起業当初は消費税が免除される?免除期間の上手な設定の仕方と落とし穴とは?

ポイント
  1. 起業のタイミングによって消費税が免除される期間が違う
  2. 初期投資が多い場合は、消費税の免除制度はかえって不利
  3. 免税期間であっても消費税は受け取ってよい

目次 [非表示]

第2章 個人事業者で起業の場合

 個人の場合は、暦年が自動的に事業年度となります。
 起業したのが、例えば2019年8月であっても、2019年1月~12月が1年目、2020年1月~12月が2年目というカウントの仕方をします。

(1) 1年目は原則免税

1年目は、2年前という期間がありませんので、自動的に免税期間となります。
設備投資がかさむなど、支払の方が多いことが見込まれるのであれば、敢えて納税義務者を選択する検討をしてもよいでしょう。

(2) 2年目以降はどうなるか

2年目については、1年目の前半6カ月(特定期間といいます)の課税売上高または給与の額が1,000万円以下であれば、2年目も免税期間となり、消費税の支払が免除されます。

前半6カ月というのは、2019年8月に起業したとしても、2019年1月~6月を指しますので、ご注意ください。

もし、1年目に納税義務者となることを選択している場合は、2年目も自動的に課税事業者となります。

(3) どうなると免税期間が最長となるか

設備投資や当面売上が見込めない場合を除いて、消費税の支払の義務が免除される免税期間が長い方がよい場合が多いと思います。
いつ起業すると、免税期間が最長となるのでしょうか

1年目は原則免税となります。

2年目は、1年目の1月から6月の課税売上高か給与の金額が1,000万円以下であれば、免税となります。

3年目は、1年目の課税売上高が、1,000万円を以下であれば、免税となります。

3年間の免税期間を得ようと思えば、

・1年目の前半の課税売上か給与の額が1,000万円以下→2年目免税
1年目の1年間の課税売上高が1,000万円以下

かつ

2年目の前半の課税売上高か給与の額が、1,000万円以下

→3年目免税

となります。

これらの要件を満たせば、消費税が免除されることとなります。

とはいえ、消費税の免税を受けることばかり考えて、売上を抑えてしまうのも起業した意味としてどうかという問題もあります

納税義務が免除されるかどうかきわどいと考えられるときには、この基準を参考にして頂き、有利な方を選べるように、コントロールすることが必要かと思います。

第3章 会社を設立する場合

会社を設立して起業する場合はどうなるでしょうか。
法人の場合は、事業年度が基準となります。

(1) 1期目は原則免税

1期目は、2期前の期間がありませんので、原則として免税期間となります。

しかし、はじめからある程度規模のある法人については、免除すべきでないという考え方から、法人設立当初から資本金が1,000万円以上の法人については、納税義務は免除されません。
また、資本金が1,000万円未満であっても、年商5億円を超える法人の出資割合が50%を超える場合には、納税義務は免除されません。

(2) 2期目以降はどうなるか

2期目については、1期目の前半6カ月(特定期間といいます)の課税売上高または給与の額が1,000万円以下であれば、2年目も免税期間となり、消費税の支払が免除されます。特定期間である1期目の前半6カ月というのは、1期目が始まってから6カ月の期間です。

・法人の設立1期目が8カ月以上の場合

2018年5月に法人を設立し、2019年3月が最初の決算日である会社については、2018年5月~2018年10月の期間が、特定期間です。
この期間の課税売上または給与の額が1,000万円以下であれば、2期目も消費税の納税義務が免除されることとなります。

・法人の設立1期目が8カ月未満の場合

この場合は、特定期間は、設立日から、設立日以後6カ月を経過した日の直前の月末の期間となります。
この期間の課税売上高または給与の額が1,000万円以下であれば、2期目も消費税の納税義務が免除されることとなります。

・法人の設立1期目が7カ月以下の場合

この場合は、特定期間がないので、免税期間となります。

(3) 決算期を工夫することで免税期間が最長となる

可能であれば、納税義務が免除される期間は長く取れる方が有利といえます。

2期目も必ず免除を受けようと思えば、1期目の前半6カ月(特定期間)で判定されない、1期目の期間が7カ月となる決算期にすること。こうすれば、最長1年7カ月の免税期間を設定することが可能です。

