会社を設立したときに必要な各種申請手続き〜登記申請から税務・労務手続きまで〜

更新日:2018.04.14

「会社を設立して社長になりたい」という夢を、多くの人が持っているはずです。一方で、会社の設立は煩雑で、お金もかかるから無理だと思っている人も少なくありません。しかし実は、会社の設立は昔ほど難しいものではなくなりました。株式会社の設立には最低資本金1000万円が必要でしたが、2006年の「新会社法」の施行以来、1円からでもOKとなりました。

さらに会社設立の手続きも簡略化されています。もちろん、会社の手続きは、役所で住民票を書き換えるように簡単にできるものではありません。しかし手続きを整理して一つ一つ片付けていけば、誰にでもできます。将来「社長」を夢見る人は、ぜひそのポイントを掴んでおきましょう。

1.会社設立までの流れ

会社設立に関する申請手続きの前に、会社を設立するまでの一連の流れを確認しておきましょう。

1-1 会社のコンセプトを固める

まず、会社を作るさい、その会社のコンセプトを決めます。会社の事業内容や、その会社で何ができるのか、強みは何か、その事業に対して需要はあるのか、といったことをまとめるのです。コンセプトが固まったら、具体的に会社を設立する場所を決めます。例えばモノを販売する店舗や、飲食店などだったら、立地は事業の成否を左右する重要なポイントです。

さらに、会社は儲け(=利益)を出していかなければ経営を続けていくことができませんから、売上げや利益の見通しを考えます。資金繰りの話なども最後に説明しますが、まず設立当初は、とにかく売り上げを上げて、早くお金が入ってくる仕組みを作らなければなりません。

仕入れをしたり、従業員を雇ったり、家賃や光熱費を払ったり、さらには設立当初に銀行から借りたお金を返したりと、お金はどんどん出て行きます。したがって事業がスタートした後に、いかにお客を集めて売り上げを上げるかという計画を、設立前から立てておく必要があるのです。そうしたプランを立てたら、そのプランが会社設立後に本当に機能するかどうかを、シミュレーションしてみます。簡単な方法は、競合他社と自分の会社を比べてみることです。

例えばパン屋を経営する場合、繁盛している他競合店舗と比較してみます。もちろん、パンの味が美味しいに越したことはありませんが、そのほか「従業員は何人か」「1個当たりの平均単価はいくらか」「1日の売り上げ個数はいくつか」「使っている原料はどうか」「店の雰囲気はどうか」などを比較します。同じような条件であれば、開店しても、ある程度成功できるという目処は立ちます。

しかし、競合と同じ条件で後からスタートしたのでは、その競合以上に成功することは難しいでしょう。そこで、すでにある競合に勝つために、自分の会社の強み(コア・コンピタンス)をしっかりと決め、そこを全面に押し出していくことが大切です。

このように会社のコンセプトをまとめることは、具体的な会社設立の作業に入り、定款などを作成する際にとても役立ちます。では、さっそく会社設立の手続きについて見ていきましょう。

1-2 基本事項の作成から申請書類の提出まで

会社を作って何をやりたいか、そのために、どんな強みがあるのか、ということを整理したら、会社設立の手続きに入ります。一口に「会社」といっても、その形態は4つに分かれています。株式会社、合同会社、合資会社、合名会社です。合資会社、合名会社は現在では少数になってしまいました。また、合同会社の設立は株式会社の設立手続きの一部を簡略化したようなものですので、ここでは主として株式会社設立の手続きについて説明していきます。

まず、会社設立の流れは、次のようになります。

会社の基本事項の決定
会社の印鑑の作成
定款の作成
定款の認証
出資金の払い込み
設立登記の申請
税務署などに書類を提出

これらの流れについて、一つ一つ説明していきます。

会社の基本事項の決定
会社の基本事項とは、社名、事業目的、本店住所、事業年度、資本金総額、株主(出資者)、発行株式数や、代表取締役、監査役などです。これらは発起人が中心となって決定していきます。発起人は出資者でもあり、会社設立後は株主となります。

会社の印鑑の作成
代表者印、銀行印、角印の3つを用意します。

定款の作成
基本事項をまとめた定款を作成します。定款には、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」があります。「絶対的記載事項」は、文字通り、必ず定款に定めておかなければならない事項であり、次の項目があります。

・商号(会社名)
・事業目的
・本店所在地
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人または社員の氏名、または名称および住所
・社員全員が有限責任である旨(合同会社のみ)

