フリーランス、個人事業主必見!「法人成り」で節税対策しよう!

ポイント
  1. 所得税は個人の所得に対して課税される税金。法人税は株式会社や合同会社といった主として営利企業の利益に対して課税される税金。
  2. 「所得税は所得の多寡に応じて5%から45%」まで税率が変化するが、「法人税は、法人税率が2段階」しかない。
  3. 所得に応じて、「法人成り」することで節税対策ができる。

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フリーランスや個人事業主の方々は、法人成りを考えた事があると言う方も結構いらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、法人化すれば、絶対に節税が出来ると思い込んでしまっている人は要注意です!

その判断をする為には、まず税金の詳しい内容を知り、法人成りを検討した方が良いのかどうか?を見定めなければなりません

今回は、フリーランスの方や、個人事業主の方々が、法人成りをするタイミングを見定めて頂く為、税金に関する事や、その上で節税できる内容等を盛り込んで、徹底解説を行わせて頂きたいと思います!

個人か法人かによって仕組みが全く異なる「課税」

平成30年の税制大綱が昨年12月に公表されたのはご存知でしょうか。
その一方で打ち出されたのは所得税の負担増の方向性です。

 

一方で、毎年、法人税率はどんどん引き下げられてきています。
そもそも、所得税と法人税の違いに関してご理解されていますか。

所得税は個人の所得に対して課税される税金です。
個人事業主が事業で得た所得やサラリーマンの給料、法人の役員が法人から受け取る役員報酬などについて課税されます。

一方、法人税は株式会社や合同会社と言った主として営利企業の利益(厳密にはこちらも「所得」といいます。決算書上の「利益」と税金計算上の「所得」は、実際には金額が異なりますが、とりあえず同じようなものと考えていただいて結構です。)に対して課税される税金です。

どちらも、一定の経済活動の成果に対して課税される性質の税金であるにも関わらず、その主体が個人か法人かによって課税の仕組みが全く異なっているのが現状です。

控除の体系が異なる

具体的には、税率の体系や、税額計算における控除の体系が異なります。

また、所得税に関しては、所得の種類が10種類もあって所得の種類によって計算方法が異なっているのに対して、法人税の所得の種類が1種類しかないのと比較すると、とても複雑になっています。

特に、所得税における所得の一種類である「給与所得」(サラリーマンの給料や法人の役員が法人から受け取る役員報酬)に課される税額と、法人税の所得に課される税額では、構造上、前者のほうが少なくなる傾向があり、不公平であると従前から指摘されてきました。

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課税が改定されている背景

平成30年の税制改正における所得税の負担増に関しては、こうした個人課税(=所得税)と法人課税(=法人税)間の不公平を埋めるものとして、実施されたものです。

実はこうした方向性の改正は今回に限ったものではなく、数年前から段階的に実施されてきたものであり、平成30年度もこうした方向性にのっとって改正が行われたというのが実情です。

この他、法人税率に関しては諸外国と比較して高い水準にあると以前から指摘されており、国際的に高い法人税率が企業の国際間競争力を阻害する要因になっていると言われてきました。

こうした背景も法人税率の引き下げの目的の一つとなっています。

と難しい前振りが長くなってしまいましたが、皆様にご理解いただきたいのは、今後も所得税に関しては増税方向に改正されていくということ、法人税に関しては今後減税方向に改正されていくということです。

知って頂きたい知識

本日は、中小企業の皆さま向けに最低限知っておきたい所得税の課税体系と、法人税の課税体系の違いについてお伝えします。特にこれらの違いを理解しておくことは、法人の役員として法人から受け取る役員報酬の額をいくらとするのが納税上有利なのかという判断にも役に立つため、知っておいて損はない知識かと思います。まずは、複雑であると言われる所得税の課税体系から説明します。

所得税と法人税の違いについて

先のセクションで所得税に関しては10種類もあると言いました。
しかし、一般事業会社の経営において理解しておくべき所得としては、さしあたり「事業所得」と「給与所得」だけで十分です。

このセクションでは、個人が事業を行った結果得られた所得であるところの「事業所得」を前提に、まずは所得税の全般的な計算構造から説明します。
青色申告を行っていて、かつ、過年度に損失を計上していないことを前提とすると、基本的には当期の「収入」から「必要経費」を差し引いて「所得」を計算します。