3期目については、1期目の課税売上高が1,000万円超であれば、納税義務が発生します。
この場合、1期目の期間が1年未満であれば、1期目の課税売上高を、12カ月換算して、算定することになるので、ご注意ください。

例えば、1期目の期間が7カ月で、課税売上高が700万円だったばあい、

700万円/7カ月×12カ月=1,200万円>1,000万円

よって 納税義務あり、と判定されます。

12カ月でない事業年度については、12カ月換算をして、納税義務を判定することになりますので、ご注意ください。

第4章 その他留意したいこと

(1)免税期間中でも消費税は受け取ろう

「消費税は免税期間中なので、消費税は払わなくてよいのですが、相手からもらってもよいのですか?」

と質問をいただくことがよくあります。

結論を言えば、免税期間中であっても、消費税は受け取ることができます

消費税を負担しているのは、消費者であり、お金を支払う方です。
それを預かって、国に納付するのが消費税の仕組みであり、事業者はその義務を負っているのですが、免税期間中はその義務を免除されています。

相手方にこちらが消費税の免税期間中かどうかは、公開する義務もありません。

(2) 2023年からはインボイス制度で消費税の免除制度が実質なくなる?

まだ先のことになりますが、2023年には、インボイス制度が導入されます。

このインボイス導入で、免除制度が実質なくなるといわれています。
インボイス制度になると、消費税の納税額を計算する場合に、

「自分が預かった(受け取った)消費税」から差し引く「自分が預けた(支払った)消費税」については、あらかじめ登録された「適格請求書発行事業者」が発行した「適格請求書(インボイス)」に記載された消費税額でなければならないとされます。

「適格請求書発行事業者」は、つまり、課税事業者です。
課税事業者でなければ、「適格請求書発行事業者」となることはできません。

「適格請求書発行事業者」でなければ、「適格請求書(インボイス)」を発行することができず、「適格請求書(インボイス)」を発行できない事業者は、

・「適格請求書(インボイス)」を発行できないことを理由に、取引から敬遠される

・消費税分をもらうことができないが、日々の仕入や支払では消費税を支払うこととなり、収支が悪化

という恐れがあります。

「適格請求書(インボイス)」が発行できる「適格請求書発行事業者」になるには、消費税の納税義務者でなければなりません。
よって、多くの事業者が、取引から敬遠されることを避けるために、免税期間のメリットを享受せず、敢えて課税事業者になることが予想され、消費税の免除制度が実質なくなるのではと言われています。

インボイス制度が導入されるのは、2023年10月からです。
消費税の支払いに耐えられるくらいの財務基盤と、負けない商品・サービスづくりを今からしておきたいところです。

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著者プロフィール

神佐 真由美

神佐 真由美

京都大学経済学部在学中から「プロフェッショナルになるために手に職を」と税理士を志す。卒業後は、税理士を顧客とする株式会社TKCに入社し、税理士事務所を顧客にシステムコンサルティング営業に4年間従事。本当に中小企業経営者にとって、役に立てるプロフェッショナルはどうあるべきかを問い続け、研究する。税理士試験5科目合格後、税理士業界へ転身。
自ら道を切り拓く経営者に尊敬の念を抱き、経営者にとって「一番身近なパートナー」になるべく、起業支援や資金調達支援、経営改善や組織再編、最近では事業承継支援など多くの経験を積む。経営計画を一緒につくり、業績管理のしくみづくりを通して、未来を見通せ、自ら課題を見つけ、安心して挑戦できる経営環境づくりが得意。大阪産業創造館のあきない・経営サポーターも務め、セミナー実績も多数。「経営者のための資金繰り基礎講座」「本当に自社にとって必要?事業承継税制セミナー」など。

<関連サイト>
角谷会計事務所
未来を魅せる税理士 神佐真由美のブログ