個人事業主に必要な経理業務とは〜お金の管理の仕方をカンタン解説!
- 個人事業主の経理業務とはどんなものか分かる
- 個人事業主の確定申告の方法を知ろう
個人事業主は会社員とは違い、毎月決まった給与が自分の生活用の銀行口座に振り込まれるわけではありません。自分で行っている事業で発生した収益から、自ら金額を決めて生活費に充てることになります。
ある意味会社員よりも自由にお金が使えますし、使いたい額だけ生活に回すこともしようと思えばできます。しかし、事業活動や税金などへお金を残さなければいけないですし、個人事業主特有の処理が必要になります。
今回は、個人事業主のお金の管理として、報酬や経費の取り扱いや必要な経理業務、そして税金を支払うための一大イベントである確定申告の方法について説明します。今回の記事を読んで、お金の面で事業と生活の両立をしていただければ幸いです。
個人事業主は、会社とは違い自らの生活と事業が直結しています。そのため、事業で得たお金は自由に使えると勘違いしてしまう方もいますが、事業と生活ではしっかりと区別をつけてお金を管理しなければなりません。
まずは、事業と生活を結ぶ上で重要な個人事業主の報酬と経費についての考え方を説明します。
冒頭で述べた通り、個人事業主は会社員とは違い、一定の金額が毎月個人口座に振り込まれて、それを生活に使うというわけではありません。自らの行った事業から好きな金額を生活用に回すことになります。
ここで、生活に回す金額に制限があるかどうかが気になりますが、法律上は個人事業主の生活費に制限はありません。外見上は事業で得たお金はすべて個人事業主のお金ですので、自由にお金を使ったことで罰せられるということはありません。
しかし、当然ながら事業の運転資金にお金を残す必要はあります。個人事業を行う上では、赤字が発生した場合もすべて自分でなんとかしなければなりませんし、規模が小さい分だけ資金繰りが厳しくなるケースも多いです。
そのため、いくら自由にお金が使えるからといっても、無制限に使っているようだと事業が立ち行かなくなってしまいます。自らの事業の規模や状況に応じて、毎月一定額を生活用に使うように管理した方がいいでしょう。この時、少し事業資金に余裕があれば多めに生活費に回し、資金繰りが厳しそうな場合は生活費として使う金額を抑えるなど、柔軟な資金管理をするのが良いでしょう。
次に、個人事業主が報酬・給与として自らの生活に事業資金を使った場合、経理処理がどうなるかを説明します。
株式会社など法人化している場合、報酬や給与は会社にとっては費用項目になります。経費として処理することができるため、法人にとっては利益が減ることになりますが、その分だけ所得金額が減るために法人税などの税金費用を削減することができます。
しかし、個人事業主の場合は、自らの生活のための給与を経費として費用計上することはできません。納税主体が個人事業主である人そのものになりますので、生活と事業を切り分けて管理していたとしても、税金の計算上は生活と事業は一体として考える必要があるからです。
法人とは違い、個人事業主の報酬は人件費にならないので、節税になると思って生活費を多く使ってしまうと危険ということは覚えておきましょう。
ただし、例外的に給与を費用として計上することができる場合があります。それは、「青色事業専従者給与」です。これは、青色申告を行っている場合に、生計をともにしている配偶者や親族への給与を経費として計上することができるというものです。
青色申告については後ほど解説しますが、青色申告の届け出を行って認められれば、給与や賞与の支給額、賞与の基準を「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載し、その記載通りに給与や賞与を支払った場合に限り経費として計上することが可能となります。
報酬は個人事業主の費用にならないことを説明しましたが、それでは経費はどのような取り扱いになるのでしょうか。
「個人事業主は使ったお金を経費で落とせるから羨ましい」という話をよく聞くことがありますが、当たり前とはいえ残念ながら無制限に出費した分を経費に回すことはできません。あくまで経費は、事業のために支出した費用ですので、費用化にも制限があります。
そもそも経費とは、辞書的には「あることを行うのに必要な費用」という意味の言葉です。個人事業主にとっての「あること」とは、当然個人で行っている費用のことになります。