また、絶対的記載事項には含まれていませんが、発行可能株式総数もあわせて記載しておくといいでしょう。これらが漏れていると、定款として無効となりますが、株式会社の場合は公証人のチェックを受けるため、そこで指摘されたら訂正します。また、公証人の認証を受けたあとは、記載ミスがあっても修正はできませんので、記載ミスのないように気を付けましょう。

次に、「相対的記載事項」には、以下のような項目があります(カッコ内は、大まかな内容)。
・現物出資(会社の設立に対して現物出資をする人の氏名、出資した財産、それに対して割り当てる設立時発行株式数など)
・株式の譲渡制限に関する定め(会社の株式を譲渡で取得するには、株主総会の承認を受けなければならない旨)
・株券発行の定め(発行する株式について株券を発行する旨)
・役員の任期の延長(取締役の任期について)

「任意的記載事項」には、次のような項目があります。
・英語の社名
・総会(株主総会)の開催時期
・役員の員数
・事業年度

定款は、自社でパソコンなどを使って作成します。また、記載する順序には以下のような決まりがあります。この順番でないと無効になるわけではありませんが、会社にとって重要な項目ほど先に記載されていくので、この順番に沿って作成するのがいいでしょう。

定款の書き順が分からない場合などは、市販の本にも書いてありますし、以下のように会社の規模・形態別に定款の書き方を紹介しているサイトなどもありますので、参考にしてみてください(定款記載例/日本公証人連合会)。また、最近では、定款入力の簡単なソフトなどもあります。

また、定款は公証役場に持って行って認証を受けなければなりませんが、その際、収入印紙代4万円と、認証手数料がかかります。しかし最近では電子定款といって、PDFで作成した電子定款を公証人役場に送って、認証を受けることもできます。その場合、収入印紙代4万円を節約することができます(ただし、認証手数料は電子定款の場合も同様にかかります)。

定款の認証
定款が完成したら、公証人による認証手続きに進みます。認証は、本店所在地のある都道府県にある公証役場で行います。

定款認証の流れは、以下のようになっています。

1.定款を公証役場にファックスで送信
2.公証役場から定款内容のチェックの結果が連絡される
3.必要に応じて定款内容を補正し、公証役場に再送信
4.チェック完了の連絡をもらったら、定款認証のため公証役場に行く日時を予約
5.予約した日時に、公証役場に行き、定款を受領する

まず1で定款をファックスする際は、定款原本(実印を押印したもの)に加え、電話番号を記した送り状、発起人全員の印鑑証明書、公証役場に行けない発起人がいる場合の委任状などを一緒に送信します。

5の予約日には、発起人全員で公証役場に行きます。そのとき持参するものは以下のとおりです。
・定款(製本したもの)3通
・発起人全員の印鑑証明書(発行から3カ月以内のもの)
・発起人全員の個別実印(当日修正があった場合に備えて)
・収入印紙(紙の定款の場合。電子定款の場合は不要)
・定款認証手数料(約5万2000円)
・当日来られない発起人の委任状
・本人確認書類(運転免許証、住基カードなど)

なお、電子定款による認証の場合は、電子定款を保存するメディア(USBメモリ、CD-Rなど)を用意するかどうかということなども、事前に確認しておきましょう。

出資金の払い込み
定款認証が終わったら、いよいよ設立登記の申請になりますが、この登記申請の前までに出資金の払い込みを済ませておきます。出資金は、発起人が、設立する会社の株式を引き受ける代わりに支払うものです。出資は必ずしも現金ではなく、現物出資(土地や建物、社用車など)の場合もあります。出資金払い込みの流れは、まず、出資者全員が、出資者代表の銀行口座にお金を振り込みます。会社設立の手続きが完了するまで会社の口座は開設できないので、この場合、出資者代表個人の口座に振り込むのです。

出資者代表は、出資者全員から出資金が振り込まれた記載のある通帳のコピーを作成し、出資の証明書とします。そして、会社設立後に会社の銀行口座を開設し、出資者代表の口座から会社の口座に資本金を振り返る、というプロセスを踏みます。残る会社設立の手続きは「⑤設立登記の申請」と「⑥税務署などへの書類の提出」となりますが、これらの手続きは少し、複雑になってきますので、章を改めて説明していきます。

2.会社設立の届け出(登記申請)

