スムーズに事業承継を行うために考えておくべきことはどのようなことか?

ポイント
  1. 中小企業は少子高齢化の影響で、事業承継の問題が生じている
  2. 誰に事業を引き継げば良いのかという考え方が分かる
  3. 現在の事業承継の傾向、トレンドが分かる

日本は人口減少であったり、人口減少に伴う労働人口の減少によって多くの中小企業で事業をどのように継承していくかに困っている現実が存在しています。

業績としては問題がないにも関わらず、人材不足で廃業してしまうというのは経済的な損失であり、日本にとっても非常にもったいないということになります。

ここでは事業承継についてフォーカスして、うまくいくためにどのように行ったらいいのかについて考えていきます。

こちらも合わせてお読みください
事業承継との向き合い方① 〜事業承継から目を背けるな!中小企業にふりかかる後継問題〜

誰に事業を引き継げば一番いいのかを考える

事業承継は避けては通れない道

会社経営における事業承継は、今後を左右する重要な取り組みであって、いつかは避けられない大仕事です。

中でも誰に事業を引き継ぐかは、特に肝心なポイントで良く考える必要がある部分です。

従来の承継は親族間で行われることが多く、中でも親から子へ引き継がれるケースが多かったといえます。

しかし近年はその傾向が薄れていますし、考え方が変わってきているので、より広い視野で事業の引き継ぎを検討することができます。親族を優先的に事業承継の対象に捉える必要はなく、むしろ親族以外にも目を向けて選ぶ重要性が高まっています。勿論、子供や親族を除外することは不要ですし、対象に含めた上で幅広く検討を進めるのが理想的です。

親族を引き継ぎの対象に据える場合は、息子や娘を始めとして、それ以外の親族も検討の対象となるでしょう。子供のことは親が一番良く見ていますから、能力次第では有力な引き継ぎ候補となり得ます。近年は女性経営者が増えているので、息子に限らず娘も比較や候補に挙げられることでしょう。

事業を引き継ぐ人物は客観的に判断しなければ大変なことになる可能性も

親の立場で引き継ぎ対象を選定するとなると、贔屓や感情で決めてしまう懸念が強まります。

会社は家族だけのものではありませんし、経営の担い手には能力が求められるので、感情に頼らず理性で考えることが肝心です。

引き継ぎに親族を想定してみると分かるように、経歴や能力に実績も伴わなければ、比較すら難しいことが理解できるはずです。子供を良く理解しているのは親、それはある意味で間違いではないものの、事業承継では無用な考え方で誤りでもあります。

事業を引き継ぐのに相応しい相手を見付けるには、相手の能力を知って分析したり、評価することが不可欠です。

子供もその例外ではありませんし、感情を交えてしまう身近な親族なので、冷静かつ客観的な判断力が経営者には問われます。親族以外の人物を事業承継対象に選ぶのは面倒、と思うのも無理はないことだと思いますが、ここは論理的にどうするのが一番なのかを改めて自身に問い掛けることが必要となるのではないでしょうか。

選択肢はより多い方が良いですし、選択候補に多様性が見られれば、それだけ様々な答えが導き出せるようになります。

社内で候補をリストアップするのもありで、社外に目を向け比較するのも役立つことです。

事業の引き継ぎを考える時は、上手く事業承継が行えるか、期待通りの働きをしてくれるかシミュレーションをすることが大切になってきます。シミュレーションなら失敗しても許されますし、事業承継の比較検討のプラスになる、判断材料が手に入るといった結果に結びつくこともあります。必要なら相手との話し合いの場を設けて、引き継ぎの相手に足る器を持っているか、直接的に評価してみるのが良いでしょう。

事業承継の判断ということは伏せておき、経営者側から近付いて相手の情報を引き出すのも、検討材料を手に入れる簡単な方法の1つです。

経営者の年齢や健康状態によって、引き継ぎにタイムリミットが生じることは珍しくありませんが、焦ってもベストな答えは見付からないものです。

焦りは逆に判断を狂わせますから、できる限り時間を掛けて候補を挙げてみたり、絞り込んで事業承継相手を決めるのも重要です。悩み過ぎるのは問題ですが、あれこれと考えを巡らせて最適な答えを導き出そうとするのは良いことです。人と交流を行えば意外なところからヒントが得られますし、判断に役立つ材料が増えることにもなるので、兎に角一人では悩まず情報を集めましょう。

