飲食店や喫茶店を開くときに必要な「許認可」とは!?
- 飲食店・喫茶店開業するには、「許認可」の手続きが必要。怠ると罰金・営業停止等も発生する為手続きを行うこと。
- 食品衛生責任者は他の店との兼任は不可。専任で管理を行う。
- 様々な手続きの書類は提出期限が異なるのでスケジューリング管理を注意すること。
みなさんが普段の生活で何気なく利用している飲食店や喫茶店。
自宅近くのレストランや食堂で家族や友人達と食事を、職場近くの喫茶店で休憩や打ち合わせ等を、仕事後に職場の同僚や上司の方と居酒屋でお酒をといった様々な場面で利用されている方も多いかと思います。中には、自ら飲食店や喫茶店を経営されている方や、もしくはこれから開業するという方、そしてゆくゆくは自分も開業してみたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、飲食店・喫茶店を開く際に必要な手続きで「許認可」というものがあるのをご存知でしょうか?ここでは「許認可」とはどのような手続きなのか具体的に見ていきましょう。
「許認可」とは、事業を行う際に必要な許可のことで、主に警察署、消防署、保健所、都道府県、市区町村等といった行政機関で手続きを行います。許認可の手続きを行わずに営業してしまうと、罰金等の刑事罰や、営業停止等といった処分が行われる可能性もあるため注意が必要です。
なお、「許認可」と言っても許認可取得の条件や手続きの違いから、届出・登録・認可・許可・免許の5つの区分に分けられます。
その中で飲食店・喫茶店は認可に該当します。
まずは飲食店の許認可から説明していきましょう。
飲食店の許認可には、基本的に以下の2種類をそれぞれの行政機関で手続きを行う必要になります。
・飲食店営業許可 (保健所の許可)
・防火対象物使用開始届 、防火対象物工事等計画届出書(消防署への届け出)
それに加え、深夜0時をまわっても営業する居酒屋やバー等の場合は、
・深夜酒類提供飲食店営業許可 (警察署への届け出)が必要になります。
飲食店営業許可とは
「飲食店営業許可」は保健所の窓口で申請を行います。
注意しなければならない点は、「お店を開く地域を管轄する」保健所で行わなければなりません。
そして、許可を取るためには大きく二つの、「人」と「店」の要件に分けられます。
「人」の要件については2つあります。
①申請する人(お店の営業者)が過去に食品衛生法に関する何らかの処分を受けていないことと、営業許可を取り消されている場合は2年以上の期間を経っていること。
②食品衛生責任者を一人以上おく。
以上の2つが要件になるのですが、もう少し詳しく見ていきましょう。
まず①の項目の「食品衛生法」です。
名前に「食品」とありますが、飲食に伴う衛生上の危害(食中毒など)の発生防止するための法律のため、食べ物だけでなく食器や容器、そして割烹着やエプロンまで対象になります。万が一、食中毒が発生した場合は、食中毒と判断した医師から保健所長へ、保健所長から都道府県知事へ、都道府県知事から厚生労働大臣へ報告がいきます。その際に報告を受けた保健所長から、食中毒が発生したと思われる店舗は調査を受けなければなりません。
そして食中毒と判断された場合、
・店名の公表
・店舗の営業停止・営業禁止・営業許可取消
等といった行政処分が下されます。
次に②の項目の「食品衛生責任者」です。
「食品衛生責任者」とは、その店の食品の衛生面の管理を行う人のことです。必ず店に専任の食品衛生責任者を置かなければならず、ほかの店との兼任はできません。こちらも上記の①と同じように、食品だけでなく、店の設備等の点検や不衛生箇所の是正、従業員の健康面の管理、衛星管理表の作成(手洗い場、清掃、冷蔵庫温度など)等といった業務も挙げられます。
食品衛生責任者の資格の取得方法ですが、都道府県の自治体や保健所に申し込み、約6時間の講習を受ければ取得できます。この講習はほぼ毎月開かれています。
また、医師、歯科医師、薬剤師、調理師、船舶料理士、製菓衛生師、食鳥処理衛生管理者、食品衛生管理者、食品衛生指導員もしくはその経験者、食品衛生監視員の資格を持っている方は講習を免除することができます。
講習の予約が取れなく、店の開店(オープン)に間に合わない場合は、飲食店営業許可を保健所に申請する際に、「申請後一定期間内に食品衛生責任者を設置する」という誓約書を提出することで、申請を受理してもらうことも可能です。その後は期間内に食品衛生責任者を設置し、保健所に報告しなければなりません。
次に「店」の要件についてです。
店の設備や構造については、法律で要件が定められているのですが、保健所によって細かい要件は異なります。その要件は保健所の担当者の方が、要件を満たしているかを実際に店で検査を行います。
ここでは東京都の保健所を例として、具体的に見ていきましょう。
・厨房の「床」と「壁」について
