定以上の所得をコンスタントに生み出すことができるのであれば、法人化した方が税率面では優遇されているといえます。

3-2 給与所得控除

所得税と法人税、というよりも個人事業主と法人化の違いになりますが、自らの報酬に関する取り扱いは大きなポイントになります。個人事業主の場合は、事業で手にした所得から所得税額を差し引いた額が自らの可処分所得になります。法人化する場合は、法人から役員報酬を受けるという形で自らの収入を手にします。そして、法人に対しては法人税が、役員報酬に関しては所得税がかかることになります。

税負担が大きいのは個人事業主?法人?

ここで、税金負担が大きくなるのは個人事業主と法人のどちらになるかですが、所得税が累進課税であることから、事業で稼いだ所得すべてに所得税額がかかる個人事業主より、役員報酬として手にした部分のみに所得税がかかる法人の方が、税金負担は一般的に軽くなります。

さらに、役員報酬として受け取った金額は、個人の所得税計算において給与所得に分類されますが、給与所得には給与所得控除が適用されます。これは、給与所得が必要経費を差し引く計算が認められていない代わりに、一定金額を必要経費とみなして控除するための仕組みです。

給与所得控除があるため、役員報酬として受け取った所得からさらに一定額が控除されて税金計算がなされることになります。そのため、先ほど説明したように法人と自らの報酬を切り分けるメリットを受けるだけでなく、給与所得控除分も税額が減ることとなります。

以上から、法人化したほうが節税となる可能性が高くなります。

3-3 青色申告における繰越控除

法人税と所得税の違いとして、青色申告を行っている場合の繰越控除の違いがあります。

青色申告をしている個人と法人については、損失が出た場合、次年度の所得と相殺ができる制度である青色欠損金の繰越控除が認められています。繰越期間は、法人の場合で9年(平成3041日から10年)、個人の場合で3年と違いがあります。もちろん、繰越期間の長い法人のほうがメリットが大きいといえます。

こちらも合わせてお読みください。
個人事業と法人の違いを超わかりやすく解説

4 まとめ

これまで説明してきたように、事業を行ううえで法人化して法人税を納めるのと個人事業主で所得税を納めるのとでは、法人税を納めるほうが有利となるケースが多くなっています。

そのため、節税という観点だけであれば、一定の収入が見込めるのであれば法人化した方がいいと言えます。

しかし、法人化した場合には、個人事業主として活動するときにはかからないコストが発生します。法人設立のための定款の作成や登記にかかるコストや、税理士への支払い、社会保険加入の義務化など、個人事業主として事業を行う分には必要のなかったランニングコストが発生します。

また、地方税である法人住民税には、均等割と呼ばれる所得に関係なく発生する税金があり、赤字であろうが年間7万円を納税しなければなりません。

このように、税金面のメリットと比較しなければならない法人化のデメリットは多数存在します。安易に節税になるからと法人化を考えるのではなく、個人事業主と法人化の2つの選択肢のうち、将来的にコストダウンとなるのはどちらの形態なのかを慎重に比較して判断するようにしましょう。

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