上場目指す起業家が知っておくべき株式評価について

ポイント
  1. そもそも株式の評価が必要な時ってどんなとき?
  2. 株式の価値とは何か
  3. 「これまでどれだけ儲けてきたか」はどのように表現されるか
  4. 「これからどれだけ儲けられそうか」はどのように考えればよいか
  5. 株式の具体的な評価方法とは

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4.「これからどれだけ儲けられそうか」はどのように考えればよいか

「これまでどれだけ儲かってきたか」に関しては過去の話なので、決算書を見ればすぐ分かる(会計アレルギーがなければ)話です。では、「これからどれだけ儲けられるか」はどうやったら分かるのでしょうか。

答えは誰にも分かりません。ひょっとしたら、預言者や占い師であれば分かるかもしれませんが。ということは、見方を変えると、人によっては「この事業は儲かる」と考えてくれる人もいるかもしれないし、「全然イケてないじゃん」と考える人もいるかもしれないということです。

では、将来儲かるか儲からないかを数字的に表現しようとすると何が必要になりますか?それには、事業のプランを数字に落とし込んだ「事業計画書」が必要になります。例えば、今後5年間で毎年100ずつのキャッシュを産み出す見込みの事業があったとします。話を単純化するために、この事業は5年間限定で終わってしまうものであり、事業で生み出されたキャッシュはすべて株主が受け取れるとするとこの事業の価値はいくらでしょうか。

5年間で500のキャッシュを産み出すのですから、500の価値があるというのは直感的に理解できるのではないでしょうか。

そして、株主がそのキャッシュをすべて受け取れるのであれば、その事業に関する株式の価値も500ということになります。あとは、株数で割れば1株あたりの価値になります。しかし、実際には本当にそうなるかどうか分からないので、例えば8掛けしたり、7掛けしたりして、400とか、350といったように評価されます。

この他にも、上記の例で毎年100ずつのキャッシュを産み出すケースと5年後にまとめて500のキャッシュを産み出すケースでは、前者のほうが評価は高くなるといった論点もありますが、話が急にものすごく難しくなるので止めておきます。興味がある方は「割引現在価値」「キャッシュフロー 割引 計算」などで検索してみてください。(5分で???になるかも知れませんが…)いずれにしても、将来の生じるキャッシュの見込みが大きければ大きいほど、「株式は高く買い取ってもらえる」ということは理解できるのではないかと思います。

ただし、この評価はそもそも5年間で500のキャッシュを産み出すということを「信じる」ことによって生じるものですから、そもそも信じない人にとっては無意味な話です。ベンチャー企業がベンチャーキャピタルやエンジェルと呼ばれる投資家から出資を受ける際は、こうした将来性を買われて出資を受けることになるわけですから、いかに事業計画書に説得力を持たせられるか、そして、それを「信じて」くれる人をいかに見つけてこられるかというのが株式を高く評価してもらうために重要ということです。

一般的な事業計画書の説得力の裏付け要素としては
・代表者の事業に対する熱意、心身の健康
・これまでの(起業前であれば代表者の、起業後であれば会社の)実績(実績というと抽象的ですが、何か一つでも飛びぬけて「スゴい!」と言われるような成果があれば、「実績」です。)
・会社がもつ技術・特許
・会社の代表者や従業員の能力
・参入する市場の規模(見込み客の多さ)
・ビジネスプランの革新性(参入する市場に競合がいるか、競合がいるとしてどうやって競合と戦うか、あるいは戦わないようにするか)
・ビジネスプランの明確性・実現性(何を、誰に、どうやって売るか、そのためにいくらのコストをかけるか明確になっているか)
などがあげられるかと思います。

これらは、決算書のどこを見てもほとんど記載されていないと思いますので、これらを裏付けにして事業計画書に具体的に数字に落とし込むといった作業が必要になってきます。その上で、この事業計画を信じてくれる人を見つけてこられれば株式を高く買い取ってもらえる=高い金額で出資を受けられるということになります。

このほか、将来の事業からあげられる利益の確からしさは同じと評価されても、出資する第三者が事業会社である場合、買い取ってくれるA社とB社では評価が異なる場合もあります。

