中小企業は独自化で生き残ろう!白馬ホテル五龍館 代表取締役 中村ゆかりさん

ポイント(この記事は7分で読み終わります)
  1. 他のホテルにはないオリジナルのプラン
  2. 独自化による集客成功と課題
  3. お客様にあわせて変化させていくこと

中小企業が生き残っていくための一つの正解が「独自化」していくことなのではないだろうか。

そんな仮説からスタートした、経営者のインタビュー連載「中小企業は独自化で生き残ろう!」。

第5弾は、白馬ホテル五龍館 代表取締役 中村ゆかりさんです。

白馬ホテル五龍館


−今日はよろしくお願いします!最近、蕎麦打ちやられてましたね!ちょっとうどんっぽい雰囲気もありましたが(笑)

中村)地元の名人に教えていただいて始めてやってみました。お客さんに振る舞うまでは、もうちょっと修行が必要ですね(笑)

白馬は蕎麦の村なので、美味しいお蕎麦を食べることができますよ。

−夏に行った時に食べて、すごく美味しかったです。ちょうどこれから新そばの時期ですね。ぜひ食べに行きたいです。

まずは、白馬ホテル五龍館について簡単にご説明いただけますか。

はい、白馬にある38室の小さいホテルです。創業85年になります。

白馬村自体は8000人くらいの人口の村なんですけど、現在も800軒くらいの小さな宿がいっぱいあります。

この辺りは、着物を着た和風の温泉旅館の成り立ちとはちょっと違うんですね。

もともと山に登る人やスキーの人のために宿ができて、地元の普通の住人たちが民宿をやり、そこから旅館になりという形で発生していったところなんです。

このエリアにスキー場が7つ集結しています。

−僕はリアルタイムで体験してないのですが、スキーブームみたいなのがあったんですよね?『私をスキーに連れてって』という映画があったりとか。

そう、90年代の時はほんとにピークで、五龍館の目の前にある八方尾根スキー場だけでひと冬200万人。

だから90年代の一番儲かった時は、みんな冬だけの営業でじゅうぶん1年間食べていけました。

−いやぁ、そういう感じだったんですね!

はい、悠々自適でそんな状況。バブルがちょっと落ちたかなぁってくらいの時に98年の長野オリンピックのメイン会場だったんですよね。

今の東京オリンピックに向けてホテルがどんどん建っちゃうぞみたいなのと同じで、私たちの小さな村でもみんなが増築したり改装したり。

それがオリンピックバブルで盛り上がっていたのは長野だけで、世の中はとっくにもうバブル崩壊で落ちている時だから、オリンピックが終わった後は一気に落ちて、うちは改築して借金を抱えていたので、それを背負って、さあどうしようかってところで苦労しましたね。

ここでしか体験できないこと

−どんなことから着手されていったんですか?

冬はまだお客さんが来てくれていたんですが、その当時、夏はお客さんが少なかったんですね。大きな観光名所があるわけじゃないし、旅行会社に頼ってもそんなにお客さんを送ってくれるわけじゃない。

だからスタッフと相談して、他では出来ない特徴的な体験を提供できないか考えて、

「キャンプ体験プラン」や「カブトムシを取りに行くプラン」といったオリジナルなプランを作って販売しました。


 

イメージしていたお客さんは、都会で暮らしていて、アウトドアをやってみたいんだけど道具を揃えるのはめんどくさいし、準備や片付けはしたくないという人たち。

家族連れで子供と楽しんで、準備は一切やらないで雰囲気や体験だけ味わいたいという人たち向けに考えました。

今年で18年めぐらいになるんですが、これがうまくいって夏がトップシーズンになるくらいまでいったんですね。

それでちょっと盛り返したというか自信を持って、夏はこれでオッケーだから秋は何をやろうとか、春は何をやろうかという感じでオリジナルで企画をいろいろ作っていったんですよね。

−こういった企画はどうやって考えるんですか?

