10年間での起業の生存率10%のウソ・ホント

ポイント
  1. 新しく起業、開業した会社や個人事業主が10年後も同じビジネスを続けている割合は10%という統計データの真偽
  2. 本当の「10年起業生存」とは何か

目次 [非表示]

1、10年後貴方は何をしているでしょうか?

今まで10年後の起業・会社生存率の話をしてきましたが、そもそものところ、世の中10年後どうなっているかさえわからないですよね?


未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書) 新書

最近、「未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)」という本が売れているそうですが、実際にそうなるかどうかは10年後になってみないと分からないし、10年も経たずに予想された事態になるかもしれません
こちらもどうぞ:未来の年表 商売人は自分と客観的な未来を考えよう


ところで、10年前にスマホがこれほど世に浸透することを予測していた方はどの程度いらっしゃるでしょうか。また、急に話が大きくなってしまいますが、東京電力やシャープ、東芝が今のような状態になることを予測できた方はいらっしゃるでしょうか。

ちなみに、10年前のヒット商品東西番付を見てみます。出典はSMBCコンサルティングです。
出典:SMBCコンサルティング 2007年のヒット商品番付





これを見てみると、「PASMO」や「エコバック」、「キッザニア東京」…といったように今でも普及し、浸透しているものもあります。


一方で「ホワイトプラン」なんかは、同じキャリア同士だと回線の込み合わない時間帯に限って電話が一定額でカケ放題というサービスでしたが、当時としては画期的だったものの、今やちょっとした用件はラインやMessengerで
やりとりする時代です。

本当に長時間電話する方であれば、大手キャリアのカケ放題サービス(どんな時間帯にどんな先にかけても一定額のサービス)を利用されているでしょうし、そもそも格安スマホへの乗り換えが増えている時代です


西の前頭4に松坂大輔がいますが、MLBで日本人が活躍するのも当時としては珍しかったし、今後の注目株に「超薄型テレビ」というのがあることから分かる通り、まだまだブラウン管テレビが本流だった時代だったことが読み取れます





ここから読み取れるのは「先見の明」があったかどうか、「先見の明」がなくてもブームに乗れたかどうか、あるいは時流に柔軟に対応できたかどうかが「10年後の会社生存」に関わっているのではないかということです


有名な話としては、ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブズもホリエモンもマーク・ザッカーバーグも「これからは●●の時代だ!」という思いで、超一流大学を中退しています。(なお、一部の方は、その後名誉博士の称号をもらっています。)

孫正義に至っては、「日本の田舎で勉強している場合じゃない!」ということで一流の進学校を中退して、アメリカの有名大学に編入しています。

……

ちょっと話が大きくなりすぎましたね。
少し身近な話題を取り上げてみます。


私の叔父は、もう20年ぐらい前の話になりますが、
百貨店から洋服の仕立て直しや取り繕いの仕事を請負って、個人事業として営んでいました。

自宅でミシンを駆使して早業で洋服を直していく姿を見て、当時子供だった私はとても「カッコいい!」と思いました。



地方No.1の百貨店でしたので、そこから安定的な受注を受けていたということは、かなり腕のいい職人さんだったのだと思います。

今や百貨店の存在意義も当時と異なっていますし(ちなみに、叔父の仕事の発注元である百貨店も地元から撤退しました)、洋服は基本既製品、高級品については今でもオーダーメイドとして今でも残っていますが、一定規模の装置を備えた工場規模のところで行われているのが実情です


こうした時代の変化を受けて、叔父は50歳近くになって長年続けた仕事を失い、家族と自身の生活を守るため、建築作業員に転身することになりました。

今まで、肉体労働とは無縁の仕事をしてきた叔父にとって、体力的に非常にキツかったと思いますし、20歳以上も年下の先輩作業員の下で働くことはどれだけ精神的にも辛かったことでしょう。


時流を読んで、もっと早いタイミングで例えば裁縫工場の下請けや社員として入社をしていればせっかくの技術をずっと活かせたかもしれません。

一方で、私の義理の祖母の話をします。祖母の夫(私から見て義理の祖父)は、電力会社に勤めていてかなりの出世コースに乗っていたそうです。実際に勤務時代に可愛がってもらっていた直属の上司はその後、社長になりました。もしかしたら、役員になっていたかもしれません。

しかし、ある日病気になった際に医師から処方された薬の副作用で、まだ小学生の子供2人を残して他界してしまいました。


このため、祖母は家族を養っていくため自力で稼ぐしかなくなってしまい、祖父が働いていた電力会社の斡旋で、とある国立大学病院の一角を間借りして細々と売店を営むことになりました。

開業資金は電力会社が融通してくれたそうです。





祖母曰く最初は「なんとなく」だったそうですが、商品のひとつとしてカメラのフィルム(注)を取り扱ったところ「バカ売れ」し始めたそうです。


(注)若い方のために補足説明すると、その昔、カメラの中にフィルムという長い帯状の巻取り型シートを入れた後、フィルムに画像を映しこみ、それをカメラ屋(完全に余談ですが、今や家電量販店の「ビックカメラ」や「ヨドバシカメラ」も商号が示す通り元々はカメラ屋だったんですよ)に持ち込んで「現像」という処理をしてもらうことで初めて「写真」になったのです。