会社登記の流れは、次のようになっています。

1.登記の添付書類の作成
2.法務局への登記申請
3.補正個所の補正(法務局から補正の連絡があった場合。補正とは、書類に不備があった場合の修正などの処置のこと)
4.登記完了

これらも個別にみていきましょう。

2-1 登記の添付書類の作成

登記申請書に必要な書類は、以下になります。気を付けなければいけないのは、各書類に押す印鑑の種類です。間違えやすいので、カッコ内に付記しておきます。

(1)登記申請書(代表取締役の押印)
登記申請書は、通常はパソコンなどで作成しますが、手書きでも大丈夫です(ただし、鉛筆書きは不可)。用紙サイズはA4と決まっています。登記申請書の書式や記載例は、法務局のホームページで見ることもできます。(商業・法人登記(会社・法人)/法務局

(2)登録免許税納付用台紙
登記申請の際には、登録免許税を収入印紙で納めますが、その収入印紙を貼付する台紙を作成して登記申請書に添付します。登録免許税は資本金の額×0.7%です。

(3)登記すべき事項を記載した用紙、または同事項を保存したCD-R
「登記すべき事項」は、OCR用申請用紙を使えば書面で用意することもできます。しかし、その用紙を法務局に用紙を取りにいかなければなりませんので、代わりにCD-Rで用意することができます。

(4)定款(発起人の押印)
公証人の認証を受けたものです。紙の定款の場合は定款の謄本、電子定款の場合はCD-Rなどを提出します。

(5)発起人決定書(発起人全員の押印)
本店所在地が全ての発起人の同意をもって決定されたことを証明する書面です。会社の本店所在地は、定款上では最小行政区画までの記載(例:「東京都千代田区」など)で構いませんが、その場合は、この「発起人決定書」を添付します。もし定款に番地まで含めた本店所在地を記載しており、かつ電子公告以外の公告方法を選択している場合は、この書類は必要ありません。

(6)取締役の就任承諾書(取締役の押印)

(7)代表取締役の就任承諾書(代表取締役の押印)

(8)監査役の就任承諾書(監査役の押印)
設立時に代表取締役、取締役、監査役に就く人たちからの「就任承諾書」です。

(9)取締役の印鑑証明書
設立時に代表取締役、取締役、監査役に就く人たちの印鑑証明書で、市区町村発行のものです。

(10)資本金の払込証明書(代表取締役の押印)
資本金の払い込みを証明する書類と、通帳のコピー(表紙、裏表紙、払い込みの記載があるページ)を用意し、この4枚をホチキスで綴じ、各見開きの綴り部分に契印を押します。

(11)印鑑届出書
会社設立の際には、個人の印鑑のように、会社の印鑑も実印登録を行います。設立登記の際は、この実印登録した会社印鑑を証明するための印鑑届出書が必要となります。

(12)調査報告書/財産引継書/資本金の額の計上に関する証明書(現物出資があった場合)

(13)印鑑カード交付申請書
登記の完了後、印鑑カードの交付を受ける際に必要です。印鑑カードは、その後、会社の印鑑証明書の発行を受ける際に必要になります。

2-2 法務局への登記申請

登記申請の方法には、直接管轄の法務局に直接書類を持参する方法と、郵送する方法がありますが、希望する日に確実に会社設立を行いたい場合などは、直接申請に行くのが良いでしょう。ここでも、直接申請に行く場合の手続きの流れを説明します。

まず、定款の認証にかかる費用は、以下のとおりです。
・認証手数料(5万円)
・設立登記申請用の謄本の請求手数料(謄本1ページにつき250円。定款の枚数によって異なるが約2000円)
・収入印紙代(4万円。ただし、電子定款の場合は不要)

認証の手数料と謄本の請求料は、当日現金で支払います。収入印紙については、扱っていない公証役場が多いので、事前に郵便局などで購入してから認証に行くとよいでしょう。収入印紙は、定款公証役場にて定款に補正点がないか確認してもらった後に貼るのがいいでしょう。

さて、法務局に行ったら、設立登記申請書を商業登記窓口に提出します。提出された申請書は、同局の登記官が審査します。その後、書類に不備がなければ、3日~1週間ほどで登記は完了します。もし不備があった場合は登記官から連絡があります。その場合は、期間内に法務局の窓口に行き、指示に従って書類内容の補正を行います。