「収入」は「売上」、「必要経費」は「売上原価」や「販管費」などです。
この他「所得」の計算においては「必要経費」以外に差し引けるものがあります

代表的なものは、個人が負担した社会保険料などですが、詳細な説明に関しては本記事の趣旨ではありませんので、説明は割愛いたします。
法人税の課税構造との対比において、ポイントとして理解すべき点は「所得税は累進税率が適用される」という点です。

難しい専門用語を使ってしまいましたが、やさしく言い換えると「所得税に関しては所得が多くなれば、なるほど税率が高くなる」ということです。
では具体的にどのように税率が高くなっていくかについて以下に見てみましょう。以下は平成
29年度(3月の確定申告)で適用される税率です。(平成27年分以降)

所得税の速算表と、その内容について

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少しだけ補足すると実際の所得税の税額は、単純に所得に税率を掛け算したものではなく、この表の「控除額」という金額を差し引いた金額として計算されるのですが、ここで押さえておくべき点は「所得税は所得の多寡に応じて5%から45%」まで税率が変化するという点です(ちなみに昔は最高税率が90%という時代もありました。こうなってくると、もはやお国のために働いているという感じですね)。

この点は、法人税では税率が2段階しかないのと大きな違いです(詳細は後ほど説明します)。所得に課せされる税金としてはこの他に地方税である住民税や事業税もあります。確定申告の際に納めるのが所得税だけなので見落としがちなのですが、住民税や事業税も意外にガッツリと、取られます(笑)

これらの税金については、所得に対して一定割合(住民税については自治体によって税率が微妙に異なり、事業税に関しては業種によって税率が微妙に異なる)の税率が適用されます。所得税と異なり累進税率とはなっていません。
これらの地方税も含めた所得に対して課税される税金の実際の負担率のことを「実効税率」といいます。

要すれば、(所得税+住民税+事業税)÷各種所得控除前の所得=実効税率です。
たとえば、所得税と住民税と事業税を足して
300で、所得が1,000だとすると、「実効税率は30%だ」といった表現になります。

それでは、地方税も含めた個人に適用される実効税率はいくらになるのでしょうか。以下の表をご覧ください。

実効税率表

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上記を見てどのように感じられたでしょうか。少なくとも所得が増えていくとどんどん税率は上がっていくことは確認できたかと思います。

法人税率と、その内容について

それではひるがえって法人税率の体系を見てみましょう。法人税率はいたってシンプルに設定されています。

以下は資本金が1億円以下の会社(税金計算上は「中小法人」といいます。)の法人税率です。平成2912月末現在では以下の通りとなっています。

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少しだけ補足すると、法人税の場合、厳密には「法人税率が2段階」というよりも、「所得の一部分については低い税率が適用される」といったほうがより正確な表現となります。例えば所得が1,000万円だとすると、800万円は19.0%の法人税率が適用されて、800万円を超える200万円(=1,000800)は23.4%の法人税率が適用されるということです。

ちなみに、平成31101日以降開始事業年度の会社においては800万円を超える部分の法人税率が23.2%に引き下げられることが決まっています。

なお、法人に対しても所得に応じた住民税や事業税が課せされます。

これらを考慮した法人の実効税率は以下のとおりとなります。

考慮された実行税率について

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いかがでしょうか。個人の実効税率は所得が増えるとともに上昇していきましたが、法人の場合においては所得が800万円まではほぼ一定です。
なぜなら、累進税率となっていないからです。

ところで、個人に適用される税率と法人に適用される税率を並べてみるとどうなるでしょうか。以下をご覧ください。

個人と法人を比べた税率表

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 所得が800万円~1,000万円のところで税率が逆転しているのにお気づきになりましたでしょうか。
まわりの社長で、「売上が大きくなってきたから法人にした」というのを聞いたことはありませんか。

個人事業主が、事業はそのままで法人化することを「法人成り」といいますが、「法人成り」の一動機としてこうした個人に適用される税率と法人に適用される税率の差があげられます。

法人成りの動機としては、一定の許認可を得るためとか、社会的信用を得るためとか、競争入札の参加資格を得るためとかその他の要因もありますが、こうした税金計算体系の違いに関する影響も見逃せません。

少し余談をすると、実際の法人成りの有利不利判定をする際には社会保険の体系も個人と法人では異なる(Ex.個人は原則として国民健康保険、法人は協会けんぽ又は組合健康保険)ことなども含めて判断します。

この他にあげられる法人成りの税金計算上の影響としては、「事業所得」と「給与所得」の計算方法の違いがあります。次のセクションでは、「給与所得」の計算方法について触れます。

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