例えばA社の事業が貴方の会社の事業と組み合わせるとシナジーが見込めるが、B社にとってはシナジーが少ないといったケースです。シナジーとは、別々の2つの事業があった場合に、それぞれを組み合わせると1+1=2以上の「相乗効果」を産み出すようなケースです。

例えば、同じような事業を行っている2つの会社があって、1つの会社では商品力はすごいが、営業力が乏しい、もう1つの会社では商品力は月並みであるが、営業力が長けているといった際に両社が組み合わさると、お互いWin-Winの関係になることがあります。

それが「シナジー」です。(「シナジー」には色々なパターンがあります。興味があれば検索してみてください。)「シナジー」を産み出すための関係づくりに、必ずしも貴方の会社の株式を買い取ってもらうことは必須ではなく、事業提携という方法もありますが、両社の関係をより深くするために、株式を取得して経営権を握るということも、頻繁に行われます。

5.株式の具体的な評価方法とは

以上の説明を踏まえて実際の株式評価方法を紹介します。株式の価値の評価方法は体系的に整理された方法があります。そして、評価方法は一つだけではありません。

※考慮要素
 過去…過去の実績(利益、配当、純資産の金額)を基に評価する手法
 未来…将来の見込みを基に評価する手法

突然、いろいろな難しそうな名前が出てきてビックリしましたね。一つ一つを取り出してみるとまるで数学の公式のようなものとなっていて本当に難しいです。このため、詳細な理解は非常に専門的な知識が必要になってくるため説明はしません。また、どの評価方法を用いるかによって算出される株式の価値は異なってきますが、どれをどの局面で用いるのが正解なのかは、非常に高度な専門的な判断が必要になってきます。さらに、時には2つ以上の評価方法を組み合わせて評価することもあります。

ただし、ここで理解していただきたいのは、

① 「これまでどれだけ儲けてきたか」=「簿価純資産法」や「時価純資産法」
② 「これからどれだけ儲けられそうか」=「DCF法」など

という対応関係にあるということです。これらは、先の小節で説明した株式の評価方法に名前をつけたものと理解してください。

一概には言えませんが、例えば出資者同士のケンカ別れの場合には①の評価方法が使われることが多く、ベンチャーキャピタルやエンジェルからの出資、M&Aやバイアウトのケースでは、事業の将来性や、買い取ってもらう第三者の事業とのシナジーを見込まれて株式を買い取ってもらうことが多いため、②が使われることが多いかと思います。

特に②の評価手法であれば、仮に現在、債務超過だったとしても、①の手法では株式の価値は0にしかなりませんが、将来性が見込まれれば想像以上の金額で株式が評価されることもままあります。具体的には、経営能力(営業力や資金調達力など)は乏しいため債務超過となっているが、会社が持っている技術や特許はすばらしいものがあり、大手資本が買い取れば、そうした技術や特許の潜在能力を最大限発揮できるようなケースなどが考えられます。

この他にも将来性が見込まれて株式を第三者に買い取ってもらうケースとしては、
・見込み客のリストは沢山あるけれども、自社のリソースでは受注しきれないといった状況において、大手資本が自身のリソースを注入すれば事業として成果をあげられることが見込まれるようなケース
・ライバルの大手資本が新興勢力である貴方の会社が怖いため、貴方にお金を積んで事業から撤退してもらい、自社の一部として取り込んでしまうケース
なども見たことがあります。

6.まとめ

いずれにしても、株式会社である以上、株式の価値を高めることは相続などの特殊なケースを除き、株主にとって得なことはあっても、損なことはありません。特に将来自身のもっている株式を売り抜けたいという思いがあれば、尚のことでしょう。(ただし、株主を親族だけで固めた会社で、一定以上の規模の会社が配当をせずに純資産の金額を大きくしてしまうと余計に課税される場合もありますのでご留意ください。気になる方は「留保金課税」で検索してみてください。)

また、社長が1人株主となっているケースであれば、「株式の価値を高める」ということは当面はあまり意識しなくても良いかもしれませんが、社長以外の株主がいる場合、そうした株主に報いるため社長は株式の価値を高めるように努力しなければなりません。

本日は、そんな貴方のために「起業家が知っておきたい株式評価の話」をお届けしました。

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