修正が多すぎる場合や、修正不可能な不備があって再度作成したほうが早い場合などは、一度申請を取り下げることもできます。そして補正後に再びチェックを受け、不備がなければ登記完了です。登記が完了したら、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得できます。また、印鑑カードの申請も忘れずに行いましょう。

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3 会社設立後の届け出(税務・労務手続き)

会社の設立に関する手続きで、大変なのは登記申請後の手続きでしょう。

3-1 届出書類の種類と提出先

会社設立後の届出は、主に「税金に関する届出」と「労務に関する届出」があります。

●税金に関する届出
税金に関する届出には、税務署に提出するものと、都道府県、市町村(東京23区は不要)に提出するものがあります。各役所に提出する書類は以下のものです(カッコ内は、提出期限)。

税務署に提出
1. 法人設立届書(会社設立日から2カ月以内)…必須
2. 給与支払事務所等の開設届出書(給与支払事務所等の開設から1カ月以内)…従業員に給与を支払う場合

青色申告の承認申請書(会社設立から3カ月以内)…青色申告の承認を受ける場合
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書…源泉所得税の納期の特例を受ける場合
消費税課税事業者選択届出書…消費税の課税事業者を選択する場合
消費税簡易課税制度選択届出書…消費税の簡易課税を選択する場合

都道府県税事務所、市町村に提出
法人設立届出書(提出期限は都道府県、市町村による)

●労務に関する届出
労務に関する届出には、給与の支払いに関するものや、雇用保険、労災保険、社会保険(健康、厚生年金)に関するものがあります。提出先は、年金事務所、労働基準監督局、ハローワーク(公共職業安定所)です。

年金事務所に提出
1.健康保険・厚生年金保険新規適用届(会社設立日から5日以内)…会社を設立した場合は加入義務がある
2.健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(会社設立日または入社日から5日以内)…会社設立時または新規に従業員を雇用したとき
3.健康保険被扶養者(異動)届(扶養に入る場合、なるべく早く)…被保険者に扶養する者がいる場合
4.国民年金第3号被保険者資格取得届(第3号被保険者に該当してから14日以内)…被保険者に、被扶養配偶者がいる場合

労働基準監督局に提出 
1.適用事業報告(労働基準法の適用基準となってからできる限り早く)…従業員やパートなどを雇用した場合
2.労働保険関連成立届(従業員を雇った日から10日以内)…同上
3.労働保険概算保険料申告書(従業員を雇った日から50日以内)…同上
4.時間外・休日労働に関する協定届(時間外・休日労働を行う前)…従業員に時間外・休日労働をさせる場合

ハローワークに提出 
1.雇用保険適用事業所設置届(従業員を雇った日から10日以内)…雇用保険に加入する従業員を雇用した場合
2.雇用保険被保険者資格取得届(従業員を雇った月の翌月10日まで)

3-2 税務署・地方公共団体への届出

では、これらの届け出書類の主なものについて説明していきます。

・法人設立届出書
税務署に「法人設立届書」を提出するときには、登記申請の際に取得した登記事項証明書と定款のコピー、株主名簿(または社員名簿)、設立時の貸借対照表を添付します。貸借対照表は、会社の資産の状況を示す財務諸表ですが、会社設立時はまだ資産の増減はないので、「出資を受けた金銭」と「現物出資を受けた資産」のみを記載します。

税務署と同様に、都道府県税事務所と市町村役場(東京23区の場合は、都税事務所)にも、「法人設立届書」を提出します。これらの役所に提出する書類は、「法人設立届書」のほか、添付書類として定款の写し、登記簿謄本の写しだけで、貸借対照表は要りません。

・給与支払事務所等の開設届出書
次に、「給与支払事務所等の開設届出書」についてです。会社を経営していくためには、役員への報酬や従業員への給与を支払わなければなりません。また、公認会計士や税理士などに監査を依頼している場合などは、それらの報酬も支払わなければなりません。

その場合、会社は所得税を給与などから源泉徴収して、納付しなければなりません。そこで、納税の準備として、「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署に提出します。申請後、税務署からは、納付用紙が郵送されます。

もし、役員や社員の合計人数が常に10人未満の会社の場合は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も税務署に提出しておくといいでしょう。源泉徴収した所得税は、原則として給与支給日の翌月10日までに納付しなければなりません。しかし、小規模の会社でそれを毎月やるのは大変です。

そこで、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出しておくことで、例えば1月から6月までに支給した給与分に関しては7月10日までに、7月から12月までの給与分に関しては翌年1月20日までに、まとめて納付することができるのです。