なぜ、「バカ売れ」したか。

それは、国立大学病院規模の病院だと長期入院の患者が多く、遠方からも家族・親戚・友人が来て入院患者と記念写真を撮る機会が多かったからだそうです

おそらく、患者さんの死期が迫っていて、せめて元気なうちに写真を一緒に撮っておこうと思った方も多かったに違いないと思います。


祖母が凄かったのは、それにあるとき気が付いてフィルムを大量に仕入れしたそうです。小売業の経験がある方なら理解できると思いますが、在庫を大量に抱えるというのは
特に資金力の乏しい中小企業にとっては物凄く勇気のある行動です


その結果、病院の一角に構えた小さな売店の経営者とは思えないほどの財を築くことができました。

上手く時流を捉えた典型例だったと思います。そして、年を重ねてちょうど店じまい(営業権を第三者に売ったそうです。)をしたタイミングで、デジタルカメラが世に出始めてきました。

フィルムつながりで話を続けると富士フィルムとかコニカミノルタという会社はみなさんご存知ですよね。もともとは、フィルムメーカーでした(富士フィルムは今でも商号にフィルムが含まれています)が、当然ながら今やフィルムは生産終了品になってしまっています。

参考:富士フィルムHPコニカミノルタ


しかし、両社とも今でもグローバル企業として生き残っています。それは、もともとの本業における基礎技術を応用しながらも業態転換を図っていったからです。そうやって考えると、業種によっては時代の流れに合わせてビジネスのやり方を変えていくというのも必要になってくるのかもしれません

2.まとめ‐本当の「10年起業生存」とは何か

結局分かったことは、統計データでは本当の10年生存率は分からないということと、10年後の未来は誰にも分からないということです。ただ、10年後の会社生存率は思ったよりは高かったですね。

ちなみにAmazonとかで、何年か前に2017年を予測した本のタイトルを検索してみてください。○○年日本崩壊とか、XX年国債暴落といったタイトルの本が見つかりますね。しかし、日本崩壊、国債暴落、いずれも今の時点で起きていません。

最近とある経営者として成功されている方のお話を聞く機会がありました。

とにかく、一度決めたことは成功するまでやり続けることだ。成功するまでやり続ければ必ず成功する。

確かにその通りなのかもしれません。
一方で、何をいつまでどんなやり方でやり続けていくのかを考えていくことも大事なのではないかとも個人的には思います

結局は、きちんとした軸は持ちつつも、ちょっと先、ちょっと先を読みながら柔軟に時流に乗っていくことが大事なのではないでしょうか



例えば、私の職業は公認会計士です。個人で独立してやっています。会社の会計や決算をチェックするのが本業です。私は17年前に会計士になったのですが、チェックの仕方も会社の経理に関するテクノロジーも全く変わっています。

今や「クラウド」がブームですが、私が会計士を始めたころはまだパソコンさえ支給されていない人がいる時代でした。

仕事で分からないことがあれば、仕事帰りに本を買って勉強し週末にまとめ読みしていましたが、今ではクライアントから質問を受けてもこっそりスマホで法律の条文や会計のルールを調べてあたかも前から知っていたような顔をしてみせています。


会計士に求められていることも変わっています(サラリーマン会計士時代の時にはボーナスも、交際費の予算も、クライアントとの付き合い方も、年によって激変していました)し、クライアント企業も凄く伸びているところもあれば、半年前まで過去最高益を叩き出し、上場準備をしているぐらいだったのに、その半年後には倒産してしまったところもあります

しかし、そんな環境の中でも私はこの仕事を始めてから17年たった今でも辛うじてなんとか生き延びています。

それは、資格があるからではなく、若いころに業務で培われた基本動作があるから、時流の変化にもそれなりに対応できているのではないかと思っています。


先ほどの例で、スマホで分からないことをこっそり調べているといいましたが、調べられるのも、もともと何を調べればよいか、どこにどんなことが書いてあるかをうろ覚えでも知っているからできることです。これはやはり、それなりの「基本」があるからできることだと思っています

まずは、3年後くらいまでを予想し、3年後くらいまで生き延びるための準備(お金と色んな意味でのスキル)をして、また3年後に同じことを繰り返していくことによって、
結果として10年後まで生き延びていけるのではないでしょうか


そのためのアンテナ張りと感度はとても大事だと思います。



私は東京からとある地方中核都市に3年前に引っ越してきてその情報格差にびっくりしたのですが、その地方においても情報を持っている人は持っていることに最近気が付きました

そうした方々の特徴は、共通して「頻繁に東京に行っている」または「頻繁に東京に行っている方や住んでいる方と仲良し」ということです。

もちろん、地方No.1として地元に根付いて頑張って成功されている方も多くいらっしゃいますが、きちんと「東京に住んでいる方」並みに最新の情報は仕入れていることに最近気がつきました

(東京に住んでいる皆さんはそれだけでアドバンテージですよ。本当に。東京で流行っていることを一定規模以上の地方に「輸出」すれば、やり方さえ間違えなければ、かなりの確率で成功するのではないかと思っています。)

ところで、長期的ビジョンが必要だとも良く言われます。私は、よく周囲から長期的ビジョンがないと怒られます。(どうでもいい話でした。すいません。)

確かに理念としてはその通りなのかもしれませんが、実際のビジネスにおける行動は時流によって軌道修正が必要なのではないかと思っています。私もとりあえず、まずは3年後まで生き延びられるように頑張ります。

できれば、10年後も皆様と一緒に生き延びられていればいいなと願う毎日です。

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