経理担当なら知っておきたい収入印紙の10のコト
- 経理担当なら知っておきたい収入印紙の10のコト
経理担当にとって収入印紙関係の知識は避けて通れません。「どのような状況で収入印紙が必要なのか」「いくらの収入印紙を貼付するのか」「そもそもなぜ貼付する必要があるのか」をあらためて問われると、答えに窮するのではないでしょうか。
収入印紙は、身近な領収書から日常の業務からは縁遠いものまで、20の区分に応じて金額を定められています。種類が多いことから敬遠しがちですが、経理担当として一度しっかりと整理しておき、頼られる経理担当を目指しましょう。
収入印紙の意義から20区分の内訳、そして節税ポイントまでの10項目に分けて説明していますので、ぜひ参考にしてください。
収入印紙を貼付するということは「印紙税」という税金を納めなければいけません。そもそも税金は、社会を支えるために個人や企業から公平に負担を求めるものです。経済活動によってより多くの利益を得ているところからより多く徴収するように設計されています。
収入印紙は「課税文書」に貼らなければならない印紙です。課税文書とは経済活動を発生する契約書のことを指します。課税文書の作成は、経済活動を発生する前提作業であることから、税負担を求めているのです。より高額な取引の契約書には、より高額な収入印紙を貼付することとされています。
なお、「非課税文書」は課税文書ではあるものの対象金額の下限を下回っている文書です。これに対して「不課税文書」は、元から課税対象とはならない文書、例えば派遣先の仕事の依頼内容書などです。
また、収入印紙は国に納付する手数料や罰金、及び訴訟費用などを支払うさいに現金に代わるものとしても用いられます。
課税文書であるにも関わらず収入印紙を貼らなかった場合、過怠税の徴収対象となります。過怠税とは、「支払うべき印紙税額」に「印紙税額×2の税額」を足した金額、すなわち支払うべき印紙税額の3倍となる附帯税です。支払うべき印紙税額も含めて全額損金不算入となりますので、定期的に貼り忘れのチェックをおこないましょう。
なお、貼り忘れに気づいたときは、税務署長にその旨を申告することで、「支払うべき印紙税額」に「印紙税額×10%」を足した金額、すなわち支払うべき印紙税額の1.1倍に減額されます。
課税文書は次の図表の20種類に分類されています。印紙税額は一部抜粋したものですので、詳細は国税庁ホームページから確認することもできます
番号 |
課税文書の種類 |
印紙税額(抜粋) |
1 |
不動産などの譲渡、地上権・土地の賃借権の設定や譲渡、消費貸借、運送関係の契約文書 |
10000〜10万円の場合 200円 (※他は契約金額ごとで異なる 以下同) |
2 |
請負関係の契約文書 |
10000〜100万円の場合 200円 |
3 |
約束手形、為替手形 |
10万〜100万円の場合 200円 |
4 |
株券、出資証券、社債券、投資信託、貸付信託、特定目的信託、受益証券発行信託の受益証券など |
500万円以下の場合 200円 |
5 |
合併契約書、吸収分割契約書、新設分割計画書など |
40000円 |
6 |
定款 |
40000円 |
7 |
継続的取引の基本となる契約文書 |
40000円 |
8 |
預貯金証書 |
200円 |
9 |
貨物引換し証書、倉庫証券など |
200円 |
10 |
保険証券 |
200円 |
11 |
信用状 |
200円 |
12 |
「信託行為」関係の契約文書 |
200円 |
13 |
「債務の保証」関係の契約文書 |
200円 |
14 |
「金銭」「有価証券の寄託」関係の契約文書 |
200円 |
15 |
「債権譲渡」「債務引き受け」関係の契約文書 |
200円 |
16 |
配当金領収書、配当金振込通知書 |
200円 |
17 |
金銭、有価証券受取り書 |
100万円を下回る場合 200円 |
18 |
預貯金通帳、信託行為関係の通帳、銀行や無尽会社の作成する掛金通帳、生命保険会社の作成する保険料通帳、生命共済の掛金通帳 |
1年ごとに 200円 |
19 |
消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取通帳などの通帳 |
1年ごとに 400円 |
20 |
判取帳 |
1年ごとに 4000円 |
「領収書」は、法律的には第17号文書である「金銭または有価証券受取り書」にあたります。
「見積書」への印紙貼り付けは必要ありません。見積書を発行したことと契約を締結したことは別だからです。
『見積書にもとづいて注文します』旨の文言のある「注文書」は、金銭のやり取りが生じるもととなる契約書と見なされますので、課税文書となります。また、注文書という名称ではなくとも、例えば「申込書」などであっても、当該文書により契約をした事実がある場合には課税文書となります。
ただし、注文書の対となる「注文請書」(請負書)がある場合、両方に印紙を貼付する必要はありません。この場合は、注文書には印紙を貼らず、注文請書に印紙を貼付する必要があります。
コンビニエンスストアのなかには収入印紙を取り扱っているお店もあります。このときのコンビニは「郵便切手類販売所」という郵便局の代理店という扱いです。この「郵便切手類販売所」については収入印紙を仕訳するさいの消費税の取り扱いに関係してきます。詳細は次の「2-3 収入印紙の消費税の取り扱い」を参照してください。
前述のとおり、収入印紙は郵便局やコンビニなどで購入できます。このときの収入印紙の消費税区分は「非課税」です。このほか、収入印紙は金券ショップでも販売していることがあります。このときの消費税区分は「課税」です。
つまり、予備分の収入印紙を郵便局と金券ショップの2箇所で購入した場合、前者は非課税、後者は課税となるので注意しましょう。
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収入印紙は、貼付したうえで印紙とその文書にまたがるように「消印」をするまでが一連の手続きです。「消印し忘れ」と「貼付し忘れ」は、両者とも税金を未納したと見なされるので注意しましょう。