・消費税課税事業者選択届出書
さらに、比較的規模の小さな会社のために、「消費税課税事業者選択届出書」について簡単に説明しておきます。通常、設立時の資本金が1000万円未満の法人の設立1期目は、免税事業者という扱いになり、消費税の納税義務が発生しません。これは一見、中小企業にとってありがたい制度に見えますが、逆に損になる場合もあります。

例えば、1期目から多額の設備投資を行い、その支払いの消費税が、売上に付随する消費税より多い場合です。100万円の設備投資には消費税を含め108万円の支払いが必要ですが、1期目の売上が50万円だったら、消費税を含め54万円しか入ってきません。消費税分だけ見ると、8万円払って4万円しか入ってこないわけですから、4万円を税務署に納めたら、4万円のマイナスになります。この差額は通常、還付の対象になりますが、免税事業者の場合は還付が受けられません。

そこで、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する際に、あえて1年目から課税事業者になることを選択することもできるのです。課税事業者なら、税金の還付を受けることもできます。ただし、いったん課税事業者を選択すると、2年間は課税されることになりますので、選択の際は慎重に検討する必要があります。

・消費税簡易課税制度選択届出書
一方、「消費税簡易課税制度選択届出書」は、比較的規模の大きい資本金1000万円以上の会社や、課税事業者を選択した会社に適用される制度です。これらの会社には消費税の納税義務が生じます。消費税は「売上に関わる消費税」と「仕入に関わる消費税額」を差し引きすることで求められます。この計算方法を「原則課税方式」と言います。

しかし、取引が生じる度に消費税額を計算して記録すると大変な手間となります。そこで、仕入れなどで支払った消費税は考慮せず、売上にかかる消費税額は「みなし仕入率」を掛けて消費税を計算する方法があります。これを「簡易課税方式」と言います。

会社のスタートアップ時に、消費税の計算に人員や手間暇をかけたくないという会社には、こうした選択肢もあるのです。この「簡易課税方式」の適用を受けたい会社は、税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します。それにより、最低2期は簡易課税方式で納付する消費税額を計算できます。

・青色申告の承認申請書
さて、税務署への届出でもう一つ重要なのが、「青色申告の承認申請書」です。青色申告とは、一定の手続きを踏まえて申告を行うことで、税制面でのさまざまな優遇措置を受けることがでる制度です。例えば、次のような税制上の優遇措置があります。



このほかにも青色申告のメリットはいくつかありますが、その特典を受けるためには、どんぶり勘定の経理ではいけません。複式簿記のルールに従って日々の取引を所定の帳簿に記帳し、その記帳に基づいて正しい申告をしなければなりません。そのためには、経理の体制をしっかり整えるなどの準備も必要になります。

3-3 社会保険の届出

社会保険とは、健康保険と厚生年金保険を総称したものです。会社は、この社会保険への加入が義務付けられています。

社会保険に加入するときは、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を提出します。また、加入する社員の情報を知らせるため、「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」もあわせて提出します。さらに、役員や従業員に扶養者がいる場合には、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出します。

被扶養者の範囲は、次のとおりです(全国健康保険協会の定義、一部抜粋)。

(1)被保険者の直系尊属、配偶者(戸籍上の婚姻届がなくとも、事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、弟妹、兄姉で、主として被保険者に生計を維持されている人(2)被保険者と同一の世帯で主として被保険者の収入により生計を維持されている、以下に示す人

① 被保険者の三親等以内の親族((1)に該当する人を除く)
② 被保険者の配偶者で、戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の人の父母および子
③ ②の配偶者が亡くなった後における父母および子

これらの中で、健康保険の被扶養者に該当するのは、年収130万円未満の人です(会社の正社員や、一定期間以上の労働時間や雇用期間を超えたパート、日雇い労働者は除く)。

また、厚生年金に加入している役員や従業員の配偶者で、20歳以上60歳未満の人が被扶養者となる場合、その配偶者は「国民年金第3号被保険者」と呼ばれます。第3号被保険者である期間中は、その配偶者は国民年金の保険料を納めなくてもよいことになっています。この期間に保険料を納めなくても、納付したものとして将来受給する国民年金の額が計算されます。

国民年金第3号被保険者となるためには、「健康保険被扶養者(異動)届」と併せて、「国民年金第3号被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。したがって役員や従業員の配偶者がこれに該当する場合は、届出が必要になります。

