個人事業主なら知っておくべき所得税の基礎知識 計算方法や法人税との違いなど
- 収入・所得・課税所得の違い
- 所得税の計算方法
- 所得税と法人税の違い
事業を営むうえで、個人事業主として活動するか、株式会社など会社組織を作って法人化するかでは、手続きや運営方法などさまざまな違いがあります。
ここでは、税金面に絞って個人事業主と法人の違いを説明します。納めるべき税金の違いは一つではありませんが、最大の違いとなる所得に関する税金、所得税と法人税の違いを紹介します。
最もわかりやすく、大きな違いとなるのが税率の違いです。所得税は、先ほどの表で説明したとおりですが、5%~45%までの累進課税となっています。大きく稼げば稼ぐほど、税金を多く払わなければなりません。特に、課税所得が4000万を超えると、ほぼ半額を税金として徴収されることになってしまいます。
一方、法人税の税率は以下の通りです。
ここで中小法人とは、資本金の額が1億円以下の法人、または大法人(資本金の額が5億円以上の法人)の完全子会社でない法人のことを指します。
このように、法人税については中小法人の軽減税率はありますが、基本的にはいくら稼いでも税率は一定です。そのため、一定以上の所得をコンスタントに生み出すことができるのであれば、法人化した方が税率面では優遇されているといえます。
所得税と法人税、というよりも個人事業主と法人化の違いになりますが、自らの報酬に関する取り扱いは大きなポイントとなります。個人事業主の場合は、事業で手にした所得から所得税額を差し引いた額が自らの可処分所得となります。法人化する場合は、法人から役員報酬を受けるという形で自らの収入を手にします。そして、法人に対しては法人税が、役員報酬に関しては所得税がかかります。
ここで、税金負担が大きくなるのは個人事業主と法人のどちらになるかですが、所得税が累進課税であることから、事業で稼いだ所得すべてに所得税額がかかる個人事業主より、役員報酬として手にした部分のみに所得税がかかる法人の方が、税金負担は一般的に軽くなります。
さらに、役員報酬として受け取った金額は、個人の所得税計算において給与所得に分類されますが、給与所得には給与所得控除が適用されます。これは、給与所得が必要経費を差し引く計算が認められていない代わりに、一定金額を必要経費とみなして控除するための仕組みです。
給与所得控除があるため、役員報酬として受け取った所得からさらに一定額が控除されて税金計算がなされることとなります。そのため、先ほど説明したように法人と自らの報酬を切り分けるメリットを受けるだけでなく、給与所得控除分も税額が減ることとなります。
以上から、法人化したほうが節税となる可能性が高くなります。
法人税と所得税の違いとして、青色申告を行っている場合の繰越控除の違いがあります。
青色申告をしている個人と法人については、損失が出た場合、次年度の所得と相殺ができる制度である青色欠損金の繰越控除が認められています。繰越期間は、法人の場合で9年(平成30年4月1日から10年)、個人の場合で3年と違いがあります。もちろん、繰越期間の長い法人のほうがメリットが大きいといえます。
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個人事業と法人の違いを超わかりやすく解説
これまで説明してきたように、事業を行ううえで法人化して法人税を納めるのと個人事業主で所得税を納めるのとでは、法人税を納めるほうが有利となるケースが多くなっています。
そのため、節税という観点だけであれば、一定の収入が見込めるのであれば法人化した方がいいと言えます。
しかし、法人化した場合には、個人事業主として活動するときにはかからないコストが発生します。法人設立のための定款の作成や登記にかかるコストや、税理士への支払い、社会保険加入の義務化など、個人事業主として事業を行う分には必要のなかったランニングコストが発生します。
また、地方税である法人住民税には、均等割と呼ばれる所得に関係なく発生する税金があり、赤字であろうが年間7万円を納税しなければなりません。
このように、税金面のメリットと比較しなければならない法人化のデメリットは多数存在します。安易に節税になるからと法人化を考えるのではなく、個人事業主と法人化の2つの選択肢のうち、将来的にコストダウンとなるのはどちらの形態なのかを慎重に比較して判断するようにしましょう。
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