中小企業は独自化で生き残ろう!kiso barオーナー木曽 信介さん
- 西麻布でkiso barというBARを経営
- お店の黒板は西麻布の名物
- みんなの笑顔が集まるお店
中小企業が生き残っていくための一つの正解が「独自化」していくことなのではないだろうか。
そんな仮説からスタートした、経営者のインタビュー連載「中小企業は独自化で生き残ろう!」。
第3弾は、西麻布で「kiso bar」というBARを経営して4年目の木曽 信介さんです。通りに出している黒板は西麻布の名物になりつつあります。
−今日はよろしくお願いします!11時に起きて草野球行くって入り口の黒板に書いてありましたが、起きれたんでしょうか?
木曽)いや、全然無理でした、今さっき起きました(笑)
−やっぱり(笑)まずは、木曽さんの経歴を簡単に教えていただいてよろしいですか ?
18の時に神戸のBARでアルバイト始めてその店に7年いて、東京に来ないかと声をかけてくださった方がいて上京しました。
その会社は多い時で飲食店を6店舗経営していました。オーナーがいて、最終的にはそこで雇われ社長を経験させてもらいました。12年間ぐらい勤務していました。
それで3年前に独立したって感じですかね 。その間いろいろありましたけど、ざっくり話すとそんな感じです。
−何で独立しようと思ったんですか ?
僕は独立したいというのは全くなくて 、自分で店を持ちたいとかっていうのはそんなに無かったんですよ 。
当時36歳くらいで会社を辞めるという決断をしてどうしようかなと思った時に、自分で独立するか転職かの二択かなと思って、転職サイトに3つぐらい登録しました。
−そうだったんですね!
はい、家族がいたのである程度進路が決まってから辞めようと。オファーメールがいろいろくる中から、よさそうなものがあれば選ぼうと思っていたんですが、オファーが1件もこなかったんです。
うわー、市場に俺のニーズはないんだ!!!と思って(笑)もう自分でやろうと決断した感じです。
−社長までやってたのに、まさかのオファー0件、、、ありえないですね!すいません、面白いです(笑)始めから自分でやろうっていう感じじゃなかったんですね 。
そうですね 。独立が目的で会社を辞めたとか 、準備してきたとか一切なかったので金もなかったですし。2月末に辞めると伝えて4月末に退社して、オープンが6月24日 。結構バタバタでしたね。
−BARって開業するのにいくらぐらいかかるんですか ?
規模とかによりますけど 、この規模でやろうと思うと1200万円から1300万円はかかりますね 。物件の契約からもろもろで1000万円 。プラス運転資金ですね。安くやろうと思ったら全然できるんですよ 。
ただ、BARって雰囲気を楽しむようなところがあるじゃないですか 。長い目で見ると最初にしっかり作っておいた方がいいと思います。
−何でこの場所ならいけるなと思ったんですか ?
ここならいけるなっていうより他に選択肢がありませんでした 。物件って本当に巡り合わせで 、最初はここじゃなくて外苑西通り沿いの近くでやるつもりだったんです 。
工事業者の人を呼んで見積もりもとって図面も引いて、契約直前まで行ってたんですけれども 、契約の内容で食い違いがあってだめになりました。そんなに時間もなかったから慌てて探して、ここが空いていたのですぐに決めました。
−集客はどうやってやろうと考えていましたか?
当時18から36歳までこの仕事をしていて 、ずっと現場もやっていたので 、ある程度は来てくれるだろうなとは思っていました。とりあえずオープンして様子見て、そこから考えようみたいな感じはありましたね 。
−実際オープンしてみてどんな感じだったんですか ?
そこそこですかね、今に比べたら全然少ないですけど。Facebookとかで告知したらそれなりに来てくれました 。この近所で過ごす人達に来てもらわないとだめだなっていうのがあったんで 、落ち着いたらポスティングもやろうと考えていました。
その前に、お店の前に黒板を出してみたら、けっこう効果があったので未だににそれだけでやっています。
−kiso barといえば、この黒板が有名ですよね!いつも笑わせてもらってます。
SNS上にもアップされていて、そこから色んなコミュニケーションが生まれていますよね。始めはどんな内容からスタートしたんですか?
一番最初は次のような自己紹介をしました。
西麻布のみなさん はじめまして
6月24日オープンしました
代表の木曽信介(38才男)です。
以前は田町や用賀で勤務していましたが
ご縁があってここにお店をオープンしました。
ぜひお越しください ー>2F
−どういう反応があったんですか ?