3-4 労働保険の届出

会社は、従業員を初めて雇ったときは、所轄の労働基準監督署に「適用事業報告」を提出します。また、時間外労働や休日労働が発生する可能性がある場合には、「時間外・休日労働に関する協定届」も提出します。会社は法定労働時間を超えて従業員を働かせることはできませんが、この届けを出せば、協定の範囲内で従業員に時間外労働や休日労働をさせることができます。

次に、会社は従業員のために労働保険に加入しなければなりません。労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。労災保険は、労働者災害補償保険の略称です。仕事が原因で従業員がケガをしたり病気になったりしたとき(労災)に備え、会社に加入が義務付けられている保険です。労災のために仕事ができなくなり、給与を受け取れない従業員に対して、給与の代わりとなる保険給付を行うことで、生活費や治療費に困らないよう配慮した制度です。

労災保険については会社が全額負担することになりますので、従業員の給与から天引きされることはありません。労災保険の窓口は、労働局や労働基準監督署です。一方の雇用保険は、従業員の失業に備えて会社が加入する保険です。雇用保険は、失業手当のほかにも、教育給付金などの手当にも関係します。雇用保険は、雇用期間30日以上で週20時間以上など、加入には一定の要件がありますが、社員やアルバイトといった雇用形態にかかわらず、要件に当てはまれれば、加入する必要があります。保険料は、会社と従業員双方で負担します。

いずれにしても、人を雇用した時点で、会社には労働保険の加入義務が生じるのです。加入の際には、管轄の労働基準監督署に「労働保険 保険関係成立届」を提出します。提出は従業員を雇用した日から10日以内、届出用紙は労働基準監督署で入手できますので、それに必要事項を記入して添付書類と一緒に提出します。監督署からは後日、労働保険番号が発行されます。労働保険番号は、労働保険概算保険料申告書や雇用保険適用事業所設置届に必要となります。

労働保険料は、労災保険料と雇用保険料の合算金額を申告します。各保険料は、それぞれの保険料率に従って計算します。そして、従業員を雇用した日から50日以内に、労働保険概算保険料申告書を提出します。申告の際には、労働保険料の納付も併せて行います。労働保険の加入義務があるにもかかわらず加入手続きを取っていない場合は、保険料の遡及徴収や、追徴金の徴収が行われる場合もありますので注意しましょう。

労働保険番号を入手したら、「雇用保険適用事業所設置届」を提出します。雇用保険の管轄はハローワークになりますので、届けも所轄のハローワークに提出します。提出の際には、労働保険番号が必要となります。申請後、ハローワークから適用事業所台帳が送られてきます。以後、雇用保険の手続きにはこの台帳のコピーを添付することになりますので、大切に保管しておきましょう。

雇用保険に加入する従業員(正社員のほか、雇用期間31日以上、週20時間以上働くアルバイトやパートタイマー)については、個別に「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。これは「雇用保険適用事業所設置届」と併せてハローワークに提出します。

手続き完了後、ハローワークからは以下の3つの書類が送られてきます。

・雇用保険被保険者証
・雇用保険被保険者資格取得届等確認通知書
・雇用保険被保険者資格喪失(氏名変更)届
(※実際は3枚が1枚の用紙上にあって、切り取れるようになっています)

このうち雇用保険被保険者証は、従業員に交付します。他の2書類は会社で保管し、従業員の退職や氏名変更の際に使用します。会社を設立する際の基本的な手続きは以上になりますが、実際に会社を経営する際には、資金繰りが重要になってきます。そこで最後に、資金繰りの手続きについて説明しておきます。

4.会社の資金繰り手続き

会社設立の手続きを終えたら、事業の取引や給与の支払いに使うお金をやり取りするための銀行口座の開設は必須となります。

4-1 会社の口座開設

ただし、会社の口座の開設は、個人が口座を開くように簡単なものではありません。最近、法人名の銀行口座を使った振り込み詐欺などが横行している影響などもあって、口座開設の審査は厳しく、開設を断られるケースもあるのです。そのため、口座開設の手続きには、会社の代表が行くことが望ましいでしょう。身なりもきちんとして、信用のおける会社であることをアピールします。

口座開設の手続きに必要な書類は、以下のとおりです。

履歴事項全部証明書(役員や商号の変更などの履歴が全て記載されている登記簿謄本)
会社の銀行印
印鑑証明書
手続きに行く人の公的な本人確認資料
委任状等(手続きを代表者以外の人が行う場合)