私たちはネームバリューもないので地域検索もされないし、ホテル検索もなかなかされません。

じゃあ何でいくのかといったら、お客さんが探してるであろうことを見つけることです。

何かの体験や旅先で感じている不満、やってみたいけどめんどくさいことなど、そういったものを全部拾っていきました。

お客さんから、こういうことはできませんか?というお問い合わせがあって、その時は実行できなかったりするんだけれども、そういう声があるなってところから考えていきます。

例えば、お父さんと子どもの2人で泊まりたいっていう問い合わせがあったんですが、一部屋を最大限に提供したいと考えると、大人シングル1、子供シングル1という設定ってなかなか作りづらい。でもそういう要望があることを知ると知らないとでは違う。

ただ、言われたことをそのままプランにすると、ただ要望に答えてるだけ。御用聞きだったら誰でもできちゃう。

そしてそれが本当にホテルにとってプラスな事なのかも考えなくてはいけない。

であれば、そこにもう少し演出を入れて、いつもお仕事で忙しいけど、お父さんと子供の二人旅!一緒に山を登るとか、2人でBBQとか、少しロマンティックなストーリー仕立てにしたプランを作って付加価値を提供する。

そうするとお客様にも興味を持っていただけますし、価格を気にしなくてもいい。

変に単価を上げるとか、高単価商品にするといった考えはなかったんですけど、どうやったらこっちも動きやすく、そしてなにより、お客さまに喜んでいただけるのかを考えて作りました。

−面白いですね。単純にいくと客単価が下がっちゃうところに演出を入れたプランにして付加価値をつけることで、お客さんに喜んでもらえて、結果的に単価を上げることもできるわけですね。

五龍館クラブという会員制度

−逆にこれはやってみたけど失敗したみたいなのってあったりしますか?

はい、あります!

うちのようなホテルは顧客を大事にしていくことで、リピーターを増やしていくっていうのが一番大事だと考えて、一度来てくれたお客さまに対して、「 あなただけに特別な夕食招待プラン 」とか、とにかく「 あなただけに特別プラン 」を企画してお送りしてたんですね。

それから五龍館クラブという会員制度を作ったんですよ。10回泊ると1泊タダっていうものも作って、家族の分もポイントを付けてあげて、2、3回来ると貯まってくるので、じゃそれを使うためにもう一回っていうような形で、すごいヘビーユーザーが増えて行きました。

五龍館クラブは会員数は500人くらいなんだけど、それでも年間の利用者は延べ人数でいくと3000人くらいになったんですよ。

当時、うちの売上の1割くらいはその五龍館クラブのお客様でした。

−すごいですね!いまでいうコミュニティのようなものを作ることができたんですね。旅館業としては理想的な展開じゃないですか!なぜこれが失敗なんですか?

繰り返しリピートしてくれる会員のお客様をつくることに成功したかのように見えるんですが、、、実はこの話にはオチがあります。

10年くらいして何が起きたかっていうと、だんだんとその会員様が偉くなっちゃったんですよ。

もちろん私たちも大切にしたし、来てくれてありがとうございます!って、何回も優待料金であなただけの特別価格ですってのを10年くらい続けて来ちゃったら、あなただけの価格が当たり前になっちゃったんですね。伝わってますかね?

だからと言って特別扱いじゃないとダメだし、「なぜゆかりさんが対応してくれないんだ」とか、「新人のスタッフはイヤだ」とか、「 いつもとサービスが違う!」みたいな会員の方からのクレームが多くなってきて、すごく重たくなってしまいました。

その会員の方の対応に追われたスタッフは、辛い、怖い、から辞めてしまうような状態にもなってしまって。

会員の顧客は素晴らしいもので、もっと企業が大きければ良かったのかもしれませんが、わたしたちのような家族経営的な規模だと一人一人に押しかかってくるもの、求められるものがヘビーになっちゃってうまくいかなかった。これは本当に反省しました。