これを出した初日からお客さんがめっちゃ来ました 。本当に毎日来て、こんな効果があるのと思ってびっくりしましたね 。
兵庫県出身です、38歳です。と書いた瞬間に僕も兵庫県出身なんですよ!っていう人が入ってきたり、歳が近いんですねとかで来ましたとかそんな感じですよ 。
お客さんはここに新しい店ができたなというのは分かっているんですよ 。なんなんだろうなみたいな 。ただ、2階のBARなんて入らないじゃないですか。わざわざ行く理由がないし、俺だったら行かないなと思って。
やっぱり知っている人の店に行くし、興味わいた店に行くと思うので、まずはどういう人が働いているとか 、値段も含めてこういう感じの店かなと、わかってもらえたらいいなと思って書いてました。
−これは以前勤めていたお店からやっていたんですか?
木曽)いや、やってないです 。美容院とかによく出てるじゃないですか。例えばご新規さんシャンプー無料をみたいな 。あれ、毎日同じことを書いてるし、誰も見ないだろうなと思ってました。
新規何パーセントオフとかって、常連さんはどう思うのかなとか。俺だったら違うことを書くなとずっと頭の中にあったんですよ 。俺だったら毎日通る人に向けて何か書くなと思っていました。
−なるほど。木曽さんがこれまでどんなメッセージ発信してきたのかは、黒板メッセージをまとめた本『西麻布黒板物語』を読むとよくわかりますよね。木曽さんとスタッフの安井さんの人柄がすごく出ていて、これを読んだらお店に入ってみたくなるのがわかりました。
−この本のリリース以降、Twitterで #黒板同盟 というハッシュタグをつくり、全国の業種業態の異なるお店のオーナーたちがこぞってツイートをするような流れを作ってますね。面白いです!
同じ飲食業界の人たちと比べてここは自分の考え方や行動がちょっと違うなみたいなことってありますか?
どうなんですかね ?僕は変わったことをやっているつもりはないですけど。そんなに違うかな?分からないです。たまたまみんなに興味を持ってもらったっていう話で。
SNSの使い方はいっぱい本を読んだし、ただの告知では誰も見てくれないので興味をもって読んでもらうくらいのことはできるかなとは思います。こんなにやってるバーテンはいないんじゃないですかね(笑)
黒板を書くだけじゃなく、ツイッターでも毎日発信しています。
−SNS の使い方で何か意識していることはありますか ?
人の嫌がることは言わないとか書かないとかっていうのはまず基本ですかね 。誰に向けて書くかみたいなものを思いながら書いてるかな。もちろん毎回ではないですけど 。
僕は結構ふざけてるキャラなので、それだけだとただのバカだと思われるので 、5個ツイートする中の1個ぐらいは真面目なことを書こうかなとか。
自分のタイムライン見ながら ちょっとバランス悪いなとか リツイートばかりしているなとかそういうのは思います。
誰かが見てくれたときに興味持ってもらえるようなタイムラインにしておきたいなっていうのはあります。あとは無理せず毎日やらなきゃとも思っていないし 。
− バランスみたいなこと考えてるんですね。急にサッカーの話題になると真面目なこと言うのはそれだったんですか(笑)
飲食店とか経営されている方でどういう風にツイートしていいかわからない人とか、けっこう多いんですよ 。
僕も飲食店のアカウントをフォローしていますけど、全く見なくなりましたね 。今日は誰々の出勤ですとか全然面白くないから 。
−どういう風にしたらいいんですかね ?
やり方ですか ?店のアカウントっていうよりも個人の方がいいと思いますよ 。まずはそこが出発のような 。
店のアカウントになると一般的な情報、例えばこういうカクテルがありますとか今度イベントやりますとかどうしても告知的なことになっちゃうので、個人名でやった方がやりやすいと思いますけどね 。
−なるほど、それはありますよね 。黒板はみんながやった方がいいですか ?
そりゃ、やらないよりはやった方がいいと思います。僕は毎日たまたま書きましたけど、それはなぜなら毎日通る人に向けて書いているから 。毎日書くことが目的ではないんです 。
目的と手段はいつもよく考えるんですけど、それを履き違えてしまうことがよくあるので、毎日書けないからやめちゃうみたいなのは本末転倒ですよね。
黒板は効果があると思いますよ 、お金かからないし。それってSNSも同じですよね。
−BARってどういう場所なんでしょうかね?
