年末調整をしていても必要?副業をしている人のための確定申告ガイド
- サラリーマンでも副業する人はどんどん増えており、25人に1人が副業をしている
- 副業の給与が20万円超か、給与以外でも「儲け」が20万円超であれば確定申告が必要
- メインの会社に完璧にバレないようにするのは難しいが、バレにくくすることは可能
第二章では、副業収入を給料としてもらっている方向けに、確定申告が必要かどうか、また、注意点について、まとめました。
副業収入を給料としてもらう人は、例えば、昼間は会社員をしているけれど、早朝に新聞配達やほかの勤務先で仕事をしてから出勤する人や、平日は会社員をしていて、土日は違う会社で働いているなど、複数の雇い主のもとで仕事をしている人を言います。
メインで勤めている会社からも、副業先からも、「扶養控除等申告書」の提出を求められるかもしれません。
この「扶養控除等申告書」については、メインで勤めている会社にのみ提出し、副業先には出してはいけません。勤務先のいずれか一カ所にしか提出することができない書類となります。
「扶養控除等申告書」を提出している会社と、そうでない会社とでは、給与から差し引く所得税が異なります。「扶養控除等申告書」を出している会社からは、「甲欄扱い」といって、比較的少ない所得税を毎月差し引かれることとなります。一方で、提出していない会社からは、「乙欄扱い」として、「甲欄扱い」に比べて、多めの所得税を毎月差し引かれて、給与が支払われることとなります。
具体的に言うと、「扶養控除等申告書」を提出して「甲欄扱い」になっている会社から30万円の給与をもらう場合に差し引かれる所得税(社会保険料は考慮せずに算出します)は、8,420円(扶養0人の場合)です。「甲欄扱い」では、基礎控除といって、誰でも認められる38万円の控除を加味したうえでの所得税額を概算で算出するためです。
「扶養控除等申告書」を提出せず、「乙欄扱い」になっている会社(副業先)から、10万円の給与をもらう場合に差し引かれる所得税は、3,600円です。
「甲欄」扱いの方が、所得税の負担率が低いことがお分かりになるかと思います。
「甲欄扱い」の会社は1社のみです。もし、複数の会社で「甲欄扱い」を受けていると、税務署から勤め先の会社へ確認が入り、思わぬところで副業をしていることがバレてしまうこともあり得ます。「扶養控除等申告書」を提出するのは、メインの勤め先1社のみにしておきましょう。
複数の雇い主のもとで仕事をし、複数の給与収入をもらっている人で、メインの勤務先「扶養控除等申告書」を提出している会社以外の給与(副業の給与収入)の収入金額が20万円を超える人は、確定申告が必要です。
また、副業の給与収入が20万円以下であっても、第三章に挙げるような雑所得や事業所得の金額との合計額が20万円を超える方は、確定申告が必要です。
複数の雇い主からの給与収入を合算して、確定申告をすることで、年間の所得税を算出し、追加で所得税を支払う場合もありますし、多めに差し引いた所得税の還付を受けることもあります。納付になるか還付になるかは、計算してみないとわかりません。副業の給与収入が20万円以下の方であっても、確定申告をすることで、所得税の還付を受けることができる場合もありますので、一度e-Taxのウェブページ、確定申告コーナーで確定申告書を作成してみることをお勧めします。
複数の会社から給与をもらう人のなかには、メインの勤め先には、副業がばれたら困るという方もいらっしゃるかもしれませんね。必ずしもバレるわけではないのですが、確定申告をしても、しなくても、完全にバレなくするのは、とても困難です。
メインの勤め先でも、副業の勤め先でも、年末には、源泉徴収票を発行します。メインの勤め先で年末調整をしてもしなくても、源泉徴収票を発行します。
これをもって、確定申告をすることになるのですが、その一方で、両方の会社では、「この方には〇〇円の給与を支払いました」という意味の「給与支払報告書」という書類を、住んでいる市町村役場に、翌年の1月末までに提出する義務があります。
給与支払報告書の見本。源泉徴収票とよく似ています。
お住まいの市町村役場には、メインの会社からの給与支払報告書と、副業の会社の給与支払報告書が届くこととなります。
2つ以上の源泉徴収票をもとに、合算して確定申告された場合には、確定申告書にもとづいて、住民税が計算されます。
また、確定申告がなかったとしても、2つ以上の給与支払報告書をもとに、住民税が計算されることとなります。
そして計算された住民税は、翌年5月頃に市町村役場から、原則としてメインの会社に知らされることになります。特別徴収といって、1年間分の住民税を、毎月の給与から天引きし、翌月10日までに納付します。毎月いくらずつ天引きするのかを、メインの会社に伝えるために、住民税の通知が市町村役場から送られるというわけです。
メインの会社に届いた住民税の通知は、2枚あり、1枚は本人に配布されます。もう1枚は、会社の保管用となり、メインの会社の総務担当は、住民税の通知を参照して、毎月の給与から天引きする住民税を、各人ごとに、給与システムなどに登録します。
この住民税の通知には、給与収入にかかる住民税を合算して通知しますので、副業の給与収入にかかる住民税についても載っていることになります。
本人に配布される住民税の通知には、給与収入のみならず、他の事業所得や雑所得などの所得についても書かれており、住民税の算出根拠がまとめられています。収入状況がわかる書類で、いったんメインの会社の総務担当を通して、本人に配賦されます。「ほかにも収入があるんだな」と気づかれる場合もあります。
最近では個人情報保護の動きも考慮して、給与収入の合計など収入状況について、会社にはわからないように、シールなどで隠して送られているものもありますが、すべての市町村でそのような対応しているわけではありません。お住まいの市町村役場の窓口で確認することが一番確実です。
住民税の通知には、副業がありますよとは書いていないので、必ずしも総務担当に「この人は副業をしている」とわかるわけではありません。
しかし、その人の全ての収入状況についてまとめている書類であり、もし、それが隠されていたとしても、メインの会社で「支払っている給与に対して、住民税がどうも多いのでは?もしかして副業をしている?」と疑念を持たれる可能性もゼロではありません。
これを防ぎたいとして、副業の会社に対して、市町村役場に給与支払報告書を出さないようにお願いする人もいると聞いていますが、それは明らかな法律違反になりますし、副業の会社に、自分の脱税を手伝わせることになってしまうので、決してしてはならない方法です。
もし、どうしてもメインの会社にバレたくないのであれば、副業の会社に対して、給与ではなく、外注費として支給してもらうことを交渉してもよいでしょう。(この場合については、第三章について詳しく記載しています。)業務によっては、外注費扱いとして仕事をすることも可能ですが、いわゆるアルバイトなど時給制で働く仕事など、副業先の指揮命令のもと、仕事をする業務であれば、外注費扱いとするのは、難しいでしょう。