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ポイント:社員が辞める大きな理由は「会社に必要とされていると感じられないこと」。
ポイント:自分のやり方、考えを押し付けるのではなく、それぞれの考え方に寄り添いながら、明確な区別を維持することで、信用性・信頼性がUP。
ポイント:従業員の存在意義や共感を感じるための時間を費やすことが、生産性の高い従業員が長く会社に残って働き続けてくれる秘訣。
岡本陽子の『考える上司』に変身する方法 第3回
起業したばかりの会社でも、従業員を採用することで「上司と部下」の関係が生じます。目標に向かって頑張るからこそ、一緒に人間関係はうまく育んでいきたいもの。しかし、リーダーシップを強気、強引さなどと勘違いしていては、部下はついてこないものです。部下の指導法が一味違う「考える上司」とは? キャリアコンサルタントの岡本陽子さんが具体例をあげながら解説します。
せっかく採用してもすぐに辞めてしまう。以前は多くを採用して「ガッツのある従業員だけ残ればいい」と思っていたが、近ごろは1人採用するだけでも一苦労する時代になった。自分のやり方を部下に教えていけば、確実に業績は伸びるだろうと起業したが、そんなトップダウン式の経営の人材教育の仕方には限界を感じつつある。「もっと優秀な人材が欲しい」と思うけれど、「単に社員を増やせばいいという問題ではない」気もしている。
給与を高くしたら続くわけでもなく、従業員の勤務時間に気を配れば仕事にも支障が出くるのではと不安も感じる。最近はめっきり従業員に気をつかうことが多くなってしまった。それでも辞めていくので途方に暮れてしまう——。小規模な法人経営者が頭を抱える人材の問題について今回は考えてみました。
前回の記事はこちら
職場を壊す「ネガティブ社員」 3つの特徴と対処法
従業員が長続きしない本当の理由
よくある退職理由には、「労働時間が長い」「給与が低い」「休みがない」「職場環境が良くない」「体力的にしんどさがあった」などの不満が理由に挙がります。でもこのほとんどは後付けでつけられた理由なのです。労働時間が長くても、体力的にしんどさがある仕事でも、給与が低くても続けている従業員とは何が違うのか。それは「仕事にやりがいを感じているか」ということ。やりがいを感じるまでには、少なくても仕事がわかりだすまでに6カ月はかかります。その、やりがいを感じるまでの期間に辞めてしまうことが多いのです。
その大きな理由は「会社に必要とされていると感じられないこと」でしょう。
求人募集を見たとき、「この仕事をやってみたい!」「この環境は楽しそうだ!」と応募し、面接では相互の考えが分かることで、この会社で働くことに共感していきます。経営者も「この人材を採用したら、今の事業がもっとスピードアップするのではないか」「今不足している業務の穴埋めを上手くやってくれる」という期待を持って採用されます。
そんな採用当時に漂っていた期待と未来が、いざ働きだすと、なかなかうまくいかないのは、なぜでしょうか。経営者が、仕事ができないとレッテルを従業員にはるのではなく、従業員に寄り添い、存在価値を再認識していくことで、自信を持つようになります。その必要とされていると感じることが、多少の困難なこと(労働時間、しんどさなど)はヘッチャラになり、その大変さを楽しむことへと変わっていくのです。
マインドフルネスから学ぶ共感の方法
「仕事を覚えない、よくミスばかりする従業員の気持ちに寄り添うなんてことはできない」−—。そう感じる経営者も多いでしょう。「寄り添う」というワードを聞くと、何だか傷のなめ合いのような印象を持つ人もいますが、それでは経営は成り立ちませんよね。
「寄り添う」とは「共感する」ことを意味しますが、共感とはただ寄り添うだけではありません。
米グーグルの提唱する「マインドフルネス」にもあるように、共感とは、
・他の人の気持ちを経験したり理解したりできる能力
・自分と他の人の気持ちや立場について明確な区別を維持する能力
この2つを共存させている能力のことを言います。1の部分は相手に寄り添うことを意味しています。より大事な点は2の部分です。上司と部下、経営者と従業員といった立場について、明確に区別しながら取り組むことが重要なのです。
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なぜ、今マインドフルネスが経営者・起業家の間で注目されているのか??
元営業トップクラスの経営者ほど陥りやすい罠
「経営者が今までおこなってきた現場のノウハウをきちんと部下に伝えていけば、自然と売り上げは伸びるだろう」。そのような考えで起業をし、実際はどれだけ教えても売り上げが上がらない部下に日々、頭を悩まされる。経営者と従業員は明らかに違う「個」であり、育ってきた環境・価値観・考えもまるで違います。自分は難なくできるのだから周りもそうであろう、は大きな間違いです。それぞれに特徴があるからこそ、その特徴を生かした仕事・職場の立ち位置、動き方は変わります。
理念や想いを共有することはあっても、従業員は経営者の遺伝子は引き継いでいません。だからこそ、「共感」の2つの能力を用いながら、従業員に「自分はこの会社に必要とされている」「働く存在場所はここにある」と感じてもられないといけません。
遺伝子を引き継いでいない従業員に、経営者と同じレベルの貢献を求めても、参ってしまうだけなのです。同じやり方、同じ考えではなく、それぞれの考え方に寄り添いながら、明確な区別を維持することで、信用性・信頼性もUPし、必要とされていることに自信を持つのです。会社に属していながら、必要性を感じてもらえていない程、悲しいことはありませんよね。
共感こそが生産性を高める
共感することで、必要とされていることに気づき、仕事も前向きに取り組めていきます。そうすることで、仕事も長続きしていきますし、いつも人が辞めてしまうことから脱することができるでしょう。現社員が前向きに仕事に取り組むことで、必然的に一人ひとりの生産性も高まり、それは企業の安定の糧となります。
従業員の存在意義や共感を感じるための時間を費やすことが、生産性の高い従業員が長く会社に残って働き続けてくれる秘訣なのです。
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