労務コンサルタントとはどのような存在なのか?必要な資格を含めて紹介
- 労務コンサルティングとはどういうものか、コンサルタントとは、から解説
- 労務コンサルタントに必要な資格はある?
- コンサルタントとして活躍するために必要なことを解説
労務コンサルタントという職業を聞いたことがある方もいれば、初めて聞いたという方もおられると思います。
今回は労務コンサルタントの詳細から必要な資格、また活躍していくために必要なことを解説していきたいと思います。
コンサルタントと聞いて有名なのは経営コンサルタントでしょう。経営のことに関して詳しい専門家が企業運営などにアドバイスを送り、このようなやり方をしていくべきではないかなどをレクチャーしたり、ヒントを授けたりする仕事です。経営者からすれば少しでも儲けを増やしたいと思うため、それに関する意見はいくらでも聞き入れるというのが普通の考え方ですが、その一方で、労務問題にはあまり乗り気にはなりません。そこで登場するのが労務コンサルタントという役回りです。
労務コンサルタントは労務に関すること、例えば人事や雇用などの部分をチェックし、アドバイスを送っていく仕事です。アドバイスを送ることは経営コンサルタントと変わることはありません。専門的な分野が労務関係なのか、それとも経営関係なのか、そこの違いです。経営に対する熱意はどこの企業でも高い一方、労務関係は二の次になっているところがほとんどです。まだ意識は低いものの、政府が主導となって提唱している働き方改革などもあって、今後労務コンサルタントの需要が社会的にあがることが予想されています。
労務コンサルタントの主な仕事ですが、労務管理を経営に活用していくことです。どれだけ経営のことを考えてもそれを支える従業員のモチベーションが下がってはどうにもなりません。しかも、就業規則も名ばかりで訴訟リスクを抱えた状態ではいざという時に大変なことになってしまいます。労務コンサルタントはそのあたりの不備を見つけて、それをチェックしていくような役回りにあります。経営が攻めなら労務は守備といったところですが、守りを固めて失点を減らすような形です。
労務の部分を見ていくと実は相当な分野にわたって問題を対処しなければならないようになっています。採用に関することや賃金の未払い問題、研修の問題や人事制度、就業規則や労働契約書などやらないといけないことは本当に多いです。それらすべての状況を見させてもらって、今後会社を大きく発展させるにはどの部分が甘いのかをチェックできます。経営者は労務関係に疎く、法律改正も知らないことがあるのでそのレクチャーをするのも労務コンサルタントの役割として大切なことなのです。
経営コンサルタントは経営者の茶飲み友達という表現があるように、コンサルタントは基本的に相手の話を聞くのが普通です。その中で経営をどのようにしていくかを考えますが、労務コンサルタントであってもそこは同じ部分です。経営者から話を聞き、どの部分に不満を抱えているのかを聞きます。その際にそのやり方では法律的に微妙であるとか、この方法の方がいいなどの話をしていく過程で労務管理の部分を強化していくような形で進めていきます。
中小企業では就業規則がないところもあるので、これを作る際にヒアリングを行っていきます。今のところの問題点、そして経営者が求める組織とはどういうものかを聞き出し、法律に則った就業規則にアレンジしていくことが求められます。経営者によってはそれではダメだと認めない人もいるので修正作業を行い、完成させれば労働基準監督署に届出を行います。労務コンサルタントは従業員への説明の場に駆り出されて説明をする立場を務めることもあります。
将来的に株式上場を検討している際には上場審査の基準をクリアすることが求められます。そのために労働条件の見直しを行うというのが必要ですが、これを先導するのも労務コンサルタントの大事な仕事です。株式上場以前の話になってしまい、資金繰りに影響を与えることになるのでこの部分をチェックして人事制度なども一緒に整備をして解決していきます。
経営コンサルタントに比べると実際にやるべき内容は多く、しかも経営者にとってみればコストを増やすような感覚に陥りやすいことを伝えていかないといけません。考え方を変えれば、今のうちからリスクを削ることを意味しており、石橋を叩いて安全策をとるために必要なプロセスと思ってもらうことが必要です。そういう意味では屋台骨を支え、より安定した経営を担う重要なポジションです。
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経営コンサルタントに中小企業診断士以外には明確な資格がないように、労務コンサルタントに関してもこれなしではコンサルティング業務ができないというものはありません。ただ、経営労務コンサルタントという資格が存在しています。企業の人事労務に関する改善や指導が行える専門的なものになっており、これをもっているだけで職業として成立するという確かな資格です。労務コンサルタントは社会保険労務士がそれを名乗って行うこともできますが、実際にそうした資格があると、安心して任せることができるようになります。
経営労務コンサルタントには正と補の2つがあります。「補」の方は経営労務の知識をある程度持っている人というニュアンスですが、弁護士や公認会計士、行政書士の資格を持っていれば受験資格が得られるのであとは論文試験をクリアすれば認定が受けられます。ここでの論文試験はいくつかのテーマがあり、その中から選ぶ形になります。いずれも労務管理の分野に関することになっており、自らが重要だと思っている分野に関して論じていくようなことをしていきます。