飲食店の厨房の床は、食べ物が落ちたり油分が飛んだりする可能性も高いため、常に清潔が保てるような、掃除がしやすく排水のよい、コンクリートやタイル等の耐水性の高いものでなければなりません。そして排水性を高めるために、床に勾配や排水溝を設置することが必要です。絨毯やカーペットを敷いてある場合や、床自体が木製の場合だと許可はおりません。
壁も衛生面の理由と防火の必要から、厨房の壁はステンレスやホーロー製が望ましいです。
そして清掃時に水を使用する場合、床から1m以上の高さに防水性の高い材質を使用しなければなりません。
・シンク(流し)について
家庭に多い1槽式のシンクではなく、2槽式であること。それぞれ水とお湯が出ること。そして1槽のサイズが「幅45cm×奥行き36cm×深さ18cm」以上であることが求められます。
保健所によっては、1cmでも足りないとシンクを交換するように言われるケースや、食洗器を1槽としてカウントし、その隣に1槽シンクを併設すればそれで2槽シンクとして認めてもらえるケースもあるようですので、事前に保健所への確認が必要です。
・手洗いについて
自治体によって多少の違いはあるようですが、基本的に厨房に従業員が使う手洗いが一つと、トイレ内にお客さん用としての手洗いを設置しなければなりません。東京都では、「幅36cm×奥行28cm」以上のサイズであり、手指の消毒器(手洗い用の洗剤)が備え付けられているものと定められています。
消毒器は壁か洗面台に固定することのできるタイプでなければならないのですが、保健所によっては市販のハンドソープが置いてあればいい場合や、接着剤や両面テープ等で固定してあればいい場合もあるようです。
上記のシンクや手洗い等の水回りは、再工事をするとなると費用がかさむ可能性も高い場所になるため工事をする段階の前に、保健所の規定を事前に確認しておくことが重要になります。
・厨房と客席について
厨房と客席の間は、扉などで区切られていなければなりません。この扉はちゃんとした扉でなければならないわけでなく、スイングドアの様なタイプを設置しても問題ありません。
しかし、スイングドアを開いた状態で固定している場合や、取り外してしまっている状態では許可はおりないので注意が必要です。
・設備について
基本的に、冷蔵庫や製氷機、食器や食洗器、オーブン等といった設備は、すべて厨房内に収まってなければいけません。
逆に言えば、客席に食器や食材があってはいけませんし、客席で調理をしてはいけません。厨房内にどうしても冷蔵庫等を置けない場合は、客席に設置することを許可してもらえる場合もあるようですが、その場合はしっかり蓋をしめることのできる、衛生面での安全性の高い瓶入りのドリンクや食器のみになります。
ファミリーレストラン等に設置してあるドリンクバーやサラダバーですが、お客さんがセルフサービスで利用しているため、店の従業員が注いでいる・盛り付けているわけではないと判断し、許可を出している保健所も多いようですが、グラスやお皿等の設置の仕方も含めて、事前に保健所に確認をしておくことが良いでしょう。
またビールサーバーをカウンター上に設置する場合も、注ぎ口の向きが重要になります。注ぎ口は必ず厨房側に向いていなければなりません。客席側に向いているとお客さんが注いでしまうことになるので注意が必要になります。
・冷蔵庫の温度計について
厨房で使用する冷蔵庫の場合、外から冷蔵庫内の温度がわかるようにしなければなりません。業務用の冷蔵庫であれば初めから中の温度がわかるようになっているのですが、家庭用の冷蔵庫の場合だと、温度計を設置し、冷蔵庫内の温度を外側から確認できるようにする必要があります。
・食器棚について
食器棚には必ず戸がついてなければなりません。食器に埃が付くのを防ぐことが目的なので、戸が木製でもガラス製でも問題はありません。
・厨房の明るさについて
厨房の明るさは100ルクス以上でなければなりません。100ルクスというのは、街灯の下にいるくらいの明るさです。ちなみに百貨店の売り場が500~700ルクス。蛍光灯の使用している事務所内が400~500ルクス程になります。
・「窓」、「換気扇」について
一定時間あけて使用することが多いため、虫やネズミ等の侵入を防ぐために、窓には網戸、換気扇にはシャッター等といった、防鼠防虫の設備がついてなければなりません。
・給湯設備について
その店の営業形態にもよりますが、原則的にお湯の出る給湯設備が必要です。保健所によっては60℃程のお湯が出なければ許可はおりないこともあります。
・ゴミ箱について
ゴミ箱は最低1つ以上必要です。そして蓋つきのゴミ箱でなければなりません。
・トイレについて
店舗内には従業員の人数に応じた数のトイレを設けなければなりません。場所も調理場から離れている等といった衛生面での影響がない場所であること、またネズミや虫などの侵入を防ぐ設備や、消毒器のついた手洗いを設置することが定められています。
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