そのため、事業に関わるものは経費にできますが、事業とは無関係の生活のためだけの費用を経費にすることはできません。
それでは、自宅を賃貸しており、そこで事業を行っている場合の家賃や電気代などの水道光熱費はどのような取り扱いになるでしょうか。
この場合は「家事按分」を行って、事業と生活にそれぞれ要した費用を分けることで、事業にかかった分の費用は経費処理することができます。
例えば、電気代やインターネット接続料金などの通信費の場合は、仕事で使った時間と生活で使った時間で按分することにより、仕事で使った時間の分だけ経費にすることができます。
また、家賃の場合は床面積によって事業用と生活用で按分することになります。この場合、税務署に説明を求められたときにスムーズに対応できるように、仕事場とプライベートスペースをきっちりと分けておいた方がいいでしょう。
賃貸の場合は按分計算が楽ですが、持ち家の場合は少し複雑になります。持ち家の場合も按分計算を行うことは可能ですが、固定資産税・住宅ローンの利子・火災保険料などの住宅を保有することで発生する金額が按分計算の対象となります。
ここで注意すべき点は、住宅ローンの元金そのものの返済分を経費にすることはできないという点です。さらに、所得税や住民税の住宅ローン控除を受ける場合、事業で使用している部分にかかわる住宅ローンに関しては、控除を受けることができません。特に、住宅のうち事業で使用している部分の割合が50%を超えている場合は、一切住宅ローン控除を受けることができません。
そのため、持ち家の場合には経費を計上するか住宅ローン控除を受けるか、ケースによって有利になる選択が変わってきます。どちらか最終的に有利になるかを慎重に吟味する必要があります。
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個人事業主であっても、会社と同様に事業活動を会計的に記録する必要があります。経理業務の必要性については、確定申告のためという理由が一番ですが、日々の業務をきっちりと経理処理することで事業に役立てるという目的もあります。
今回は、先ほど紹介したお金の管理に出てくる個人事業主ならではの勘定科目を紹介します。
前章で紹介したように、個人事業主は事業に使うお金と生活に使うお金を分けて考える必要があります。そして、事業で得たお金を生活に使うときに出てくる勘定科目が「事業主貸」・「事業主借」です。
この勘定科目は、法人では全く出てこないので、会社での経理業務を行ったことがある人でも初耳かもしれません。
といっても、複雑な勘定科目ではありません。簡単に言えば、事業で得たお金を生活に使う場合に「事業主貸」、生活費等を事業に充てた場合に「事業主借」を使えばいいと覚えておけば十分です。
具体例を用いて説明します。例えば、事業で得たお金から生活口座に10万円を振り込んだ場合、
(事業主貸) 100,000 / (現預金) 100,000
上記のような仕訳を切ることになります。
逆に、生活口座から5万円を事業用口座に振り込んだ場合は、
(現預金) 50,000 / (事業主借) 50,000
と、このように仕訳を計上します。
「貸」と「借」がややこしいところもありますが、事業のお金を生活費にした場合は、事業から見て個人事業主にお金を貸していることになるので「事業主貸」、逆に生活費を事業に充てた場合は、事業から見れば個人事業主からお金を借りていることになるので「事業主借」になると覚えておけばいいでしょう。
もう一つ、先ほど出てきた家賃で仕訳を確認しておきます。住宅兼仕事場として借りているマンションの一室の家賃20万円を事業用口座から支払ったとします。
住宅と仕事場の面積の割合が、住宅7:仕事場3の場合(つまり、住宅用家賃が14万円、仕事場の家賃が6万円と按分できる場合)、仕訳は次のように処理することになります。
(地代家賃) 200,000 / (現預金) 200,000
(事業主貸) 140,000 / (地代家賃) 140,000
事業用口座から家賃20万円を振り込みましたが、そのうち14万円は事業主の生活に関するものであり、事業主の代わりに払ってあげたと考えられるので「事業主貸」を使うということになります。
個人事業主特有の勘定で、最初は慣れないかもしれませんが、仕組みは複雑ではないので一度理解してしまえば難なく使いこなせると思います。
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