−お客様との距離感というのは本当に難しいんですね。

そうなんです。この距離感に関してはこれからも課題ですね。きっとどんな商売をされてる方も同じ悩みがあると思います。

近づきすぎだったり、遠く離れすぎだったり、でも片寄るのだけは良くないと思いました。

ちなみに白馬はそのあたりから一気に外国人が増えていったんですよ。スキー場はそれに合わせて外国人のお客様を集客するのにシフトしてそれが成功して、他のホテルは外国人のお客様で満室になっていました。

でも、私は五龍館クラブがあったので、シフトできなかったんです。

会員の方は土曜日1泊だけなんだけど毎年来てくれる人がいて、その人たちの部屋をキープするのには外国人のお客様を入れることができませんでした。

それでも背に腹はかえられないので、少しずつ対応していったんです。3割くらい外国人のお客様を入れたところで、またすごいクレームの嵐になっちゃった。きゃーって。

英語表記のメニューが増えた、とか、タトゥーの入ってる人がお風呂いるとか、常連を大切にしなくなった、とか、もうとにかく色々です。

でも一番多かったのはやっぱり「 以前と違う 」ですかね。

でも実際に比較したら経営的にはありがたいわけです。長くステイしてくれるから。

そこで思い切って外国人のお客様も方も入れよう!と判断したんです。その後のバッシングはしばらく大変でしたけど。

もちろんその時の会員の方で、今でも来てくれるお客様もいて、そういう方にはお手紙も差し上げてますし大事にしてるんですけど、独自化させて集客をして成功したことは、いい面もあれば悪い面もありました。うちは小さいからね。共存が難しかったですね。

−難しい判断ですね。新しいことをやるとかならずそういった批判もありますよね。それを覚悟して決断することが大事なんですね。

そこで学んだのが自分がどのお客さんを選ぶのかってところで、選択したお客さんに合わせてホテルを合わせて行かなきゃいけないと思って。もちろん、こっちが選んだところで来てくれるかどうかは別ね(笑)

他のホテルではやらない、アウトドアやキャンプだとかは五龍館の個性になっていると思うのでその辺は引き出しとして持ちつつ、お客様にあわせて変化させていく必要があると思います。

−お客さんに合わせて変化させていくっていうのは、具体的にどういうことですか?

たとえばうちのレストラン、今のシーズンのシニア層国内旅行向けの時は1泊2食を提供する飲食スペースなのですが、冬のシーズンは完全なレストラン営業なんです。

朝食はホテルのビュッフェですが、夜は完全に別物のレストランに変化させちゃうんです。外来の人も入れてふつうにオーダーを取ってレストランでやるし、BAR営業もするんです。

冬のトップシーズンは外国人のお客様で満室になることも

夜遅く到着する人もあるからBAR でチェックインしてもらう、それは冬のやり方です。こうやって、本当にころころ変えて行くんです。

今までの失敗も含めたいろんな経験値があるから、お客様によって変化させていく事が出来るようになったかな。



 

−独自化していくときのポイントってどういうところにあるんですか?

まず最初は、自分が来てほしいなと思う好きなお客さんを選ぶってことです。たとえば短パン社長のビール部をお客様で迎えてみるとそれがひとつの経験になりました。

その場の雰囲気だとか、あのレストランがこういう空気感になるんだとか、それってお客さんが違うと全部違うんですね。それはお客様に、逆に体験させてもらっています。

こういうのが良いなっていうのは私にしかわからないと思うんですけど、こういうことをやりたいって思った時に、これができるお客さんて誰だろうって探していくんです。

−普通に待ってだけでは、お客さんは選べないじゃないですか?どういう風にすれば選べるようになるんですか?

