西田 隆行

金融機関にどうやって自分の事業内容、事業計画、資金調達効果、返済確実性を説明しますか?

ポイント(この記事は3分で読み終わります)
  1. 金融機関と付き合うためには、まず相手の性格をよく知る必要がある。
  2. 金融機関の最初の関門を突破するには、相手に通じる「言葉」を見つける必要がある。
  3. ​​​​​​​一度門戸を開けたら金融機関は強力なパートナーに変わる。

金融機関の「人物」像とは

これまでの連載で、みなさんが金融機関に対して抱いているイメージと、それらを抱かせる金融機関の事情について、また金融機関に今なにが起こっているかなどについてお話してきました。金融機関は事業規模や職員数が大きく、歴史も古い企業体です。今起こっていることで経営方針が急転回することは、まずありません。それは金融機関の体質として「保守的」であり、「色を好まない」という性格がそうさせるのです。

「保守的」が意味するのは「先取的な取り組みを嫌う」ということです。総じて横並び主義的な思考を持っているのです。前にもお話ししましたが、金融機関は長く旧大蔵省(財務省)による「護送船団方式」という指導の下で、統一したサービス(規制金利)によって営業をし、「自由度はないけれど安定した収益が約束された環境」で育ってきました。したがって、「独自性を出そう」という発想は極めて限定的でした。

このことは金融自由化となった現在でも企業体質として根深く存在しています。ですから、何か新しいことをやろうとするときも「他行は?」「金融庁は?」と横並びに意識が向き、周りの動向を非常に気にします。

もう一つの「色を好まない」という点について。金融機関はあまねく一般の企業・個人がお客様となります。「若い方からお年寄りまで」「スタートアップ・起業家から老舗企業まで」「個人事業者から上場企業や官公庁まで」――。広くお客様に金融サービスを提供することを社会的使命として営業をしています。

こうしたお客様に幅広く支持をいただくためには偏った考え方、特色を持つことはできません。最大公約的な価値観から支持されることが求められるのです。従って金融機関で働く従業員もニュートラルさが必要です。

例えば、身だしなみでいうと男性なら清潔感あふれる髪型や、紺のスーツに白のカッターシャツ、地味色のネクタイ、磨き上げられた黒い靴、というイメージが金融機関で働く者には求められていると教育されます。女性なら、髪は染めたりしない、長い髪は後ろで束ねる、ネイルはダメ、お化粧もナチュラルに、といったところでしょうか。

とにかく「個性を見せない」「万人受けする」ことが金融機関の就業者に求められる人物像なのです。こうした企業ポリシーを徹底的に教育されてきた職員からは、なかなか突出したアイデアや行動力は生まれにくいものです。しかし、そういう均一性が金融機関の売り・強みでもあります。

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金融機関の職員は「真面目でノーマル(偏った考えを持たないという意味で)」な基準で採用されます。そして社会常識を重視する教育を受けます。また社内規程や行動規範などの「ルールに沿って行動する」との意識を強く教え込まれます。さらに、どちらかというとプライドが高い人も多いのです。誤解やお叱りを承知であえて言えば、お客様の利便性を優先して自らの労を厭わず艱難辛苦(かんなんしんく)して働いている、と感じている職員が多いのです。

どうでしょうか、「金融機関人」のイメージを分かっていただけたでしょうか。真面目にコツコツ、正義感が強くて規範倫理をしっかりもった人、といえばいいでしょう。最近はいろいろなタイプの人が増えていますから、私の描くイメージはもう古いと一蹴されるかもしれませんね。


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相手に通じるように言葉を選ぶことが必要

さて、ここから核心部分です。個性的に均質な人の集まりである金融機関は、外部からの働きかけに対する受容度が、「一般企業のそれと比べて狭い」と考えてください。自分のモノサシを相手方に求める。これにはまらなければ受け入れられない、理解しない、という性格がとても強いところです。

みなさんが起業家で資金調達の必要が出てきたときに、金融機関にどうやって自分の事業内容、事業計画、資金調達効果、返済確実性を説明しますか?

みなさんはご自身のことだから、あなたを知る仲間や同業者ならすべてを語る必要はないかもしれません。しかし、金融機関の人にとって、あなたはまったくの門外漢です。まして独自のモノサシで結果から将来を推し量ることに馴染んだ考えの持ち主です。これを無視して「私の話を聞いて」と申し出ても聞く耳を持たず、あなたの言葉が通じないことが往々にしてあるのです。このことは、よく心得ておく必要があります。

でも、この関門を突破できたら、金融機関はあなたに対してとても強い興味を抱きます。よき相談相手よき支援者としてあなたの事業の味方に変わることでしょう。この関門を突破するためには、金融機関にあなたの言葉が分かってもらえるよう、努力をするしかないのです。そのために金融機関という「人物」が、どういう性格でどんな考え方をしているのかをあらかじめ知ること。あなたが初めて会う人と友達になりたいと考えたときに、相手のことを推し量ることと同じです。

一方的なあなたからのラブコールでは相手は振り向きません。まず、あなたの言葉が相手に通じるように言葉を選ぶことが必要です。臆病でわがままな相手(金融機関)の気持ちを動かすキーワードが必要になるのです。あなたなりのキーワードを見つけてください。きっとあるはずです。それを見つけて金融機関の門を叩きましょう。

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著者プロフィール

西田 隆行

中小企業診断士。1980年大学卒業後信用金庫に勤務。中小企業や小規模事業者へ資金繰りや財務のコンサルティングを行っている。また地域の中核企業、老舗企業の再生に深く関与。「事業を継続するための財務戦略」をメインテーマに活動している。2017年12月から、日本最大の起業・開業・独立者向けポータルサイト「助っ人」(www.suke10.com)の編集チームで、主に「銀行とのつきあい方、資金調達、事業承継」をテーマとしたコラムを担当している。