別にお酒なんて家でも飲めるし 、わざわざここに来てもらうって言うのは 、そこにいる人と話をしたりとかお客さん同士が仲良くなったりとかサロンと言うかそういう場所になればいいなと 。
店側が押し付けるのではなくて 。店の雰囲気って集まっているお客さんが最終的に決めると僕は思っているので、どんな人達が集まっているのかなというのはすごく大事だなと思いますね 。
−良いBARをつくるために他に心がけていることはありますか ?
雰囲気とか空気感は大事だと思っています。僕はお酒に特別詳しいわけではないし 、カクテルを作るのも普通だし、もっとすごいことをやっているBARがたくさんあるので 、そこを追求する気はないですね。
僕は全体的な照明の具合とかかかっている音楽、選曲もそうだし音量とか、室内の温度とか、そういうことの方が常に気になりますね。お客さんがパラパラしかいない時と、満席の時で音楽のボリュームとかも変えるべきだし 。
−それはどういう風に変えるんですか?
曲にもよるんですけどね。一番難しいのはお客さんがパラパラの時だと思うんですよ。満席の時は基本的にお客さんの話し声で店が盛り上がっているから何だっていいんです。
パラパラみたいな時に寂しいお店だなみたいに思われたらアウトだと思っているので、お客さんと話をする時はちょっと大きな声で話をしたりもするし、音楽も会話の邪魔にならない一番大きいところまで出すようにします。結構細かいですよね 。
kisobar名物のカツサンドはかなり美味しい
−今回独自化というのがテーマなんですけれども 、いろんな企業、お店が独自化していくためのポイントはどういうところだと思いますか?
みんな人それぞれ個性があると思うので 、それを出していけばいいんじゃないかなとは思います。簡単じゃないと思いますけどね、個性を出すのって 。
トップの覚悟みたいなようなものも必要かと。やっぱり怖いじゃないですか 。
例えばここをウイスキー専門のBARにしようとして、それが個性だとしますよね。でもそれって、ビールを飲みたいお客さんを捨ててしまうことになるじゃないですか。それでもうちはウイスキーでやっていくんだっていう、トップの覚悟のような気がしますね 。
−これは失敗したなっていうようなことってありますか ?
黒板でお客さんをいじったら、そのお客さんが来なくなったっていうのはあります(笑)そういうのは気をつけた方がいいかなとたまに反省するし、それが失敗といえば失敗ですね 。でもそこが逆に他と違うところなのかもしれないですね。
−直近の課題みたいなのってありますか ?
次のお店の出店かな。ちょっと2店舗目がなかなかオープンしないので(笑)
たくさんのお店を持ちたいわけではないんですけど、年齢と共にある程度、仕事を増やしていかないと僕らはずっと同じままだし 、下の子も入ってこれないから尻すぼみになってしまいます。お客さんもともに歳をとるし、若いスタッフだったりとか入れて新陳代謝していかなければいけないとはいつも思っています。
−商売で特に大事なことをあえて3つあげるとしたら ?
独りよがりにならないように 、ちょっとありきたりかもしれないけどお客さんが楽しんでくれてなんぼですから。
−どうやったらお客さん目線で見られるんですか?
他の店に行くとか、自分の店で飯食ってみるとか酒飲んでみるとか。あとは、素直にお客さんに直接聞けばいいと思います。
オープン前からずっと一緒に働く安井さんと
− 飲食店開業とかで検索してうちのメディアにたどり着く人がけっこういるんですよ。これからBARをやろうと思っている人に向けてアドバイスがあればお願いします。
お金は大事です、本当に。BARは中途半端に始めないほうがいいと思います。
例えば20代前半の子がBARをやるって言ったらお客さんもそれくらいの子たちだから、そこまで見ないかもしれないですけど、ある程度の年齢になってくるといろんな店も知ってるし、中途半端なお金のかけ方では難しいと思います。
リピートしてもらうのが大切。そうじゃないと続かないですよ。オープン記念のドリンク半額とか絶対しない方がいいです。
− 経営者になりたての頃の自分にアドバイスをするとしたら?
貯金くらいしとけよ!!!!ですかね(笑)
気づくのおそーーーーーーーーーー!(笑)本日はありがとうございました!
全国からkiso barを目がけて来るお客さんたち。料理やお酒や内装以上に、オーナーの木曽さんに魅力がある事が取材しててよく分かりました。
そしてそこに集まるお客さんたちも最高です。ぜひ一度遊びにいってみてはいかがでしょうか。
独自化連載 第一弾はコチラ
中小企業は独自化で生き残ろう!大阪製罐株式会社 清水雄一郎さん
独自化連載第二弾はコチラ