私も選ぶなんて偉そうなことは言えないんだけど、旅行会社のなんとかツアーをやるのか、自分でじゃらん楽天の企画を作っていくか、短パンビール部みたいなことがやりたいと思えばそういうものを商品に作り上げて売るか、自分で決めることはできますよね。

今ホームページを作るだけではそうカンタンには宿泊してもらえないから、こういうプランを作ったよ。考えてみたよ。っていうのを、最終的に自分のコトバでSNSで発信するなりして、五龍館を好きな人たちに紹介してもらう。拡散してもらう。でもそれが自分がいちばん来てほしいお客さんに届くかなって。

どれをやるかという選択肢は常に自分にある。悩んでいたらダメ。

迷っていたらスタッフも迷わせてしまうことになる。だから常に責任を持って選んでいかないと。まだまだできていませんけどね。


田植え、稲刈りにお客さんと一緒に中村さんも体験

−なるほど、自分で企画して五龍館を知ってる人たちに協力してもらって情報を届けることで、来て欲しい層にアプローチするんですね。SNSの使い方で何か意識していることってありますか?

今年の夏にフォロ割っていうのをやってみました。

フォロ割というのはインスタとFacebookのフォロワーの合計数を足した数を1友達1円で換算して割引しますよというキャンペーンです。


 

このキャンペーンは数字だけで言うとざっくり150万位の売り上げで、実際フォロ割りで使ったお金は5万円ちょっとだったんです。

私たちはいつも評価に晒されていて、旅行サイトを見ればいろんなものが出てきて、悲しいかな日々マイナス評価もたくさんもらうんですよ。

そういった中で今回のキャンペーンに参加してくれた人たちって、そもそも楽しもうと思って来てくれているから、まずそういう批判はありません。

実名ですごい楽しい発信をしてくださって、それがまた人の目に触れていくから、実はすごい効果があったりするんです。

これからもフォロ割は積極的にやっていきたいなと思います。これがSNSの効果なんだなってやってみて実感しましたので。

それと同時期に旅行サイトでは相変わらずダメだねっていう低評価があるんです。

SNSでこれだけ良いよ面白いよって言ってくれる人がいる反面、旅行サイトでダメだあんなところって言ってくるなら、もうやめちゃおうかなっていう気持ちもあります。

簡単には辞められないんですけど、今回フォロ割りで経験したのはそのくらい面白かったです。

−たしかに、あら捜しみたいな評価をする人たちに付き合っていくのはストレスになりますね。

商売していく上であえて重要だと思うことを3つ絞ってあげるとしたらどんな事ですか?

パッション、情熱と

パーソン、人と

あとは、当たり前だけど(笑)お金ですね

やっぱり経営者自身がやるとか、選ぶとか、それがなければ何にも始まらない。

いちばん最初は経営者の情熱っていうか熱量の違いだと思います。

熱があればそこに人が寄ってくるし、情熱がある人のところに共感してくれる人が来るから、人=自分の情熱。

そして、どれだけ情熱があっても、どれだけいい人がいても、お金がないと何もできないからお金は大事よね(笑)


−今後実現させていきたいことは?

今は海外のお客さんが年間で約4割弱なんです。

外国のお客様を集客することにはもちろん力を入れていくんですけど、国内では普通の観光ってなくなっていくだろうなって、ひしひしと感じています。

今は外国のお客様に助けられてるところがあって、このまま国内がしぼみ過ぎると、売り上げが落ちてしまいます。

そうなる前に、今までの旅行とは違う、健康やヨガなどのリトリートみたいな、山に囲まれた環境で自分をリセットしに来るための合宿や社員研修ができたらなって。

この白馬という素晴らしい環境をより多くの人に知ってもらう為に、自分から出向いて、田植えやそば打ちのような体験をして、お客さんに伝えられるような説得力をつけていきたい。

そして来年はこの白馬でみんなと協力し合って、大好きなお客さんたちと一緒にフェスみたいこともやりたいです。


 

- ありがとうございます!自ら体験して、良さや楽しさを実感したものをプラン化していく。

それによって机上のミーティングでは絶対に出てこないオリジナリティのあるプランになりますね。フェス行きます。楽しみにしてます!

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