消印は、ビジネス・ルールでは契約書の甲の印を印紙の左側に、右側に乙の印を押すとされていますが、印紙税法上は、印紙にまたがるような形であればどこにでも誰の印でも構いません。甲、乙どちらか一方の印でも、契約者の当事者の名前ではなくても、サインでも良いことになっています。ただし、サインは鉛筆やフリクションボールペンなど消せるものは認められません。黒のボールペンでしっかりと記載するようにしてください。
未使用の収入印紙は金券ショップにて換金が可能です。換金率は一般的に90%前後で、高額な収入印紙ほど換金率は上がる傾向にあります。ただし、汚れや損傷の目立つものや、一度使用した形跡のあるものは買い取りを拒否されることもあります。
また、郵便局では新品の収入印紙への取り替えや、他の額面の収入印紙と交換することが可能です。例えば、200円の収入印紙5枚を1,000円の収入印紙1枚と交換することができます。一枚につき5円の手数料がかかりますので、このときの手数料は25円となります。
誤って貼付した印紙は税務署で還付してもらえます。たとえ消印をしていても還付対象となります。還付には「印紙税過誤納確認申請書」(国税庁HPにてダウンロード可能)と印鑑、そして収入印紙を貼ったままの文書が必要です。ただし、収入印紙を剥がしていたり、収入印紙の周りだけ切り取ったりしている場合には還付できませんので、注意しましょう。
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収入印紙の節約術を2つご紹介しましょう。1つは「PDFなどで運用する方法」、もう1つは「記載金額を調整する方法」です。
1点目は、領収書や契約書を紙面で出さずにPDFなどにて運用する方法です。国税庁は、「紙面で出さない限りは課税文書とみなさない」という見解を公表しています。すなわち、PDFなど電子データの場合は収入印紙を貼付する必要がありません。
このとき、相手方とのPDFなどのファイルのやり取りはメールで残しておくようにしましょう。経済産業省のHPでは「メールに記録された情報は真正に成立したものと推定する」と記載されているからです。
2点目の記載金額の調整について、手形や領収書に貼付する収入印紙は、その記載された金額ごとで異なります。つまり、記載する金額を調整することで、税額も調整することが可能です。
・手形と領収書の印紙税一覧
手形 (約束手形、為替手形) |
領収書 (金銭、有価証券の受取り書) |
||
記載されている金額が以下の場合 |
印紙税額 |
記載されている金額が以下の場合 |
印紙税額 |
10万円未満 |
非課税 |
5万円未満 |
非課税 |
10万〜100万円まで |
200円 |
5万〜100万円まで |
200円 |
100万〜200万円まで |
400円 |
100万〜200万円まで |
400円 |
200万〜300万円まで |
600円 |
200万〜300万円まで |
600円 |
300万〜500万円まで |
1000円 |
300万〜500万円まで |
1000円 |
500万〜1000万円まで |
2000円 |
500万〜1000万円まで |
2000円 |
1000万〜2000万円まで |
4000円 |
1000万〜2000万円まで |
4000円 |
2000万〜3000万円まで |
6000円 |
2000万〜3000万円まで |
6000円 |
3000万〜5000万円まで |
10000円 |
3000万〜5000万円まで |
10000円 |
5000万〜1億円まで |
20000円 |
5000万〜1億円まで |
20000円 |
1億〜2億円まで |
40000円 |
1億〜2億円まで |
40000円 |
2億〜3億円まで |
60000円 |
2億〜3億円まで |
60000円 |
3億〜5億円まで |
10万円 |
3億〜5億円まで |
10万円 |
5億〜10億円まで |
15万円 |
5億〜10億円まで |
15万円 |
10億円〜 |
20万円 |
10億円〜 |
20万円 |
受取金額の記載のないもの |
200円 |
例えば、額面が3,003万円である1枚の手形にかかる印紙税額は1万円となりますが、手形を3,000万円と3万円の2枚に分けることによって、印紙税額は6000円ですみます(3万円の手形は非課税)。領収書にも同様の考え方をあてはめることができます。
また、消費税の記載方法でも工夫することができます。消費税込みの額面5万2千円の領収書を例にとると、消費税関係の記述がない場合は「5万円以上100万円以下」の扱いとなり、200円の収入印紙を課せられます。本体48,149円、消費税3,851円と明記することで「5万円未満」の領収証とみなされ、非課税となります。「消費税込み」という文言だけでは「5万円以上100万円以下」となりますので、消費税額は明記するようにしましょう。
税制改正は毎年行われています。たとえば平成30年度の税制改正では、働き方改革の一環として個人の所得課税ほか、中小企業の事業承継税制、観光促進策として国際観光旅客税、地方消費税などが見直されました。
印紙税法においても例外ではありません。例えば、平成25年度税制改正では、領収書の印紙税対象となる額面要件が下限3万円から5万円に引き上げられました。経理として、税改正には常に注意を払うようにしましょう。
この記事では、収入印紙について経理担当として知っておきたいことをまとめました。課税文書には多くの種類があり、文書によって税額が異なりますので敬遠しがちですが、一度整理しておくと次に見直したときの理解が深まります。この記事を見直すことで、収入印紙についての知見を深めることにつながれば望外の喜びです。
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