これらの書類をもとに、銀行の担当者からは、以下のようなことが聞かれます。

主たる事業は何か、また謄本上、事業目的が多岐にわたる場合は、その内容について
実質的支配者について(実質的支配者とは、金融機関によって基準が異なることがありますが、だいたい議決権の25%超を直接または間接に保有するなど支配的な影響力を有すると認められる個人のこと。その人の氏名・住居・生年月日等が確認される)

また、これらの質疑の内容次第で、以下の書類を追加で求められることがあります。

会社案内、製品、パンフレット、取引先向けの提案資料、見積書、注文書、仕様書など
事業の実施自体に各行政機関等の許認可・届出・登録等が必要な業種の場合は、それらが完了済みであることを確認できる資料

これらの手続きの結果が審査にかけられ、1週間ほどで口座開設の可否について連絡があります。もし口座開設を急ぐ場合は、口座開設が認められなかった場合に備えて、別の銀行への交渉も視野に入れておくとよいでしょう。また、口座開設をより確実にするためには、紹介者を介して金融機関と交渉することで、開設がスムーズにできることもあります。

4-2 資金調達について

会社を設立したばかりのときは、何かとお金が必要になります。業種にもよりますが、オフィスや店舗の敷金、保証金、賃貸料に始まり、内外装や看板製作、机や椅子などの備品、パソコン、プリンタなどの機器などが必要となります。これらの購入に必要な資金は、「設備資金」といいます。

また、実際に事業を行ううえでの「運転資金」として、仕入れの資金、役員報酬や従業員の給与、社会保険料、外注費、通信費、光熱費、広告宣伝費、交際費などがかかります。これらの必要資金をまとめて一覧表などに整理し、具体的にいくら必要なのかを洗い出します。特に会社設立当初は、まだ売上金も入ってきませんから、どのくらいの資金を捻出しなければならないかということは、シビアに考えなければいけません。

その際、自己資金だけで設備資金と運転資金を賄える会社はいいですが、多くの会社はそれほど潤沢な自己資金を持っておらず、自己資金と借入の両建てで資金を賄っています。借入というと、借金をイメージして悪い印象を持ってしまう人もいるかもしれませんが、少額の資金ではできない事業もたくさんあります。一時的にお金を借りて、より大きな売上と利益を上げていくやり方が、ビジネスでは一般的に行われています。借りたお金をきちんと利息を付けて返してくれるなら、貸す側にもメリットがあります。

そこで、自己資金以外の資金を調達する方法ですが、手っ取り早いのは口座を開設したメインバンクから融資を受けることです。しかし、まだ事業も始まったばかりで、成功するか赤字になるかもわからない会社に対し、銀行もそんな簡単に融資はしてくれないでしょう。現実的には、決算を2回終えないと、融資に応じてくれないという銀行が多いようです。そこで検討したいのが、「公的融資」です。特に創業したばかりの会社に対して用意された新規開業融資なら、まだ実績のない会社でも融資を受けることが可能です。

新規開業融資で有名なのが、日本政策金融公庫の融資です。そのほか、都道府県や市区町村の制度融資などもあります。しかし審査のスピードの速さや融資限度額などを勘案し、日本政策金融公庫の融資を受ける会社は多いようです。

日本政策金融公庫で融資を受ける場合の手続きの流れを見てみましょう。

日本政策金融公庫の新規開業資金では、限度額7200万円(うち運転資金4800万円)までの融資が受けられます。これは会社を設立したばかりの経営者にとっては、心強い味方となるでしょう。以上で、会社設立に関する手続きはすべて終了です。いろいろな役所に多種多様な届けを提出しなければならず、また、その様式もさまざまなので、煩雑に思われる人も少なくないでしょう。

しかし、日本には約580万社の民間会社があり(総務省統計局資料より)、そのうち約4割が法人格と言われていますので、200万以上の会社は、こうした手続きを経てきているのです。逆にいえば、煩雑すぎる手続きであったら、それだけ多くの会社が創業することはできなかったということです。

手順を踏んで一つ一つ手続きを踏んでいけば、起業はそれほど難しいことではありません。もしわからなければ、税務署、ハローワーク、公証役場など各所管の役所に問い合わせれば教えてくれますし、役所のホームページ上にも豊富な資料や書式のテンプレートが用意されています。

ぜひこれらを参考にして、ぜひあなたも社長になる夢をかなえてみてください。

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