副業させてもあなたについてくる従業員を育てるには

ポイント
  1. キャリアデザインしない、できない従業員の本音を知る
  2. 現在満足しているキャリアをどの環境でも再現させることが必要な時代に
  3. 従業員自らの能力向上にストップをかけない環境が自律的キャリア形成を育む

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指示された仕事や、大量にある日常の業務をこなすことで精一杯の従業員には、中・長期的な視点で考える余裕を持てない人もいます。特に小規模法人では、少人数の中でやらなければならない仕事量は多く、一人ひとりが120%〜150%の力量で働くことを求められることもしばしまです。今現在のできること、やらなければならないことをキチンとこなしていけば、「それが結果として将来の自分のキャリアにつながる」と考えてしまう人も多いのが実情です。

今回のシリーズでは、小規模法人における働き方改革と従業員の自律的キャリア形成の在り方について、ひも解いていきます。第2回目は、キャリアに関心がない従業員の本音を知る方法と、個人のキャリアデザインが企業成長につながる理由について考えてみました。

キャリア形成に興味・関心がない従業員

従業員と経営者では、考え方、価値観、時間の使い方など、あらゆる面で差が生じています。

「労務を提供することで給与をもらう従業員」⇄「労務の対価として給与を支払う経営者」

「正社員採用で生活の安定が保証された従業員」⇄「いつでも離職の不安や経営の不安定さを感じる経営者」

「労働という時間的拘束の中で現在の職場・業務が社会との関わりになっている従業員」⇄「自分の裁量で他業界などの社会とも接点を持ちやすい経営者」

これは、どちらが良い悪いといった話ではありません。一般的にはこのような差があるという例えとして捉えて頂けたらと思います。そのような中で従業員がキャリアを考える際に、本音には以下のような点が見受けられます。

1、生活の安定を守ることで必死だから、「自分が何をしたい、やりたい」など考える余裕は全くない。指示されたことを正確にこなすことが、今の自分のキャリア形成だと考えている。

2、指示されたことをこなす毎日なので、自律はできないし無理だと考えている。「やりたい、もっとこうしたらいいのに」と思う部分はあっても、表に出せる環境ではない。

3、忙しい毎日の中でもそれなりに充実はしており、それに満足しているから新しくキャリア形成について考える必要はないと思っている。

毎月の売り上げ目標、上司からの叱責、締め切りや納期に追われる毎日では、1や2のように考える従業員は多いでしょう。今がすべてであり、生活の安定は将来の安定、それこそがキャリア形成だと考えているのかもしれません。もちろん生活の安定は必要であり、なくてはならないものです。

ただし、今現在の状態がずっと続くことは、まずあり得ません。仕事面で新しい部下や役割の変化だけではなく、家族・子どもの成長による日常の変化、そして世の中の変化からクライアントも変化していくからです。ですから、3もあり得ないことになります。

そうした様々な変化は、従業員自身の仕事の変化となり、キャリアの変化にもつながります。そのような変化に対応できるように準備をしていかなければいけません。変化に対応できる従業員を育てることを通じて、従業員の危機管理能力柔軟性を養うことができるので、経営者側にも十分メリットがあります。

偶発性を生む出す力の偉大さ

「よそのことに目を向ける時間があるなら今の仕事をちゃんと全うして欲しい」

「まわりに関心を持たれることで、離職されてしまう可能性が出てくる」

このような考えで従業員の副業を禁止している経営者も多いでしょう。社内の軸を太くしていきたい経営者からすると、よそ見している従業員に腹立たしさを感じてしまうこともあるかもしれません。

副業までいかなくても、いつもは残業している従業員が「〇〇のセミナーに参加する」という理由で定時帰宅する姿を見て、「(他社の方に)よそ見をされている」「他に興味・関心を持たれてしまうかもしれない」と、不安を感じる経営者も少なくないでしょう。

しかし、様々な変化に対応できるようになるためには、現在の能力を「横に展開」していく方法や、今満足していることを他の場面において「どのようにつなげていけるか」などを考えていく必要があります。

変化に対応できる能力の開発は、社内だけでまかなえることではありません。世の中の動きが変われば、クライアントの経営姿勢も変化します。 それだけに社内や同業同士での意見交換だけにとどまっていては限界があります。

まったく関わりのない業界との接点からヒントを得ることで、現在の業務を「横展開」させていく方法が見つかることがあります。

もちろん、無理矢理させる必要はありません。強制的におこなうと「やらされた感」が生じてしまい、悪循環にも陥る可能性があります。強制ではなく、従業員の自主的な外部の機会の提供を推進する経営者の考えや在り方に、従業員は安堵し、信頼を蓄積し、今の自分の環境にプラスできる何かを持ち帰ってきます。

身体が固くなったらスポーツやマッサージをするように、現在の職場ではない他業界の人や話題に関わることで、仕事のリフレッシュ効果にもつながります。業務過多で凝り固まっていた従業員の思考を、利害関係のない他業界との関わってもらうことを通じて、自身の仕事と環境に置き換え、柔らかく考える思考が養えていくのです。

最後に、第1回目にも書いたように、従業員のキャリア開発を支援するには、まずは「信頼」ありきです。従業員と会社の信頼という土台があれば、従業員は今の自身の仕事に置き換えながらできること、やれることを考えていくきっかけになります。

現場の従業員だからわかること、考えられることは多く、それが他分野との偶発的な場が相乗効果を生み出します。企業の軸になるヨコ展開を生み出していくことができるようになれば、経営の幅が拡がり、何よりも従業員自身のキャリア形成につながっていきます。

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著者プロフィール

岡本 陽子

岡本 陽子

SOARist(ソアリスト)代表 キャリアコンサルタント。1999年、大学卒業後、総合広告代理店に入社。主に求人広告営業をメインに携わり、200社以上3000名のキャリアビジョン・ヒアリングをした経験を生かし、スタッフが健やかに働くためのキャリア支援を行う。「ココロもカラダも健やかに翔(か)けていけるキャリア支援」がモットー。2016年10月に独立し、ソアリスト設立。愛知県出身。