情報が出揃いさえすれば、リストに加える相手や引き継ぎたいと思える相手の顔が見えてきます。その段階に辿り着くことができると、悩む問題の大きさが小さく見えてくるので、引き継ぎで生じる負担が減って行きます。一番良い方法を選ぶのは誰にとっても難しいことで、失敗しないとも限らないのが、経営者の悩みの種になりがちです。

ただ、可能な限り悩みに悩んで候補を絞り込んだり、周りに根回しを進めておくことでリスクが小さくなります。

どのような状況においても、失敗のない完璧な答えを導き出すのは困難なので、多角的に分析して最適解を見付けるのが得策です。

事業承継の現在の傾向を理解しよう

親族ではない能力重視で事業を承継するケースが増えている

事業承継の現在の傾向では、親族内承継を希望する経営者が減っており、相対的に親族外承継が増えています。

親族内承継の割合が減少している理由には、子供に責任を負わせたくない、または親と異なる道を含めて自分自身で人生を選び歩んで欲しいとの願いが当てはまります。時代が経過するごとに子供は親の後を引き継ぐものだとの考え方は、徐々に薄くなってきておりそれが昨今の変化に繋がってきています。

更に、子供に対する経営者の教育は、親が引退するまで終わらないとの考え方もあります。必要とする能力を持ち合わせていない、それもまた親族内承継を避ける理由の1つですし、経営が難しくなる将来を憂慮して引き継がせないケースも少なくないです。

仮に子供に事業承継を済ませ、後に経営責任が問われることになったらどうするか、という親の心配も現在の傾向に現れます。事業承継で子供に与えられるチャンスよりも、継ぐことで不幸を与えてしまう恐れが、親子間の経営引き継ぎ問題に見え隠れします。

現在の傾向が変わってきている理由は、子供の側の考え方も変化しており、親の思った通りに事業承継が実現しないことも加わります。子供が将来的に後を継いでくれる、これは親の願いであって実際に後を継いでほしいと頼まれる子供本人とは全く関係のないものだからです。

経営者である親が思い込んでいる場合は、いざ事業承継を進めるという段階で子供の本心に気が付き、引き継ぐ相手の選定からやり直す状況に陥る傾向です。前もって親子で話し合ったり、子供の意思を確認しているなら良いですが、親の思い込みで引き継ごうとしても失敗するのは明らかです。そのような親子間のギャップも相まって、親から子へ事業を引き継ぐ割合が減っているのが、現在の傾向の特徴です。

子供が親の会社に入社するのは珍しくないことですが、働く内に経営者には向いていないと感じて、親の要望に対し承継を拒否する場合もあります。

能力重視での事業承継が今後の主流となっていく

反対に、事業承継は従業員を対象に含めた、経営の引き継ぎを行う新しい現在の傾向が強まっています。

従業員数の多い会社であれば、引き継がせたい、もしくは引き継いでもらいたい相手が見付かる可能性が高くなってくることは理解できるのではないでしょうか。

有能で将来性がある人材を身近で探せるわけですから、従業員を事業承継の対象に捉えることは、現在の傾向において合理的で納得できるものであるでしょう。勤続年数が長い従業員は企業風土をよく理解していますし、社員教育を終えて実務経験を積んでいれば、経営者の育成に向けた教育が短縮できるメリットも発揮します。他の従業員、あるいはビジネスパートナーの理解も得やすいので、身近ながらも親族外から選ぶのは合理的な判断です。

ただし、発展性の低下や資金力といった懸念は残りますから、安易に判断したり希望通りの結果になるとは思い込まない方が良いでしょう。ある程度の規模を誇る企業の間では、M&Aで事業承継問題を解消するケースも増えていて、新たな選択肢として現在の傾向の一部になっています。これまではM&Aは大企業の手法だと考えられていましたが、今では中小企業もM&Aの有効性を見出しており、積極的に活用する企業が増えつつあります。

