10年間での会社生存率10%のウソ・ホント

ポイント(この記事は8分で読み終わります)
  1. 新しく開業した会社や個人事業主が10年後も同じビジネスを続けている割合は10%」という統計データの真偽
  2. 本当の「10年生存」とは何か

起業をご検討中もしくは起業したての皆様へ

みなさま、有名な話として「新しく開業した会社や個人事業主が10年後も同じビジネスを続けている割合は10%」という統計データがあるというのは耳にされたことがあるでしょうか。

「統計データ」というと、なんだか真実味を感じる話に聞こえますよね。また、こんな話を聞くとものすごく不安になりますよね。しかし、ではその「統計データ」というのは、具体的に誰がどのように計算したものであるかについてはご存知でしょうか。

今回は実際にどのような統計データがあるのか、直近の統計データは具体的にどのような数字を示しているかについて見てみたいと思います。


”新しく開業した会社や個人事業主が10年後も同じビジネスを続けている割合は10%”に関する統計資料
(参考:第 193回国会(常会)提出 平成28年度中小企業の動向

こちらも合わせてお読みください
成功する社長、起業家の特徴を10個徹底伝授

1:会社生存率のデータの出元は沢山ある

1.1中小企業庁のデータで試算してみる

Googleで検索してみると、色々な記事にヒットすると思います。ただ、その出元まで明らかになっているものは少ないと思いますので、実際に統計データを見てみましょう。
 
 



会社生存率で一番有名なデータは中小企業庁が毎年出している「中小企業白書」かと思います。早速見てみましょう。

中小企業庁 2017年版中小企業白書
(別ページへ移動します)


見つけました!
起業後5年間の生存率のデータですが、白書本文の109ページ目です





このデータは、帝国データバンクの「COSMOS2」というデータを元に加工して作成されているそうです。そもそも、帝国データバンクに登録される会社というのはそれ相応に取引実績のある会社や個人事業主なので、調査対象としてどれだけの企業数を対象にしているのかはわかりません


実際にこのデータの注書きにも「実際の数字よりも高く算出されている可能性がある」とあるので、信憑性がどの程度あるかは、わかりません。また、5年前の時点で本当に小さかった会社は恐らく対象に含まれていないというところまで考えると実際のところ、本来の数値と比較して高いのか低いのかはわかりません。


ただ、私見になりますが、中小企業庁という官庁は基本的に「起業家を応援する」のがミッションですので、あまり起業を志している方々の気力を削ぐような数字は出してこない可能性が高いと思われます

それでも、この数字を前提として考えると、大体年率5%ずつぐらいで会社は減っていっているので、単純に同じペースで10年間に引き延ばして考えると60%ぐらいは生存している計算になります


本当でしょうか?

ちなみに、10年後まで企業生存率を計算している統計データもあります。データは少し古く中小企業白書2011年版です。

中小企業庁 2011年版中小企業白書
(別ページへ移動します)




このデータを見てもやっぱり10年後の企業生存率は70%になってます。これを計算したのはやはり帝国データバンク。

計算の手法が2017年版と同じかどうかは定かではありませんが、確かこのデータを計算した2010年ってリーマンショックの余韻がまだ残っている時期ではなかったような気が…

それでも、みなさん頑張って生き残っているんですね!

1.2 厚生労働省のデータで試算してみる

次に、「廃業率」について見てみましょう。中小企業白書2017年度版の103ページです。




こちらのデータソースは『厚生労働省「雇用保険事業年報」(年度ベース)』だそうです

また、算出方法は「保険関係が成立している事業所(適用事業所)の成立・消滅をもとに算出している。」とのことです。これについても、中小企業の相当数が社会保険に加入していない実態や、もともと社会保険の加入が義務付けられていない業種や個人事業主も相当数存在しているはずなので、実際の廃業率はよくわかりません

日経新聞記事2017年6月7日によると2017年2月現在でおおよそ最大で52万事業所が本来社会保険に加入すべきところ未加入になっている可能性があるそうです。
参考:日経新聞 国民年金の強制徴収、所得基準下げ決定 17年度300万円に

日本の総事業所数は2014年7月現在で592万7千事業所なので、計測のタイミングは異なりますが、単純計算すると約9%の事業所が未加入ということになりますね

ただ、592万7千事業所にはもともと社会保険の加入が義務付けられていない業種や個人事業主もいるので、実際に「未加入」扱いになる会社の割合はもっと多そうです



私の友人に社会保険労務士が何人かいるのですが、年金事務所からある日突然呼び出しがかかり、未加入であることがバレてしまった会社の支援に忙殺されている状況を考えると、実際のところは「かなり高い」割合なのかもしれません。

話が脱線しましたが、この「廃業率」は前年に存在していた事業所が今年になって「消滅」している割合です


「消滅」の定義がよくわからないのですが、「事業所」の定義にはざっくりいうと大きな会社の「一支店」も事業所に含まれるので、単純な支店の統廃合なども含まれている可能性が高いと考えられます

そうやって考えるとこの「廃業率」の意味も良く分からなくなってくるのですが、とりあえずこのデータをもとに10年間の会社生存率を試算してみましょう。だいたい、廃業率はここ15年間において4%ぐらいで推移していますね。そこから単純計算してみますね。


最初に100社存在していた場合、2年目には96社に減り、3年目には92社に減り…と計算していくと、10年後には66社になります。

10年後の会社生存率は66%!!

ということで、先ほどの中小企業白書の会社生存率とほぼ同じになります。やっぱり10年後の会社生存率は60%ぐらいというのが本当のところなのでしょうか?

1.3 国税庁のデータで試算してみる

Google検索すると国税庁も会社の生存率を計算しているという記事にヒットするかと思います。では実際に国税庁のホームページを見てみましょう。

国税庁のホームページ
(別ページへ移動します)

サイト内検索という部分があるのでとりあえず
 

  生存率 

で検索してみます。

検索結果は以下の通りです。





あれれ?生存率なんてヒットしないぞ?
では今度は
 

  廃業率

で検索してみます。





やっぱり廃業率でもヒットしませんでした…

昔は公表していたけど今は公表していないのかなあ?

1.4 結局のところ統計データでは何も分からない。

色々見た結果、統計上における10年後の企業生存率は60%ぐらいというのが結論になりそうですが、
そもそもの計算の前提があやふやなので、信憑性のほどは確かではありません

とにかく、全体がどうだとかではなく貴方個人のビジネスが長く続くかが一番大事なことかと思います

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