「正」の方は「補」の認定を受けてから受けられるようになっている他、社会保険労務士として2年以上の実務経験を持つ人や研修会に数多く参加した人、すでにコンサルティング業務を2年以上している人、人事労務の仕事を5年以上している人などに受験資格が与えられます。机の上だけで勉強をしてきた人は受けられず、何かしらの実務経験がなければゲットできないものです。こちらも論文試験が必要ですが、専門的な分野を見つけてそれについて論じていくようなことをすれば大丈夫です。
認定を受ければ登録申請料や年会費を支払えば会員になることができます。会員になれば実際に紹介がなされるため、より信憑性が増すことになります。労務コンサルタントを仕事にする場合は経営労務コンサルタントの資格があれば確実に仕事に困らない状況を作り出すことが容易にはなってくるでしょう。もちろん、それがなければ全く仕事にならないということはありません。労務関係ということなので社会保険労務士の人もなることができ、その方がより実務的なことができるようになります。
労務関係に通じるようなものを取得しておくことで幅広く対応できるようになります。メンタルヘルス・マネジメント検定もその1つです。近年ストレスチェック制度が義務化されており、従業員のストレスチェックを企業が行わないといけない状況になっています。しかも、もし何かしらの問題があった場合には改善をしていかないといけません。そんな時にどのような対処法があるかをレクチャーするためにもメンタルヘルス・マネジメント検定を取得することが求められます。
検定の中では人事総務検定というものがあります。社会保険労務士と同じように労務に関する総合的な知識を得られる検定である一方、認定講座を受ければそれだけで大丈夫というものです。なので、労務コンサルタントの仕事をしながら合間を縫って人事総務検定を受けることも可能ですが、2級になるだけで20万円近い費用がかかるのがネックです。しかし、確実な知識が身につくため、実績がなかなか得られにくいような時期に取得しておくことをおすすめします。
結局、労務関係につながるようなものが必要であり、その代表格が経営労務コンサルタントです。弁護士などの人であれば誰でも受験できるようなものですが、一般人がそれを取得するにはそれなりの時間や立場が必要になり、なかなか簡単に得られるものではありません。だからこそ、それを名乗っていれば確実に労務関係に強いことを示しており、もっておくべきものです。
弁護士を名乗る際に、司法試験に合格してなければ当然のことながら不法に名乗っていることと同じです。コンサルタントはそうしたこととは無縁ではあるものの、コンサルタントの看板の価値を高めるためには様々なものを取得しておいて、強化を図っていくことがこの場合は求められます。
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独立・開業のサポーター!各士業とのうまい付き合い方まとめ
労務コンサルタントの仕事は会社を守る仕事でありながら、より経営に特化して利益を最大限にしていくためのお手伝いをする仕事でもあります。もし雇用関係に不手際があれば、そのことで訴えられ、その事実が世間に公表されてしまって社会的信用を失墜させます。失墜させてからは取り戻すのに結構な時間がかかり、悔やんでも悔やみきれないことになります。過労死などもそうであり、過労死の案件が会社内で発生してしまえば、従業員のモチベーションは致命的に下がってしまいます。
従業員のモチベーションが下がることは利益の最大化を考える経営者的には一番あってはならない状況であり、どうにかしないといけません。リスクを見つけ出し、リスクを消していくお手伝いをするのが労務コンサルタントです。過労死を防ぐために、働き方改革をしていかなくてはならず、この会社では週休3日にしたら業績が上がったとか、働く時間を削ったらその分業務の効率化に成功したなどのことを挙げて、その会社でもしそれをやるなら何をすればいいかを提示していきます。
経営者もそう簡単に労務コンサルタントの話には乗らず、どちらかといえばできるだけ変えないようにしたがりますが、そこはリスクのことを持ち出し、何かあってからでは遅いというスタンスを貫く必要があります。確かに最初だけコストはかかるかもしれないものの、長いスパンで回収していけばいいというスタイルを提示していくことも大事です。その時に具体的な数値を持ち出すなどを工夫していくことができれば、保守的な経営者であっても考え方を見直してくれます。
そもそも労務コンサルタントと契約をする経営者は労務管理に関する問題意識を少しでも持っている人です。聞く耳はちゃんと持っており、後はどのように説得していくか、そこにかかっています。労務コンサルタントとして成功する、活躍するには何がリスクであって何をするべきかを提示し続けることと、その企業のエアポケットはどこかを常にチェックし続けることです。そして、労務管理に関する最近の出来事を常に勉強をすることも非常に重要です。
社会保険労務士の資格などを得ても実務経験がなければ意味がないように、この仕事は何事も経験が大事です。まずは実務経験を積み重ねることが大事ですが、そのために一般企業で労務関係の仕事を探す、社会保険労務士を目指すなどのことをして、経験をつんでから独立を目指すような形が理想的です。
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