M&Aには従業員がリストラされる、企業が乗っ取られるなどのネガティブな要素の誤解はありましたが、現在では正しい認識が広まり、事業承継などで活かされてきているわけです。

現在の傾向を知って分かるのは、事業の引き継ぎ相手を自分の子供にだけと考える経営者は減少していること、そして幅広い視点で承継が検討されている二点です。検討対象は社内外に及んでいて、必ずしも社内だけで問題の解決が完結するとは限らないことです。合併や買収のチャンスを活かして、賢く事業を引き付いている会社もありますから、従来の考え方に拘ったり縛られるのはもう古いといえるでしょう。

誰を後継者に選んだとしても、新しい経営者の教育を含めて10年は必要だとされていますから、従業員を選定したりM&Aを検討するのは実に合理的です。

相手選びだけでなく、方法やタイミングなどいくつもの要素が絡むので、傾向から分かる通り選択肢は多く用意するのがベストとなります。

こちらも合わせてお読みください
事業承継との向き合い方③~成功する承継と成功しない承継〜鍵を握るたった一つの考え方~

事業承継を成功させるために考えられる方法

事業承継の方法は3種類

事業承継の方法は、主に親族内承継と親族外承継、それにM&Aの3種類があります。

いずれにもメリットとデメリットは存在しており、どの方法を行えば間違いなく事業承継が成功するといった絶対的な方法はないのが実情です。それでも、それぞれの違いや良し悪しを知ることで、事業承継を成功させる良い方法が見付けられるはずです。

親族内承継は周りの理解を得たり受け入れられやすく、心情的なハードルが低いのがメリットです。加えて、後継者が早く選びやすいことや、経営者教育のタイミングが早められることも魅力となっています。財産と株式の相続が行えるので、そういった点でも見逃せないメリットがあります。逆に、親族内の後継者がベストとは限りませんし、候補が多過ぎて選びにくくなるデメリットも生じます。

親族外承継のメリットはやはり、後継者の選定が親族内に限定されないことでしょう。事業承継の内容次第では、現在の経営を大きく変えることなく、引き継いだり継続させられます。ところが、親族ほどの経営意欲を持つ人材が探せるかは別問題で、資金力の問題も親族外の事業承継では浮上します。個人債務保証の引き継ぎでも、親族外承継は問題が表面化しやすかったり、解決に手間や時間が掛かる場合があります。

M&Aは、親族や親族外で適任が見付けられない時、外部に人材と企業を譲って経営を持続させられる方法です。最終手段や最後の保険とも考えられますが、積極的にM&Aを活用して事業を引き継ぐのもありです。身内に引き継がせたい後継者がいなくても、M&Aなら企業ごと社外に任せることができます。意外な人材が見付かるケースもありますから、積極的に社外にアプローチするM&Aは、可能性が広がる魅力的な方法だと考えられます。

何より、会社の売却によって経営者には利益が生まれますし、事業承継も達成しやすくなるので一石二鳥です。買い手を見付けなければいけなかったり、経営の一体性が持続できるかというようなデメリットはありますが、デメリットを踏まえてもM&Aのメリットは魅力的です。

どの方法が一番成功に近いか、こればかりは企業が置かれている状況であったり、引き継ぎに使える時間や残された猶予に左右されます。身の回りにいる人材の層でも違いますし、候補にリストアップできる人物の数や、事業を引き継いでくれそうな後継候補の登場にもよるでしょう。M&Aがベストとは誰にも断言できませんが、少なくとも保険と捉えられたり、もう1つの選択肢と考えることで引き継ぎの幅が広がります。

全部で3つの中から選べるわけですから、比較しながら状況に合わせて、最善の結論を導き出すことが事業承継の成功には必要となってくるでしょう。

おすすめの関連記事

ー事業承継とどう向き合うかにお悩みの方ー
事業承継との向き合い方⑤ 事業を譲る側がすべきこととは〜船に船頭は二人もいらない?〜

ー引き継ぐ側の覚悟を知るー
事業承継との向き合い方⑥~引継ぐ側(後継者)の覚悟とタスク~

関連記事